6年3組物語 第8話

隷属願望

「畠中先生、さようなら!」
「えっ!?あっ、さ、さようなら…」
 突然背後から声をかけられて、4年1組担任・畠中伊佐夫は慌てふためきながら返事をし、その女子生徒を見送った。
普通の生徒相手なら、声をかけられた程度でここまで取り乱すことはまずない。
しかし、その声の主である彼女に対してだけは特別だった。
そして上履きから靴に履き替え、校舎を出て帰途についていくその女子生徒を畠中は延々と見送った。
その大きな姿が遠ざかって小さくなっていっても、自分までもがフラフラと校舎を出て、
彼女が校門を過ぎて見えなくなるまでボーッと畠中はその後姿を見つめ続けていた。
…もうほとんど病気といってもよかった。それほどまでに畠中はその女子児童に恋焦がれているのだ。
昨年自分が5年4組の担任だったときに受け持っていた長身美少女・篠田アリサに対して。

 その日の夕方、勤務を終えた畠中は帰りに自宅近くの本屋へと寄り道をした。
今日が畠中の心待ちにしていた、月に一度のお楽しみの日だから。
今日は、小中学生の女の子を対象にした月刊のファッション雑誌が各誌そろって発売される日なのだった。
ピチメロン、Micola、などなど少女向けファッション雑誌計4冊、そしてローティーンアイドルのグラビア誌3冊…
それらをまとめてどっさりレジへと持ってきた畠中を、店員の若い女性は一瞬怪訝な表情で見つめた。
一応お客さん相手なので平静を装ってはいたものの、1冊1冊バーコードを通す最中にも彼女は目の前の中年男を
心の中ではほとんど変質者扱いだった。
当然だろう、こんないい年をした男が女子小学生の読むようなおしゃれ雑誌を4冊もまとめ買いなどすれば。
一緒に持って来られた美少女アイドル誌だけでも十分、この男が買うのかと思うと気持ち悪いのに…
ただのロリコンよりもたちの悪い変態、そう思い女子店員は雑誌7冊を包んだ重い紙袋を持った手が
決してこの男の汚らわしい指に触れないようにと細心の注意を払いながらそっと手渡した。
もし、この男がこの区内にある市立小学校に勤める現役の教諭と知ったら…彼女はもっと軽蔑するはずだ。

 帰宅後、畠中ははやる気持ちにやや苦しさを覚えながら紙袋を開け、収穫を取り出す。
こんな雑誌ばかりをまとめ買いして店員に変な目で見られることはもう彼には慣れっこだった。
そんな恥ずかしさなど問題にならない興奮、愉悦が、毎月買い込む雑誌たちには溢れている。
これを楽しみにし始めてどれほど経っただろう、畠中の部屋の本棚には今日買ってきたような美少女満載の雑誌の
バックナンバーがひしめき、女の子向けのかわいいホワイトやピンクの背表紙がぎっしりと並んでいる。
この手の本を大人の男が買って読む、その背徳感がますます畠中の昂りを加速させるのだ。
彼にしてみれば、周りから何とも思われないような無難なオカズなどには全く興味はない。

 しかし今日だけで7冊も買い込んだ大量のネタの中で、畠中にとって本当の目標はごくわずかだった。
その1冊1冊に、数ページずつ登場する1人の少女…
「う、うわぁ、やっぱり…美しい…ハァ、ハァァ……」
 まず最初に手に取ったピチメロンの中で彼女の姿を発見すると、畠中は独り言とともにひときわ息を荒げた。
現在彼の開いているページの中でポーズを取っている背の高い少女が…篠田アリサだった。
そう、アリサは地元が生んだ現在人気急上昇中のジュニアアイドルなのだ!

 元々その世界を志望していたアリサは、一昨年にオーディションに合格して
このような少女向けファッション雑誌向けのモデルとして登場するようになった。
もちろん最初は小さく地味な扱いだったが、そのジュニアモデルとしても類まれなる美貌と長身で
メキメキと頭角を現し、昨年にはもう各少女向け雑誌で看板クラスの存在にまで登ってきていた。
小学4年生でのデビュー時、既に175cmに達していた伸びやかな肢体と全身から漂う高貴なお嬢様風オーラで
アリサは読者である少女たちの心を掴み、崇拝者を生み出していった。
そして現在では186cm!大人のファッションモデルでもそうお目にかかれない長身、スラリと伸びた脚で
どんなファッションでも美しく、そして格好良く着こなしてしまうアリサに
年下はもちろん年上の女の子からも絶大な人気を博す、異例の存在となっていった。

