女と男の100番勝負

1.ユリ・サカザキ(龍虎の拳2)vs道場破り男
2.セーラーマーキュリー(美少女戦士セーラームーン)vs変態全裸男
3.レインボー・ミカ(ストリートファイターZERO3)vs男子プロレスラー
4.レイ・ファン(デッド・オア・アライブ)vs大柄筋肉男
5.ブルー・マリー(餓狼伝説3)vs男子格闘家
6.かすみ(デッド・オア・アライブ)vs追っ手の男
7.マリー・イボンスカヤ(トバルNo.1)vs男子格闘家
8.桐島カンナ(サクラ大戦)vs貧弱男
9.鮎原夏(私立ジャスティス学園)vs男子柔道部主将
10.ユリ・サカザキvs男子格闘家
11.日ノ本零子(ランブルローズ)vs男子プロレスラー
12.麻宮アテナ(ザ・キング・オブ・ファイターズ)vs男子格闘家
13.春麗(ストリートファイターII)vs自称怪力男
14.アイグル(ランブルローズ)vs貧弱男
15.千堂つぐみ(餓狼伝説 WILD AMBITION)vs男子アマレスラー
16.華守純(ザ・キング・オブ・ファイターズEX2)vsチビ男
17.リリ(鉄拳5 DARK RESERECTION)vs男数人
18.春麗vs男子格闘家
19.レイチェル(マーシャルチャンピオン)vs敵組織の男たち
20.アイーシャ(ランブルローズ)vs男子プロレスラー
21.かすみvs敵組織の男たち カブトさんより
22.ティファ(ファイナルファンタジーVII)vs粗暴な男 ディアさんより
23.キャンディ・ケイン(ランブルローズ)vs男子プロレスラー
24.キサラ・ウェストフィールド(痛快ガンガン行進曲)vs空手道場師範
25.シャルロット(サムライスピリッツ)vs武士数人
26.双葉理保(THE 異種格闘技)vsヘビー級ボクシングチャンピオン モズ落としさんより
27.春麗vsベガ モズ落としさんより
28.エミ(ファイティングバイパーズ2)vs男性バイパー backさんより
29.春麗vsバイソン モズ落としさんより
30.不知火舞(餓狼伝説2)vs力自慢の男
31.野々村瞳(御意見無用)vsチンピラ男
32.キャンディ・ケインvsベビーフェイス男子レスラー モズ落としさんより
33.春麗vs モズ落としさんより
34.春日野さくら&神月かりん(ストリートファイターZERO3)vs男子格闘家一同 のっきぃさんより
35.春日野さくらvs前に敗れた男
36.ブラック・ウィドー(スーパーマッスルボマー)vsヴィクター・オルテガ デアカルテさんより
37.ボンバー来島(レッスルエンジェルス)vs男子レスラー モズ落としさんより
38.大空みぎり(レッスルエンジェルス)vs男子レスラー デアカルテさんより
39.バイス&マチュア(ザ・キング・オブ・ファイターズ)vs殺し屋数人
40.春麗vs大男
41.キャミィ(スーパーストリートファイターII)vsテロリスト ディアさんより.
42.菊地真(THE IDOL M@STER)vs男子空手家 モズ落としさんより
43.武内優香(ヴァリアブル・ジオ)vs男2人組
44.チチ(ドラゴンボール)vsフリーザ
45.千堂つぐみvs道場破り
46.ヴァネッサ(ザ・キング・オブ・ファイターズ)vs力自慢の男
47.レイチェルvs逃走する男たち ディアさんより
48.風林寺美羽(史上最強の弟子ケンイチ)vs力自慢のボディビルダー 名無しさんより
49.風林寺美羽vsトール 名無しさんより
50.風林寺美羽vsコーキンの残党 名無しさんより
51.風林寺美羽vs裏闘技場 名無しさんより
52.爆乳大佐(こちら葛飾区亀有公園前派出所)vs新人巨漢海兵 名無しさんより





ユリ・サカザキvs道場破り男

「ぁがっ、はがが…ぅぐええええ!!」
 がらんとした広い道場に、男の搾り出される悲鳴が野太くエコーを奏でる。
板張りの床の上で、身動きを封じられた男が唯一自由に動かせる両足だけを不規則にバタつかせてもがく。
しかし、それをやったところで何ら今の状況を好転させるきっかけにはならない。
彼の力などいくら振り絞ったところで、彼の頭部に絡みついた凶器を外すだけの力にはなりえないのだ。
まさに凶器と呼ぶしかない、彼女の太腿を……


 極限流道場の看板を奪いに突然現れたこの男と対峙したのは、
ちょうど留守番をしていたユリたった1人だった。
「道場のみんなは遠征に出てて、誰もいないんだけど」
道着にロングスパッツ姿の彼女はそう口にした。
肩透かしを食わされた格好の男であったが、ならば道場の男たちが戻るまで
目の前の華奢な小娘をいたぶって退屈しのぎでもしながら待つことにしようと、牙を剥き襲い掛かった。


 しかし今となっては、その行動は軽はずみだったと言う他なかった。
道場の男は誰もいないと聞いたあの時、出直しておけばこのようなことにはならなかったのに…
あまりに遅すぎる後悔に、道場破りの男は頭蓋骨を鳴らされながらとめどなく涙を流す。
 ギュゥ、ギュウウ!! メリメリ…
 単に細身の体と油断したのが運の尽きだった。
この少女、ユリの一見非力に見える体の中には
もしこの男が3人いたとしてもまとめて捻り潰されてしまうであろう爆発的なパワーが秘められていたのだ。
特に、この脚力。
ピッチリとしたブルーのスパッツに包まれたユリのしなやかな脚は、
投げ飛ばされてダウンした男の頭に巻き付いた途端凄まじい勢いで太さと硬さを増し、
餌食となった男を猛烈に締め上げる鋼鉄製の拷問器具と化した。

「ああっ!!あああああああああああ!!」
 頭蓋骨のありとあらゆる部分から軋む音が響く、太腿ヘッドロック。
男自身も声を限りに悲鳴をあげ続けていなければ発狂に追い込まれかねない状況だった。
本当に、このまま頭の骨を粉砕され顔面もろとも締め潰されそうな恐怖に男の心はとっくに折れていた。
泣きじゃくり、もう数分前から手は道場の床を激しくタップし続けている。

「ま゛…まいりまじだ…ゅるじで、ぐださぃ……」
「な〜に〜、あなた道場破りなんでしょ?ダメだよ、もっとがんばんなきゃ」
 すべすべとした素材のロングスパッツ越しの太腿に、さらに力が込められる。
男の脳裏には解体工場でスクラップにされる廃車のような光景がよぎり、泣き声はさらに正気を失ったものへと変わった。

「道場のみんなが帰ってきたら、相手してくれると思うよ。それまで、我慢できたらいいね♪」
 メキッ、パキ…ベキベキ…
「ぉ、ぉねがぃ…ゆるして、たすけて……ひぎいぃぃぃぃ」
「もうちょっと男らしいとこ見せてくんなきゃ、や〜」
 ゴギッ!メリバキゴキッ! ぺきっ…
「ウギャア―――――――――――――――ッ!!」
 気のふれてしまった大絶叫が道場の床板全体がビリビリと震えるほどに響き渡ると、
巨大で極太の鋏となった女の子の太腿の中で
道場破りの男は電池が切れたかのように動きと悲鳴を止め、深い眠りへと落ちていった。
かすかな痙攣とともに、白い道着の股間をびっちょりと黄色く染めながら……



セーラーマーキュリーvs変態全裸男

 亜美は手馴れた手つきで、男を捌いていく。
 ガクンッ!
「ぁ…ぅぎゃああっ!」
 コキッ!
「い、ぃだあああああああっっ!!」

 清楚さと独特のエロティシズムを醸し出すセーラー戦士コスチュームに包まれた
亜美のスレンダーな肢体に吸い寄せられるようにして
ロリコンの欲望をむき出しに、力ずくで襲い掛かってきた素っ裸の変態男。
しかし、この程度の相手なら到底亜美の相手になどならない。
IQ300の天才少女・水野亜美にとって男一人処理するなど造作もないことである。
本来なら、セーラーマーキュリーにメイクアップする必要すらない相手だ。

 突っかかってくる相手の勢い、体重を逆に利用し投げ飛ばす。
目の前の少女にぶつけるはずだった力をそのまま自分がかぶる形で背中から地面に叩きつけられ、息を詰まらせる男。
しかし彼には悶絶する暇さえ与えられない。
天才医師の元に生まれ、中学生にして既に人体の仕組みを熟知している亜美の手による『オペ』が開始される。
手際よく、流れるような動きで次々と男の関節を外していくのだ。
足首から膝、股関節。
手首から肘、肩にそして腰。
男の体はさながらパズルのごとく解体され、体内から乾いた音が響くたび激痛により男の口からは絶叫が漏れる。

「い、いやだ、助け…」
「少し静かにしていてもらうわ」
 カクッ。
「はがっ、ぁがぁ…!!」
 最後に、男の顎を外して施術完了。
素早く無駄のない、しかもごくありふれた軽作業をこなすかのように手軽に、
亜美は目の前の変態男を糸のないマリオネットに変えてしまった。

「水でもかぶって、反省しなさい」
 その言葉と同時に、裸の男はなみなみと水の張られたバスタブに放り投げられてしまう。
焦りから水中で必死にもがく男だが、全身の関節を外されていては泳ぐこともままならない。
顎を外され大開きとなったままの口からは水が容赦なく侵入、ガバゴボと水面に大きな泡をいくつも立てながら
透明なバスタブの中で無様な姿を晒す醜男の様子を見ながら、亜美は口に手を当てて肩を震わせる。
今までお仕置きを加えてきた多くの男たちの中でも、この男の溺れてもがき苦しむ姿は
最大級の滑稽さで、おかしくてたまらないからだ。

 水の中に手を入れ、男の髪をつかんで顔を外に出してやる亜美。
自力でその地獄から脱出する術など何一つない男は、そのまま放置されていれば待っているのは溺死のみ。
目を白黒させながら、開閉の自由すら奪われている口で喘ぎ喘ぎ必死に酸素を取り入れる男。
「ふぅん…まだ償いの気持ちは十分に伝わってこないわね。いいわ、もうひと泳ぎしてらっしゃい」
 ザボォッ!
 亜美は冷たくそう言い放つと、男の顔を乱雑に再び水中へと投入する。
またゴボゴボと大粒の気泡がいくつも立ち上り、大量に水を飲みながらもがき溺れる芋虫男は
亜美に面白おかしく見物され続ける。
入れては出し、最低限意識を保てる程度に空気を吸わせておいてから、また溺れさせては引き上げる。
知的美少女・亜美の冷徹な責めは、延々と続く…



レインボー・ミカvs男子レスラー

今夜もまた男子プロレス界に、消し去れない大きな汚点が残ろうとしていた。
権威あるタイトルマッチに、突如乱入を果たした噂の巨少女。
正式な挑戦者だった男は、もう既に背骨をへし折られトップロープに布団のように干されている。
こうして乗り込まれては、男としてその挑戦を受けないというわけにはいかない。
…たとえ、恐怖で今すぐ逃げ出したいと本心では思っていたとしても。

 男子プロレス侵攻を発表し、その場で一団体のレスラー全員を再起不能にしたあの日から、数ヶ月。
多団体時代と言われる中、既に20近い団体がこのレインボー・ミカのお尻の下敷きとなって潰れ、
その戦いのさなか、彼女に骨がないと判断された男子レスラーたちも
彼女の情け容赦ない怪力殺法の前に二度とリングに上がれない体にされ、『潰された』。

 その屈辱の歴史に、また新たな1ページが刻まれる。
覚悟を決めてミカに飛び込んでいったチャンピオンであったが、素質と鍛え方が違いすぎる。
人形のように振り回され、叩きのめされ、さんざんスタミナを搾り取られた後に
最後のお楽しみとばかりに軽々と担ぎ上げられ、彼女の広く逞しい肩の上で見世物に変身させられる。
高々と掲げられ、リング外の視線に晒されたままゆっくりとリング内を周回されるのだ。

 古い例えをするならば、筋肉バスターと呼ばれる体勢だ。
恥辱の、W字開脚。
股関節と骨盤、背骨が悲鳴をあげるとともに、無理な体勢による呼吸困難が男を襲う。
しかし何よりの苦痛は、チャンピオンであるはずの自分が、自分よりはるかに大きい女に、
ましてや自分の娘ほどの年頃の少女であるミカの両肩の上で逆さまにされ、両足を掴まれて大股開きにされたまま
場内の客に晒し者となる究極の羞恥である。
「ほぉらチャンピオンさん、見てるッスか?あそこにいる女のお客さん、指差して笑ってるッスよぉ。
かわいらしい姿見てもらって、男子王者の風格満点ッスねぇ。手ぐらい振ってあげたらどうッスか?くすくす」
 酸素が供給されず悶絶しながら、面白半分のミカに恥をさらに煽られて、
男の胸は屈辱で張り裂けんばかりだった。今にも泣きべそをかきそうに。
しかし今の状況は、彼女に比べて悲しいほど貧弱な自らの力では脱せられる望みは全くない。
全身の力を100%集中させたって、振りほどくどころか彼女を少し手こずらせるにも足らないのだ。
この最高に間抜けな、空中大股ちんぐり返しから逃げる術など、どこにも…

「さて、これでどっちがベルトを巻くにふさわしいレスラーかはハッキリしたッスよね。
それじゃ、そろそろ粛清にかからせてもらうッス!
最後にあたしみたいな本物のレスラーと当たれて最高に幸せだったッスね、へなちょこチャンピオンさん!」
 団体破り少女・ミカにリングに立つ資格無しと判断された王者は、
彼の体を恥ずかしい姿に固定していたミカがその巨木のような腕に力をプラスした瞬間、
股が180度を大きく突破して開かれ、まるで割り箸でも割るように…

 ベギッ!! ボギゴキィィィッッ!! グシャベキ!!
「ひぎゃあああああああ!!」



レイ・ファンvs大柄筋肉男

高い壁のような巨体と、ボコボコと盛り上がりダルマと形容すべき圧倒的な筋肉を身に纏った
怪力自慢のこの男にとって、目の前の170cm前後で細身の若い女相手なら
普通の人間が蚊を相手にする程度に、いとも簡単にぺちゃんこにして終わり…
…のはずだった。

だが既に10分が経過し、そこに響く音はその男の息切れした荒い呼吸音のみだった。
「見た目ほど、スタミナもないのね。無理しないほうがいいんじゃない?」
汗だくになって肩で息をする大男の真後ろから、余裕に満ちた女の言葉がかけられる。

太極拳の天才少女、レイ・ファン。この男にとって、あまりに相手が悪すぎた。
相手の攻撃を水のように受け流し、無力化してしまう究極の防御技術を習得した彼女にしてみれば
このように力任せに突っ込んでくるだけの単純男はまさにおあつらえ向きの相手だった。

「はい、外れ〜」
「くっ…!!」
「ほらほら、よく狙わなきゃダメ」
「こ、このぉっ…!」
「ふふっ、残念でした♪」
「畜生っ……!!」
この10分の間、彼女は敢えて男に攻撃を仕掛けることはせず、
ただ襲いかかり続ける男の突き、蹴りをそのしなやかな円の動きでポイントを外しては
空振りさせ続けた。
…つまり、男はレイ・ファンに思う存分遊ばれているのだ。
力を込めた攻撃が軽くさばかれるたび、彼女から余裕綽々のからかいの台詞が降りかかってくる。
それが男の血をますます頭へと上らせ、怒りと焦りばかりが募ってますます攻撃に切れが失われていく。
そうすればますます、彼は彼女にとって扱いやすくて愉快な遊び道具へと成り下がっていく。
…惨めな悪循環だった。

戦いの舞台でまるで闘牛ごっこのようにたっぷりと弄ばれているうちに、男の持久力が限界を迎えてしまった。
一発として彼女にかすらせることさえできずに振り回された男は、
ゼェゼェと喉を鳴らしながら鉛のように重くなってしまった自らの両手両足を引きずるようにしながら
なおも彼女に襲い掛かっていく。
このまま女にオモチャにされて終わったとあってはいい恥さらし。男の最後の意地がそうさせる。
「空振りは当たったときの十倍は体力を消耗するものよ。そろそろ参ったする?ふふ」
「ぅ、うるせぇ…このっ!!」
ブンッ!!
「は・ず・れ。どんどんスピードが落ちてるわよ。あんまりスローで眠くなっちゃいそう」
「こっ…殺してやる…!」
ブンッ! …パシッ。
「何っ!?」

男が今残っている力を最大限に振り絞って繰り出した蹴り足を、
レイ・ファンは軽くキャッチして見せてから余裕のウインクを送った。
「飽きてきちゃった。そろそろ終わらせても、いいよね?」
 その言葉と同時に、手に込めていた力を少し別の方向に向けただけで、
片足で立つ格好になっていた男の体は大きく揺らぎ、ひねり倒されそうになる。
「そんなバカな…くそっ……!!」
大きく崩れたバランスを立て直そうと必死に踏ん張る男の視界に、一瞬白い閃光が走ったように感じられた。

グァシャアァァッッ!!

