6年3組物語 第16話

幼馴染

 横川真奈は、もうすっかり新しい生活に馴染んできていた。
前の小学校では違和感の塊だった彼女の長身も、このクラスでは本当に問題なく溶け込んでいる。
昨年度まで、変な目で見られないようにと無意識のうちに背を低く見せようと猫背になり、
非常に姿勢の悪かった真奈だったが、短期間のうちにそれも改善された。
ここではもう、背筋を伸ばして歩いても何の問題もないのだ。

 また、多くの友達もできた。
長い間、居場所が持てず不登校の続いた真奈を、6年3組の子供たちは暖かく迎えてくれた。
中でも一番最初に仲良しになったのが、今一緒に登校している倉田良子だ。
良子は始業式の日から、初めて会ったにも関わらず親しい友達のように近づいてきた。
その人懐っこさに、緊張していた真奈の心は一気にほぐされた。
体型だけでなく精神的にも真奈がこの6年3組に溶け込むことができたのは、良子の人柄によるものが大きかったのだ。
やや天然ボケとも言える天真爛漫な良子の前では、あらゆる事態もいつしかギャグになってしまっている。
去年、5年1組の担任だった男に良子が犯されかける事件があったものの、良子本人はその最中も全くその自覚がなく
その後あの男が逮捕され学校を追われてしまったことすら未だに理解していないという話を、
その事件に出くわした谷口姉妹から真奈も聞いたことがある。

 始業式の日からいきなり、真奈は良子に帰る方向が同じだから一緒に帰ろうと持ちかけられた。
一緒に下校して、良子は真奈と同じ町内、しかも家3軒しか離れていないごく近くの住人であることもわかった。
それから真奈と良子は毎日一緒に登下校するようになった。
加えてもう1人、これまた彼女たちのすぐ近くに住んでいる同級生の男子児童も一緒に…

「さ、行こっか」
「うん…」
「…!」

 大の仲良しになったとはいえ、真奈にはまだ良子について戸惑いを覚えてしまう要素があった。
179cmの身長とはいえまだ小学生で、胸の発育はまだまだな真奈から見て、良子のバストはやはり異様に見えた。
小学生である自分の同級生、という見方を抜きにしてもだ。
大人の女性でもここまでの巨乳はこれまで目にしたことがなかった。
何cmあるの?と真奈はこれまでにも何度か尋ねようとして、喉までその言葉が出かかった。
しかし、それは今でもできない。
今まで真奈自身もこの並外れていた長身のことで驚かれたり、何cmあるのかとしつこく聞かれたりして嫌な気分になったものだ。
そんな質問をしたら、良子も傷つくかもしれない。
人の体の特徴をあれこれ言うのは悪いこと、自分がされて嫌なことはするべきじゃない…
普通の子供より余計に傷ついた経験がある真奈だけに、踏みとどまる気持ちが働いた。
でもそんな真奈の遠慮をよそに、良子はいつもあっけらかんとしたものだった。
たとえ胸の話をしても自分のこととも気付かずに終わってしまうのではないかと思えるほど、
何に対しても楽しそうに笑っている良子。
その笑顔の下では、推定サイズ150cmの肉弾2つが彼女の歩みに合わせてTシャツの中でバウンドしている。
ランドセルを背負い、胸が張られていることが、年齢とそのボディのアンバランスを強調し、
同じ方向に歩いていく他の小中学生、自転車で通りかかる高校生らを圧倒する。
気にしていないふりをしていてもやはり本心は隠しきれず、真っ赤に染まった顔でチラチラと複数回視線を向けてくる
小柄な男子中学生の集団の様子が、真奈にもわかった。

 そしてそんな良子の隣を歩いている少年、同じ6年3組の玉城圭。
彼もまた、真奈と親しくなった良子と一緒に学校へ通うようになった近所の友達だ。
初めて彼と向き合ったとき、真奈は驚いた。本当に、同じ6年生なのかと。
小さくひ弱な男子がほとんどの6年3組においても、この小ささは目立っていた。
124cm、17kg。1年生のクラスでも溶け込んでしまうほど小さく、幼い男子児童だった。

