6年3組物語 第5話

ダイナマイト・ジェニー

 空気の澄んださわやかな、土曜日の早朝。
だがここに、その雰囲気とあまりに似つかわしくない汗まみれで苦悶する1人の少年がいた。
「くぅっ、うんん、ゥゥゥ……!」
 彼に残された時間は少ない。
急がなければ、朝の補習に遅れてしまう。

 彼の名は、安彦。
ここから自転車で30分ほど走ったあたりの高校に通う2年生の少年だ。
なので、早くこの自転車に乗って走り出さなければ遅刻してしまうのだが…安彦は焦る。
サドルの位置を固定するレバーが、固くて全く動かないからだ。
このままの高さでは、乗れない。地面に足を付けるどころか、下がったほうのペダルにすらようやく爪先が届く程度。
こんな状態で、ペダルなんかこげるわけがない。
こんなにまでサドルを高く上げてしまった張本人は…まだ呑気にベッドの中だ。今日は土曜日だから。
「くぅぅっ…ジェニーの奴、自転車使ったら椅子は元に戻しとけってあれだけ言ってるのに…」

 物置からペンチまで持ち出して、安彦は朝から汗びっしょりでレバーを緩めようとする。
今日は土曜日なので大体の学校は休みなのだが、安彦の通う私立高校はまだ週5日制に対応していない。
おまけに彼の在籍する進学クラスは8時半よりさらに1時間早く、補習授業が組み込まれている。
いつもよりさらに人気のない静かな通りに面した家の自転車置き場で、安彦は孤独に悪戦苦闘する。
なんで、いつもこんな馬鹿力で締め上げるんだ……
安彦は同居人の少女に恨めしい思いを抱きながら、ペンチを握る手に全体重を預ける。

 カクンッ!ドタァァァッ!!
「い、いてててて……」
 突然緩んで回ったレバーに勢い余ってコンクリートの地面にひっくり返ってしまう安彦。
道具まで持ち出し、全力を振り絞り、ようやく外れた…彼女が片手で締めたレバーが。
どうにか、サドルを自分に合った高さに戻すことができる。一番低い位置に、コツンと音を立てて下げる。
…大体、これは自分の自転車なのに…なのにどうして持ち主の自分が、いつもこんな苦労をしなければならないんだ…
そして、4歳年下の、まだ小学6年生の女の子が使った後でサドルをここまで下げなければならない屈辱。
思わず泣きそうになってしまう気持ちをこらえ、小柄な安彦は自転車に跨り走り出す。
かなりの時間をロスしてしまった。飛ばさなければ遅刻する!必死にこいで走っていく安彦。

「いただきまーす」
 それから数十分後、起床してきたジェニーは朝食を取っていた。
来日して2年目。日本語も、箸の使い方も、かなりの上達を見せていた。
その手に持つ茶碗は安彦の使用しているそれとは明らかに大きさの異なるもので、その中のご飯はみるみるうちに減っていく。
(…せめて安彦もこれだけ食べれば、ジェニーちゃんほどまでは行かないにしても、もう少し大きくなれたかもしれないのに。
あの子、男のくせに食が細いから…)
 元気に朝ごはんをたいらげていく大きなジェニーを見ながら、安彦の母は心で呟き、少しだけ苦笑した。
それから何気なく窓の外に目をやると、自転車置き場にペンチが転がったままになっているのが見えた。
時間に追われて焦った安彦が、片付けるのも忘れてそのまま飛んでいってしまったことはすぐにわかる。
そんな光景は、数え切れないほど目にしてきたから。
「やっぱりジェニーちゃんにも、専用に自転車を買ってあげなければダメね」
「え?でも私、ヤスヒコの自転車が、大好きなの」
「でもジェニーちゃんあの自転車じゃ、椅子を一番上まで上げても脚が余るでしょ。
体に合わないものに乗り続けると姿勢も悪くなるわよ。それに…」
 股下をはじめとする体のサイズと、力が圧倒的に違う安彦とジェニーに、1台の自転車を共有させることは明らかに無理がある。
安彦が下校してきてその自転車が空いているとき、母はジェニーによくお遣いを頼む。
その依頼にジェニーはいつも快く応じ、安彦の自転車で勢い良く走り出していく。
その際にいつも、ジェニーは自分の体に合わせるべくサドルを最大限の高さに引き上げてしまうのだった。
そして用事を済ませたジェニーは、たまにうっかりサドルを元の高さに戻すことを忘れる。
そうすると翌朝、安彦が今朝のような死闘を強いられることになるのだ。
ジェニーが自分では片手で軽く掛けているに過ぎないと思っているサドル固定レバーへの締め付けトルクは
安彦にとっては両手がかりでも、素手ではまず緩めることのできない強烈な締め込みとなっている。
それを何度となく目にした母は、さすがに不憫と感じ始めたのだった。