次の瞬間には、その男の分厚く重い巨体がフィギュアスケートのような高速回転を見せながら宙を舞っていた。
着地後の男の下顎は横方向に数十cmずれ、その口からは伸びきった舌が出た状態で
男はわずかな痙攣以外には全く動く気配を見せない。…終わった。
「今の蹴りも、ひょっとしたら見えてなかったのかもね。やりすぎちゃった?」
男が最後に視界に入れたような気がしたもの、それは鞭のようにしなり瞬時にして自分の顔面を襲った、
レイ・ファンの黒いショートパンツから伸びる白い美脚の後ろ回し蹴りだった。

「次はもう少し退屈させないようにお願いね。単細胞さん」
裏返ってしまった目を見開いたまま眠りについている男の顔を真上から覗き込んでそれだけ言い残すと、
彼女は何事もなかったかのようにそのまま立ち去った。


数時間後、一人取り残されたその場所で…男は、泣いた。
鍛え抜いてきた肉体、技が女に全く通用せず一方的に振り回され玩具扱いされ、
挙句に自分の半分以下もない体重の女の蹴りで吹き飛ばされ完全KO……これを屈辱として何と言おうか。
日の暮れてしまった、普段から人通りのないその場所には長時間、その大男の野太い嗚咽が響き続けていた。



ブルー・マリーvs男子格闘家

「あなたたちのやっていることなんて、所詮はお遊びよ」
 ゴキッ。
「ぁぉ…ああっ!!」
「本当の戦いのプロと呼べるのは私だけなの。あなたのようにただスポーツのつもりでやっているだけの、
ヤワな格闘技の選手なんかと一緒にされては困るわ」
 カクン。
「ぁわあああああ!!」

 ロシアに伝わる、コマンドサンボ。
相手の命を奪う、もしくは戦闘不能に追い込むことを目的とした軍隊格闘技。
若くしてそれを体得したマリーにとって並の格闘家など比較の対象とはならない。
生死の間で研ぎ澄まされた戦闘意識を持つ彼女とは、
関節一つ取ることに対しての姿勢からして大きく違うのだ。
磨き抜かれた技術により、ジャブのようなスピードで相手の手足を捕らえ、極めるまで逃がさない。
立ち技格闘家の打撃をも上回る速さで、瞬時に相手の動きを封じ、寝かす。
ひとたびダウンを奪ってしまえば、体格の差はないも同然。
上背も、筋肉量も大きく上回っている相手の男を蜘蛛のように捕獲すると…

「ああああああっ!!」
「ひいい!!」
 一旦寝かされたが最後、自分より小柄で細身の女相手とたかをくくっていたヘビー級の男子格闘家は
文字通り手も足も出せない状態となる。
クールな表情を保ったままの美女・マリーの手により男は容赦のない関節技で解体されていく。
手首、肘、肩、足首、膝、股関節、腰椎、etc,etc...
マリーは手馴れた手つきで、淡々と男の関節を外していくのだ。
今までに経験したことのない激痛、自らの鍛えた肉体が壊されていく恐怖に
男はただ乳児のように泣き叫ぶだけしかできない。
泣き声が聞き苦しいからと、顎関節は真っ先に外された。

「ぁ…あああああ……」
「ふふ、どうかしら?今、自分がどんな形をしているか、わからないでしょう?」
 外されてただの紐のようにされた、男の四肢をはじめとする体中の関節は彼女の手で複雑に絡まされ、
さっきまで圧倒的な威圧感を誇っていたはずの男の巨体はさながら人間ルービックキューブとも呼ぶべき形となって
マリーに冷たく見下ろされている。

「スポーツバッグにも収まるくらい、コンパクトサイズにしてあげたわ。どんなお気持ち?
ほんのお情けで、そのまま生かしておいてあげる。
少し喧嘩を売る相手が悪かったと思って、せいぜい男らしくあきらめることね。
それじゃ。バーイ」
 最後に軽く笑顔を見せて、非情にもマリーはそのまま男を放置して去っていってしまった。
「お…おぉあああああ(そんなあああああ)!!」
 分解され、自力では全く身動きの取れないがんじがらめの、捨てられた操り人形と化して転がっている
哀れな男の絶望の慟哭が、いつまでも人気のない路地に響き続けていた…



かすみvs追っ手の男

 忍びの掟に背いて、里を抜け出したかすみのもとに刺客の手が及んだのはこれで何十回目であろうか。
かすみには、もう数え切れないほどであった。
…そして、彼女を仕留めるべく送り込まれながら、その彼女の手によってこんな惨劇の主人公に祭り上げられる男は
これで何十人目であろうか。
かすみは、いちいち数えてなどいない。

 ビシィッ、バシィン、ビシ、バシッ、ビシン、パァァァン……!!
「…っぁ、ぁぐぅ、ぶえぇ、ぎゃぁぁぁぁ…」
「あなたに、私は倒せない。無駄なことなんか、もうやめて」
 襲撃を加えてきた男の人数などは詳しく覚えていない。
ただ、確かなことは…
今までかすみはそんな彼らを1人の例外もなく返り討ちにしてきたことだけだ。

 森の中で一息ついていたかすみに対して奇襲を仕掛けた、忍びの里からの密命を受けた男。
抜け忍となった者は生かしておいてはならない…忍者の世界の掟に基づいた抹殺の指令だ。
だが、相手が悪すぎた。
あの忍びの里で誰も歯が立たないほどの戦闘能力を身に付けたまま組織を抜けた天才少女・かすみ相手に
こんな一兵隊に過ぎない忍者1人が派遣されたところでどうにかなる程度のものではなかったのだ。

 振りかざした刀はそれ以上に鋭く放たれた彼女の蹴りで高々と宙に舞い上げられ、
苦しまぎれに投じた手裏剣もたった指2本で軽く受け止められた。
かすみに投げ返された手裏剣は彼の頬をわずか数mmの誤差でかすめて…
背後の木の幹に激しく突き刺さったその音が耳に入った瞬間、彼の戦意は根こそぎ奪われていた。
…思い知らされたのだ。圧倒的な、差を。

 直後にそんな彼を襲ったのは、標的であった少女・かすみの冷徹な制裁だった。
 バシッ、バシッ、ビシィ、バシ、バチィィン!!
「ひぃぃ、ひぃ、ああ、アアアア…!」
「私はもう、命の奪い合いなんてしたくない。だから、里を離れたのに…
もう、私にかまわないで」
 おとなしい顔立ちの美少女の、はかなげな声からは想像もつかない超高速往復ビンタが火を噴く。
風を切る勢いでかすみの右手が右から左から接近し、破裂音とともに焼け付くように熱い痛みと衝撃が頬に炸裂、
男の顔は大きく左右に薙がれるたび確実に変形していく。
倍近い大きさと厚みに膨れ上がった両頬、辛子明太子と化した唇と無様極まりない顔に整形された男は
それでもとどまる気配のない平手打ちの雨あられにさらされ続け、
パンパンの痣の中に埋没してしまった目と鼻から涙と鼻血を右に左に振り撒き続ける。
「もしこれでも私に付きまとうようなら…あなたを殺してしまわなければならないの」
 ビシィバシィビシィバシィビシィバシィビシィバシィ!!
「ぐぎゃぁぁぁ…ぁぉ、ぁ、ぁ、ぁ……」
 上から下された任務とはいえ、なんと軽率な行為だったのだろう…
あまりに遅すぎる後悔の念と、本当に生命の危機すら覚える激痛に男の涙は止まらない。

 …それから何分、月の輝く夜空に乾いた打撃音がこだましていただろう。
間断なく降り注いだビンタの雨がようやく止み、胸倉を拘束していた左手も離されてやっと自由の与えられた男。
だが脳震盪を起こした彼自身に自由を感じられる余裕などあるはずがない。
「これに懲りないようなら…本当に命はないわよ」
 飛び去ったかすみが残していった冷たい言葉が、身元不明なほど紫色に膨張しきった顔から草むらに崩れ落ちた男に
きちんと伝わったのかどうかは定かではない。



マリー・イボンスカヤvs男子格闘家

「なぁに、それは?」
「く、くっ…!」
 女相手に時間をかけては男の沽券に関わると、試合開始直後から猛然とラッシュを仕掛けた男であったが
目の前の大女はダウンどころかぐらつきもせず、そればかりか平然とズンズン前進し間合いを詰めてくる。
「くすぐったいじゃない」
 バゴオォン!!
 自分の速攻コンビネーションが全く通用せず、目の前のマリーに笑みさえ浮かべられている現実に冷や汗を浮かべた瞬間には
彼の顔面はマリーの巨大な手のひらに轟音とともになぎ払われ、大きな手形を刻まれたまま膝から崩れ落ちた。

 これが、『ロシアの美しき山脈』マリー・イボンスカヤの恐るべき実力だ。
2mに迫る長身、140kgというスーパーヘビー級の肉体は
想像を絶するハードなトレーニングで培われた鋼の如き筋肉の鎧のさらに上に
どっしりと重厚な脂肪を覆った、最も格闘技に適したボディだった。
さらにその重量級の体を、60分間止まることなく動かし続けられる脅威のスタミナ。
もはや国内では、彼女に真っ向からかかっていくことはタブー視されているほどだ。

 意識を遠くに飛ばされかけた男は、膝を付いて立ち上がれないまま思い知らされていた。
まるで戦車に対して拳銃1丁で勝負を挑むような無謀な打撃戦であったことを。
「ロシアでは、もう誰も私に戦いを挑んでくれるような男はいなくなってしまったわ。
あなたは、退屈させないで楽しませてくれるかしらね?」
 髪の毛をわしづかみにされ、凄まじい力で無理やり真上を振り仰がされると、
天を突くような高さからマリーの高貴な微笑みが降り注いでいる。
彼の背筋にぞくりと恐怖が這い登ったのが、惨劇へのゴングとなった。

 あらゆるタイプの格闘家が集まる総合格闘技のリングで、マリーは相手の男をプロレス技の連発でいいように手玉に取る。
同じヘビー級の階級で戦っている、決して軽くはないはずの男が、まるで枕投げのように軽々と空を飛んでいく。
腰を落として踏ん張っても、全くの無駄な抵抗。軽々と引っこ抜かれ、宙に舞わされてしまうのだ。
ボディスラム、ネックハンギングツリー、ブレーンバスター、バックドロップ、風車式バックブリーカー……
普通のレスラーでは及びもつかない高さと角度でちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
叩きつけられるたびに硬く作られているはずのマットは大きくたわみ、男はなすすべなくバウンドするだけ。
そして極太の腕でのラリアットが炸裂。まるで電柱で殴られたかのように、吹き飛ばされマットに這いつくばる男。
もう、体力は根こそぎ奪われ芋虫同然だ。

「ウフフ…あなたも今までの男たち同様、私を満足させてはくれなかったわね。
もう用はないわ。オネンネさせてあげる。私の胸の中で、ね…」
 ガバッ。
「ぅ…あががが、が……」
 圧倒的な体格の違いが織り成す、絶対脱出不可能のベアハッグに彼は捕らわれた。
マリーの太く、長い腕が男の両腕までもまとめて巻き込み、猛烈な腕力で抱きしめる。
両腕と背骨がみしみしと危険な音を立て、捕獲された男は
マリーの鍛え上げられた大胸筋を覆って前に突き出すスーパーバストの谷間に頭部全体を飲み込まれたまま
全くの無意味な行為でしかない抵抗のバタ足を続けている。
これがもっぱら、マリーにとっての男を葬る儀式となっていた。
今まで何十名の男子プロレスラーが、この巨壁のようにそびえ立つ超長身超筋肉超怪力熟女プロレスラー・
マリー・イボンスカヤの両腕と爆乳の中で、二つにへし折られてマットに沈んだであろう。

「いい夢を見ることね。それじゃお休みなさい、坊や」
 メリッ!バキボキ!!ベギゴリボキボキボキィッ!! グシャ…
「ギャアアア―――――――――――――――――――――――――!!」



桐島カンナvs貧弱男

「はぁっ、はぁっ、はぁっ………」
 満足な照明もなく薄暗い物置のような場所で、息を切らせた男の声が聞こえる。
使うのか放置してあるのかわからない、雑然と置かれた様々な道具に体のあちこちをぶつける音を立てながら
それでも必死に走る男の足音。相当に慌てている様子がわかる。

ガシャアアン!!ドタッ…
床に置かれていた金属製の物体に足を取られ、男は転んだ。
今までかなりの距離を逃げ回ってきたのだろう。男の肺活量は限界を超えたらしく、なかなか立ち上がれない。
「はぁ、はぁ…ひぃぃっ!!」
 途切れ途切れの息で後ろを振り向いた男の目の前に現れた、とてつもなく大きな人影が
小さな窓から差し込む月明かりから男を完全に覆い隠す。
「ふふ、それで終わり?もう逃げないのかい…」

 最初からこれほどの相手だと知らされていれば、男はこんな無茶な依頼は受けなかった。
さる組織からの、桐島カンナという名の女を暗殺する依頼など。
たかが女一人が相手、体格がなくても得意の武器があればたやすい仕事だと思ったのが運の尽きだった。
この男は現地に赴いて、初めてその女、カンナの素性を知ることとなった。
身長2m強、これまで見てきたいかなる大男でも及びのつかないほどの圧倒的な筋肉。
加えて、琉球空手の段位取得者……。
160cm前後の自分など踏み潰されてしまいそうなその巨体に、男は怯えながらも得意の隠し武器を駆使して
カンナの命を奪おうとした。だが…
飛び道具は全て鋭い蹴りで叩き落とされ、伸縮式の特殊警棒も彼女の腹筋の前に二つにへし折られた。
そして最後の手段の短刀も彼女に易々と取り上げられ、彼女が自らの上腕に付き立てていくと…
 パキーン。
その盛り上がる力こぶに負けて、刃のほうが折れて吹き飛んだ。

 男は逃げた。とても自分の敵う相手ではないと。
同時に、そんな大事なことを何一つ告げず道具のように送り出した組織に対して、今さらの恨みを持ちながら。
しかし、もう息が上がってしまった。足腰が立たず、逃げられない…
「もう逃げ出さないってことは、また勝負する気になったってことだよな。
うれしいねぇ、男ならそう来なくっちゃ…立ちな」
「う、うわあああああ!!」
 恐怖で半ば錯乱しながら、男は無我夢中で、自分がさっき転んだ際に躓いた大きな金属製の物体を投げつけた。
大型の厨房で使用するような、分厚い中華鍋だった。

 パシッ。
「ふん、抵抗するってんなら、もうちょっと気合入れて投げつけてきなよ。遅くてあくびが出ちゃうだろ」
 男は愕然とした。
残りの力を振り絞った渾身の反撃が…あの重い中華鍋が、片手でキャッチされてしまうなんて!
「それとも…こうして欲しいっていう、リクエストなのかい?」
 ググググ…メキッ!!グニャァァ……メリメリ!!
「ひいい!!ぁぅっ…!!」
 男の目の前で、あの大きく、分厚く、重々しい中華鍋が瞬く間に形を変え、サイズを小さくしていく。
二つ折り、四つ折り……

 ガラン、ガラーン。
 まるで折り紙のように小さく畳まれた、さっきまで中華鍋だった鉄の塊が男の足元に転がってくる。
「あんたも小さくしてやろうか?見えなくなるくらいに。立て、ほら」
 ぶくぶくぶく……じょぼぼぼぼぉぉ………
 カンナのその言葉に対する男からの返事は、
口からとめどなく溢れる白い泡と座り込んだ股間からみっともなく漏れ出る小便だけだった。



鮎原夏vs男子柔道部主将

「それだけ?本当にその程度なの?大したことないね、男って…」
 五輪高校女子バレー部主将・夏がほんの気まぐれに柔道部を相手にしてみた。
バレー部のユニフォームのまま柔道場に現れ、完全に向こう有利な柔道ルールで。
あまりに身の程を知らない挑戦と、一気に片付けてしまおうとした柔道部の主将だったが
次第に精神は追い詰められていく。…バカな、こんなはずがない!!

「柔道はそんな甘いもんじゃないってのを見せ付けてくれるんじゃなかったの?
せっかくあたしも見る気になってるんだから、さっさと技かけてみなさい」
 勝負が始まってからというもの、まだ夏はただ両手を腰に当てて立っているだけだ。
その無礼な余裕を引き剥がしてしまおうと、男は持てる限りの力を駆使して
この長身の女を投げ飛ばしにかかった。

 開始から5分近くが経過して、まだ夏は棒立ちのまま。その顔には失笑の色すら浮かんでいる。
大腰も、背負い投げも、大外刈りも、持てる技を総動員したが彼女はビクともしないではないか。
全く、地面から抜ける様子がない。ぐらつかせることもできない…なんという足腰をしているのだろうか。
背も高く脚も長いため、投げられる隙は並の人間より大きいはず、それなのに…
並の鍛え方ではない…男は柔道着の裏で冷たい汗にまみれる。
「くっ…くっそおおおおおお!!」
 男子柔道部の主将が女子バレー部員と柔道で戦って倒せなかったとあっては名折れどころの騒ぎではない。
部の、また男としての威信にかけて強引に背負いに行った。

「もういいわ。お疲れ様」
 ヒョイ。
「うっ…ぅわあああ!?」
 …宙を浮いたのは、投げ飛ばしにかかった男のほうだった。
「なんだかかわいそうだね、毎日練習してたみたいだけどこの程度にしかならないんだ。
やっぱ、男は男だよね」
 夏は片手をまだ腰のまま、もう片方の手で男の黒帯を後ろから掴み、クレーンのように吊るしている。
ゆっくりと上昇させられながら、男は半狂乱で両手両足で空気をむなしく掻き続けている。
重量級の自分が、こんな風に手荷物のごとくぶら下げられる経験など未だなかったため無理もない。
しかもそれを片手でやられているのだ。何もかもが、違いすぎる相手だったと言うほかない…

「さて、今度はあたしたち女子バレー部の鍛え方ってのを知ってもらいましょうか」
 吊るし上げられた男はすぐ目の前に彼女の顔があるのに気付き、さらに青ざめる。
腕力も半端じゃない…なんという高さまで……
「そーぉ、れっ!」
 バゴオオオオオオッ!!
 力の違いはよくわかりましたからもう許してください、男がそんな降参の言葉を口にし始める前に
夏の筋肉の盛り上がる右腕からのスパイクがうなりを上げていた。
男子柔道部主将は宙吊りの状態からカタパルトで発射されたかのように下の畳めがけて高速でダイブ、
顔面に夏の真っ赤な手形を残したまま畳にめり込んで白目を剥いたまま完璧に意識を失っていた。



ユリ・サカザキvs男子格闘家

「こっ…このアマッ!!」
 男は怒りをあらわに、目の前の華奢な少女めがけて躍りかかり突き、蹴りを猛然と繰り出していく。
…当然だろう。試合開始前にあんな言葉を言われたら。

「何だか、大したことなさそ〜。全力出して大けがでもさせちゃったら大変。
じゃ特別ルールってことで、あたしはお尻だけで戦ってあげる。
その余裕がなくなって手とか足とか出さないといけなくなったら、あなたの勝ちってことにしてあげるから」

 こんなスレンダーで年端も行かない少女と組み合わせられた時点でもかなりムッときていたのに、
その少女と対面するなりそんな人を食ったような発言を聞かされたら、
格闘技の世界に生きる男として頭に来ないわけがない。
ならば黙らせてやるまでだと猛ラッシュを仕掛けていく男だが、様子がおかしいことに気が付く。
おかしい。…当たらない!

