inserted by FC2 system Battle_10 覇王の証明


とあるプロレス団体の事務所に、男の罵声が響き渡る。
「このままじゃ俺たちはやっていけねぇんだよ。」
事務所に集まった15名のプロレスラーが声を張り上げる。
事務所の奥のソファーには、ベージュのスーツを着たひとりの長身女性が腰を下ろしている。
綾からその座を受け継いだ2代目覇王の恵であった。
その傍らには、恵の側近で彼女の仕事をお世話するアビディが立っている。

「俺たちは覇王会での仕事に誇りを持ってる。綾さんが会を立ち上げて以来、
俺たちは必死になって世界平和に貢献してきたつもりだ。」
リーダー格の中西という男がゆっくりと話し出す。
「だけど覇王会は金をくれる訳じゃねえ。俺たち構成員は、生きてくために仕事をやっていかなきゃいけねえんだ。」
拳を握り、奥歯を噛みしめながら話す中西。
「金持ちを脅して・・。金持ちを脅して、少しばかりの生活費を巻き上げるくらい・・。許してもらってもいいだろう!」
声を荒げて訴える。

彼らの訴えを冷静に聞きながら、毅然とした態度で話し出す恵。
「何度言ったら分かるの?覇王会では一般の人達に暴力を振るうことは一切許されない。それが掟でしょう。」
しばらく沈黙が流れる。
「プロレス人気が低下して、生活が苦しいのは分かるわ。だけどそれは、世間一般の人達でも同じなの。苦しさに耐えて、
新しい道を模索していかなきゃダメでしょう。それを理由に掟を破り、法律を犯すことは決して許されることではないの。」
語調を強める恵。
「これまでのことは水に流すわ。反省して、もう二度とバカな真似はやめなさい。いい?分かったわね。これは覇王としての命令よ!!」
中西をじっと見つめて説得を図る恵。
それを取り囲む15人のプロレスラーたちは、一様に下を向いて無口のままである。

やがてサブリーダー格の永田という男が低い声でつぶやく。
「もし、この命令に従わないとしたら・・・。」
会議室内に一瞬の緊張が走る。
15人のレスラーの視線が恵に集まる。
「その時は・・・。」
少し間を置く恵。
しかし堂々とした口調でハッキリとこう言い放った。
「その時は、覇王の名において、あなた達を粛清します。」
「なにっ!」
若手の実力派中邑が牙をむく。
「中西さん・・。俺たちはもう昔のような貧乏な生活には戻りたくねえ。どうしも許されねぇんなら、
覇王会らしく力で勝負して決めようじゃねえか。」
息巻く中邑。
その発言に同じく若手の棚橋が続く。
「中邑の言う通りだ。俺たちは俺たちなりに考え抜いて始めた仕事。いまさら辞める訳にはいかねえ。
この生意気な女をぶっつぶして、俺たち流の新しい覇王会を作っていこうぜ!」
「そうだ!そうだ!」
プロレスラーたちが一様に呼応する。
ベテランの天山が口調を荒げて話し出す。
「てめえなんて、綾さんの影に隠れてぬくぬくと育ってきただけじゃねえか。
覇王なんてほざいて偉ぶってやがるが、誰もてめぇのことを認めてねえのさ!」
拳を握って声を荒げるレスラーたち。
恵は大きく深いため息を吐くと、深く腰掛けたソファーからすくっと立ち上がって中西に言った。
「仕方ないわね。今すぐ始めましょう。」
長身から中西を見下ろす恵。
「仕方ねぇか・・・。」
軽く笑みを浮かべてつぶやく中西。
「テメエら用意しろ。
奥のリングでこの女を始末しろ!」
「おう!」

こうして少し広めの練習用リングに集う15名のプロレスラー達。
皆がこの団体の象徴的コスチュームでもある黒いパンツを身に着けている。
いずれのレスラーも鍛え上げられた肉体を誇っている。
リングサイドに立つ恵はスーツ姿のまま、側近のアビディに命令する。
「入り口の扉に鍵をかけて外からは見えないようにしなさい。決着がつくまで誰もこの部屋に入れてはダメよ。
これは私の仕事だから、手出ししないで頂戴。」
「分かりました。」
命令どおり入り口の扉に鍵をかけ、カーテンを閉めるアビディ。
それを確認すると、恵はゆっくりとスーツを脱ぎ始めた。
リング下で靴を脱ぎ下着姿になる恵。
説得するつもりで来た彼女は、戦うための衣装を準備してきていない。
白いレースのブラジャーに白いフリルのついたパンツ。
黒いセクシーなガーターベルトでストッキングを吊っている。
長身だからこそ線の細さを感じさせるが、バレーボール選手時代より一段と逞しさの増した肩幅は綾にも負けない迫力がある。
ガーターベルトがセクシーな太股は、普通の男性のウエスト並みの太さがある。
軽く指の骨を鳴らし、首を回してリングインする恵。
その美しくも迫力のある姿に、15人のレスラー達は一瞬だけ心を奪われた。

