6年3組物語 第6話

悪魔の呪縛

 この日の夜、沼田は帰宅してからもクラスの用事が残っていた。
担当している6年3組の全児童に、明日のことについて電話で連絡をしなければならないのだった。
今日の午後から降り始めた雨が明日の午前中いっぱいまで残るとの予報が出ているため、
明日に予定されていた新入生歓迎遠足が来週に順延されるとの連絡を。
去年までならば男子・女子の出席番号1番の児童だけに連絡し、後は各クラスで作成された緊急連絡網によって
児童を通じて連絡を行き渡らせるやり方でよかったのだが、今年からはそうもいかなくなってしまった。
このY小学校においても、電話番号など連絡先の一覧を作成することは個人情報の保護を名目に禁止となったからだ。
過剰反応とも言える状態だが、安全を守る面でそれを推進する声の多さに、そうなったのだった。
5年生から6年生への進級の際に学級編成も行われたため、互いの電話番号を知らない児童が多く
連絡を確実に行き渡らせるためにはやはり担任が全ての児童の世帯に直接教えるしかない。
40近い件数を、手間と感じながらも沼田はほぼ順番どおりに電話をかけ、
電話に出た教え子本人または保護者に、明日は普通授業である旨を伝えていった。

 そして、残るは1件だけ。
…いや、あえて意図的に残しておいた最後の1件へと、沼田は番号をプッシュしていく。
1つ1つ番号を押し進めていくたびに、受話器を握る手は汗ばみ、胸の高鳴りに呼吸が乱れてくる。
 プルルルル……プルルルル……
(つ、つながった!)
 ここで沼田の脈拍と息遣いがますます荒くなり、およそ小学生の教え子に電話をかける態度とは思えない状態へと変わっていく。
それだけ沼田はこの1件をお楽しみにしていたのだ。
こんなに狂おしいほどに自分の心を奪った少女、藤原舞への電話を…

「はい、藤原です」
 澄んだ声が受話器越しに耳に入った瞬間、沼田は心臓が飛び出しそうな鼓動に呻いた。
電話に出たのは舞本人だった。
「も、も、もしもし、あ、あの、あの…」
「ふふ…その声は沼田君ね。今日はどうしたの?」
「あ、あの、じ、実は、その…」
「くすくす、落ち着いてお話していいのよ。なぁに?沼田君」
 緊張、不安、ときめき、様々な感情が入り乱れ、沼田は教師らしくもなく声をうわずらせ、舌も回らずどもり続けた。
その間にも沼田は、受話器から聞こえてくる舞の声から、彼女の美しい姿を脳裏に描き出していた。


 今日も舞は、一度捕らえた男たちの視線を逃がすことの許さない服装で登校して来た。
眩い純白の、ボディコンシャスなワンピース。
無駄のないスリムな体格に豊かなバストとヒップを兼ね備えた、芸術品とも呼べるくびれを作った見事なボディラインを
ストレッチ素材のミニスカワンピースがタイトに密着し、その悩殺的な曲線を浮き彫りにしている。
股下わずか数cmの裾からは持て余しそうなほどに長くしなやかな美脚が、アーモンド色のパンティストッキングに包まれて
つややかな輝きを見せ、長いコンパスがもたらす広い歩幅で悠々と校門を通過し、歩いてきた。
凹凸のくっきりとした舞の官能的なボディは、水着のようにピチリと吸い付いたワンピースが横じわを刻みながら
彼女が一つ歩を進めるたびに艶めかしくくねって、その素材が織り成す光沢もあいまって
追い抜き、またはすれ違う男たちほとんど全ての視線、心を奪い去る。
表面に企業のロゴでも入っていればレースクイーン、キャンペーンガールと見まがうほどの、
いやそれらさえも凌ぐ美しく、男心を揺さぶる姿で…いつものように学校に顔を出した小学6年生。
沼田は職員室から遠目で眺めているだけで危うく果てそうになってしまったほどだ。