 しかし畠中は、大人の男がこの位の年頃の女の子に対して持つロリコン的欲望とは、また異なるものを抱いていた。
畠中がアリサの写真を眺めながら浸る妄想とは…
「うっ…あぁ…アリサ様……ど、どうか思う存分…踏み躙って、くださぃ…」
 今畠中は、流行ファッションを紹介するページの中でブーツを華麗に履きこなしているアリサを目に焼き付けながら、
そのブーツが自分の頬を真上から踏みつけ、無慈悲に踵をねじ込んでくる情景を想像して
悶々と身をよじらせているのだった。
アリサが今までにいなかったタイプのジュニアアイドルたる所以、それが今の畠中のような層を生み出したことだ。
最近、この手の雑誌の売り上げが不自然な増加傾向にあるという。少子化が進んでいるというのに。
単にファッションに興味のある女の子が増えたわけではない。本来購読者として考えられなかった層に広まったのだ。
主な対象である女の子以上に、いい年をした男たちに対してアリサの登場は衝撃的だった。
見下ろしてくる視線に、可憐なお姫様と威圧的な女王様の同居を感じ取った男たちのマゾ心は点火され、
彼女自身の知らないところで、一部の男どもによるマニアックな人気は高まり続けている。
『跪きたい・踏まれたい・調教されたい美少女アイドル』として。

 それらファッション雑誌でアリサを一通り鑑賞した後、畠中はメインディッシュへと移行した。
今日購入した中の1冊のU-15アイドル誌。これを毎月、畠中は最も待ち焦がれているのだ。
この雑誌の他とは違う大きな特色、それは、毎月組まれるジュニアアイドルたちのコスプレ特集だった。
畠中がその雑誌を初めて購入したときに掲載されていたアリサのコスチュームは、
1980年代終盤〜90年代前半に一世を風靡した、美脚を売りにした某女性歌手を再現したものだった。
水着のようにタイトに密着するストライプのノースリーブに大きく横に広がるフレアミニスカート、
ロンググローブにハイヒールパンプス…
『フランス人形』と形容され多くの熱狂的ファンを生み出したあの歌手の、伝説とも言えるコンサート衣装。
優れたスタイルでなければ身に付けることを許されないようなその魅惑のコスチュームを、アリサは見事に着こなしていた。
オリジナルに並んだと言ってもいい、いやその長身の迫力を考慮すれば超えたと言ってもいいかもしれなかった。
それを見た畠中は部屋の中を転げ回らんばかりに狂喜、
オリジナルであるあの女性歌手が全盛期だった年代には彼女をオカズに通算何リットルもの精子をティッシュに暴発させた畠中だが
誌面のアリサを前に…当時と同等、それ以上の大放出を遂げていた。
彼女の惜しげもなく晒された長い美脚の先にあるパンプスが続けざまに自分の顔、腹、尻に叩き込まれる
蹴りの嵐で虐待されることを夢想しながら。
……目くるめく快感が過ぎ去るとともに、畠中はさすがに良心の呵責に襲われた。
教師である自分が11歳の教え子の写真を見ながら…オナニーをしてしまったのだから。
翌日はさすがに教室でもアリサをなかなか直視することができないほどだった。
それでも夜が来ると、畠中は自宅でまたあの雑誌を手に取り、右手は股間へと伸びていた。

 畠中を虜にしたその号が一般の男たちの間でも大好評を博したのだろう、
その雑誌は次の号から恒例のコスプレグラビアにアリサをレギュラーとして本格的に据え、展開していった。
畠中は、憑り付かれたように今も毎月購入し続けている。
他では真似のできない、やや暴走気味の過激な路線でのコスチュームを身にまとい、
カメラを通してこちらに微笑みかけるアリサの姿に畠中は毎晩のように熱狂、休日は昼間からでもしごきあげ、果てる。
アニメのヒロインを再現した虎縞模様のビキニとブーツを身に付け頭に角を生やしたスタイルで登場した号では
まるで誌面越しに彼女から電撃でも浴びせられたかのように何度も甘美にのけぞっては白濁液を噴き上げ、
レザーのライダースーツに身を包みその見事な長い脚で大型バイクに苦もなく跨る様子を見せた号では
自分が彼女に軽く乗りこなされ、潰れるまでワイルドに駆られることを夢想しながら大発射した。
そして途中から、畠中は気付いた。
一読者である自分だけではない、アンケートはがきで要望などを寄せる他の読者、そして雑誌作りに関わる編集の人々も…
おそらく、アリサに対して同じ思いを抱いている!
アリサに対して、被虐願望を抱いていると!
明らかに彼女のグラビアの方向性が、月を追うごとに男を威圧し責めあげることを想像させるタイプのものへと
変化を遂げていくのを、畠中は敏感に感じ取っていた。
まずカメラアングルのほぼ全てがアリサの視線より下にあり彼女に悠々と見下ろされる構図であること、
そして毎月1ページは、カメラが彼女の足元の高さにあってまるでアリサの前にひれ伏して見上げているようなアングルの写真が
必ず掲載されている。
加えて彼女に着用させるコスチュームのチョイスも、あからさまに過激さを増していっている。
大型の太い浣腸器を片手に、ベッドに片膝を乗せて迫ってくるミニスカナース服のアリサ。
ベレー帽に、タンクトップとホットパンツにアレンジされた迷彩色の戦闘服とアーミーブーツ姿で
小脇に抱えたライフルをこちらに向けながら視線を下ろしてくるアリサ。
まだ内面は年相応の小学生でしかなく、その衣装から男たちが抱くイメージにアリサは気付いていないのか、
グラビアの中のアリサは心底楽しそうに読者のほうに向かい微笑を送ってきている。
その写真の数々に毎月、誌面の向こうでマゾ男たちが濁った息を荒げていることも知らずに。
当然畠中も、脳内で彼女の患者や捕虜となって苛烈な治療や拷問でいたぶり抜かれることを思い描き、何度も何度も果てた。