 この家にジェニーがやってきてから、1年余りが過ぎた。
思い起こせば昨年、市立Y小学校が留学生を迎え入れるため校区内の家庭を対象に受け入れ先を募集したところ
数件の申し出から選ばれて彼女のホームステイ先に決定したのが、安彦の家だった。
安彦の両親はそろって、世話好きな性格なのである。
そして安彦自身も、内心すごく楽しみにしていた。その留学生が、女の子と聞いていたから。

 …後日、実際にやってきた留学生の少女の姿に、この家族はそろって仰天することとなる。
紹介されてやってきた当時、11歳で181cm。この町内では大人でもこれほどの大きさの人間はいなかった。
(こっ、この娘が…小学生!?)
 特に安彦は、そんなジェニーを前にして落雷のようなショックを受けていた。
その当時高校に進んだばかりの自分が、小学生のはずの女の子にこれほどまでの落差で見下ろされているという衝撃。
確かに自分は見知らぬ人にはまず高校生と見てもらえないほどの小さな体格ではあると言っても…
そして彼女の着ていた、その体型に対しても余裕を持って作られているはずの大きな春用のセーターの上からでも
その存在をはっきり知らしめるかのようにドーンと真正面に突き出されていたバスト。
日本人では大人の女性でもそうお目にかかれない迫力の巨乳。まだ子供のはずなのに、この娘は一体…
安彦も、父も母も脅威を隠しきれなかった。

 その日から安彦の、あらゆる意味での大型少女・ジェニーに圧倒されまくり生活が始まったのだ。
部屋を行き来する際、やや頭を下げなければ通れない小学5年生。
その時点で早くも180cmオーバーだった彼女にとって、平均的な日本人向けに作られた住宅は少々小さいのだ。
そのような巨女が突然、妹のような存在として住人に加わったのだから安彦はたまったものではなかった。
4歳年上の兄となる自分が、11歳の少女に30cm近い落差で見下ろされる。
屈辱に胸を締め付けられるような思いを抱く安彦とは対照的に、ジェニーは安彦を蔑むような様子も全く見せず
仲の良い兄妹としての接し方でニコニコと見つめてくるのだった。

 そして安彦が悩まされてきたのは劣等感ばかりではない。
5年生時の身体測定で既に100cmという数値を叩き出していたジェニーの胸はただ歩いているだけでバウンドするように大きく弾み
それを目にするたび安彦はとてもまっすぐには立っていられない状態となり
不自然に前屈みとなってさらに頭が低くなった安彦をジェニーはそのたびに不思議そうな顔をして見下ろす。
「…?ヤスヒコ?」
 その原因が自分にあるとは思いもしない、そのボディの発育に釣り合わず精神はまだ本当に小学生のままで
男の生理現象、欲情など知りもしないジェニーは何やら悶絶する安彦を不思議に思い、さらに近寄る。
それによりますます目の前近くに迫るヘビー級のフルーツ。
性の最も盛んな、性欲の塊と言うに相応しい年頃の男にとって、これは責め苦と呼んでもいい状況だった。
さらに、その体を持ちながらジェニーはあまりに無防備だ。
思春期真っ只中の高校生と一つの屋根を共にすることも全く気にする様子もなく、
彼女は丈の短いタンクトップやショートパンツ程度の服装で平然と普段の生活を送る。
内部から押し広げられ窮屈そうに2つの柔らかな球体を包んでゆさゆさと躍動するタンクトップに
パチパチに張り詰めてヒップの下端をはみ出させながら腰周りに密着しているショートパンツ。
普通に歩くとき、物を拾おうとしゃがむとき、外で走るとき、日頃の何気ない動作一つ一つのたびに
いつも目にする青少年向け雑誌のグラビアも問題にならないほどの迫力で安彦の視界に襲い来るジェニーの肢体。
もちろん彼女には別に性経験などない内気な安彦をからかって弄ぶ意図などは全然ないのだが、
そのあまりの体つきのため、何気ない仕草でも勝手に安彦のほうが狂わされてしまうのだった。
ジェニーが近くにいるとき、安彦は家の中いるにも関わらずポケットティッシュが手放せない。
自分の視界の一角にでもジェニーの規格外のバスト、ヒップ、太腿の躍動をとらえると
安彦はしょっちゅう鼻血を流してしまう。ほぼ毎日、確実に必要になる。