 そして教室内で、さらに沼田は胸と股間を熱くさせられる。
184cmに達した長身と類まれなるナイスバディ、そしてそれを包んでさらなる媚態へと昇華させるコスチューム。
授業中、沼田は目に毒だから見まい見まいと心に言い聞かせながらも、教科書から児童のほうに目を移すたびに
本能的に舞の席へと目が吸い寄せられてしまう。
机の下からは、こんな狭い空間では収めきれないとばかりに舞の長い美脚がそろえて前に突き出されている。
薄い第二の皮膚と化してピタリと密着した褐色のパンストが、教室の蛍光灯に照らされ悩ましい輝きを放つ。
1分間に何度、生唾を飲み込まなければならなかったかわからない。
そして何度、舞のあの美脚に長時間フィットしていられるストッキングに成り代わりたいと思ったか。
…沼田は今日も授業中は一瞬たりとも教卓から下半身を遠ざけるわけにはいかなかった。
同じく、舞の近くの席の男子児童たちも机を持ち上げてしまいそうに興奮を催しているのがわかった。


 去年から沼田は教え子である舞に対し、ほとんど女神を見るような崇拝の念を抱いていた。
思い起こせば去年の今頃より少し前、沼田が5年3組のクラス担任になったばかりの頃。
それまでに相手をしてきた児童たちとは比べ物にならない、小学生の枠を超えた大きく逞しい女子たちに圧倒されながら
その中でもひときわ沼田の目も心も奪った、長身美女小学生。
それが、この藤原舞だった。
このクラスを受け持つことになり、初めてこの教室の教壇に立った瞬間から、
沼田の目は一番後ろの席に座っていた舞の美しい姿にほとんど釘付けとなった。
机の脚の間から突き出る、白く輝く長い長い脚。
キューティクルの光る美しい長髪と、まっすぐに自分を見据えてくる視線。
そんな彼女を意識してしどろもどろになった沼田は、クラスのみんなの前でどんな挨拶をしたのか自分でも覚えていない。

 そして舞は、沼田のそんな心を見透かしていたかのように近付いてきたのだ。
5年生・1学期の始業2日目、全ての児童が下校したと思われた放課後。
舞は突然教室へと再び足を踏み入れ、片付けを行っていた沼田の前に立って悠然と見下ろしてきた。
わずか156cmの沼田からは、当時既に180cmあった舞はまるで子供の視点から見上げる大人だった。
そして、彼女からの扱いも…
「ふふっ。沼田君、だったわよね。可愛いわ」
「き、君は…ちょっ…!」
 2人きりとなった夕暮れ前の教室で、小さな沼田は舞の長身とそこから伸びる長い手足に包囲されて
黒板を背にして追い詰められ、至近距離で舞のほぼ真上からの視線が注いできた。
きっとファッションモデルでさえも羨むであろう魅惑のカーブを描く絶品のスタイル、
沼田自身を基準にして考えるととても信じられない高さに位置する股下。
90cm台半ばから後半に位置すると思われる豊かなバストが、沼田の顔へと密着寸前に迫る。
さらにその日彼女が身に付けていた服装、服と呼ぶよりはブラジャーの延長線上にあるものと言えそうなミニタンクトップ、
形のいいヒップをピチッとラッピングし、眩い脚を付け根数cmのところから惜しげもなく披露するレザーショートパンツが
彼女のボディの迫力をますます強調して沼田のハートを串刺しにしていく。
「ねぇ、沼田君。あたしのこと、そんなに気になる?」
「…え、えっ?」
 舞は、沼田のことを初めから先生とは呼ばなかった。
その背の低さ、頼りなさで沼田は彼女に第一印象から呑んでかかられた。
「だって沼田君、昨日からずっとあたしのほうばっかり見てたでしょ。
絡みつくみたいに、粘っこい目でね。ちゃんと、わかってるんだから。
いやらしい坊やね」
 すっかり見破られていた…
思春期の少年を大人の女性が弄ぶかのような口調で、舞は沼田をソフトに追求してみせる。
「そ、それは…」
「ウフフ、別にダメなんて言ってるわけじゃないわ。欲望に素直な子、嫌いじゃないわよ」
 とても女子児童から教師に向けて掛けられる台詞ではない。
この子は普通の小学生とは違う…沼田の胸の中では危険信号が鳴り響いていたが、
股間はその警戒とは裏腹に正直な反応を始めており、ズボンの持ち上がりを悟られまいと冷や汗を浮かべる沼田だった。
「や、やめなさい!」
 じっとりと汗ばみ、顔をトマトのように染めながら、沼田は教師という立場上舞の挑発を拒むようにただ目を泳がせた。
「ウソ。ちっとも嫌がってなんかないくせに」
 その沼田の抵抗が口だけのものであることを見抜いているのか、舞は沼田をまっすぐに見下ろしてくる。
「ダメよ。きちんと相手の目を見てお話しなくちゃ」
 しかし、沼田はただただ目のやり場に困るばかりだった。
目線を下げれば舞の谷間もあらわに豊かな胸元を凝視する形となるし、かといって11歳の女子小学生に惑わされて
真っ赤に染まった情けない中年男の顔で見つめ合うのも…
若い頃から女性にモテた思いをした経験がなく、こういったことに対する免疫を持ち合わせていない沼田に
この舞からの色香攻撃は苛烈すぎた。
ただ長身セクシー小学生の誘惑に翻弄され続ける沼田の顔を、舞は人差し指一本で下顎を持ち上げ強制的に視線を合わさせた。
「いいからこっち見てよ、僕…」
「ぁ、ぁ、ぁ……」
 カッカと顔面に熱を持ち、胸を喘がせる沼田を、舞は睫の長い涼しげな瞳で平然と見つめてくる。
もう見事なまでに、沼田は舞の掌中にあった。
一度吸い寄せられた視線は、もう沼田の意思では離すことができない。