「どこ見てんの、こっちこっち〜」
 男の屈辱を煽るように楽しげに、こちらに向けたブルーのロングスパッツに包まれたお尻をペンペンと叩いて笑みを送ってくる。
彼女は完全に、飲んでかかっているのだ。
「男を…なめるなあっ!!」
 ますます怒気を帯びた男の攻撃が次々とユリの肢体めがけて襲い掛かっていく。
だがユリは両手を後ろに組んで後ろ向きにスキップでもするかのように楽々と男のラッシュをかいくぐる。
遊ばれている…その構図が、さらに男の自尊心をじわじわと傷つけていく。
「おじさん、息が上がってるんじゃない?当てる前に疲れてちゃ、勝てるわけないでしょ」
 ボグッ!!
「う!!」

 ユリのからかいの言葉が聞こえた、その瞬間だった。
男の視界全体が鮮やかな青に覆われたかと思うと、凄まじい衝撃とともに男は顎をのけぞらせ仰向けにひっくり返っていた。
男を使っての遊びに飽きたのか、ユリがいよいよ反撃の手を、いやお尻を出したのだった。
ただのヒップアタックとは到底思えないスピードとインパクトに跳ね飛ばされてダウン、
一瞬の軽い脳震盪に襲われた男は今ごろになって焦りの色を浮かべた。
あの距離、あの体勢から一瞬でこんな攻撃を繰り出す…相当な足腰の鍛錬がないとできない行為のはず…
まさか、とんでもない存在を相手にしてしまったのではないかと…

 だが本当に、今さらそんな思いをするには遅すぎた。
意識を回復させ起き上がろうとする彼の動きは、上からのしかかってきたユリのヒップによってすかさず阻止された。
 ズンッ。
「さてと。男らしく、はねのけてみてね」
「ムーッ、ム―――――ッ!!」
 男の両肩すらも正座する両足で封じ込めた、完璧なフェイスシッティングが男を襲ったのだ。
鼻も口も目も、ユリのお尻の下でピッタリと密封され男は真っ暗闇の中で一切の呼吸も許されない。
腰を跳ね上げ、両脚をバタバタあえがせての懸命な抵抗も全く意味を成さない。
窒息の恐怖と、こんな情けないにも程がある体勢から逃れようとする男の絶叫が
惨めにユリのお尻の下でこもって響くだけだった。
男は彼女のこのヒップの下敷きになって、初めて気が付いた。
このスパッツの素材をパチパチに張り詰めさせる尻、太腿の感覚。太さ、硬さ…
細く見えたのは外見だけで、やはり自分などとは比べ物にならない筋肉量が内包されていることに。
そして彼女は、今までに何人もの男をこうして尻の下で沈めてきたのに違いないことに…

 しばらくしてユリは、着用しているスパッツ越しのお尻に熱く湿った感触を感じ取った。
「あ〜あ、泣いてるのね。かわいそうに。ちょっとくらいは、その気持ちわかるかも。
でもこれが実力の差だもん。しょうがないよね、弱いんだから」
 息を奪われた恐怖に溺れながら、男は女の子のお尻の下で涙をとめどなく滲み込ませていた。
長年格闘技の中で生きてきた自分を初めからコケにしてきた、まるで素人みたいな女の子に指一本触れられず、
そして彼女の屈辱的な公約通り、お尻しか使わないであっさり片付けられてしまう究極の敗北…
「どうする?このままオチてみる?それともみんなにも、メソメソ泣いてるとこ見てもらう?」



日ノ本零子vs男子プロレスラー

「少しくらいは骨のあるところ見せてくれるかなって思ったけど、この程度が関の山ね。
やっぱり所詮は男だもん、しょうがないか」
 零子はリングの上に即席で作った椅子に腰掛け、退屈そうに頬杖をつきながらため息を漏らした。

 その椅子からは、何やら聞こえるか聞こえないかの、実に微弱なうめき声が聞こえてくる。
上に腰を下ろした零子の重みに耐えかね、ようやく搾り出せる弱々しい悲痛な声が。
…そう、この椅子は今さっきまで相手にしていた男そのものなのである。

 その美貌と肢体で、副業としてキャンギャルまで務めてしまう美女・零子の前に
この男はいささかの抵抗も許されないまま一方的に叩きのめされ、惨めにマットに沈んだ。
パンチが、キックが、投げ技が、グラウンドテクニックが、何もかもが彼女とは圧倒的に違った。
ハーフカップタイプのビキニ、レザーショートパンツ、レガースで眩いナイスバディのほんの一部だけを包んだ
刺激的な長身美女に、まるでスパーリング用の人形同然に扱われ、コテンパンにのされてしまった男。
スタミナを根こそぎ奪われてしまった男は零子のなすがまま、大開脚の姿勢でひっくり返されて丸められ
真上に掲げさせられた尻の上に、零子がどっしりと騎乗してくる。
衆人環視の中、男として最大級の屈辱的ポーズ、恥ずかし固めで完璧なる3カウント。

「…で?あなたは何秒間、そうして情けなく押さえ込まれたままでいるつもり?」
 零子は悠然と脚を組みながら、ヒップの下に敷いた男の形をした椅子に問いかける。
男がこんな卑猥でみっともない姿にフォールされてから、もうすぐ1分が経過しようとしている。
だが、男にそれを跳ね除けるだけの力は残っていない。
「みんな、笑ってるわよ」
「あぐぐ…ぐ…ぁぁぁ……」
 観衆の見つめるリングの上で、きわどい魅惑のリングコスチュームの女の子にいいように引きずり回されながらボコボコにされ
さらに大股開きのちんぐり返しの格好にされた上、上に乗った大きな女の子の重みに全身を軋まされながら悶え苦しむ姿を
見世物として晒す、男を名乗る上でこれ以上ない生き恥。

「ふふ、なぁにその顔は?一丁前に悔しいんだ。
でも、これが女と男の差よ。弱っちいあなた自身が悪いの。
悔しいんだったらかかっておいで。どうせ無理だとは思うけどね」
 長い美脚を組み替えつつ、人間チェアと化した男の目を見据えたまま、零子の余裕の嘲りのシャワーが降り注ぐ。
「あらあら、泣いてるのね。女の子に腰掛けられたまんま。敗者にはお似合いの姿だわ。男らしくて素敵よ。
…どう?ついでだから、パンツも脱いでみよっか」



麻宮アテナvs男子格闘家

「うっ、ごっ、ぉ、ぉごお……」
 美少女アイドル・麻宮アテナの前に、腹を抱えた男が情けなく跪く。
大きくひん剥いた目からこぼれ落ちる、大粒の涙が止まらない。
「女だからって、別に手加減しなくてもいいんですよ?思いっきり、かかってきてください」
 無理だ。もうこの男に手出しをする余裕などない。
ただのアイドルに過ぎないはずの彼女のパンチが、どうしてこんなに重いんだ…!
腹部に鉄球の直撃を受けたかのように、息を吸うことも吐くことも一切許されない。

「女の子のパンチ1発で、泣き出すなんておかしいですよ」
 ズドオ!!
「はぐっ!!…ぁ、ぁがが……」
 今度はアテナの左ボディがめり込む。
先程の右でのパンチを、さらに上回る重い衝撃が男のみぞおちを突き上げる。
ズルリと音を立てながらついにヘナヘナと崩れ落ち、胃袋が正常の位置から大きく突き上げられた様子で
うずくまって動けなくなってしまった男の顔の下あたりの地面に、涙の染みが広がっていく。
「もしかして…本気でその程度なんですか?」

 ゴスッ。
 男の顔面が、不意に強く地面に打ちつけられる。
真上から後頭部に、硬く重い圧力が加えられてきたのだった。
その正体は…アテナの履く茶色のローファーだった!
「こんなことをされても、やり返してこないんですか?」
 清純派アイドルのアテナから、想像もつかない非情な攻撃が繰り出された。
彼女のローファーのソールが男の頭を上から踏みつけ、ズゴズゴと前後にこすり上げる。
たった2発のボディブローに泣き崩れてダウンした軟弱男に呆れ、敬意を捨てたアテナの出した答えだった。
男はいまだストマックを襲い続ける鈍痛と、少女から与えられるとてつもない屈辱の合わさった涙で
強制的な土下座のまま地面に擦り付けさせられ続ける顔をグチャグチャに濡らしていた。

 やがてアテナの足が、下から男の体をすくうようにして反対向けに転がす。
仰向けにされた男の視界には、上から見下ろしてくる美少女アイドル・麻宮アテナの姿が映る。
日の光を浴びて美しく輝く長い黒髪、端正な顔立ちと見つめてくるクリクリとした黒い瞳、
赤いミニスカートから伸びる健康的な脚、ピンクのハイソックス…
しかしその視界はすぐさま、彼女のローファーの靴底が真っ暗に覆いつくしてしまった。
「情けないんですね…軽蔑しちゃいます」
 アテナはその美少女フェイスのまま、今度は男の顔面を直接踏み躙りの刑に処した。
完全に男の実力を見限り、見下し、もはや対等の相手として扱わない軽侮の儀式だった。
「それでも、男?」
 ズル、グシッ、グリグリ!
 前後に、左右に、そして足首の捻りも加えて、アテナは足で男のプライドをズタズタに踏み砕き、潰していく。
年端も行かないアイドルの少女に靴底で思いのままにいたぶられ、男はまだ呼吸の自由も取り戻せないまま
涙だけをとどまることなく垂れ流し続け、ただアテナの靴痕とソールの汚れをなすり付けられまくった
泣き濡れた黒く汚い顔を晒すだけだった。

「最低。二度と、私の前に現れないで」
 ボグォオオオオッッ!!
 吐き捨てるような罵声の後、弱虫男に対するアテナの最後の侮蔑の一撃が加えられた。
脇腹をえぐるように叩き込まれたローファーの爪先に、男は裂けんばかりに開いた口から無音の絶叫をほとばしらせると
痙攣しながら深い深い闇へと落ちていった。



春麗vs自称怪力男

「な…何だその態度は!?」
 男はいきり立った。
目の前の女との一戦を前に、軽く自らの力の片鱗を見せ付けて、たじろぐ姿でも楽しんでやろうと
大きな樽を腕力のみでバラバラに破壊して見せたというのに…
目の前に立っている女・春麗からの反応は、軽く鼻で笑う程度のものでしかなかったからだ。

「お前もこのように粉々に打ち砕いてやろうと言うんだぞ!俺の力を見て何とも思わんのか!!」
「あら、今のがパフォーマンスのつもりだったの?随分退屈な出し物ね。
相手に驚いてもらいたいなら、せめてこのくらいはやってもらわなきゃ困っちゃう」
 鮮やかなブルーのチャイナドレス風拳法着を身に纏った春麗が、言いながら近くに駐めてある大型車の隣にまで歩を進めると…

「ヤッ!」
 バギャアアッ!!
「!!」
 男は言葉を失った。
彼女の気合の一声とともに繰り出された右足が、頑丈な大型セダンのフロントドアを大きく陥没させ、ガラスを飛び散らせた。
たった、1発で…。女の、いや人間の出せる蹴りじゃない!男を目を疑いながら、無意識のうちに後ずさりをしていた。
だが、彼女の蹴りはそれにとどまるものではなかった。
左足のみを軸にしてバランスよく立ったまま、春麗は男の動体視力では到底追うことのできない
右足1本だけでの打撃の大洪水を車に浴びせまくる。
 ドガガガガガガガッ!!
 その逞しき脚線美を包み込むブラウンのストッキングを破裂させんばかりの大腿筋の隆起を伴って、
白い編み上げロングブーツが重機関銃の掃射のごとく、1発1発確実に鋼鉄製の大型車のフォルムをいびつに変えていき、
細かい破片が次から次へと飛散する。フレームは飴のように歪み、ボディのいたるところに大穴が開き、
その衝撃には彼女の立つ反対側のドア2枚までもがそれぞれ二つに折れ曲がって紙屑のように数メートル飛んでいく。
「あ…あわわ……」

 男が先に仕掛けた力自慢の、春麗の番が終了した。
時間にして1分弱の間に、あの大型車は全く原型をとどめない姿で白煙を上げるだけの廃棄物に変わり果てた。
「か、怪物だ!!女じゃない!!」
 男は明らかに我を失った様子でひっくり返った声を上げながら、笑う両足でその場に力なく座り込んだ。
もし自分が10人いて一斉にかかっても絶対真似することなど不可能な超怪力解体ショーを、
この女はたった1人で…それも片脚のみで…加えてこんな短時間に……
もしこんな恐るべきキックの嵐が、いやもし1発でも、自分の生身をえぐろうものなら…確実に五体満足では許されない!!

「さて、ウォーミングアップはこのくらいにして…始めましょうか」
 その視線は男に向けられ、春麗は靴音を鳴らしながらゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
それに対し男はもう既に戦意など100%喪失し、震え上がり目を泳がせながら周囲に黄色く湯気の立つ水溜りを作っていた。
指一本触れもしないうちから、男は春麗に足腰立たなくされてしまったのだった。



アイグルvs貧弱男

「ぐえぇ、あぅ、ギエエエエ……!!」
 男は自分の胴体に加えられる殺人級の圧迫に、臓器の全てを口から吐き出してしまいそうな形相で
全身をびっちょりと覆うガマガエルのごとき脂汗とともに地獄の悶絶を続ける。
「くすくす…そんなか細い腕で、あたしの脚が外せるかしら。がんばってね」
 リアルに死の危険すら覚えさせられる紫色の意識の中で、懸命に両腕を踏ん張らせて
身体を締め上げてくる肉厚の大鋏から逃れようと全身全霊での抵抗を見せるガリガリチビ男を、
アイグルは楽しいおもちゃで遊ぶかのようにニコニコしながら見つめている。
そればかりか暇を持て余した様子で、男の両の鼻の穴に人差し指と中指を突っ込んで真上に引っ張り上げ、
豚のように変形した間抜けな男の顔を覗き込みながら弄ぶ余裕。

 生まれ持ったナチュラルパワーと、モンゴル相撲の世界で幼き頃から幾多の男を捻り潰すうちに身に付いた強靭な肉体。
特にこのデニムショートパンツから伸びる長く、そして筋肉太りの脚の迫力は見た目だけでも男を凌駕、圧倒する。
そして、実際その太腿から生み出されるのは、今相対している貧弱な男なら
少し力の加減を誤っただけで本当に絶命させてしまいかねない爆発的なパワー!
男の、肋骨の浮き出た細く薄っぺらい体に、彼女の極太の太腿2本が絡みつく絶望的なボディシザース。
男はローラー型の大型粉砕機に巻き込まれるような圧迫と恐怖に、大絶叫と言う名の『中身』を搾られ続ける。
「始まったばっかりなのにそんなに泣いちゃダメ。あたし、まだ力なんてぜーんぜん入れてないんだから」
 この世の地獄に首を突っ込まされて泣き叫ぶ男に、アイグルの退屈そうな声が降りかかる。

 やがてその圧殺拷問から開放されたのも束の間、男はアイグルのエアプレーンスピンで再び投げ飛ばされてマットに転がり
仰向けにひっくり返ったところを、両肩の上にどっしりと正座してきたアイグルに、完璧に組み敷かれる。
足をバタつかせようが、腰を振り上げようが、上半身を押さえ込んだ彼女を振り落とすどころか
彼女のマウントは1mmたりとも揺るぐ気配がない。いくら反動をつけようと…全く動かせない。
彼女の逞しい腕と力比べをしても間違いなく完敗するであろう、男のひ弱な両脚、下半身ではまさしく無駄な抵抗。
必死のあがきを、女に反抗と気付いてすらもらえない…男として、なんと惨めな姿であろうか。

「ぐぎゃああああ!!」
 無意味な体力の消耗をしている間に、豪脚美少女・アイグルの太腿監禁処刑第二弾が開始された。
男の顔を挟むように座っている彼女の太腿に力が込められた瞬間、
男は未曾有の激痛とともに頭の中を駆け抜けた、頭蓋骨を粉砕され脳味噌が飛び出る幻覚に泣きわめき、
目の前で見下ろしてくるお姫様のような少女の顔が涙でぼやけて見えなくなる。
かたやアイグルのほうは、声帯も圧迫されて所々裏返る、男の口から発せられるギャグ漫画みたいな悲鳴の連発と
両サイドを強烈無比な太腿絞めに潰されて実に不細工な形となった男の顔に、両手を口に当てて大笑いしている。
「きゃはは、かっわい〜。
ね、早く振りほどかないと、どんどん力入れちゃうよ?」