練習用の少し広めのリング上に上がった16人。
一番背の高い恵は、15人の男達を見下して、堂々と胸を張る。
「死にたい人から掛かってきなさい。」
冷徹に言い放つ恵。
しばらくの沈黙を、血気盛んな井上が打ち破る。
「こいつっ。」
頭に血が上り単純に殴りかかるだけの井上。
彼が恵に近づいた瞬間すさまじい音がする。
「ボッコッ。」
長身の恵が放った膝蹴りは、井上の顎を完璧に捕らえた。
あまりの衝撃に膝から崩れ落ちる失神状態の井上。
その彼の頭を大きな手のひらで鷲づかみにすると、恵は一気に捻り上げた。
「ゴキゴキッ。」
日頃から鍛錬を積み重ねたプロレスラーが、下着姿の恵の手によってあまりにも簡単に始末されてしまう。
「次は誰かしら。」
日頃の心優しい姿からは想像もつかないほどに、冷徹に言い放つ恵。

無残な井上の姿を目の当たりにして、さすがのレスラーたちも少し萎縮した。
首を捻られて絶命した井上は、未だにリング状で痙攣している。
「うぉーっ。」
恐怖に耐え切れなくなった後藤と矢野の2人が、左右から同時に襲い掛かる。
恵は長い右手で後藤の顔面を平手打ちすると、一方の矢野には強烈なローキックを放つ。
膝横に強烈なローキックを食らった矢野は、足を払われてリングに倒れる。
次の瞬間、横たわる矢野の腹部に、体重を掛けた恵の右膝がめり込む。
あまりの衝撃に血を吐いてのたうち回る矢野。
内臓は破壊され、彼は数秒後苦痛のうちにその生涯を終えることになる。
一方大きな手のひらのビンタで突撃をとめられた後藤は、ひどい目眩で前後左右すらままならない状態で彷徨っていた。
矢野を片付けたあと、ゆっくりと後藤に近づく恵。
その恐ろしくも長く鍛えられた美脚で強烈なハイキックを繰り出す。
「ボコッ。」
凄まじい勢いの蹴りをコメカミに食らった後藤の脊髄は、首の辺りでもろくも折れ曲がった。
戦いが始まってまだ30秒足らずのうちに、3人のレスラーを始末した恵。
可愛らしい顔にセクシーな下着姿で残りの男達を見下す。
恐るべき恵の強さに残り12名のレスラー達からは冷や汗が滲み出る。

「てめえら。この女を囲んで袋叩きにするんだ。」
リーダー中西からの指示が飛ぶ。
垣原、金本、飯塚、山本、真壁、吉江、西村の7人が恵を取り囲む。
さすがに緊張感を高める恵。
「やっちまえ!」
迫力ある中西の号令と共に、7人のレスラー達が一斉に襲い掛かる。
そしてこの瞬間、恵の超人的テクニックが炸裂する。

リーチの長い恵はまず右に動いて、右手で飯塚、左手で吉江の腕をつかむと、彼らの太い腕を瞬時に両脇に挟みこみ一気に捻り上げる。
関節をとられて折り重なるように倒れこむ2人。
恵は、次いで襲ってくる山本の足を払うと、バランスを崩した彼を力任せに押し倒して吉江と飯塚の上に重ねていく。
直後に勢い良く蹴りを放ちながら襲ってきた西村と金本の2人。
西村は蹴り足をキャッチされたまま振り回され、折り重なって横たわる3人の上に重ねられる。
金本の蹴りは軽く躱され彼はバランスを崩す。
その隙に恵は背後に回りこみ、彼の後ろ手を捻り上げる。
少し遅れて襲い掛かってきた垣原のパンチは、後ろ手を捻り上げられている金本が盾になり防がれる。
そのまま長い両手で2人を捕まえると、恵は金本、垣原の両腕を複雑に絡ませたあと、彼らの足を払い折り重なるように倒れさせる。
最後に突っ込んできた真壁の突進を、信じられないほど高い跳躍によって美しく躱す恵。
そのまま空中から降りてくると、彼女は真壁の背後に着地する。
彼をつかんで背負い投げを放つ恵。
投げ飛ばされた彼の体は、きちんと計算されたかのように、先に横たわる6人の上に重ねられた。
こうして一瞬のうちに完成された7人のレスラーによる人間ピラミッド。
さらにこのピラミッドの中では、7人のレスラーそれぞれの様々な関節が、お互いの体によって複雑に固定され、完全に極められている。
関節技を得意とする恵にしかできない、究極のテクニックである。
関節を極められたまま横たわる7人の上に、悠然として座り込む下着姿の恵。
腕を組み、その長い脚を組んだまま、残る5人のレスラー達を見つめる。
その下では、折り重なるようにして倒れ込む7人のうめき声が聞こえる。
これだけの格闘をしておきながら、まだ呼吸さえ乱れていない恵。
「あなたたちが幾ら束になって戦っても、私には通用しない。良く分かったでしょ。」
肩まで伸びた髪を掻き揚げながらそう話す恵。
目の前で繰り広げられた美しくも恐ろしいまでの関節技ショーを見せつけられた天山と棚橋の2人は、
あまりの恐怖に脚が震えて止まらない。
残る中邑と永田の額にも、大粒の冷や汗が流れ落ちる。