「あたしが、欲しいんでしょ?」
「な、なっ…!?」
「どうなの?」
「あぁぁ…はぁはぁはぁ」
 上から舞の優しく厳しい魅惑の視線にあぶられているうちに、沼田は女子児童に向けるにはあまりに不適切な顔を、
餌を欲する犬にも似たあさましい表情をしてハァハァと呼吸を荒くしていた。
そうしなければ、心不全を起こしかねない胸の高鳴りが沼田を襲う。
ただ近くで見つめられ、話しかけられているだけでこんなになるなんて…
この娘は、この娘は一体何者なんだ…未曾有の興奮とともに、沼田は混乱をきたしていた。
ただ下半身の欲情が本能に対し忠実に上へ上へと盛り、白いブリーフをぬるぬると半透明に潤わせ続けていた。、

「これから少なくても1年間のお付き合いになるのよ。楽しみね、沼田君。
その間、お姉さんがみっちりと、仕込んで・あ・げ・る☆」
 沼田を見据えたまま、舞はその言葉とともに美しいピンクの唇をゆっくりとセクシーに尖らせ、
沼田の顔にギリギリ触れてあげない距離で、チュッと音を奏でてみせた。
「あ!!あああ!!アヒィ―――――――!!」
 その音が堰を切らせたかのように、沼田の性が決壊を迎えた。
沼田の半分裏返った情けない絶叫が教室中にとどまらずその階の長い廊下にまで駆け抜け、
ズボンの中で湿った放出音がとどまることなく聞こえてくる。
まだ消していない黒板に背中を擦りつけながら、電気椅子の刑を加えられたかのように何回ものけぞり
カチカチに突き上げていたズボンの突起から猛スピードで粘液のお漏らしが広がっていく。
次から次へと、止まらない発射。
このまま腎虚で死に至るのではないかとの恐怖に囚われるほど、快感が過ぎ去らない!
それは、目隠しをされた上足首にゴムを付けられたか確認できないまま放り出されたバンジージャンプのような
命を削られる禁断の味だった。

 ズボン一面とワイシャツの下半分に至るまでに無様な染みを広げ、ベチャッという音を立てながら膝から崩れ落ち、
アヒル座りとなる沼田。精根尽き果て、全身から力という力が抜けきった。
ズボンに滲みどころか繊維を抜けて白濁液が所々に漏れ出し、湯気とともに栗の花の匂いが立ち上る。
通常の自慰行為の何十回分とも言える夥しい量の精を一度に抜き去られた沼田は、
口の両端から垂れ流したままの唾液も自覚できないほどの腑抜けとなり、未だ完全に過ぎ去らない快楽の余波に
ピクピク痙攣しながら瞳を潤ませ陶酔し続けている。
「ふふ。かわいいリアクションしてくれるじゃない。気に入っちゃった。
じゃあね、沼田君」
 濁った輝きの目を見開いたまま、意識があるのかどうなのかわからない沼田に
舞は最後に軽くウインクを一つだけ送り、教室を出て家路についていった。