 良子と圭は家が隣同士で、本当に物心付く前からの付き合いらしい。
幼稚園の頃から、毎日一緒に手を繋いで通園していたという。
その頃までは、2人とも大体同じ大きさだったそうだが…
いつからか圭を置き去りにして良子ばかりが大きくなり、今ではこんな大人と小学校低学年の児童ほどの差になってしまったらしい。
自分だけが小さなまま同級生たちに置いていかれる様子に男としてかなり傷つき、
また同い年のはずの女の子の発育の凄まじさに毎日ドキドキさせられてきたのだろう、
真奈にもなんとなく想像できた。
彼とは逆の状況ながら、自分も前の学校で日々周りから違和感を持たれて来た経験がある。

 毎日一緒に登下校する3人の並び方は自然と、真ん中に圭を挟んで良子と真奈が横に並んで歩く形となっていた。
本能的に、守ってあげなきゃという心理が働くのだろうか。
傍目から見れば、その様子は2人のお姉さんが小さな弟を引率してあげているようにしか見えない。
でも本当は、3人とも同じ学年の同級生なのだ。
仲良くおしゃべりをしながら真奈は圭に視線を下ろすたび、何だか大変そうという気持ちを抱いてしまう。
身長124cmの圭の目線の間近で176cmの良子のバストが、たゆんたゆんと揺れているのだ。
男の子にとって女の子のおっぱいはたまらないものであること、それはもう真奈も知っている。
しかも最も効果的に目に付いてしまう高さに、それがある。
意地を張って平静を装っているのが一応わかるが、やはり隠し通すのは不可能だ。
湯気が立ってしまいそうなほど真っ赤に茹で上がった顔であちこちよそ見をしている圭。
しかしやはり、触れようとすれば届く距離で弾むヘビー級フルーツの迫力には抗いきれず、よせばいいのにまた見てしまう。
熱っぽく息を荒げておしゃべりどころではない圭と、そんな男の子特有の苦悩に全く気付かず普通に接してくる良子。
悪いと思いながらも、つい笑いがこみ上げてしまう真奈だった。
良子と圭。6年3組の男女関係、差をわかりやすく表現した風刺画のようなコンビに見えた。

 しかし真奈が思っている以上に、圭の苦しみは大きなものだった。
圭は外から見える肉体的な発育ばかりでなく、見えない部分でも他の児童に比べて遅れ気味だった。
つまり…この年頃の男に芽生えてくる生理現象が、まだなのだ。
小学6年生にして、いまだ精通を経験していない。そればかりか、勃起も未経験。
性的好奇心や、何がいやらしいことかとわかる気持ちだけは、他の男子児童同様にある。
まだ小学校高学年に至る前、本屋などで盗み見たり道端で拾ったりした大人向けの書物、
またテレビのバラエティ番組などの一幕に登場する教育上よろしくないシーン、
つい見てしまう気持ち、見てから興奮を覚えてしまうのは同学年の少年たちと変わりない。
だがそのときの胸のムズムズとした高鳴り、そこから先が圭にはまだ届かない領域なのだった。
昇り詰めはするものの捌け口が用意されていない、圭本人だけにしかわからない苦しさ。
その苦しさも、なぜなのかは圭にもわからない。性繁殖のために男にはやがて備わる機能があること自体、圭にはよくわかっていない。
性教育自体は圭も昨年度確かに受けたが、自らの経験に基づいていなかったためちんぷんかんぷんだった。
性器の図解も、自分のとは全然形が違っていて違和感しか覚えなかった。
そんな圭を毎日襲い続ける、彼の苦しみなど知る由もない良子の爆乳攻撃。