 加えて安彦が完敗したのが、彼女の巨体からあふれ出す爆発的なパワーだった。
クラスで今流行っているからと、ある日安彦はジェニーに手押し相撲を一緒にやろうと持ちかけられた。
向かい合った両者とも足は全く動かさず、互いの両手を合わせる感じで押し合って倒したほうが勝ちというゲーム。
…その差はやはり歴然だった。
軽く様子を見るように手を前に出したジェニーの前に、安彦は紙のごとく数メートル吹き飛んで部屋の柱に激突、失神した。
またある日腕相撲を挑まれれば、コンマ単位の秒殺。
その際はあまりの勢いでテーブルに手の甲を叩きつけられたため、小さなひびが入り通院にまで追い込まれた。
さすがにそのときだけは、ジェニーは安彦の母親に叱られた。
「体つきも力も、ジェニーちゃんと安彦じゃ違いすぎるんだから手加減してあげなきゃかわいそうじゃないの!」
 母が言ったその言葉が、最もこたえたのは被害者である安彦のほうだった…
それから、家族全員で市内の大型商業施設にショッピングに出かけたときのこと。
帰り際に、ゲームコーナーにおいてあった腕相撲マシンにとても興味を示したジェニー。
その機械が実に前時代的な、相撲取りの形をしたタイプのものだったのが彼女の好奇心を刺激したのだった。
安彦や同級生の男の子たちが相手にならないのでこれ幸いとジェニーはその機械に挑んだ。
いきなり難易度を『横綱』に設定して。
「ジェ、ジェニー、いくらなんでもいきなりそのレベルでやったら…」
 横綱の意味もわからず適当に選択したジェニーに、安彦が心配する言葉をかけ終わる前に、
「ふんっ…んんんんんっっ!!」
 メキ、バキッ…!
「!!」
 機械の内部から、とてもいやな音がした。
最高のレベルに設定したためやはり多少は苦戦したジェニーだったが、
二の腕を盛り上げて持てる力をマキシマムに発揮したその瞬間のことだった。
異変に気が付き、手を離すジェニー。力士の腕が、戻ろうとしない。腕の中のほうから、モーターの異音が聞こえ続ける。
心なしか筐体に飾りとして設置してある力士の上半身全体も、やや傾いているように見えた。
「…」
「……」
「や、やばい!帰るぞ!!」
 周りの人の目がないうちに、破壊された横綱をそのままに一家はこっそりとその場を後にしたのだった。


 そして現在、そこからさらに成長を遂げたジェニーは185cm。
もはや背の伸びが止まってしまった安彦との差はますます拡大した。
さらに去年入団した少年野球チームの、ハードで中身の濃い練習メニューをこなし続けていることで
そのボディの迫力はますます高まっている。
元々十分な説得力を持っていた肩幅の広さ、腕や脚の逞しさもさらにもう一段階の向上が見える。
去年の時点で、安彦がもし数人いて一斉に飛びかかっても1人残らず足腰立たなくされてしまいそうなほど
両者の体格には比較にすらならない差がついていたというのに…
もし今このジェニーと腕相撲の勝負を余儀なくされたとしたら…間違いなく安彦のか細い腕はへし折られてしまうだろう。
いや、そればかりか握力で手の骨をバラバラに砕かれて鉛筆の1本すら持てない体にされてしまうかもしれない。
そして、もしジェニーを怒らせて喧嘩にでもなろうものなら…それを頭に描くだけで安彦は震えが止まらなくなる。


 午後。
土曜日の、平日の半分である授業を終えた安彦が帰宅してきた。
今日の朝は結局遅刻し、補習中の教室に途中から入って陰険な担任にネチネチ小言で責められた。
なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか…寝坊したわけでもないのに。
全ては、サドルの高さを元に戻し忘れたジェニーに責任がある。
本当の持ち主が緩めることのできない怪力で固定してしまうのがおかしいんだ…安彦は思った。
今日こそは厳しく言わなければならない、そう決心して家のドアを開けた安彦だったが…