千堂つぐみvs男子アマレスラー

「ほんまはやる前から、わかってたんやろ?」
「ぁぁ…ぅ、ひぃぃ……」
「うちに勝てるはずなんか、ないて」
 ギリッ、ギリギリ…
「ぃぎ、あがぁ…うぎゃあああ!!」

 図星だった。
間違いなくこの男は、彼女から挑戦を受けたその瞬間、怯えを自分の心の仲に隠すことだけで精一杯だった。
自らと比較して、目の前の少女・つぐみとは体の鍛え方が圧倒的に違うことは一見するだけで思い知らされた。
レスリングウェアのスパッツを内側からバチバチに張り詰めさせて太腿筋の深い溝まで見せ付けるド迫力の脚、
ジャケットを着用した上からでもわかる厚みに満ちた上半身。
しかし、尻込みして返答に詰まっていた男に対してつぐみは口にした。
「まさか、逃げるん?男のくせに」
 男の怖がる本心を見透かして、小馬鹿にしたような言葉が降りかかる。
強靭な体の持ち主とはいえ、自分よりはるかに年下の女子高生に見下され挑発されるのを
男としてどうしても黙ってはいられなかった。
彼が頭に血を上らせ、目の前で嘲るつぐみに対して飛びかかって行ったのが、ほんの数十秒前…

 …そして、この男がその身の程知らずな行為を心底後悔しているのが、数十秒後の今なのである。
男の突進はつぐみにまるで軽い荷物ででもあるかのように容易に受け止められ、
さらに彼女の力とレスリングテクニックにより男の体は軽くコントロールされるがままに
つぐみに背を向ける形で右腕を背後に取られ、高角度でねじり上げられた。
腕の骨折、靭帯断裂一歩手前の激痛と恐怖に男は情けなくも声を限りに絶叫、
その痛苦から少しでも逃れるべく、まるで全身が一本の棒のようにピンと伸びた爪先立ちでプルプル震えながら
自由の利くもう一方の手で滑稽なほどに速いタップを繰り返している。
哀れすぎる光景だ。

「言うとくけど、自分の力で振りほどかなずっとこのままやで。
うちからは緩めてあげへんし、ギブアップかて認めへんから。
…なんたって、そっちからかかってきたんやからな」
「ぎゃぁぁ…ぁ…ぁぉぉ……」
「うちと戦えばこうなることぐらいわかってたはずやのに、それでもちょこっとコケにされたら
正直に突っかかってくるんやもん。男の意地もええけど、身の程ってもんをわきまえたほうがええで」
 メリメリ…
「あだだだだ!!だ、だずげ…」
「難儀な生き物やな、男て。同情するわ、ほんま」
「ぎぇぇ、ぉれる…お願い、許じで……」

 たかだか十代後半の女の子に言いたい放題の暴言を浴びせられながら、
男はどれだけ自尊心を踏み躙られようともその怒りを反撃にぶつけることは一切できない。
ただ、女子高生に好きなだけ罵られつつ激痛に悶え苦しみ泣いて許しを乞うだけだ。
男の意地など何の役にも立たない。実力が…違いすぎる…

「ふふ…そのしょーもないプライドと一緒に、この頼りのうてほっそい腕…
まとめてへし折ったってもええで」
「い、いやだあああ!!」



華守純vsチビ男

「さぁ、かかってらっしゃい。遠慮なんていらないわよ」
「くぅっ…このっ、このっ!!」

 それはあまりにコミカルで、また絶望的な光景だった。
魅惑のファッションモデル兼格闘家・華守純の前で男の攻撃は虚しく空を切り続けるだけ。
まるで、届かないのだ。

「ほぉら、もうちょっとよ。がんばってね」
「クゥゥ…女のくせに!!」
 華守純―――。大きく振り仰がなければ目が合わせられない驚愕の長身は199cm!
目の前の男と比較すると傍目からは笑いすら漏れてしまう身長差は40cm以上にも達する。
今、彼女の大きな手は男の髪を掴み、自分と目線が合うまでの高さに軽々と吊るしてしまっている。
その逞しく長い腕がまっすぐ前に突き出されている、それだけで…

重力に引っ張られ自らの全体重が頭の毛根にかかる激痛を避けるため、
男の両手は純の片手を何とか引き剥がそうと掴んだまま離すわけにはいかない。
そして宙に浮いた両脚でどうにか純にダメージを与え、身体の自由を取り戻そうと必死になっているのだが…
純の腕のリーチにも圧倒的敗北を喫する小男の不恰好に短い脚は、彼女のボディにかすることもかなわず
ただ惨めに空中でのバタ足を繰り返すだけ。…もう全く勝負として成立していない。

「ふふ、なんだかダンスしてるみたい。かわいいわよおチビちゃん」
 顔を真っ赤にしながら懸命に一矢報いようとする男に純はからかいの言葉を投げかけると
左手を腰のまま、髪を掴んだ右手を軽く左右に振ってみせる。
それだけで小さく軽い男の全身は風鈴のように揺らいで、ますます情けなさを増幅させる。

 長身の麗人に体格、スタイルの天と地ほどもある差をまざまざと見せ付けられた上に
力でも完敗、片手で楽々ぶら提げられて何の手出しもできないまま、笑い者に…
もう男として生きていけないほどの恥辱に、彼は宙吊りのまま涙を流し始めた。
「あらあら〜、そんなメソメソしちゃダメよ、男の子でしょ?
…そんな泣き虫さんには少し気合でも入れてあげなくちゃ、いけないかな」
 ズドッ!!
「ぶぅっっ!!…ぉ…ご……」
 情けなく泣く男の、頼りなくそして無防備な腹筋を純の左の拳が猛烈に突き上げた。
数秒間、小さくて薄っぺらな男の胴体が不等号のような形に折れ曲がった。
これでも純としては十分手加減を施してあげたつもりだったのだが、
この貧弱チビ男にしてみれば、意識をこの世とあの世に引きずり回されるほどの地獄の悶絶を与えられる衝撃だった。
男の目からほとばしり出る涙は大粒の大洪水へと変わっていた。
うめき声すら奪われて、純の右手の下で振り子のように揺れながら。

「これでシャキッとしたかしら?さぁ、根性入れてかかってきなさい。
早くしないと…本気出しちゃうわよ」
 ベギャアアアッ!!

 純の口調に少しの苛立ちが含まれた次の瞬間、宙ぶらりんだった男の顔面を彼女の左ストレートが打ち抜いた。
涙と鼻血が花火のごとく宙に飛散し、ブチブチと音を立てながら純の右手の中に数十本の髪の毛を残したまま
小さな男は高速できりもみをしながら、軽々と数mの距離を飛行して…
冷たく硬いアスファルトに墜落して真っ赤な染みを作り…細かく震えながら眠りについた。



リリvs男数人

ガバッ!
「!!」
「おとなしく来い!!」
 街を歩いていた少女の口を、突如として背後から男の毛深い手が覆う。
同時に、前方から複数の男が彼女の両脚を抱きかかえる。
素早く運ぼうとする先は、フルスモークの大型リムジン。身代金目的の、誘拐犯の集団だった。
モナコでも有数の資産家の一人娘であるリリは、こういった犯罪者たちにとってまさに垂涎ものの標的。
しかも絵に描いたようなお嬢様にも関わらずボディガードをつけることを拒み、常に一人で遊びに出かける彼女は
それだけ余計に的にされやすい。今日のようにこうして狙われるのは、果たして何度目であろうか…

 ボゴッ!! ガッシャアアアン!!
「何っ!?」
 その瞬間彼女のミニスカートのフリルがひらめいたかと思うと、片脚を捉えていた男1名が
鈍く響いた打撃音とともに4m近く吹き飛び、連れ込もうとしていた大型車のフロントガラスに頭から飛び込んだ。
そこから間髪入れず、リリの口を背後から押さえていた男が彼女の背中越しに凄まじい切れ味で宙を舞わされる。
男は石畳に背中を強打して息を詰まらせ、リリのクールな視線の下で惨めに力なくのたうつ。
その強さにおののき身構えする残りの男たちに、リリは顎に手を当て無言のまま上品な微笑を送ってくる。
だがその瞳の奥には、まるでおいしそうな獲物を見つけた肉食動物にも似た鋭い光が宿っているのを男たちは感じ取り、
誘拐犯としての攻めの姿勢もどこへやら、彼女の視線に威圧され身動きが取れない。


 ―――思い起こせば随分前、彼女に初めて誘拐の魔の手が伸びた日。
スタンガン片手にリリを連れ去ろうと襲いかかったその男は、咄嗟に抵抗した彼女の平手一発でひっくり返り、動かなくなった。
その事件を契機に、リリの中で何かが花開いた。
戦うこと、男をノックアウトすることに、快感を覚え始めたのである。
だが彼女はまがりなりにも高貴なお嬢様。
欲望の赴くままにストリートファイトで男を叩きのめしてスッキリしていいという気楽な身分では決してない。
なかなか充足できない欲求に不満を覚えたリリが思いついたアイデアというのが、
これまでに父親から付けられていた大勢のボディガードを彼女の意向で外させたことだった。
大金持ちの彼女がたった一人で街を歩いていれば、欲に目のくらんだ男どもが向こうから勝手にやってくる。
おあつらえ向きの標的なのはリリではなく、身の程知らずな誘拐犯たちのほうなのであった。


「だ、誰だこんな女を狙うと言い出したのは!話が違うじゃ…ぐぶぇ!!」
 思わず他のメンバーに泣き言を訴えた1人の男が、最後まで言い終わらないうちに第3の犠牲者となった。
まさに獲物を捕らえんとする雌豹のごときダッシュ力で襲ったリリの膝が男の脇腹にめり込む。
途切れ途切れの絶叫とともにスローモーションで崩れ落ちる男の惨状に自らのこれからを投影したのか、
残る男数人は一目散に逃げ出した。
だがそのような鈍足では、清楚なお嬢様の姿をした獰猛な野獣・リリからは逃れられるわけがない。
男たちが乗り付けてきたリムジンの前に、驚異的な素早さでリリは立ちはだかっていた。
もっと楽しませてよ、そう視線で訴えながら静かにその美しいブロンドヘアをかきあげて…

 令嬢としての日頃の窮屈さを晴らすかのように生き生きと…
正拳突き、回し蹴り、背負い投げ、手刀とおもしろいように決めていき、1人、また1人、男たちを手際よく畳んでいく。
最後に残った男はデザートでも楽しむかのごとくおもむろに、高く宙に舞ってから落差十分の踵落としてフィニッシュ。
白いロングブーツが真上から男の頭頂部をえぐり、彼はうつ伏せで鼻血の海に沈む。

 自分を狙ってきた悪人たちを、今日もまた自分1人の力だけで易々と片付けてしまったリリお嬢様は、
通りに累々と転がる男たちを見下ろしながら、手の汚れをパンパンと払いながら満足そうに微笑した。



春麗vs男子格闘家

 この戦いが始まる前、春麗は前に立つ相手の男を目にするなりこう宣言した。
「本気を出すほどの相手ではないわね。…いいわ、特別に私はキックなしで戦ってあげる。
それで少しは面白くなればいいんだけど。さぁ、かかってらっしゃい」
 完全に見下した物言いとともに、指2本だけ曲げて招く高慢な態度の挑発に男の自尊心が我慢できるはずがなかった。
女が男に本気を出すまでもない、手心を加えてあげるからかかっておいでと言われて黙っていては
格闘技の世界に身を置く男の名がすたる。
…だが、世の中にはプライドや意地だけでは何にもならないことがあるのだ。
特に、この強すぎる女・春麗を前にそこいらの男が頭に血を上らせて殴りかかっていったところで
彼女は手こずるどころかいささかの動揺すら覚えることはない…

 男の怒りのラッシュは春麗にこともなげに避けられ、逆に彼女に小手先だけで軽く投げ飛ばされる。
背中を強く打ち付けて苦痛に顔をゆがめた次の瞬間、男にさらなる苦痛が襲った。
「あがっ!!ぐぇ………」
 春麗のその鍛えに鍛えられた両の太腿が、男の首を襲ったのだ。
確かに宣言どおり、春麗はキックを封印したまま男を仕留めにかかった。

「私はここまでハンデをあげてるのに、全く相手にならないのね」
「は…ぁがが、がぁ……!」
「本当に、大したことのない男…。手加減が大変だわ」
「ぁぁぁ……ああ〜〜〜!!」

まっすぐに伸ばされた彼女の長く太く逞しい美脚が、男の頚動脈をガッチリと捕らえ、両足首がクロスされる。
すべすべとした素材のナイロンストッキング越しの脚線美は、盛り上がる筋肉で銃弾さえ弾き返しそうな硬度と化し
その極太のシザースに捕らわれた男は目を飛び出しそうに剥いたまま、脂汗にまみれた顔に紫色の斑点まで浮かべ始めた。

「言っておくけど、これでまだ力を入れてるなんて思わないことね。
この程度でそこまで泣きわめかれるなら、もう少し力を込めるだけで死んじゃうかもね。
ここまで軟弱だと、力の調節が難しいわ」
「がはっ、ごぼ…まぃった、まいりまじ…だ、だずげでえええ!!」

 開始から30秒弱、早くも戦意を失い、女の股の間で情けなく命乞いをする男の手足のバタつきは、
さながら殺虫剤を噴射された蝿の如き惨めで、滑稽な姿だった。
女1人相手に、得意の技さえ出させることもできないまま、思いつきで出されたお遊びのような寝技で
生死の境を彷徨わされるまでに痛めつけられて、泣き叫びながらもがき暴れる格闘家の男…

 両脚の間で男を懸命の悶絶に叩き込みながら、春麗は退屈のあまりあくびをもよおしていた。
「ふわぁ…本当に、ろくな奴がいないわね。
どこかに少しは骨のある強い男って、いないものなのかしら…」



レイチェルvs敵組織の男たち

 某武装組織は、自軍のアジトに潜入を試みた女スパイの捕獲に成功した。
その大女は今、アジト司令部にて両手首を天井から吊るされた拘束具で捕縛されている。
「フン、捕らえてみればあっけないものではないか…」
 部下に捕らえさせたその女を、組織の司令官は幹部らとともに見上げて得意げに笑う。
「それにしても…ただ処刑するには惜しい。一通り味わってからでないとな…」
 自らをくノ一と名乗る女とだけは事前の情報収集で知ってはいたが…
忍装束を上半身にのみ軽く羽織っただけで下はハイレグレオタードのみの大胆なコスチュームからさらけ出された、
筋肉の一つ一つが見るものを威圧する大迫力の腕、脚、そしてレオタードの生地越しに存在を主張する腹筋、背筋、
それから厚い胸板に乗って装束を押し広げつつ前に突き出されているバスト。
大柄な雌豹を思わせるダイナマイトボディに幹部一同は思わず下卑に口元を緩ませ、
そのうちの1人が軽く味見をするように彼女の大きく張り出した胸に手を添える…

 ボゴッ!!
 ズゴォ!!
 次の瞬間、その幹部は大砲の如き打撃音とともに、悲鳴をあげる暇すら与えられず頭から天井に突き刺さった。
両腕を吊られたままのレイチェルの、天を突くようなハイキックで真上に射出されたのだ。
「こっ…この女!!」
 一斉に武器を手に取り身構える幹部一同だが、そのキックが見せた常人離れした破壊力に戸惑いの色は隠せない。
「手っ取り早くこのアジトの場所を突き止めるためにわざと捕まってみておとなしくしてれば、いい気になっちゃって…」
 どさくさに紛れて破廉恥な行為に及ぼうとした男たちへの侮蔑に満ちた言葉とともに、
レイチェルは自分の両手首の自由を奪っていた金属製の拘束具を、まるでそれがティッシュででもできているかのように
ごくごく軽く天井からの鎖もろとも引きちぎり、平然と床に放り投げた。

 自分たちでは到底及ばない筋肉は見た目だけで十分わかったが、まさかそこから生み出されるパワーもこれほどとは…
動揺の広がる男たちだが、その驚きもまだ序の口であることは直後に思い知らされた。
「道案内してくれたお礼に、全員気持ちよーくおネンネさせてあげるわ」
 レイチェルはまごつく男たちを尻目に、鼻歌交じりのまま
この司令部の壁一面に設置された監視モニターや通信機器などをまとめた設備を両手で引き剥がし、頭上に差し上げて見せた。
配線も強引に引きちぎられ、辺りに火花が飛び散る。
総重量数百kg、いや1tにも達しようかという設備を持ち上げてニコニコしながら歩み寄ってくる長身アマゾネスに、
誇り高きはずの戦士たちは腰を抜かしてただ後ずさる。
「な、何をしている!!殺せ!!」
 脅威と焦燥に半ば裏返った司令官の声にも、もはや従える者はいなかった。

「えいっ♪」
 とても人間1人が持って運べるはずのない重設備は軽々とレイチェルの手を離れて宙を舞い、
その部屋にいた兵士の約半数を下敷きにして大音響を轟かせた。
「さぁて、残りのみんなも…あたしを味わってみたい?」
 この部屋から外に出る唯一のドアを背にしたレイチェル1人の前に、アジトはこの世の地獄と化した。
パンチ、キックが1発うなりを上げるたびに兵士2〜3人が吹き飛び、壁や天井に叩きつけられていく。
辺り一帯にはくの字に変形したサバイバルナイフやライフルが転がり、男たちの山も高く高く積み上がる。
最後は往生際悪く逃げ惑う司令官の片足首を掴んでのジャイアントスイングで1人残らずなぎ倒した。