 小学校2年生の頃から目に見える形で思い知らされ始めた、2人の発育の違い。
まず身長で大きく水をあけられて幼いプライドを踏みつけられた感覚を味わった。
そして早くも3年生の3学期頃からふくらみを見せ始めた、良子の胸。
それは本当に、毎日の学校への道すがら日々成長していくのを目にしていた。
今では身長で52cmの差、バストサイズは正確な数値が不明ながら明らかに自分の身長を超えている。
もし自分自身が身長と同じ長さのメジャーに変身して良子の胸囲に巻き付いたとしても、全然届かない。
身長でこれだけの大差を付けられていることだけでも計り知れない屈辱だが、良子の胸を測った目盛りにも自分は達しない。
おっぱいに、負けているのだ。
そんなコンプレックスに打ちひしがれると同時に、毎日目の高さかそれ以上で見せ付けられる、
服の裏地を擦る音と縫い目の悲鳴を伴っての弾力豊かな大砲2門の躍動。
良子のバストと同じように、圭の胸の奥も凄まじい激震に見舞われる。
発散できずにただ蓄積されていくむず痒いときめきに圭は喘ぎながら俯くしかない…


 時間は流れて体育の時間。
季節は初夏へと移り、このY小学校も先週プール開きが行われた。どの学年も、体育は水泳となる。
察しの通り、6年3組の男子児童一同は泳ぎに集中するどころではない。
芽生えからまだ年月の経っていない青い欲望の中枢を残酷なまでに刺激してくる3組の女子たち。
舞、ちあき、アリサ、ジェニー、香澄、谷口姉妹はもちろんのこと、
智恵理や亜由美、奈央、美由紀、佳織など筋肉美を発散するスポーツ少女たちもいる。
水泳の時間中、プールのどこに目を向けても、競泳型スクール水着に包まれた彼女たちの迫力満点の肢体が飛び込んでくる。
目のやり場に困るという表現があるが、これはそのさらに上を行く、『目線を逃がす場所がない』と言えるシチュエーションだ。
健康な男子小学生にこの状況を許容、自制が可能なはずもなく、彼らは一度入ったプールから上がることができない。
水泳パンツを突き破らんばかりに、まっすぐ空を指す怒張をみんなの前に晒せるはずもなく、
少年たちは火照った顔を水で冷やすかのように不自然な前屈みでごまかしながら水中を移動しているだけだ。
(すごい…)
 同じ女子である真奈も思わず見入ってしまっていた。
本当にこれが小学校の水泳の授業風景だろうかと。
転校前の小学校で着用していた旧式スクール水着で覆った自分の体と見比べ、少し溜め息を漏らしてしまう真奈だった。

「ほらぁ、あんたたち水泳の授業を何だと思ってるの!?キビキビ泳ぎなさいよ!」
 体育委員を務める美由紀が落とした雷に、参加している男子一同が一様にビクッと縮み上がる。
「男子は今日みんなで、背泳ぎにチャレンジしてみよっか」
「もし真面目な授業中にパンツの前ピンピンにさせてたら、美由紀の踵落としでへし折ってもらうから」
 悪乗りした萌香と萌里が、たちの悪い冗談を飛ばしてさらに男たちを青ざめさせる。
谷口姉妹をはじめとする一部の女子には、もうわかっているのだった。
男の生理現象から来る、彼らの不自然で不恰好な我慢の様子が。

 そんなクラスを見届けながら、担任の沼田は男子にも女子にも注意ができずにいた。
彼も今、教え子の少年たちと全く同じ苦悶に見舞われていたのだ。
事前にビキニタイプの競泳パンツを2枚重ね穿きし、その上にサイズに余裕のあるハーフパンツという重装備で
どうにか外部から勃起を悟られずに済んでいる沼田。
小さなパンツのきつい締め付けに苦しさを感じながらも、こうでもしなければ自らの受け持つ少女たちの前で
高角度に突き上げられた欲望の証を披露する、教師失格の状態が待っているだけだ。
だから、思春期の入り口にある男子児童の気持ちは十分にわかった。
(年頃の男の子を、このクラスの女の子たちと一緒にプールに入らせること自体が危険すぎる…)
プールから無理に上がらせて、全男子児童に恥をかかせるなんてことはできない。
授業終了時には時間差で上がらせて、女子が更衣室に引き揚げてからにしてあげよう…
そんなことを考えながら、ただプールサイドの片隅で小さくなっているだけの沼田だった。