 これをきっかけに、沼田は舞の虜となった。
全く手も足も出せないまま、視線と仕草だけで果てさせられ一発のもとに空になるまで抜き取られる、
寿命を縮められるほどのオルガスムスに、麻薬的な癖を植えつけられて。
1年間を要することなく、易々と沼田は11歳の悪魔の手に落ち、仕込まれてしまったのだった。

 一方舞はその後も気の向くままに、同じ5年生や6年生の男子、そして沼田をはじめとする男性教職員たち、
近くにあるY中学校の男子生徒や近所に住む大人の男たちを
いつも読んでいる女性ファッション時などから吸収した知識などから編み出したセクシーアピールを駆使してその魔手にかけ、
じっくりと反応を楽しみ、ほんの退屈しのぎとして男どもを根こそぎ搾り抜いた精子まみれにして遊んだ。


 ところが、今年度に入ってから、舞はまだ一度も沼田を遊びのターゲットにしていない。
今も日々どこかで、校内外を問わず気分次第に目を付けた男どもを標的に据えては
手も触れず、また触れさせないまま快楽地獄に叩き込み、ザーメン漬けにして楽しんでいる舞が。
昨年度はおそらくその気まぐれの対象にして弄んだ回数が最も多かった、沼田を。
単に飽きてしまったのか、それともあえてしばらく相手にしないことで沼田の切なさ、快楽への飢えを煽り
その様子を見て楽しんでいる新たな舞なりの遊び方なのか、それは沼田にはわからなかった。
まさか自分から舞に直接確認できるわけがない。
どうして5年生の頃のように、僕をからかって遊んで、出させてくれないのなどということを
小学校の教師の口から教え子に向かって聞けるはずがない。
だから、今日はまたとないチャンスなのだ。
2人だけで、邪魔の入ることなく舞と会話ができるチャンス。
ここで彼女の気が向いてくれれば…またあの凄いテクニックでイかせてくれるかもしれない!
こんなに長い間放置されて…溜まりに溜まった欲求不満を一気に開放させてくれるかもしれない!
…担任にあるまじき黒い欲望を抱きながら、沼田は藤原家に電話をかけたのだ。
しかし、直接自分から彼女にそんな変態じみた願いを切り出せるわけもなく、
名目である用件を伝えた後にそこからどのようにして舞に構ってもらおうかと、
考えがまとまっていないうちに電話をかけ、そして意外に素早く舞が直接電話に出てしまったことで
沼田の思考回路はゴチャゴチャに絡み合ってしまい、それでこうして取り乱したまま
正しく用事を伝えることもなかなかできないほど取り乱し、間の抜けた様子を教え子に晒すことになったのだった。


「じ、じ、実は…あ、明日の遠足のことなんだけど…」
「知ってるわ。明日は中止で来週に延期、でしょ」
「ぇ…えっ?」
「今さっき、ちあきちゃんやジェニーが電話で教えてくれたわよ。沼田君が電話かけてきたって」
「…」
「変ねぇ。こういうことって、出席番号順に伝えていくんじゃないの?普通は」
「い、いやそれは…」
「別にあたしは、後回しでもいいんだぁ…」
「い、いや!決してそういうわけじゃなくて、それは…その、あの」
「じゃ、どうして?」
 舞の口調から、彼女が明らかに自分を返答に詰まらせ、困らせて遊んでいる様子が沼田にもわかった。
もう舞には、お見通しなのだ。
沼田が他の全ての児童への連絡を済ませてから、自分のところに電話をかけてきた意図が。