「さっ、さすがは綾さんが後継者として認めただけのことはあるな。」
恐怖を押し殺して、リーダーらしく悠然と話しだす中西。
「いっ、今更かも知れねえが、俺達を許してくれねえか・・。あんたの言う通り、掟には従っていくから・・。」
言葉の端々から恵に対する恐怖が滲み出ている。
「既に亡くなった3人にはどう説明するの?」
冷たく言い放つ恵。
しばらく考えても対する答えが見つからない中西。
「あなたのような男についていった彼らが可哀相ね。」
見切ったように言い放つ恵。
「もっとも、あなた達15人の運命は、私の下着姿を拝ませた時点で既に決まっていたことだけどね。」
可愛らしい顔でそう話す恵。
「私の下着姿は冥途の土産。この姿を見て生き残った人は誰ひとりとしていないのよ。」
ブラジャーの線を直し、少しズレたガーターベルトをキレイに揃える恵。
「残念だったわね。覇王会のため、世界の平和のため、命を捧げなさい!」
そういって語気を強めると、7人で作られる人間ピラミッドの上に立ち上がる恵。
ピラミッドの上にさらなる長身の恵が立ち上がることで、その高さはゆうに3メートルを越える。
うめき声を漏らす7人の哀れなピラミッドの上で、恵はそのまま勢い良く体重を掛け、その迫力あるお尻からピラミッドに着地する。
次の瞬間、ピラミッドを構成する7人の関節は大きな音と共に破壊された。

「うぎゃー。」
あまりの痛みにリング上を転げ回る7人。
恵は7人にとどめを刺し始めた。
山本はその首筋を足の裏で踏まれて強引にへし折られる。
西村はその横っ腹を強烈に蹴られて内臓を破壊される。
吉江の首は、サッカーボールを蹴るかのような恵の蹴りによって横向きに折られた。
垣原は恵のスネで首を押さえつけられて呼吸困難のうちに絶命し、飯塚はかかとで踏みつけられて肺を破裂させられた。
残る金本は恵の右脇に抱えられ、真壁は左脇に抱えられて、2人同時にゆっくりと持ち上げられる。
恵がその手に力を込めた瞬間、2人の首は力なく横に倒れた。
こうして10人のレスラーが始末された。

天山と棚橋の2人はリングからの脱出を考えるが、入り口には扉に鍵をかけたままアビディが待ち構えている。
「もう襲ってこないのかしら。」
腕を組み、悠然と振舞う恵。
残り5人のレスラーには、恵に向かっていくだけの気力など残っていなかった。
「誰から始末しようかな。」
そういいながら近づいていく恵。
恐怖におののく彼らは足元がすくんで動けない。
「まずはあなたね。」
そういって棚橋の頭を優しく抱え込み、その豊満な胸に押し付ける恵。
棚橋の体は硬直したまま身動きがとれない。
「ゆっくりお休みなさい。」
恵はそういうとじわりじわりと力を入れていく。
恵の体の柔らかさに、最初のうちは気持ち良ささえ感じていた棚橋だが、徐々にその骨はキシみ始め、呼吸はできなくなる。
やがて手足をバタつかせ始める棚橋だが恵は力を緩めない。
「気持ちいいかしら。」
力を込めながら尋ねる恵。
棚橋は意識を失っている。
「グキ、グキグキッ。」
恵がさらに力を加えた瞬間、棚橋は彼女の胸の中で絶命した。