「任務完了、っと。ちょろいものね」
 動かない男たちで足の踏み場もない部屋を見渡しながら、レイチェルは悠々とグローブに付いた埃を払い落とす。
武装組織のアジトを探ってこいという上からの指令だったものの、面倒だったのでさっさと壊滅させた。



アイーシャvs男子プロレスラー

 世界で最も美しく、そして強い女を決めるリング、ランブルローズ。
本題である女同士の試合以外にも、余興的な意味での特別なエキシビジョンマッチが存在する。
このリングに集う女たちが、いかにスタイルと強さを両立した選ばれし女神であるかを実証するように…

 リングに上げられた短足チビ醜男は、美しきソウルディーバ・アイーシャにたっぷりと格の違いを見せ付けられる。
両者の比較で男が勝っているのは体重だけ。しかしアイーシャはそのウェイトもものともせず、
軽々と抱え上げては繰り返し仰向けにうつ伏せにマットへと叩きつけていく。
溜め息の出るほど美しく、無駄のないモデル体型の長身美女になすすべなく投げ飛ばされては
マットに打ち据えられて惨めに転がり、汗にまみれた贅肉をブヨブヨと揺らして這い蹲る男。
その圧倒的な格差が生み出す光景があまりにおかしく、客席からは笑い声が巻き起こる。

 一通り痛めつけた後も、アイーシャは攻撃の手を休めない。
今度はコブラツイスト、ヘッドロック、スリーパーホールドなどあえて2人が密着する固め技の数々で男を責めあげる。
立った状態で近くにいることで、両者のスタイルの違いをよりまざまざと披露するためだ。
「フフフ、何それ。ここまでいたぶられて、パンツをそんなに突き上げちゃうなんて。
でも残念ね。あなたが私を犯そうとしたって、それは絶対に無理よ。…全然、届かないもの」
 リングサイドは爆笑に包まれた。
アイーシャと男の脚の長さの違いにより腰の高さはまさに段違い。
この男がどれだけ懸命に背伸びをしようが、その真上を向いた勃起の先端は彼女のボトムをつつくことすら不可能だ。
20cm近い身長の差が、ほぼそのまま股下の違いとして現れているのだから、惨めすぎる。
彼女のパワーで猛烈に締め上げられながら、男は自分のあらゆる面での圧倒的劣位を思い知らされた。
生まれ持った体型から体の鍛え方まで…
この程度の男はランブルローズのリングに上がる素質を認められた女の前では、
見世物としてからかい半分でぶちのめされて当たり前……
それを満天下に見せ付けるために用意されたのが、このエキシビジョンマッチなのだ。

 恥辱に震える男の両足首を、アイーシャは掴んでまた軽々と持ち上げ、宙吊りの状態で大股開きにさせる。
「フィニッシュよ」
 そして彼女は、その柔軟な体で男の股間に片足を乗せ、体重をかけながら男の体全体を真下へと…

 ゴッッ!!

 …終わった。
電機按摩+パイルドライバーが男の股間から脳天まで一直線に稲妻のような衝撃を走らせ、
男はこれ以上ない恥ずかしい体勢でまっ逆さまにマットに突き刺さったまま、ノックアウトを宣告された。



かすみvs敵組織の男たち

 ……絶対に許さない。
かすみは目の前に立つビルに向かい、再び決意を確かめる。とあるスジからの情報によれば、このビルの責任者がなんらかの形で
私のクローンに関わっていたようなのである。
 セーラー服姿。
郊外地とはいえ目立つわけにはいかない。それは敵に対してもそうだが、それ以上に霧幻天神流の抜け忍という身分ゆえに……。
かすみはゆっくりとビルへと入っていく。目指すのは最上階。


「それでそろそろ通してくれませんか。私には勝てないって言う事はわかりましたよね」
 かすみは、背後から男の首を締め上げ、15人ほどの男と対峙しながら言った。
 情報を知っていそうな地位のあるものに接触しようと進んでいたところ、予想どうりにかすみを排除しにきたというわけだ。
 そしてリーダー格の男がかすみを取り押さえようとしたのだが、返り討ちにされ、今締め上げられているというわけだ。
 かすみに締め上げられている男の体はボロボロで、右腕が変な方向に曲がっている。
それと対照的にかすみには傷一つなく、汗すらかいていない。
「カハ」
 男は白目をむき出しにしながら残った左腕で抵抗を試みる。それを興味なさ気に見下ろすと、かすみはさらに男を締め上げた。
 ビクっと男の体が震えると、左腕の抵抗までなくなり、かすみの腕でなかば宙吊りになった形になる。
「ふう、この人あなたたちの中で一番強いんですよね?リーダーなんだから」
 うっと、かすみを囲む男達はひるむ。
「でも私にとっては弱すぎですよこの人」
 ほら、とそのまま男のわき腹を突き刺すようにして殴る。
「カハァ」
「ほら、ほら、ほら、ほら」
 左腕で男の首を絞め、拘束し、右腕で男を嬲る。
 男はなすすべもなく殴られ続ける。目からは涙があふれ、口からは悲鳴がこぼれる。
 ボス、ブチ、グボグ。
 指を伸ばしきった状態で突き刺すように殴る。そのたびに男の体は衝撃で吹き飛ばされそうになるが、
かすみはそれを許さず、体を密着させて拘束する。
 ほら、ほら、ほら。
 なんでもないように殴り続けるかすみ。息すらあがっていない。何度も何度も夢中になって殴る。
 男はもはや意識もないのか悲鳴すらあがっていない。
 ブス、ゴキ、ボコ、ゴキ。
 それでもかすみは容赦しない。ぐったりとした男の体を殴り続ける。
 ひっと、かすみを取り囲む男たちは息をのむ。恐ろしい、普通はここまでやらない、やる必要が無い。
もはや自分達を憎んでいるとしか思えない行為だった。
「う、うわー」
 男の一人が、恐怖に耐えかねたのかかすみへと突っ込む。それを見て他の者達も一斉に。
「ふう」
 やれやれ、といった具合につぶやき、締め上げていた男を捨てる。
「命だけは助けてあげようと思ってましたが、そっちがその気なら容赦はしません」
 男達を迎え撃つように、構える。
 一人目。
 相手の攻撃をかわして、、そのまま心臓を一突き。右手が体を貫通して男の血がかすみのセーラー服を汚す。
 二人目。
 力をいれてなさそうな回し蹴りで、男の頭がとぶ。
 そこからは虐殺だった。セーラー服姿の女子高生に15人もの男が殺されていく。
 かすみは、それがなんでもない事のように、淡々と男達を殺していった。

「ひい、ひ、助け、助けて」
 周りには死体が散乱している。おびただしい血をかすみは浴びているが、それが怪しいほどの色気をかもしだしていた。
 残るは一人。かすみは腰がぬけて座り込んでいる男の頭を掴むと、立たせるように持ち上げた。
 かすみと男は面とむかって顔を合わせる。
「お願いします、助けて、た、たすけて」
 男の頭を両腕で拘束する。おびえる男をみつめた後、かすみは哀しそうに笑って、
グシャ。
膝で頭を潰した。



 目の前には今までにない豪華なドアがあった。

 ――――この中にいるんですね。

 おそらく、自分のクローンについての情報を知っているとしたら会社のトップの人間だけだろう。
それを予想して、かすみはここまでただひたすらに突破を繰り返してきた。
 
 ――――どんな手段をつかっても聞き出してみせる。

 かすみは覚悟を決め、その豪華なドアを開けた。

 部屋に入る。そのだだっ広い空間の中で、一人の男が机で何かの書類に目を通していた。
 スーツ姿であるがインテリという風でもなく、体格も大きい。その男が、ふうー、と息をつき。
「部屋に入ると時はノックをしろといつも言って……な!? 」
 かすみを見たとたん驚きの声をあげる男。顔は驚愕にゆがんでいた。
「お、お前、どっちのだ……まさか組織が俺のことを殺そうとして……」
「どっちのだ、という事は、あなたは私のクローンの事を知っているんですね」
「うっ」
 かすみは男の方へと近づいていく。血のついたセーラー服姿とあいまって、かすみの迫力は男を萎縮させるのに十分だった。
「し、知らねえよ。俺らは奴を目的地に運んだだけなんだ」
 聞く耳をもたないといった感じで、かすみは歩き続け、男の目の前にたどり着いた。ムシケラをみるような目で男のことを見下ろす。
「本当だって。他のことは知らないんだ」

 ズガアアアン。

「ひいいいい」
 かすみは脚を振り上げると、そのまま男の使っている机にむかって踵落とし。すさまじい破壊音とともに、机は文字通り木片と化した。
「早く白状したほうがいいですよ。あなたの事を殺すことは簡単なんですから」
 絶対零度の視線で男を睨みつけながら言う。その様子は高圧的であり、普段の彼女のおっとりとした感じからは想像もつかなかった。
「う、嘘じゃねえよ。本当だって、本当に何も知らないんだ」
「…………」
 男の言葉をひと欠片も信じていない様子がありありと感じられる。かすみはそのまま男の背後へとまわりこみ、
「ぐげええええ」
 腕を男の首に絡みつけさせ、一気に締め上げた。
「本当だったらこれで終わりです。首の骨を折ってそれで終了です。
あなたが生きていられるのは私の機嫌しだいだってことを忘れないでください」
「かあああはははあああ」
 男は息も絶え絶えといった様子。かすみはそんな男を、後ろから立ちながら拘束し、首を絞めている。
自然と、かすみの豊満な体は男に擦り付けられることになっているわけだが、その感触を堪能する余裕など男にはあるはずもなかった。
「これ以上私の機嫌を損ねないでください。いいですか? もう一度聞きますよ…………その前に腕が邪魔ですね」
 男の腕がかすみの首絞めに対して、申し訳ない程度に抵抗しているのを見て言う。
そんな男の抵抗も、かすみにとってみればまったく問題はなく、そのまま赤子の手を捻るかのように男の首を絞め続けられるのであるが……。
「……邪魔です」
 言うと、かすみは右腕を男の首からはずした。結果、左腕一本で男を締めることになるがそこはまったく問題が無い様子で、
暴れる男を片手一本で完全に拘束していた。そしてその自由になった右腕で、男の右肩の部分をつかみ、
「抵抗なんてするからこうなるんですよ」

 ボギ。

「かはあああああああああ!!」
 そのまま力まかせに男の右肩を下に、思いっきり引っ張った。
 ダラン、と力をなくしたように垂れ下がる男の右腕。……肩の関節を強引にはずしたのだ。
「それじゃあもう片方も」
 男の顔が恐怖にゆがむ。首を絞められ声をだせない喉で、必死に許しを乞うている。
 しかし、

 ボギ。

「があはははははあかかあああ!!」
 容赦なく、かすみは男を壊す。
 左腕も、右腕と同じように力を無くし、ダランとただぶら下がっているだけのオブジェへと変わる。

 かすみはそれで満足したのか、男への首絞めを終了した。
 そして、背後から男を包み込むように抱きしめ、拘束する。
「これで分かりましたか? もう痛い目にはあいたくないですよね。早く白状したほうがいいですよ」
 男の耳元で囁く。しかし男にはその言葉は届いていない。あまりの激痛にもだえ苦しむことしかできていないようである。  男の目からは涙がとめどなく溢れ、口からは涎が溢れている。
 しかし、そんな男の事情など知らないかすみは、男の沈黙が、自分の言葉に対する拒否表示だと思ったようで……。
「聞いているんですか? 」
 ぎゅう、と抱きしめる腕に力が入る。
 かすみの豊かな胸が男の背中で変形し、体と体がこれ以上ないというほどに密着する。
 男のほうが体格がいいにも関わらず、男を抱きしめ完全に拘束しているその様子は、
獲物をつかんで今にも捕食に移りそうな蜘蛛を連想させた。
「もう首を絞めていないんだから声ぐらいだせるはずですよね。死ぬ前に早く白状したほうがいいですよ」
「ゆ、許して、ほん、本当に知らないんだ。本当だ。ほん……ぎゃあああああああああ!! 」
 ベギ、と肉が潰れる音が鳴ると共に、男の絶叫がこだまする。
 かすみは男を抱きしめてる腕にさらに力を入れると、そのまま男の体を潰しにかかった。
 本来ならば快楽を生み出すはずの、かすみのやわらかい体が男を潰すための凶器に変わった。
「早くしないと本当に潰れちゃいますよ? まずは肉が潰れてその次に肋骨、内臓、そして最後には背骨……
これを食らった人達はみんな泣き叫びながら素直に白状してくれるんですけど……」
 かすみの腕にさらに力がこもる。
 かすみの腰が前へと突き出され、体が後ろへとそる。
結果、男の体がかすみの体に乗っかるように持ち上げられ、男の足が地面につかなくなった。
 体格差のある男を半ばもちあげるようにしても、かすみにはまだ余裕があるらしく平然と男の体を潰し続けている。

 ボギ、ボゴ、ブチ、ゴキ、グボ、ゴキ。

 潰れている。
 涼しい顔をしながら、セーラー服姿の少女が男を潰している。
 男は抵抗しようにも腕はもはや使い物にならなく、さらに足は地面についていない。
結果、男はなすがないまま、かすみに手玉にとられるしかなく、命乞いをするしか男に許された行為はなかった。
「があああああ、ほん、ゴフ、本当に知ら、ぎゃああああ」
「…………」
 無言。
 かすみは無言のまま男を後ろから抱きしめ、潰すことをやめない。
「本当だって……助け、がははあ、助けてください、ゆ、許しかはあっはは」
「……肋骨やっちゃいますね。覚悟してください」
 やめて、と目を見開く男と、今までにないほどの圧壊音が響くのは同時だった。
 かすみは、なんでもないかのように男の肋骨を潰した。
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」
 絶叫が響き渡る。
 かすみはそれが耳障りだとでもいうように腕に力をこめた。
 男の体が激しく痙攣するが、かすみは微動だにしない。体がまったくブレることもせず、男の体を封じ込めている。
「これで分かりましたよね。早くしないと死にますよ。
今だって折れた肋骨が心臓とかに刺さったら死んじゃうんですからね……まあもっとも白状するまでは死なせませんが」

 悶え苦しむ男。
 かすみはそんな男を抱きしめ潰しながら、これで終わりだろう、と心の中で思う。
 いくら相手が粘った所で、ここまでくれば白状しない奴などいない。
今までもこの技を食らってきた者は、肋骨を潰した段階で、全員泣き叫びながら白状してきた。
この男も例外ではないはずであった。
 だが、しかし、
「ゆ、許して……ぶぼぼぼぼぼ、た、たすけて」
 男は口から泡を吹き出しながら、目を虚ろに、命乞いを続けるだけであった。

 ――――まさか本当に知らないとでも。

 かすみの中で疑念が生じる。
 その疑念は信じたくもないものだった。
 今まで自分のクローンを探し出すために多大な労力をつぎこんできた。そんな中でようやくつかんだ今回の情報。
この男が本当に何も知らないとなれば、また振り出しに戻る事になる。

 ――――信じたくはない、でも。

 かすみは意を決して確かめることにした。その疑念が真実かどうかを。
 男の体にさらなる激痛を加えることによって。

「えい」
「がははははははははああああ!!」
 男の体がビク、と痙攣する。
 掛け声とともにかすみは、今までとは比べ物にもならない力をもって男のことを抱きしめにかかる。
 もはやその様相は、廃車となった車をスクラップにするためのプレス機のよう。
 男の体からは、ブチブギと肉が潰れる音が、ゴギボギと骨が砕ける音が鳴り響く。
「ゆ、許してえええええええええええええええええええええ!!」

 瞬間、ふいっ、といった感じでかすみの腕から力がなくなる。
 いまだに男のことを抱きしめながら拘束しているが、もはや男の体からは圧壊音は聞こえてこない。
「え、ええ?」
 男は何が起きたのか分かっていない様子。そんな男に対して
「本当に何も知らないんですね? 」
「は、はい」
 祈るような問いかけ。もはやかすみの中で答えはでていた。

 ――――ああ、こいつは本当に何も知らないんだ。

 落胆していないといったら嘘になる。この日のためにどれだけの労力をつぎこんできたのか。情報量として金もかかった。
それだけの事をしたのにまた最初からやり直しとは。
「あ、あのー」
 これからの事を考えると憂鬱になる。またアレを最初からやれというのは中々どうして酷いものがあるじゃないか。
里からは抜け忍の始末のために追っ手も来る。それを対処しながら、また一からやり直しというのは……!!
「ええーと……助けてくれるんですか? 」
「うるさい」

 ぎゅう。

「があああああああああああ!! 」
 今までは手加減だった。殺しては何もならないから。しかし今は違う。思いっきり力をこめられる。もう殺してもいいんだから。
 かすみの腕が、プルプルと震えている。最大圧力。ベギバギという圧壊音がまるで何かの音楽のように鳴り始める。
 男の苦しみ方は今まで以上で、目は完全に白目であった。しかしそんな中男は最後の力を振り絞るように。
「な、何で……俺は本当に、し、知らない、がははははははああああ!! 」
「ええ、分かっています。だから殺すんじゃないですか。何を言ってるんですかあなたは」
 な! と息をのむ男。ついでに胃が破け、逆流してきた吐血も飲み込む。
「あなたは自分のしたことをちゃんと分かってるんですか? あなたのせいで何人死んだと思ってるんですか。何人死んだと……!!」
 内臓が潰れていく。あまりの激痛に体が電気ショックをうけたかのように痙攣していく。
 もはや男の体は、人、の形とは別のものになりつつあった。
「それにあなた一人生き残ってもしょうがないでしょ? あなたの部下は私が一人残らず殺しました。地獄ですぐに会えますよ」

 たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて。
 男の唇がそう動く。もはや声をだす喉は喉としての機能を有していなく、他のパーツも似たようなものだった。
 かすみは、男のことを抱きしめる。すべての憎しみを自分の腕に込めて。ただただ復讐の鬼女と化して男の体を潰す。

「じゃあサヨウナラ。死んでください」

 ボギン。

 一際大きな音がしたのと同時に男の体は動かなくなる。
 男の体を離す。上半身が肉塊となった男の体が、ベチャ、と床に転がった。
 かすみはそれを冷たい目つきで見下ろす。セーラー服には男の血液がこべりついており、
白いセーラー服というよりは赤いセーラー服と言ったほうがいいような様相を呈していた。
 血まみれのセーラー服に身を包み、悠然と佇んでいる姿はなんともいえず美しかった。
 17歳とは思えない色気が、隠せることなく色めき立っている。
 かすみは静かに、その部屋からでていく。
 静かに、一言の言葉も口にださず。
 かすみの心にあるのはただ一言 ――――絶対に許さない。
 かすみの戦いは続く。



ティファvs 粗暴な男

「おいやめろ、離せよ」
「黙っていきなさい」

男は腕をひねり上げられたまま店の外へと連れて行かれている。
ここはミッドガルの下層スラムにあるバー「セブンスヘブン」。
人通りの少ない店裏の裏路地につくと、男を拘束していた手が緩む。
手を振り解いた男はあわてて数歩離れると、腕をさすりながら
拘束していた相手を睨む。
「lってえなあ、お客を何だと思って嫌がるんだ」
涼しい顔で受け流すのはウェイトレスをしていた長髪の美女、ティファだった。
ティファは白いタンクトップと黒革のミニスカートに包まれる妖艶な肉体をみせ
つけつように髪をかき上げつつ言い放つ。

「無関係の客に暴力振るうようなのはねえ、うちのお客さんとは言えないのよ」
「ふざけやがって・・・」

大降りで殴りかかる男に対して、ティファは余裕の笑みを浮かべたまま避ける
そぶりすら見せずにいる。
ゴスッ、という鈍い音と共に男がの拳がティファの腹部に突き刺さった。
しかし、顔をしかめたのは男の方だった。
分厚いゴムを殴りつけたような手ごたえは、今までに感じたことが無いものだった。

「あら、マッサージでもしてくれるつもりなのかしら?」

打撃を受け止めたティファの腹部には、くっきりと割れた腹筋が浮かび上がっていた。
ティファは男があっけに取られているところに無造作に近づくと、その身体を腕の外から
抱きしめ、抱え上げた。
豊満な胸を押し付けられた格好になるが、男はその奥に潜む強靭な大胸筋の力強さと、
締め上げる両腕の逞しさに背筋が寒くなった。

「店を騒がせた分、ちょっと反省してももらうわよ。」

ティファが力を込めると、ザンガン流格闘術で鍛え上げた肉体がその姿を現し始める。
たおやかだった両腕には逞しい力瘤が隆起し、万力のような圧力を持って男の身体を
締め上げてゆく。
押し付けられるティファの胸は強靭な大胸筋に支えられ、男の身体を包み込むように
がっちりと固定して揺るぎもしない。

「ぐ、ぐあああああぁぁぁ・・・・」

女性らしい脂肪に包まれていたティファの筋肉が、込められた力に応じて自己主張を大きくする。
二の腕の力瘤は男の両手でも掴み切れそうにないほど盛り上がり、前腕も肘の先が逞しい曲線を
描いている。背中には広背筋が厚く広がり、深い凹凸を見せ始め、タイトなタンクトップをはちきれんばかりに
引き伸ばしている。
男の体はミシミシと悲鳴を上げ始め、抵抗しようの無いその力に自分が押しつぶされる想像をしたところで
意識を失った。

「まったく、少しは反省してくれたかしら」

ティファはつぶやきつつ、白目をむき脱力しきった男の身体への拘束を解いて、路地の角に座らせた。
身体のコリをほぐすように伸びをすると、厚い胸板に支えられた胸がタンクトップに密着して押し上げる。

「たまにはストレス解消にもなるんだけどねぇ」



キャンディ・ケインvs男子プロレスラー

 ランブルローズ、本日のエキシビジョンマッチを担当するのは
18歳の美少女悪役レスラー・キャンディ。
様々な凶悪攻撃で対戦相手を辱め、いたぶる現役女子高生ヒールレスラー、キャンディの天才的センスは
こんな特別試合で男を相手にしたとき、さらなる輝きを見せるのだ。

「おらぁっ!!」
「ぎゃ…ぁ……ぅぎゃああああああああ!!」
 キャンディの責め上げる甲高い声と男の半ば裏返った情けない悲鳴の轟くリングに、観客も熱狂に包まれる。
キャンディの持つサディズム全開の、男蹂躙テク。今回炸裂しているのは…
コーナーポスト電気按摩だ!
リング外に出たキャンディがエプロンサイドから、リング上で大の字になっている男の両足首を掴み
その両脚の間にコーナーの鉄柱を挟んだ状態から、思い切り男をリング外の方向へと引っ張ったのだ。
キャンディの腕力により一気に引き寄せられた男の股間が、鋼鉄製のコーナーポストに直撃!
なおも引く力は緩められず、男の下腹部に想像を絶する圧迫と鈍痛が絶え間なく襲う。

「ぁっ、ぐがが…ぐぅぇ……!!」
「ほら、少しは脚が伸びるかも知んねーよ…嬉しいだろ、この短足ドチビ!!」
 先ほどまでリング上で散々ブチのめされ足腰立たなくされたところに、この鉄柱股間責め。
抵抗する力も失った男を一方的にいたぶり抜きながら、さらにキャンディは得意の悪態で追い討ちをかける。
そしてどこまでも非情なキャンディは、白いブーツをコーナーの裏側に押し当て、ますます引く力を強めていく。
片脚の踏ん張る力までプラスされて、哀れな男は睾丸の潰れる恐怖さえも現実味を帯びた苦痛と、
このまま股間から全身を真っ二つに引き裂かれる幻想まで見せられながら、ついに泣き出した。
へそ出し白ブラウスにチェックの超ミニスカートの不良ハイスクールガールファッションの少女に、
大観衆の中こんな破廉恥な技で責め嬲られて泣く男。
この惨め過ぎるほどの対比が、キャンディの上がったエキシビジョンのマットの醍醐味なのだ。

「お前、本当は感じてんじゃねーの!?一生、そうやって鉄柱とSEXしてろよ!オラアアッ!!」
 ぐりっ、ゴリゴリゴリィィッッ!!
「ぎゃおおおおおおおお!!」



キサラ・ウェストフィールドvs空手道場師範

「しっ…師範!!しっかり!」
「師範、そんな女ぶっ倒して追い返してください!!」
 門下生たちの半泣きにも聞こえる声援に後押しされ、師範と呼ばれた男は鼻血をボタボタ垂れ流しながらも
揺らぐ視界の像をどうにか一つにまとめ、ようやく焦点の合った先にいる大女めがけて殴りかかる。
だが、その渾身の大振りな突きも、小さな軽い音とともに女の大きな手のひらの中に収められてしまった。
うろたえる師範の男を見下ろしながら、女が口を開く。
「結局、どういう意味なの?ニョニン・キンセーって」

 その女がこの道場に足を踏み入れたのは、つい先ほどのことだった。
多くの門下生たちが汗を流し鍛錬する男臭い空手道場に、この近くの高校のものらしい制服を着た彼女が現れた。
まるで、学校帰りに面白い場所を見つけて遊びに来たような、気軽さで。
「ここが、どんな場所かわかっているのか!我が道場は女人禁制の…」
 しかし、留学生らしきブロンドヘアの大女はその言葉の意味も理解できないようだった。
男たちの恫喝にも全く動じず立ち去ろうとしない彼女を道場の師範は道場荒らしと断定、
闖入者には実力で丁寧に捻り上げ、無事では済まさず帰すという道場の慣わしで応えてやろうとした。
こういうわかっていない女には、思い知らせねばならないと。男と女の、差を…

「ぎゃあっ!!ひぃ…」
 金髪女の握力の中で、男の拳と口から同時に悲鳴が漏れる。手の骨が、砕けてしまいそうだ。
思い知らされているのは、師範のほうだった。
「詳しくはわからないけど、女には勝てないから男としか戦いません、そういうことなんでしょ?つまり」
 グボッ!!
「ごっ……!!ぁ…」
 みぞおち深く深く、女の拳がめり込む。
まるで、まるで格が違う。この道場の門下生たちでは到底望めそうにない、
彼らが何人分の力を合わせたら、やっとこれだけのパワーになろうというのか…
「違う?」
 ゴッ!!バギッ!!グバァッ…!!
 酸素も戦意も、そして意識自体がボディブロー一発で遠のいていた男に、
その情けない姿への失望と苛立ちを滲ませた彼女のパンチ、キックが堰を切って襲いかかった。

 道場内で最強の、尊敬する師範が…部外者の女にスパーリングミット同然に、ボコボコ。
足元に、自分たちの師匠の血飛沫が小雨のようにポツポツと染みを作るのを目に入れさせられながら、
門下生一同は、日々打ち込んできた武道が制服姿の女子高生に滅多打ちで犯され、踏み躙られる恥辱の極みたる光景に
いたたまれない気持ちと同時に、その迫力に対する恐怖で一様に足が震えている。
師範がKOされたら…その後は自分にその惨劇が降りかかるのではないかと。
もし足が自由に動かせるなら、男の矜持など今すぐ捨ててこの場から逃げ出したい一心だった。

 グッ…シャ。
 ひときわ耳に響く、何かが潰れたような音とともに、地獄のラッシュが途切れた。
刺さりこんだ彼女の膝からこぼれ落ちるように、血みどろの師範の顔面が畳の上を力なくバウンドする。
「やっぱり、そういう意味だったみたいね。はじめからそう言ってくれれば、痛い目に遭わなくてすんだのに」
 顔の下で畳を真っ赤に染め上げて痙攣している師範を足元に、大柄な金髪少女は残りの男たちに目を向ける。
それに男たちは、血の気が引く音が聞こえそうなほど一斉に青ざめる。
「ニョニン・キンセーね…女と男じゃ、力の差って違いすぎるもんね。
一生、男たちだけでやってなさい」

 詳しい日本語もよく知らない外国人女子高生に、日本男児の、武道家の誇りが粉々に打ち砕かれる敗北感、喪失感…
彼女が呆れ顔で立ち去った後も、門下生の男たちは立ちすくんだままその場を動くことができなかった。



シャルロットvs武士数人

 チャリーン……
 甲高い金属音とともに男の手からは刀が姿を消し、その刀は目の前に立つ長身女のはるか後方の地面に突き刺さった。
互いに刃を手にしての『仕合』、武器をあんな遠くまで弾き飛ばされた時点で、もうその男の敗北は決定した。
ヘナヘナと膝から崩れ落ちる、侍の男。
しかしあえて止めを刺さないのは、この女の優しさなのか、それとも残酷さなのか…
「次!」

 近頃この界隈を騒がせている、南蛮人らしき女剣士。
ドレスと甲冑の融合したようないでたちで、サーベルを携えた長く美しい金髪の大女だった。
彼女はまるで日本の男の実力を吟味するかのように、あちこちで男たちに苦杯をなめさせている。
しかも一切致命傷を与えず、だ。

 今日も、この憎き舶来の女騎士の姿を捉えた武士数名が、いざ雪辱せんと取り囲んだ。
女に惨敗したのち生かして返されるという、死にもまさる屈辱にまみれさせられた仲間たちの無念に報いるためにも、
この女を生きてこの国から出すわけにはいかない…
だがこの時点で、早くもそのほぼ全数が脱落していた。
男たちの攻撃は完全に見切られ、刀は数十回とむなしく空を切らされた後、
こんな男どもの動体視力では絶対捉えられない彼女の鋭い突きが一閃!
その一撃一撃が確実に武士の魂である刀を奪い去り、さらには髷を切り落として武士失格を宣告する。
このシャルロットの周囲には既に、手から得物を失ってざんぎり頭とされた敗者の男がひしめいている状態だった。

 素早く、力強く、そして美しい剣さばきで男を屈服させつつ、傷を負わせない…
それは並大抵の腕前ではできない芸当、加えて実力の差を最大限に思い知らせる冷酷な処刑でもある。
遠巻きにここら一帯の町人、町娘たちが見守っている中で、女一人に蹴散らされ逃げ帰らなければならないこの醜態。
彼らは自ら切腹でもしない限り、生きてこの恥辱を背負い続けねばならないのだ。

「ひっ!!」
 最後に残った男も、刀と丁髷を失った上でシャルロットのサーベルの切っ先を、鼻先一寸のところに突きつけられる。
「…未熟」
 へたり込んだ男を見下ろしながら冷淡に吐き捨てると、麗しき黒船は剣を鞘に戻し立ち去った。
周囲から町人たちの失笑の視線を痛いほど浴びながら、つい今しがたまで武士だった男たちは誰もその場を動けなかった。
直接命こそ奪われはしなかったものの、戦う男としてはもう生きてはいけない負け犬の烙印を押された…



双葉理保VSヘビー級ボクシングチャンピオン

リングの上には明らかに体格の違う、男女が対峙していた。
某団体の世界ヘビー級チャンピオンと水色のビキニ姿のグラビアアイドルの双葉理保。
地上最強の男の顔には焦りの色が浮かんでいた。対する双葉理保の表情は余裕に満ちている。
既に終了した、第1ラウンドでチャンピオンは双葉理保との圧倒的な実力差を感じさせられていた。
チャンピオンの繰り出した全てのパンチは双葉理保にスウェーバック、ダッキングなどでかわされ時折カウンターを喰らっていた。
チャンピオンは既にパンチの空振りでスタミナを消費し
グラビアアイドルの細腕から繰り出されたとは思えない重たいパンチでダメージも蓄積している。

今は、第2ラウンド。チャンピオンは目の前の少女に対し、どう攻めるべきか悩みながら様子を窺い、
間合いを取ったままリングの上を動き回っている。
そこで、双葉理保はおもむろに口を開いた。
「チャンピオンさん、1ラウンド目でウォームアップは終わったんだよね?理保も本気で行くからよろしくね」
そう言うと間合いを詰め左ジャブを放つ。
チャンピオンはガードをするがジャブとは思えない、重い一撃でガードをはじかれる。
そしてそのまま右ストレート、左フックが頭部へとインパクトする。
ボクシンググローブを付けているとは思えない打撃音が会場に響き渡り、
過去のどんな挑戦者からも喰らった事のない衝撃がチャンピオンの脳をシェイクする。
その威力は第1ラウンドのパンチとは桁違いだった。

チャンピオンの動きが止まる。双葉理保はそのまま手を休めることなく、ボディを乱打する。
ハート、キドニー、リバーとボディのあらゆる急所にストレートが、フックが吸い込まれていく。
そして、止めと言わんばかりにストマックへのアッパーを打ち込む。その一撃で身体をくの字にするチャンピオン。
そこへ双葉理保がプリティアッパーと名付けたストレート気味のアッパーで無理矢理、
チャンピオンの上体を戻すとラブリーダンスと双葉理保が呼んでいる左右のストレートとフックを連続で叩き込むラッシュへと移行する。
最後は強烈なフックを喰らいチャンピオンはダウンした。

誰もが呆然とし、レフェリーすらカウントを始めるのを忘れている。
数秒後、我を取り戻し、慌ててカウントを始めるレフェリー。
チャンピオンが立ち上がり、ファイティングポーズを取ったときには既に10カウントが取られてもおかしくない時間が経っていたが、
目の前で繰り広げられた信じがたい光景に誰もがそんな事を気にも留めていなかった。

レフェリーの合図により、試合を再開する二人。そこでまた、双葉理保が口を開いた。
「流石、チャンピオンさん。とってもタフだね。理保が取っておきで止めを刺してあげる」
そう言うと再び一気に間合いを詰め猛烈なラッシュを始める。
先程のラッシュと比べものにならないスピードで叩き込まれるパンチ。その重さも更に増していた。
ガードも間に合わず、次々とチャンピオンを捉えるパンチの連打。
遂にマウスピースが口から飛び出しパンチがチャンピオンの顔面を捉える度に血反吐と折れた歯をまき散らす。
チャンピオンのセコンドがタオルを投げ入れようとしたその時、双葉理保は再びプリティアッパーを繰り出した。

1発1発がヘビー級ボクサーのフィニッシュブローを凌駕する破壊力のパンチを高速で繰り出し
徹底的に相手を叩きのめす必殺のコンビネーション。
その名はラブアッパー。それが双葉理保の取っておきだった。
止めの一撃を食らい更に折れた歯が混じった血反吐を吹き出し宙を舞うチャンピオン。
そして、背中からリングへ落ちると数回、リングでバウンドし痙攣を起こし始めた。

今度のレフェリーの判断は素早かった。カウントを取るまでもなくノックアウトを告げると双葉理保の腕を高々と掲げた。
ダウンしたチャンピオンは身体の至る所に痣が出来、顔は誰かも解らないほど腫れ上がり変形し血まみれになっていた。
そして、とどめのアッパーで完全に顎を砕かれていた。

その姿は誰の目から見ても再びリングへ立つ事を許されない程、破壊されているのは明らかだった。
世界最強の男は2ラウンドの終了を待たず小さな島国のグラビアアイドルにボクシング人生を完全に絶たれた。