「そう。沼田君は、あたしに遊んでもらいたいのね」
「うっ…」
「ゆっくりと、あたしの声が聞きたかったんでしょ?」
「そ、それは…」
「そ・れ・で、他の子たちを先に済ませて、あたしを一番最後にしたのね」
 沼田が言い訳らしい言葉を何か一つでも出す前に、舞に完璧に図星を突かれた。
彼女に対して自分が上なのは年齢的なことだけで、それ以外は完全に舞のほうが何枚も上手であることを思い知らされた。
「そんなに、あたしに相手をしてほしかったの?しょうがない子…」
「あああ……はぁはぁ」
 電話口で舞からの艶っぽい言葉責めを受けている間に、沼田は次第に性感を上昇させられていた。
優しく、そしてネットリとした声を降りかけられているだけで、自分の手でしごく以上の快感が幾度も走り抜け、
知らず知らずの間に沼田は電話の向こうの女子児童にはしたない喘ぎ声を伝えてしまっていた。
部屋の中で独り、受話器を握り締めて膝で立ったまま腰をひくひくとよじらせながら。

「ンフフ、随分息が荒いわよ…我慢できないみたいね」
「はぁっはぁ…ぁ…ぅ、藤原さん…」
「藤原さん?」
「あっ、いや…ぁ、あの…ま、舞…お姉様」
「聞こえないわよ」
「ま、ま……舞お姉様ああ!!お願い…舞お姉さまっ!!」
「ふぅん…よっぽど、なのね。そんなにお姉様に、かわいがってほしいんだぁ」
「うぅっ、あぁ、ハァ、ハァ……」
「いけない、ボ・ク…」
「ぁぅっ…くぅ、アオォォ……」
 電話という離れた、互いの姿も見えない状況で、沼田は6年生の教え子になすすべなく玩弄され悶え狂わされていた。
姿が見えず、彼女の甘い囁きだけが聞こえてくるこの状態が、ますます沼田の煩悩を効果的に刺激して
ますます沼田を昂ぶらせている。
そして沼田には、絶頂への渇望からもう幻覚すら浮かび始めていた。
彼の目の前に、今日の日中網膜に焼き付けたタイトボディコンミニを纏った舞の姿が浮かぶ。
受話器からの舞の声と、妄想が実体化したような舞の、とても高い位置にある唇の扇情的な動きがシンクロする。
しかし、12歳の小学生と電話で会話をしている最中に相手の少女の言葉に興奮して息を荒げ、
その場にいるはずもないその少女の肢体を自分の目の前に浮かべ上げながら、彼女を見上げつつ
パンツどころかズボンの裏までカウパーでぬるぬるにさせて喘ぐその様は、とても教育者の姿ではない。

「お仕置きよ、沼田君…」
 受話器から届く舞の声が、さらに甘く痺れるような淫靡さを湛えたものに変わった。
沼田の心はこれから下されるであろう舞からの言葉のしごき、ボイスジョブに対する畏怖と期待に切なく疼き、
久しぶりに味わうあの、とめどなく襲う悦楽の嵐とともに精巣から一滴残らず搾り尽くされる、
発狂と隣り合わせなエクスタシーの到来の予感に沼田は体の芯からゾワゾワとした怪しい昂ぶりに震えた。
もしここで舞が、受話器の近くで唇をチュッと鳴らしてキスの音でも聞かせたり
受話器を脚に近づけて両脚を擦り合わせ、スリスリとストッキングのナイロン生地のこすれ合う甘美な音でも聞かせたなら、
それだけで電話の向こうの沼田は大爆発を起こし、音割れするぐらいのだらしない喘ぎの大絶叫を舞に聞かせながら
パンツ、ズボンの裏も表も白く熱いカルピスでズルズルに浸せたまま明日の朝まで深い眠りへと落ちるに違いなかった。
だが…

「罰として、今日はここまでよ。それじゃ、バイバイ」
 カチャ。
「えっ……ぇええっ!?」

 あと一押しで爆死の瞬間が訪れるというところまで弄び、焦らせに焦らせておいて止めを刺さずに終了。
それが舞から沼田に下した、最高に冷酷なお仕置きだった。
「そ、そんな…」
 待ち焦がれた極楽の一歩手前で予期しない生殺しの刑に処された沼田は切ない声を上げたが、もう遅い。
彼の握る汗だくの受話器からは、もうプーッ、プーッという無機質な音しか聞こえてこない。
「あ…悪魔ああああっ!!」

 12歳の悪魔・藤原舞はこの1年でさらなる進化を遂げていたのだ。
男をより一層狂わせる、『お預け』のテクニックまで身に付けて。


 つづく





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