「お帰り、ヤスヒコ!」
 脇の下に滑り込んだ大きな手にリフトアップされ、小さな安彦の体は急上昇する。
安彦の足は床から1m弱も離陸、廊下の天井に頭をぶつけそうになるほどの高い高いで迎えられてしまう。
下からは大好きなペットとでもじゃれ合うかのような瞳でジェニーが見上げてくる。
そして安彦を両手で持ったまま同じ目線の高さにまでゆっくりと降下させる。それでも安彦は30cm以上浮遊したままだ。
「朝は会えなかったもんね…ちょっと遅いけど、挨拶よ」
 ちゅうっ、ちゅう! ぶちゅうううぅ!!
「あぁっ、ぁひっ…ぁぁぁぁぁ」

 …これが、去年から欠かさず行われているジェニー流の、挨拶である。
まだジェニーにとって言語の壁が高かった頃に、これを始めた。言葉のいらない、簡単な挨拶になると。
母国ではこの国よりも、頬へのキスは気軽に行われている。ジェニーにとっては、ほんのスキンシップのつもりなのだ。
それに安彦はジェニーのお気に入りの男の子。かわいいから、つい力が入ってしまう。

 おはようのキス、行ってきます/行ってらっしゃいのキス、ただいま/おかえりのキス、おやすみのキス。
一日数回、安彦は軽々と宙に舞い上げられて子猫のように愛玩された後、背骨が逆方向に大きくしなるほど抱きしめられながら
両の頬、額に猛烈な吸引を伴ったキスの雨を投下される。
電気掃除機のようなバキュームと、機関銃のような乱打で次から次へと襲い掛かってくるジェニーの唇。
安彦ではそれを振りほどくことは、不可能。力が、違いすぎる。
これまでは家の中だけで済まされているが、もしこれ以上エスカレートして外出先でもこんなことをやられようものなら…
大きいとはいえ女子小学生に持ち上げられ思うままに愛玩される男子高校生の姿を
衆人環視の元に晒すことなんてとんでもなく恥ずかしいことだ。
しかし安彦の口からジェニーにこれをやめてくれと申し出たことはまだ一度もない。
その強烈なスキンシップを受けている間、彼女の体や髪から漂う甘い香りと強引ながらも柔らかく甘美なキスの感触、
そして自分の胸板に強く押し当てられる超巨弾バストの密着に安彦はだらしなく酔い痴れてしまい
身動きどころか何も口にすることのできない軟体動物に堕ちてしまうから。
その直後、いつもジェニーの唇の痕跡まみれとなった顔をデレデレに弛緩させたまま放心状態でへたり込んでしまう安彦を見て
ジェニーは安彦がそれを喜んでくれているんだと解釈するので、この日課はまずやめられることはないだろう。

 そして今もこうして、挨拶が終わって床に下ろされた安彦はフニャフニャに蕩けた表情で幼児のように座り込んでしまう。
彼のいつも見せるそんな様子を、ジェニーはますます可愛いと思うのだった。
同級生の小さな男子たちももちろん彼女には愛らしく、抱き上げて飼い猫のようにかわいがってあげることもよくあるが
やはり一番気に入っているのは安彦のようだ。

 夜。安彦はぼんやりとしながら風呂から上がり、体を拭いている。
(…確かにいつも、ジェニーにキスされるたびにぼんやりして何も言えなくなる自分は情けないけど…
いつまでもこんなことをされてちゃ絶対ダメだ。4歳も上なのに、これじゃ僕のほうが小さな弟じゃないか!
それにもし外であんなことされたら…恥ずかしすぎる!
今度こそはしっかり言わなくちゃいけない!僕のほうが兄なんだから子供みたいに扱うのはやめてくれって…)
 タオルで体の水滴を拭いながら、安彦は今まで何度も心に言い聞かせた決意を新たにした。
しかし実際、あのジェニーに面と向かってこの僕が強く言い聞かせることなどできるのだろうか、また不安になってしまう。
また抱きかかえられてあの爆裂ボディでのハグを受けたら、またいつものように自失してしまうのではないか…
そんなことを考えていたら、よせばいいのにまたジェニーの凄まじいスタイルをもわもわと頭に浮かべてしまい
バスタオルを弾き飛ばしてしまわんばかりの急激な異変を下半身にもたらしてしまっていた。
(あぁっ、だ、ダメだ、余計なことを考えるんじゃない!!)
 ガラッ。
「!!」