 そして今日購入した、今月号。お目当てのページにまでたどり着いた畠中は、部屋の中で絶叫した。
グラビアの中にいたボンデージコスチューム姿のアリサが、畠中を狂わせた。
黒エナメル素材の、ハイレグ&ハイネックレオタードに肘上までのロンググローブ、オーバーニーピンヒールブーツ。
美しいくびれを見せ付けるウエストには、丸く束ねられた長い一本鞭がホルスターに収められる形で装着されている。
畠中の、いや、このシリーズに目を通す男たち全ての欲望のど真ん中を深く突き刺すようなグラビアだった。
尋常ではない息遣いの中、畠中はアリサの細く高いヒールに後頭部を押さえつけられコンクリートの床を顔全体で味わわされ、
アリサの振り下ろした鞭で背中に焼け付くような激痛を刻み込まれることを想像すると、
しごく動作などたった1往復半ほどだけで白濁の大噴出に襲われた。
「あっっ!!あああ!!アリサ様―――――!!」
 気のふれたような絶叫とともに猛烈に放出された畠中のカルピスがベタベタァッと天井を汚し、残りは彼自身の腹、太腿、
敷布団のシーツに降りかかって湯気を立てた。
少年期に自慰を覚えて以来最大級の快感に見舞われた彼はそのまま深い眠りにつき、
翌朝遅刻寸前の時間まで目覚めることはなかった。


 こんな畠中のような全国のマゾ男どもの精を雑誌のグラビアを通じて抜き取りまくっているにも関わらず、
当のアリサ本人はそんなことも知らず、他のジュニアアイドルたちと何ら変わらない活動をしているに過ぎない。
週末に上京し、撮影などの仕事を、仲間の少女たちとのおしゃべりも交えながらごく普通に、楽しくこなす。
平日はきちんと地元のY小学校で、真面目に小学生をやっている。
その類まれなるスタイルと大人びた美貌、そしてそれを生かした活動ぶりに周囲の女の子たちの憧れが集まっている以外は
何も変わることのない、普通の女子小学生。
そのギャップが、また畠中をたまらなく興奮させた。
5年生だった去年、アリサを初めてオナペットとして使用したあの日からいくつもの夜を経ていくうちに
アリサに対する畠中の葛藤は消え、クラスで彼女と接しても申し訳なく思う心が失せていった。
(君がそんなに背が高くて美しいから…君がそんなに僕のM性をくすぐるからいけないんだ!!)
 畠中は心の中で叫び、アリサに責任を転嫁するほどだった。
そればかりか学校でのアリサの姿と毎晩自分を誌面の形で調教して昇天に導く過激コスのアリサがオーバーラップして
授業中に危うくアリサ様と呼びかけそうになってしまい、1人で冷や汗をかき挙動不審になることも多かった。
そうして5年4組の日々は過ぎていき教え子たちも成長、アリサもますます美しさを増した。
5年生に続き、6年生になってもきっとアリサ様のお美しい姿を拝みながら毎日授業ができる…
このクラスの担任になれて本当に良かった…一度は天に感謝するほど舞い上がっていた畠中であったが、
予期せぬタイミングで畠中はアリサとの別れにさらされることとなった。
5年生から6年生への進級の際、それまでの4クラスから3クラスへの再編があり、
5年4組の担任だった畠中はその学年を離れ、今年度からは新たに現在の4年生のクラスを受け持つことに決定したのだ。
崇拝していた『アリサ様』から引き離されてしまったことが彼にとっては何よりも悲しかった。
それまで毎日近くでそのお姿を拝み、心の中で跪いては踏みつけられることを想像したアリサ様が…
遠い存在になっていくことを畠中は嘆き、そして彼女を新たにクラスの一員として受け入れることになった沼田に
強い嫉妬まで覚えていた。
(くそっ、どうして沼田なんかに!あいつのほうが4年生に異動になればよかったんだ!
このままではアリサ様が沼田に…そんなの嫌だ!アリサ様はこの僕の…
いや、僕こそがアリサ様のものになるに相応しいんだ!!)
 4年1組の担任になってしばらく経った今でも、沼田へのねたみとアリサへの想いは沸騰し続けている。
彼女を受け持つ担任ではなくなったことが、さらに畠中の切なさ、渇望感を煽っているとも思えた。
毎日会えなくなって、それがますます畠中のアリサに対する憧れを際限なく大きくさせているようだ。