春麗VSベガ

春麗は父の敵であるベガの元へとたどり着いた。
しかし、その胸中は父の敵を討つ事よりも
自分が格闘家として己の技量を尽くし闘うに足る相手か否かと言う思いばかりがつのっていた。
今まで世界各地で様々な格闘家と闘ってきたが彼女の流麗かつ重厚な蹴技を完全に発揮するまでもなく彼らは倒れていった。
今回の相手は強靱な肉体を持ちサイコパワーで更にその肉体を活性化させ常勝無敗を誇る裏の格闘界の帝王だが、
それだけでは彼女にとって最強の格闘家である証としては不足だった。
気を練り上げ弾丸の様に打ち出す格闘家、腕をクロスさせる事によって衝撃波を生み出す軍人、
手足を伸ばし炎を操る怪僧、自ら電撃を放つ特異体質の野生児、
その他、様々な常人離れをした技を持つ格闘家から己の肉体のみで勝利してきた彼女から見れば
ベガのサイコパワーも疑わしい物であった。

そんな思いを巡らせ逡巡しながら春麗は構えを取る。
その様子を見たベガは自分の力に怖気付いたと思い一気に勝負を決める事にした。
全身にサイコパワーを漲らせ間合いを詰めハイキックを放つ。
それに対し、春麗はカウンターの上段回し蹴りを放った。
ベガのキックを見てから放たれた春麗の上段回し蹴りはベガの攻撃が彼女を捉えるより早くベガの側頭部を捉え吹き飛ばす。
カウンターとは言え、たった一発の蹴りを受けよろよろと立ち上がるベガ。そんな様子を見て春麗は失望した。
この男もまた、己の技量を尽くし闘う必要の無い相手だったと確信したからだ。
このまま、止めを刺し父の敵を討つか…そう考えた春麗はある事を思いついた。
今までは蹴技に拘るあまり、その格闘家としての技量を発揮する事が出来なかったならば、拳技のみで闘ってみてはどうだろうか?
既に弱っているとは言え自分が不得手としている拳技ならば…彼女はその思いを早速実行へと移す事とした。

「かかって来なさい。今まで貴方が苦しめてきた人達の思いをその体に刻んであげるわ」
そう言うと今度は両足を肩幅に開き肩の力を抜き自然体を取った。
その様子を見たベガは激高し再び春麗へと突進した。サイコパワーを全身に漲らせパンチをキックを次々と放つベガ。
春麗はその場から一歩も動かずに次々とベガの攻撃を捌いていく。
そして、一瞬の隙を突き踏み込みつつ縦拳をベガの顔めがけ繰り出した。
しなやかで強靱な下半身が生み出す踏み込みと共に放たれた縦拳はベガの鼻を潰した。
ベガは一撃で後ずさると春麗は更に半歩踏みだし崩拳をベガの腹部へ放つ。
その一撃は内蔵へ深刻なダメージを与えた。ベガは膝から崩れ落ちそうになり春麗の肩を
掴み倒れまいと持ち堪える。そんな様子を冷淡な表情で見つめる春麗。

既にベガには闘う余力は残されていない。そう判断した春麗はベガの胸部へと拳をそえた。
そのまま両足でしっかりと大地を踏みしめ、足首、膝、腰、背、肩、肘の回転を利用し拳を打ち出す。
寸打と呼ばれる高等技術である。だが、実戦の最中では打ち出す機会があり得ない技でもある。
その一撃は体に手をそえた状態から放たれたとは思えない衝撃をベガに与え再び吹き飛ばした。

既に虫の息で倒れ込んでいるベガを見下ろし春麗は止めを刺す決意をした。ベガへと歩み寄ると胸ぐらを掴んで引き起こす。
「最後に私の全力の蹴りを受けて貰うわ。今までの悪事を悔いて逝きなさい…百裂脚!」
そう言うとベガが崩れ落ちる前に春麗は蹴りを放つ。
自分の不得意な技ですらその全てを出し切る事が出来なかった鬱憤を晴らすが如く次々と全身全霊を込めた蹴りを放つ。
重機関銃による射撃を受けているかの様な錯覚をする春麗の百裂脚で無様なダンスを披露するベガ。
シャドルー総帥の制服が千切れ飛び肉を打つ音と骨が砕ける音が響き渡る。
「次で止めよ…せぃやっ!」
再び側頭部への上段回し蹴りがベガを襲い側転の様な格好で回転してから地面へ激突した。
身体中のあらゆる骨は蹴り砕かれ、裂傷と痣で覆われていた。無論、息も絶えていた。
春麗はベガを確保しようとしたが抵抗を受けやむを得ず殺害した事と
現場処理の要請を周辺を封鎖していたICPO後続部隊へ連絡をするとその場を立ち去った。
自分が格闘家として全力を尽くし闘える男、闘いの中でしか味わえない興奮を満たしてくれる男は
この世界には存在しないのだろうかと言う思いを胸に…



エミvs男性バイパー

サイバー小学生、エミ。
同級生より背が高く、スタイルも良い彼女だが、間違いなく12歳の小学生である。
経験豊富なバイパーである男だったが、彼は、エミとの一戦で翻弄されっぱなしだった。

「ねぇ、それ本気でやってるの〜?」

エミからの挑発に、男はますます冷静さを失っていく。

「うらあっ!」

男の渾身の一撃も、エミにあっさり受け流され、逆に、ショートパンツから伸びたすらりとした脚が男に襲いかかる。
バキッ!

小学生の蹴りに、崩れかける男。
12歳の女の子などに、負けるわけにはいかない。
必死に耐える男に、エミが襲いかかる。
「いっくぞ〜♪」

バキッ!ベキッ!
「ガハァッ!」
強すぎる…何だこの女…
少女の才能と無邪気さは、男の鍛練の成果を遥かに上回っていた。

エミの猛ラッシュ。
遂に男は金網の端まで追いやられた。
もう逃げ場はない。
そして金網の中には、誰も助けてくれる者はいない。
いるのは男と、二回り以上小さな女の子のみ。
その女の子に、男は絶望へ追い込まれている。

「おりゃー!」
突然エミはジャンプしたかと思うと、背負っていたぬいぐるみが
バーニア状に火を噴いたと思うと、エミの体を宙に浮かせ固定させた。
エミは男のすぐ後ろの金網を両手で掴むと、両膝を男の顔面に叩き込んだ!

ガガガガガッ!

男の顔面に間断なく吸い込まれていくエミの若々しい膝。
宙に浮いたままのエミは、楽しそうに、踊るように膝を動かす。

男の顔は、小学生の女の子に手も足も出ない屈辱と、膝蹴りの痛みで、みるみる血と涙にまみれていく。

男の手がダランと下がったかと思うと、バーニアは更に火力を上げる。

エミは全身のバネを使い体を反らし、両手で思いきりハンマーパンチを男の後頭部に浴びせた。

グシャッ!

男を地面に叩き突けられ、痙攣しながら、立ち上がることはなかった。

少女は男を見下ろし、
「いえーい!楽勝〜!」
とこの年齢の女の子特有の弾ける様な仕草で喜びを表現した。

12歳の女の子に尊厳を踏みにじられた男と、対照的な構図であった…



春麗VSバイソン

ラスベガスのあるカジノ。そこは秘密結社シャドルーの息が掛かったマフィアの手で経営されており、
いかさま賭博と格闘技の賭試合で莫大な利益を上げていた。
またシャドルー四天王の一人バイソンが活動の拠点としているとの情報を得た春麗は
単身、潜入捜査を試みた。無論、賭試合の出場者として。

潜入開始から数週間。ギャンブラーの間では春麗の話題で持ちきりだった。
黄金比率のプロポーションに格闘家には似つかわしくない美貌。それらとは相反する真の強者のみが持つ風格。
そしてチャイナドレスのスリットから覗く極限まで鍛え抜かれた脚が繰り出す妙技。
しかし、もっとも話題となったのは彼女の持つ圧倒的な戦闘力だった。
ある者は蹴り一撃で、ある者は襟元を掴まれ体落としの要領で床へと叩き付けられさせられ昏倒した。
打たれ強い者も居たが何も手出しを出来ないまま、春麗の連続蹴りに沈められた。
今では春麗が現れると対戦相手の掛け率は異常な跳ね上がりを見せる様になった。

だが、春麗の対戦相手にかける者は一攫千金を夢見る極一部の限られた者のみで、
多くの者が彼女に賭け着実に所持金を増やし続けていた。
このままではカジノの利益が伸びず処罰を受ける事となるのは明白とマフィア達は苛立ちをつのらせた。
何度か刺客を春麗へと送りつけたが皆、返り討ちに遭いある者は逃げだし、ある者は逮捕されていた。
そこへマフィア達の手際に業を煮やしたバイソンが自らが春麗を倒すと言い渡してきた。
マフィア達にとっては正に渡りに船。彼らは怒りの矛先が完全に自分達へ向かわないように
細心の注意を払い四天王自らの出馬を願った。

その日も春麗は何人かの格闘家と闘い圧勝していた。
ファイトを取り仕切る黒服が春麗へと挑戦する者は居ないか問いかけていた。
そこへボクサーパンツにタンクトップ、そして手にはボクシンググローブと言う出で立ちの黒人の巨漢が現れた。
無論、シャドルー四天王の一人バイソンである。黒服はバイソンの登場に一瞬、色を失ったが
何事もなかったかの様に春麗とバイソンのファイトが行われる事を宣言した。
掛け率は同率。毎晩、現れては圧倒的な強さを見せつける春麗と気分次第で突然現れ対戦相手を叩きのめしていくバイソン。
その姿を現す頻度から行けば妥当とも思える掛け率にバイソンは元々、良くない機嫌を更に悪くした。

「おい、ネエちゃん。俺のシマで好き勝手してくれたな。只じゃ済まないぜ」
デビュー当時はチャンピオンに最も近い男と言われたヘビー級ボクサー、バイソン。
しかし、手加減を知らない荒々しいファイトで幾人もの対戦相手を再起不能に追い込みボクシング界から干されていた。
そんなバイソンは新たに得た己の強さを誇示し、賞金を稼ぐこの場を荒らされた事に怒っていた。
そして、この場を荒らしていたのは女だったと言う事が火に油を注いだ。バイソンはそんな怒りをぶつけるが如き
恫喝の言葉を春麗に投げはなった。
「あら、ご心配有難う。お礼に貴方の醜い顔をハンサムに整形してあげるわ」
余裕の笑みを浮かべ構えも取らずにバイソンを挑発する春麗。
バイソンはその言葉に異形とも言える怒りの形相で力の限り踏み込みながらストレートを放った。
バイソンのフィニッシュブローの一つであるダッシュストレート。
春麗は跳躍し繰り出されたそれをかわすとバイソンの拳の上に降り立った。
そしてその拳の上から再び跳躍をするとバイソンの背後に着地し、蹴り技主体の持つ構えを取った。

「どうしたのかしら?女に背中を向けて逃げるつもり?
ヘビー級ボクシング世界チャンピオンがそんな事で良いのかしら?
あら、そう言えばチャンピオンにはなれなかったのよね」
更なる挑発の言葉をバイソンに言い放ち、高笑いする春麗。
バイソンは咆哮をあげ再び春麗へと突進する。再び跳躍しパンチをかわすと予測したバイソンは
今度はアッパーを放った。だが、春麗は跳躍せずに足払いを繰り出す。
その一撃でバランスを崩したバイソンは無様に転んだ。
「全く、読みが甘いわね。そんなことだからチャンピオンになれ無かったのよ。
で、いつまで寝ているつもりかしら?」
事前の捜査でバイソンがそのファイトスタイルからボクシング界を干されたと知っていながらも挑発の言葉をあびせる春麗。
その言葉でバイソンはその名の通り猛牛と化した。
今度はステップワークを使いながら春麗へと攻めかかる。だが、そこに冷静さはない。
それは単純な思考回路が、と言うよりはバイソンの闘争本能が導き出した消去法により選択された戦術だった。

右へ左へステップを踏みながら次々とパンチを繰り出すバイソン。
そして、それを最小限の動作だけでかわしながら突きや蹴りを打ち込む春麗。
その攻撃をバイソンはウェービングやステッピング、ガードを駆使し防ぐ。
そのハイレベルな攻防に沸き立つギャンブラー。ギャンブラーの興奮が最高潮に達した時、事態は急変した。
バイソンが繰り出したストレートをかわした春麗の上段突きがバイソンの顔面を捕える。
そのカウンターの一撃で再びバイソンがダウンした。

春麗は突然、構えを変えた。それは正しくボクシングにおけるオーソドックスなファイティングポーズだった。
天才的いや神仙の領域に達する格闘センスを持つ春麗はバイソンとの攻防からボクシングが如何なる物なのかを理解し
早速、実践する事にしたのだ。
「私は手技は苦手なのよ…お得意のボクシングをもう少し教えてくれないかしら?」
春麗の言葉に目をぎらつかせ立ち上がるバイソン。野牛は再び猛攻を開始した。
春麗はその猛攻をウェービング、ダッキング、ステッピングと様々なディフェンステクニックを披露しかわし続ける。
その合間に
「遅いパンチね。ハエが止まるわ」
「そんなパンチじゃ女一人、倒せないわよ」
等、嘲弄し牽制のジャブを放つ。その様子は闘牛士を彷彿させた。
春麗の口から発せられる嘲りの言葉は闘牛士の持つ赤いマント、
そのジャブは闘牛へと突き刺す剣と言ったところだろうか。

次第に春麗の反撃の手数が増えていく。ボクシングの基本コンビネーションとも言えるワン・ツー・ストレート。
更にそこからフックやアッパーで追い打ちをかける。
その攻撃は3連撃、4連撃と次第に数を増し、遂にガードを上下に揺さぶる高度なコンビネーションへと発展した。
攻守は完全に逆転しバイソンのスタミナは春麗の華麗なステップからの鮮やかなコンビネーションブロウで受け徐々に奪われていく。

遂にバイソンは亀が甲羅に首を引っ込めるかの如くガードを固め始めた。ステップ
ワークもウェービングも全く役に立たず一方的に打ちのめされたバイソンの本能は
ガードに徹っし春麗のコンビネーションの隙を突く、逆転の一撃へと賭けた。
春麗は暫くバイソンのガードに意も介さずパンチを打ち続けた。だが、バイソンは必死に耐えた。
ガードを崩さないバイソンに対し春麗は距離を取る。ガードを崩す為に春麗は踏み込みながら渾身の一撃を放ってくる。
そう読んだバイソンはここぞとばかりに渾身のストレートを放った。
その一撃は当たっていればバイソンのボクシング人生、会心とも言えるパンチになっていただろう。

踏み込みによる運動エネルギーを加えた一撃。そう告げたバイソンの本能は確かに合っていた。
だが、その踏み込みからの攻撃が攻防一致である事までは読み切れなかった。
バイソンのストレートをダッキングでかわしながら懐に飛び込む春麗。
眼前に聳え立つバイソンの巨躯。そこで春麗は一気に攻撃エネルギーを解放した。
踏み込みと全身の伸び上がり、下半身の回転を加えたボディアッパーを放つ。
バイソンの強靱な腹筋を掻き分け春麗の拳が突き刺さる。
かつて受けた事の無いの衝撃がバイソンの胃や腎臓を揺さぶり激痛を与えた。
その激痛に耐えるバイソン。今にも崩れそう膝に必死に力を入れるとその巨体が小刻みに振動を始めた。
その振動はボディへ突き刺さったままの拳を通し春麗へと伝わった。
その様に春麗は嗜虐的な笑みを浮かべるとボディに突き立てたままの拳を抉った。

「どうかしら、私のボクシングは?初めてだけど様になってるわよね?」
嘲りの言葉をバイソンにぶつけると春麗は抉り込んだ拳を引き抜いた。春麗の責苦から解放されたバイソンは更なる打撃を防ぎ
体力回復の時間を稼ぐ為に彼女にしがみつきクリンチの体勢を取った。だが、その選択は意味をなさなかった。
春麗はショートフックを肝臓へと放ちクリンチを強引に解いた。
よろめくバイソンの顎をフックとアッパーの中間軌道を持つ春麗のパンチが捕える。
ある名チャンプが得意としたスマッシュと呼ばれるフィニッシュブロウにバイソンが仰け反り、
そのまま背中からダウンしそうになる。それを拒むべく春麗はボディへとストレートを放った。
直立させられるバイソン、そこへ左右のフックが頬へと叩き込まれた。

「軽々しく抱きつかないでくれる?私、汗臭い男は嫌いなのよ」
怒りの言葉と共に次々とパンチを放つ春麗。だが、その口調とは裏腹に未だに嗜虐的な笑みを彼女は浮かべていた。
ボディへのアッパーやストレートでバイソンの体勢がくの字になればアッパーで姿勢を正し、
フックで傾げば逆方向から放たれたフックで直立させられる。
バイソンは降り注ぐパンチの集中豪雨にガードを上げる力すら奪われ、暴力と言う名の荒れ狂う暴風に心を折られてしまった。
シャドルー四天王として裏社会に君臨した男は、血肉の詰まったパンチバックと化していた。

最早、誰の目にも勝敗は明らかだった。一方的に責め立てる春麗とダウンを許されず、只ひたすら殴り続けられるバイソン。
過去の闘いでバイソンが行なってきた光景を再現する美女に誰もが戦慄した。
次第にバイソンの目蓋や頬が腫れ、強烈な打撃により裂けた皮膚から血が流れ始めた。
春麗の拳がバイソンを捕える度にその表情は歪み血が、汗が、折れた歯が飛び散り始める。
対する春麗は自分の拳に秘められていた力を解放し愉悦に浸っていた。