棚橋の壊される音を聞いて、あまりの恐怖に失禁する永田と中邑の2人。
それを見つけた恵は、棚橋の死体をリング外に落とすと2人に向かって歩き始めた。
「あなたたち、汚いわね。」
そう言いながら近づく恵。
右手と左手とで彼らの首をつかみ、2人同時に高々と持ち上げていく。
長身の恵に持ち上げられて足をバタつかせる2人。
呼吸ができないまま意識が薄れて行く。
その後足をバタつかせることも無くなり、完全に失神した彼らであるが、恵は彼らを地面に降ろさない。
逆にその両手に力を込め「ゴキッ」という音と共に彼らを完全に始末すると、リング上に降ろすこと無くそのままリング外に投げ捨てた。

「ゴミの始末はおしまい。」
そう言うと、残された天山と中西の2人を見つめる恵。
やがて2人に近づいていき、中西の前で足を止める。
そして中西の顔を間近に見つめると、彼女はこう言った。
「やっぱりあなたが最後ね。」
そう言って天山の方へと足を進める恵。
「そう言えばあなた、私のこと覇王として認めないって言ってたわね。」
自分が侮辱されたことを決して忘れないのは恵の性格だ。
「今でも認めてもらえないかしら。」
硬直する天山の体を人差し指で撫でながら、いたずらにそう尋ねる恵。
しかしあまりの恐怖のため、既に脳内が現実逃避を始めてしまっている天山は、まったく反応することができない。
「もうだめね。あなたの精神はすでにあの世に旅立っているみたいね。」
首に腕を回してしっかりと固定する恵。
半失神状態の天山を首相撲の態勢に固めると、凄まじい勢いの膝蹴りを放ち始めた。
1発、2発、3発、4発・・。
最初の一撃で内臓を破壊され、既に絶命している天山であったが、恵は膝蹴りをやめなかった。
白目を剥いて完全に息を途絶えた天山は、やがて肉の塊となってリングに横たわった。

「私への侮辱は高くついたわね。」
そう言って天山の亡骸を踏みつけ、最後の生き残り、中西へと足を向かわせる恵。
「さぁいよいよ最後ね。」
中西の前で足を止める。
最後のひとりとなったことで逆に恐怖も吹っ飛び、やや正気に戻った彼は、恵の前で土下座して詫びた。
「許して下さい。」
懸命に許しを請う中西。
「あなたの言うことは何でも聞きます。一生あなたに付いていきます。だから、命だけはお助け下さい。」
リーダーのプライドもすべてかなぐり捨てて必死に許しを請う中西。
その目前には、はるかに高くそびえ立つ長身の恵がいる。
そしてガーターベルトを装着した、恵の恐ろしく長くて逞しい美脚があった。
冷たい視線で中西を見下す恵。
「じゃあ、私の足の裏を舐めなさい。」
低い声で命令する恵。
「はいっ。」
即答して恵の大きな足の裏を嘗め回す中西。
必死に必死に、丁寧に丁寧に嘗め回す。
唾液も出なくなるほど何回も何回も嘗め回す。
「次はここよ。」
股間を指差して命令する恵。
「はっ、はい。」
少しかすれた声で恵の股間に顔を近づける中西。
蔑んだ視線で彼を見下す恵。
「あなたってやっぱり最低ね。」
彼が股間を舐め始めようとした瞬間恵はそう言放つと、その鍛え上げられた太股に中西の首を挟みこみ、ゆっくりと締め上げ始めた。
「男としての死に際もわきまえないなんて、格闘家の恥さらしね。」
そういいながら徐々に締め付ける力を増していく。
恵の鍛え上げられた太股をつかみ、体をバタつかせて脱出を試みる中西だが、恵の力が緩むはずもない。
最初は女性らしく柔らかさのあった恵の太股も、その筋肉で鋼のように固くなってきた。
息も絶え絶えになって失神寸前の中西。
「さぁこれで最後。私に逆らったことをあの世で後悔しなさい。」
そういって力を込める恵。
中西の首は「ゴキッ」という凄まじい音とともにネジ曲げられた。
恵が力を緩めると、力なく落ちていく中西の巨体。
恵のガーターベルトは、中西の手によって少しだけ乱されていた。

15人のレスラーをその圧倒的な力で粛清した恵。
リングの周りにはおびただしい数の亡骸が転がっている。
戦闘中の厳しい顔つきから普段の優しい顔つきに戻った恵は、アビディに話しかける。
「私の下着姿を見て、まだ生き残っている人がここにいたわね。」
持ち前のかわいらしさを見せて話しかける。
「ごっ、ご冗談でしょう。」
ちょっとだけ焦りをみせるアビディ。
その仕草がなんとも言えずかわいらしかったため、恵の顔からも笑いがこぼれる。

『綾さん。これで良いのですよね。覇王会を守り、世界の平和を守るためには、これで良いんですよね。』
その強さを見せつけることで、覇王会の秩序を強固なものにしていく恵。
世界の平和はますます強固なものへと成長していった。

( 了 )

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