 数日後、去年までの教え子に対する歪んだ欲望を描きながら畠中は廊下を歩いていると、
その欲望の対象、アリサがちょうど下校するところで下駄箱へと向かうところに出くわした。
咄嗟に、畠中は物陰に身を隠した。別に何もコソコソする必要などないはずだが、
ちょうど今脳裏に浮かべていた被虐妄想の途中でいきなり本人が登場したため、なぜか気まずくなり顔を合わせづらかったのだ。
畠中はロッカーの陰からチラチラと、靴を履き替えるアリサの姿を盗み見る。
一緒に帰るのであろう同級生の少女数人も畠中では及びも付かない見事な長身ではあるが、
やはり186cmの身長と美貌はアリサが突き抜けていた。もちろん、服装のセンスも。
目を血走らせながらアリサを覗き見ているうちに、畠中の心の中では次第に、楽しくおしゃべりしているアリサの姿と
夕べ何度も何度も精子を捧げたグラビアのアリサ女王様が重なり始めた。
一瞬、彼だけの視界で、下駄箱にいるアリサが昨夜のボンデージコスチュームに摩り替わった!

「あ、あっ……!!」
 ガタッ。
 無意識のうちに畠中はロッカーの陰から飛び出して、靴を履き替え終わったアリサたちのもとにフラフラと歩み寄っていた。
突然のことにびっくりした様子で、一斉に畠中のほうを振り向く彼女たち。
畠中は自分でも、何をしたくて彼女たちの前に飛び出たのかわからなかった。
だがしかし、これだけは間違いなかった。
もし今、アリサの周りに他の女子児童数名がいなければ…畠中はそのままアリサの足元にまで駆け寄って平伏し、
床に額を擦りつけながら奴隷にしてくださいと懇願していたであろうことは。
アリサが1人ではなかったことが畠中のわずかに残った理性に働きかけ、その隷属志願は未遂に終わった。

 突然目の前に現れながらピタリと動きを止め、暑くもないのに大量の汗を浮かべている畠中を
彼女たちは不思議そうな目で見つめている。…一体、何をしているのかと。
「な〜に〜、変な畠中先生。きゃはははははは」
 その場にいた女子児童全員から沸き起こった笑い声で、畠中はようやく我に返る。
自分は一体何を考えて…背筋を冷たくしながら顔だけを紅潮させ、畠中は必死に体裁を取り繕おうとした。
「い、いや…何でも、ないんだ。そ、それじゃ…さようなら」
 畠中のそんなおかしな様子を笑いながら、アリサたちは校舎を後にしていく。
畠中がまさかそんな変態的行動に出るかもしれなかったことなど気付く様子もなく。


 その日の夜も畠中は、例の雑誌の中のアリサ女王様に重罰を下されることを思い描いて絶頂を迎え、
後始末にティッシュを10枚も要する大発射に見舞われた。
しかし精根が尽き果てて強い眠気が訪れながら、畠中は昂ぶる気持ちに眠れないでいた。
彼女に対する気持ちがどんどん大きくなっていく。
もしあのとき、本当にアリサの前に土下座して飼育を直訴していたら…今頃どうなっていただろうか。
下手をすると通報されて逮捕、変態教師の烙印を押され社会からの抹殺が待っていたかもしれない。
しかし…アリサ様の奴隷に本当になれるのならそんなことは小さな問題でしかない!そんなことまで考えていた。
(今の退屈で制約ばかりの身分などどうでもいい!今年を逃すとアリサ様はこのY小学校を巣立っていってしまう!
チャンスはこの1年しかないんだ!)
 畠中の中で決意が固まりつつあった。今年度のうちに告白する…いや、できるならば明日にでも!
そして2年越しの念願、アリサ様の家畜に……
危険な夢を抱きながら、畠中は眠りに落ちていった。


 つづく





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