 安彦が自らの雑念に悩まされていた、そのときだった。
突然脱衣所の戸が開き、その雑念の元凶、ジェニーが姿を現したのだ。
「ゎっ、わっ…ジェ、ジェニー!まだ入ってるから…!」
 予想もしなかった非常事態に安彦自身驚くような勢いで素早くバスタオルを腰に巻きつけ、しゃがみ込んだ。
そして改めて目の前のジェニーを見上げて、安彦は思わず息を飲んだ。
ジェニーは、水着を着用していたからだ。星条旗模様の、刺激的なビキニ水着だった。
普段から薄着で過ごすジェニーの体にも興奮させられ通しだが、こうして初めて水着姿を披露されて
ますますその四肢の長さと逞しさ、谷間もあらわに高くそびえる106cmのダイナマイトバストを目の当たりにすることで
安彦は血液の暴走をもうどうすることもできない状態だった。
まさかジェニーが入ってくることとは思っていなかったので、ティッシュなど当然持ってきていない。

「な、何か用?とりあえず僕が着替え終わるまで、待ってくれない…」
 必死に平静を装いながら安彦は問いかける。しゃがんだ姿勢を崩さず、バスタオルの下の金棒をごまかしながら。
「ヤスヒコ、もう上がっちゃったの?お風呂」
「う、うん…」
「残念だわ、もう少し早く来ればよかった。せっかくジェニー、ヤスヒコの背中、流してあげようと思ったのに」
「……!!」
 なんと恐ろしいことを考えていたのだろうと安彦は言葉を失った。
この超悩殺アメリカン少女・ジェニーと一緒に風呂に…
風呂場を鼻血で真っ赤に染め上げて気絶、同時に下腹部を殴るようにそそり立った一物を彼女に晒しながら
みっともなくひっくり返っている自分の姿が容易に想像できてしまう。そんなことができるはずがない。
「こんなに仲良くしてるのに、ジェニー、ヤスヒコと一緒に、お風呂に入ったこと、一度もなかったから」
「そ、それは…僕たち、男と女だし…こういうことって、いけないことじゃ…」
 たどたどしい言葉で目を泳がせながら、安彦はただ困惑し続ける。
しゃがんだ体勢から見上げるジェニーの水着姿はより扇情的で、よりさらけ出された白い肌にこれ以上目を奪われ続ければ
自爆は時間の問題と言っても良かった。
「と、とにかく、一旦閉めてよ。着替えなきゃ…」
「別に、恥ずかしがることなんてないわ、ヤスヒコ。今からでも、一緒に、入れるでしょ。
さぁ、そのまま、入ろう。ヤスヒコ。ジェニーと、洗いっこしようよ」
 安彦の言葉を聞いていたのかいないのか、ジェニーはさらに歩を進めて脱衣所に進入、後ろ手で戸を閉めてしまった。
「ぁ、ぁ、そんな…」
 ますます顔を赤らめてうろたえる安彦とは対照的に、下半身は実に正直に高度を増してバスタオルを持ち上げていく。

「ウフフ、これも、スキンシップよ。ヤスヒコ」
 ジェニーは一度腰を落とし、赤ん坊でも扱うように軽々と安彦を抱き上げる。
勃起を気にしながらの安彦の抵抗は、ジェニーには気付かれもされなかった。
 ぷにゅっ。
 安彦の裸の脇腹に、わずかビキニ一枚しか介さないジェニーの巨大な果実2つがくっついて、軽くこすれる。
その柔軟な感触とともに、薄い布地越しのコリッとした2つの突起を味わった瞬間…
限界が訪れた。

 プチン。
 ブバ―――――――――――――ッッ!!
「キャッ!!」
 脱衣所から風呂へのガラス扉が、勢い良く噴出した安彦の鼻血にスプレーされて赤く変色していく。
「あぁぁぁ…ぁぁ〜〜」
 力のない声を残しながら、かろうじて下腹部にバスタオルを引っ掛けたままの安彦が気を失ってダランと両手両足を垂れ下げた。
「ヤ、ヤスヒコ、大丈夫!?しっかりして!ママー、ヤスヒコが〜〜!!」
 その原因が自らのボディにあることも知らず、完全失神KOされた安彦を慌てて介抱するジェニー。
さてこの先、安彦が兄としてジェニーの子供扱い、ペット扱いを改めさせることができる日は、果たして来るだろうか……?


つづく





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