 悶絶の坩堝と化したY小学校のプールに、さらに危険な爆弾が投下されるときが来た。
時間前にトイレに行くことを忘れていて、合流の遅れていた良子が現れたのだ。
「あー、もうみんな入ってるー!良子も〜!!」
 消毒用の体洗い槽とシャワーを終えた良子がプールサイドをパタパタと駆けてくる。
歩いているときのユサユサとした動きだけでも生唾が止まらなくなってしまう男子たちにとって、
日の光の下で照り輝く濡れたスクール水着1枚の中で、彼女の走りにつられて
ドリブルされるバスケットボールの如く目まぐるしく弾む柔らかな果実は、凶器と呼べるものだった。
「う、ぅわあぁぁぁ……!」
「やべえ…!!」
柔軟に形を変えながら水着の中でもがき、上下左右に暴れまくる肉弾。
元5年1組担任・池尻の最後に残ったわずかな理性を破壊し尽くしたこの動きに、堪えきれなくなった一部の男子児童の中には
水中でこっそりと、自らの下腹部に突き刺さらんばかりのテントを張った水泳パンツの上から
股間をいじり始める物も現れた。
どうせ彼らの多くは、今日の放課後には自宅に大急ぎで直行し、今目に焼き付けているこの光景を再生して
猿のようにしごき倒すのだろうが。

「えいっ」
 ドッポーン!!
 飛び込み台に駆け上がって勢い良くジャンプ、爪先をそろえた良子の巨体が足から着水する。
水族館でイルカがジャンプしたときのような巨大な水しぶきが津波となって、近くにいた男子数名を飲み込む。
飛び込みの動作により大きくスイングされた良子の胸がハンマーのように水面を叩き、
小柄な男たちはそれだけで溺れ、流されていってしまう。

「あれ??圭ちゃんは?」
 目を点にしたまま、きょろきょろと辺りを見回す良子。
確かこのへんに圭が泳いでいて、その近くを狙って飛び込んだのだが…
そのすぐ近くにまで歩み寄ってきた真奈が、良子の胸元を少し心配そうな面持ちで見つめながら教えてあげた。
「……は、挟まってる」
「え?」
 真奈の指差した先を確認してから、良子はようやく気付いた。
水面にプカプカと浮かぶ自分の胸の谷間に、何か黒いものがはまっているのを。…圭の頭だった。
水中で圭の体は、水の流れに全く逆らわず海藻のようにゆらゆらとなびいているだけだ。意識を失っている。
「た、大変!早く水から上げて!!」
 血相を変えた美由紀の様子に驚きながら真奈は良子の深い谷間から圭を救出し、プールサイドに上げた。
「良子、人のいるところに飛び込んじゃ危ないでしょ!」
「え?えへへー…」
「えへへじゃないの!!もうっ!」
 圭が直後に息を吹き返して事なきを得ただけ良かったものの、危険な行為は慎むよう良子に注意を与えた佳織だったが
天然ボケの良子がこれを本当に肝に銘じたかどうかはわからなかった。
(ほんと、この性格にこの体…歩く凶器よね)
 叱られながら笑って頭をポリポリかいている良子を見上げながら、自分と全く違うド迫力で張り出す彼女のバストを見比べ
やっぱり佳織も溜め息をついてしまっていた。

 至近距離に飛び込んできた良子のバストの直撃を受け、失神KOの憂き目に遭った、圭。
サイズの面だけでなく、圭はまた良子のおっぱいそのものに完敗したのだった。
目を覚ました後、圭の良子を見る目は劣等感と性的興奮に加え、恐れを伴ったさらに複雑なものになってしまったのは
言うまでもない。
一方、良子から圭への接し方はその後も何ら変わることはなかった…


つづく





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