「中々、ハンサムになってきたわね。みんなに最高の顔を見せてあげるのよ」
そう言うと春麗は蹴り技のために鍛え抜いた強靱な下半身を土台にするとバイソンの鳩尾にボディアッパーを突き刺した。
突き上げられた横隔膜が肺を圧迫しバイソンを呼吸困難へと追い込む。
春麗が鳩尾に突き刺した拳を引き抜くとバイソンはよろめきながら口を開閉させ必死に酸素を求めた。
その様は腫上がった両の目蓋も相まって醜怪な深海魚を彷彿させた。その有様にギャンブラーも黒服も言葉を失う。
バイソンはやがて膝が崩れ落ち腹を抱えたま顔から床へダウンした。
その芋虫の様な姿を眺めると春麗は酷薄な笑みを浮かべ言った。
「最高のファイトだったでしょう?私にボクシングを教えてくれたお礼よ。
教え子の勇姿は最高のプレゼントだものね」
その声は既に意識を失ったバイソンの耳には届いていなかった。

数日後、警察病院で目を覚ましたバイソンは取り調べの為に現れた春麗の姿を見ると恐慌状態に陥り事情聴取は困難となった。
やむを得ず別の捜査官が事情聴取にあたる。
バイソンは幾度か証言を渋った事はあったが事情聴取は比較的、スムーズに行なわれた。
春麗の名を出せばすぐさま、証言を再開したと言う。



不知火舞vs力自慢の男

 ガシッ!
「ここまでだ、女!捕まえてしまえば、何もできまい!」
 男の太い両腕が、ついに舞のくびれたウエストを捕らえた。
これまで彼女の素早い動きに翻弄され、まるで付け入る隙の与えられなかった男にようやく訪れた反撃の好機。
これ以上、おちょくられ続けるわけにはいかない。
筋肉の盛り上がる、男の2本の腕が締め上げるベアハッグ。
今まで散々遊ばれてギャラリーの前で大恥をかかされた怒りは、これからたっぷり時間をかけて晴らしてやるつもりだ。
もちろん、この若い女の生唾ものの肢体の感触も、彼女の口から漏れる悲鳴も存分に味わいながら、じわじわと…

 …しかしどうだ。
その剛力の抱擁で宙に浮いたままの舞が浮かべる表情は、実にケロリとしたものだった。
かつて幾人の男たちからレフェリーストップを奪ってきた必殺のベアハッグを前に、平然とした顔で見つめてくるだけだ。
「バ、バカな…!」
 その事態に動揺し、何度も改めて力を込め直すも、抱かれている舞からは苦痛の色など微塵も出てこようとしない。
責め上げているはずの男の側が、焦りから妙な汗の玉を大量に浮かべてしまっている。

「こんなのじゃ、満足できないわ。あたし、もっと激しいのが好みなんだけど」
 男から受けているダメージなど皆無であることを裏付けるように、彼女の口から出る嘲りの言葉も全く普通どおり。
そのまま舞は、露出度の高く、白くしなやかな長い美脚を男の太い胴回りに絡めてくる。

 メギッ!!グリ、ゴリィィッッ!!
「あがっ!!ぁ………!!」
 舞のすべすべとした脚線美にくっきりと筋肉の谷間が形成されたかと思うと、それは一対の強力なプレス機と化した。
「女だからって遠慮しないで、このくらい抱きしめてくれてもいいのよ。フフフ」

 男の視界の中で、舞の悪戯っぽい笑みがかすむ。
今にも、十分に鍛えてあるはずの自分の分厚い肉体が真っ二つに裁断されて殺されてしまいそうな未体験の圧迫。
メリメリと音を立てて食い込む、その美しさからは想像もできなかったパワフルな締め付けに
男の腕の力はとうに緩んで、いまや逆に女にパワーで蹂躙されるだけの惨めな獲物と成り下がっていた。

 無音ながらも長く尾を引く断末魔の中、男は今さらにして気付かされた。
さっき自分がこの女をベアハッグに捕らえることができたのは、自力によるものではなかったのだということを。
自分が誇りにしていた力での勝負でも相手にならないことを思い知らせるために、この女はわざと捕まってあげた、
いわば挑発のひとつに過ぎなかったのだと。
自らの浅はかさ、身の程知らずを力ずくでわきまえさせられた無力感、絶望的な力の差…
男のプライドもろとも舞の脚の間で絞め潰されるようにして、男は落ちた。
こんな、戦いの装束とは名ばかりの水着みたいな、男の世界たる格闘技をたぶらかすようないでたちの女に…
自分の土俵である真正面からの力比べで、女の脚の前に、惨敗。
それも衆人環視の中、まざまざと『女』を感じさせられる太腿絞めで、泣き叫ばされながら失神KO……
男はこの後、どのような顔で目を覚ますのであろうか。



野々村瞳vsチンピラ男

 ガスッ!ガスッ!グシャ、ボゴ、ドグッ…!!
 もしその場を通りかかった第三者は、必ず目を背けてしまい助けに入ることなど絶対できないような
凄惨極まりないリンチが続いている。
ルーズソックス+黒ローファーから繰り出される蹴り、踏みの嵐に打たれて
男は追い詰められたコンクリートの壁にうずくまったまま、蹴り1発ごとに後頭部を背後の壁に激しくバウンドさせられては
さらに上からから襲い来るローファーのソールに顔面を砕かれ、血と涙に濡れて力なく喘ぎ続ける。
まるで自分の敵う相手じゃない…やられた仲間の敵討ちとはいえ、今さらになって男は
喧嘩を吹っかけた相手を誤ったことを命の限り悔いていた。

 だが、その地獄を作り出している女のほうは相手の男の必死で無様な姿には目もくれず
ただ携帯電話の画面だけを注視しながらポチポチとボタンを押し続けているだけだ。
仲のいい友達に送るメールでも作成しているのだろう。
彼女はその片手間に…男を一方的にボコボコにしているのだ!
この柄の悪い男が自分に因縁をつけてきてから今まで、瞳は一度としてその男のほうに視線をやっていないことから
どれだけ彼女がメール打ちに専念しているか、
言い換えればどれだけ彼女が目の前の男をたいした注意力も払わず相手にしているかがわかる。

 瞳にとってはこんなもの、いつものありふれた退屈な出来事でしかないのだ。
喧嘩が強く、男をぶちのめす機会の多い瞳にはそれだけ、こんな無謀な挑戦者に出くわすこととなる。
俺の仲間をやっただの、大事な先輩後輩に恥をかかせただの、暴走族だがチーマーだか彼女には興味のないことだが
とにかく悪そうに格好を付けた男が連日、ボキャブラリーに乏しい脅し文句とともに近づいてくる。

 そのたびに、こんな目にあわせてやっている。
今日のこの男で、何人目だろうか。瞳自身いちいち数えていない。あまりにも、バカバカしくて。
まともに相手をしていても、あくびが出てしまう。
この頃はもっぱら、こんな雑魚男の相手をしてあげるときはメールでも見ながら、打ちながら、
もしくは電話でおしゃべりでもしながらじゃないと退屈でしょうがないらしい。

 ゴシャッ…
 ようやく、超強烈ストンピングの大洪水が止んだ。
数分前まで、彼女に威勢のいい悪態をついていた身の程知らずのチンピラ男は
腫れあがってパンパンに膨張した血だらけの顔で99%塞がった瞼から糸のような白目をわずかに覗かせ、
ローファーの靴跡と泥汚れを何重にも刻み込まれ、塗り込まれ、惨めに変形・着色された、
踏み躙られてズタズタに破れ中身が染み出したピザまんのような顔をして、隙間だらけになった歯を晒した口を
パクパクさせながら無様に転がっている。
 カシャッ。
 さらに上から聞こえてきたその音が、男にとって残酷極まりない処刑宣告となった。
退屈しのぎついでに、瞳はボッコボコに打ちのめした男の情けない負け姿をそのまま携帯のカメラで撮影したのだった。
さらに操作を続ける。今まで作っていた友達向けのメールにその惨劇画像を添付して送ったようだ。
最後の最後まで、遊び感覚。そんな気軽なコギャルに、この男は半殺しにされたのだ。

 操作の終わった携帯をパチンと折り畳み、瞳は初めて男に視線をやり、その無様に膨れた顔を、笑った。



キャンディ・ケインvsベビーフェイス男子レスラー 

とあるプロレス団体のメインイベントは佳境に達していた。
パンクファッションに身を包んだ女子レスラーはロープに振られて戻ってきた、男
子レスラーの頭上を跳び箱の様に飛び越えると太股を顔に絡め、振り子の要領で身
体を入れ替え、男子レスラーの頭頂部をマットへと叩付けた。その技はハイスクー
ルドライバー。女子レスラー、キャンディー・ケインのオリジナルホールドであっ
た。
試合は序盤から、いや、始まる前からキャンディが主導権を握っていた。男子レス
ラーが挑戦するべきチャンピオンを控え室で叩きのめし、ベルトを掲げての入場。
それを阻止しようとするレスラー達。しかし、彼らはキャンディが一睨みするとそ
の鋭い眼光に気圧され誰もが道を譲った。そうして、悠々とリングへ上がるとベル
トを奪った自分がチャンピオンだと告げる傍若無人な主張をし、男子レスラーへの
挑発した。その姿は余りにも不遜ではあったが、ヒールとしての圧倒的な存在感と
敵意を観客に植え付けた。

試合開始からキャンディは男子レスラーを圧倒した。序盤はサイクロンDDTやフ
ランケンシュタイナー等の反動を利用した技や人工衛星アームホイップ、シャイニ
ングウィザードなどのロープカウンターと言ったスピーディーな技を繰り出しつつ、
ダウンした男子レスラーへ対し関節技を決め、徐々にスタミナを奪う、軽量級レス
ラーならではの展開を繰り広げた。
更には男子レスラーの打撃をかわしてトラースキックや、組み付きの一瞬の隙を突
き関節技へと持ち込む等のテクニックを見せ付け男子レスラーの反撃を一切、許さ
ない。そうして、その高度なテクニックはキャンディに対し敵意を抱いていた観客
を魅了していった。

次第に、男子レスラーは焦りを見せ始めた。自分の攻撃はあっさりと返されキャン
ディの繰り出す技には全く太刀打ちが出来ない。自分は何をすればこの生意気な小
娘に勝てるのかと悩み始めた時、キャンディはファイトスタイルを切り替えた。
キャンディは男子レスラーを軽々と抱え上げるとパワーボムでマットへと叩付ける。
そして、倒れた男子レスラーを無理矢理引き起こすとショートレンジラリアットで
再びマットへと沈めた。
その後は、アルゼンチンバックブリーカーやノーザンライトボム、アトミックドロッ
プと言った力任せの技で男子レスラーを痛めつけ、その間にコーナーやロープへ磔
にしてのボディーブローや顔面ウォッシュ等のヒールならではの反則攻撃をキャン
ディは行った。序盤から男子レスラーの反撃を許さず、主導権を握り続けてきたそ
の姿は観客に、圧倒的な強さでリングに君臨するヒールスター、キャンディ・ケイ
ンを完全に印象づけた。

今や、観客の視線はキャンディに釘付けとなっていた。その一挙手一投足を見守り
キャンディの繰り出す技が決まれば歓声を上げ、ヒールへの讃辞のブーイングを上
げた。そして、キャンディはその歓声やブーイングに対しヒールらしい中指を突き
る、喉を親指で掻き斬る等の仕草や、戯けて相手を嘲笑うかの様に舌を見せるアピ
ールで応えた。それらのアピールに観客は更に熱狂の度合いを強めていく。
男子レスラーはプロレスラーとして強さのみならずスター性でも圧倒されていた。
それは、キャンディの一方的な攻撃に晒されている男子レスラーだけではない。リ
ングの下に集まっていた男達もそうだった。更に彼らは一つの事に気付いた。キャ
ンディはうっすらと汗を浮かべているだけで全く息を乱していない事に。そして、
それが意味する事も男達は理解していた。


そうして、今、オリジナルホールドを披露したキャンディはこの試合の仕上げへと
取りかかった。男子レスラーの上半身だけを引き起こすとサッカーボールキックを
男子レスラーへと見舞う。男子レスラーは無様にリングへと叩付けられその反動で
再び上半身を起き上がらせた。そこへキャンディのミドルキックが側頭部を襲う。
その様はサッカー選手が華麗なボレーシュートを決める姿を彷彿させた。だが、男
子レスラーへの責め苦は終わらなかった。
キャンディは再び男子レスラーの上半身を引き起こすと髪の毛を掴んだまま拳を振
り下ろした。キャンディの拳が二発、三発と男の頭部を捕らえる。遂にレフェリー
が髪を掴んだまま攻撃は反則だとキャンディへと警告した。

キャンディはその警告を無視してもう一発、男子レスラーを殴り立ち上がらせた。
そして、男子レスラーをハンマースルーでコーナーポストへと叩付けた。
男子レスラーはコーナーへと激突すると腹をもたれかけたまま磔となった。キャン
ディはその背後から迫るとヘッドロックを掛けロープを顔を擦り付けながら隣のコ
ーナーへと走る。コーナーポストへと頭頂部を叩付けられダウンする男子レスラー。
キャンディはそんな男子レスラーを引き起こし再びコーナーポストへ叩付け磔にす
るとロープに顔を擦り付けながら隣のコーナーへと走った。そうしてキャンディは
リングを一周し、男子レスラーの髪の毛を掴み顔を観客へと向けた。

苦悶の表情を浮かべ、抵抗する力すら残されていない男子レスラーと余裕の表情を
浮かべるキャンディ。その姿はヒーローを痛めつける悪女と言った様相を呈してた。
そして、その悪女は圧倒的な力を持ってヒーローを屈服させんとしている。それは
プロレスにおいてヒールがベビーフェイスを下す醍醐味そのものだった。
観客の興奮は既に最頂点へと達しキャンディの名を連呼していた。そして、キャン
ディはその歓声にフィニッシュアピールで応えた。
キャンディは男子レスラーを引っ立てコーナーへと移動した。そして、男子レスラ
ーをコーナーから一メートル程度の距離で立たせるとコーナーポストへと上った。
ゾンビの様によろめく男子レスラー。そこへキャンディは宙へと身を躍らせた。
男子レスラーの胸板にキャンディのダイビングキックが炸裂する。そのまま、キャ
ンディは男子レスラーの身体に乗るとダイビングキックの勢いを殺さずのサーフボ
ードの様に対角線上のコーナーポスト付近まで滑らせた。その荒技はキャンディの
フィニッシュホールド、スライディングショットだった。

体力を根こそぎ奪われ身動きの取れない男子レスラーの胸にキャンディは片足を乗
せると右手を頭に添え、左手を腰に当てるモデルの様なポーズを取った。そして、
それはこの試合の終演を告げるものだった。レフェリーのカウントに合わせて観客
もカウントを行う。遂にカウントスリーが告げられキャンディの勝利が決まった。
リングの下にはこの団体に所属するレスラー達。しかし、誰もがリングへと上がろ
うとはしなかった。今も、キャンディは息一つ乱していない。この不良少女を売り
にした美少女レスラーにとってこの試合は準備運動程度のものでしかなかった。も
し、キャンディが本気を出したら自分の体がどうなるか…
男達はこのスレンダーな少女に対する恐怖と屈辱に身を震わせてただ、立ち尽くす
だけだった。



春麗VS

青いチャイナドレスの女と道着姿の男が激しい攻防を広げていた。互いの拳を蹴りを
捌き、受け止め、かわす。
女格闘家の名は春麗。中国拳法の使い手である彼女は女性には長身で見事なプロポー
ションの持ち主だった。そして、特に目につくのは良く鍛えられた下半身。その姿か
ら誰もが想像する通り、蹴技を得意としていた。
そして、道着姿の男の名は驕B空手と柔道を習得し、更には波動拳なる氣を操る術を
身につけていると噂される格闘家だ。戦いで乱れた道着の合わせ目から良く鍛えられ
た胸筋と腹筋が存在し、敗れた袖から覗く腕も逞しい。
単純な力比べならば驍ノ軍配が上がるであろう。しかし、格闘技の世界は力だけでは
どうにもならない。様々な手を尽くし相手の隙を捉える技や駆け引きも重要である。
今のところ二人の闘いは互角と言えた。互いに相手の隙を突き闘いの流れを自分に引
き寄せようとしている。

打合いの最中で春麗は一つの事に気付いた。それは驍フ呼吸が妙に規則的な事である。
それは氣を練ると言う行為だと確信した春麗はそれを逆手に取ることにした。。
春麗はこのまま、打合いを続けていたも埒があかない。そんな表情を浮かべると後退
した。そして、驍ヘそれにのせられた。
「波動拳!」
両手を突き出し練り上げた氣を一気に放出する驕Bしかし、その先には既に春麗は存
在しなかった。驍フ視界を一瞬、陰が過ぎる。その直後、春麗は驍フ目の前に姿を現した。

春麗はわざと後退し驍ノ波動拳をを打たせて隙を作らせた。そして、春麗は次の手を
打つ。春麗の膝蹴りが驍フ鳩尾を捉えた。その一撃は驍フ肺を圧迫し呼吸困難へと陥らせ、よろめかせる。
そこへ更に春麗の蹴りが襲いかかる。先ずは念入れと言わんばかりに横蹴りが驍フ鳩尾へ打ち込まれ、更にその脚は驍フ顔へと向けられた。
硬いブーツの底が驍フ鼻梁を潰す。そして、夥しい量の血が噴き出し驍フ鼻から下を赤く染め上げた。
「もう波動拳は使えないわよ」
驍ヘその言葉に内心、動揺した。自分の呼吸法を見破った対戦相手は春麗が初めてで
あると同時にそれを完全に封じられたのだ。乱れた呼吸は時と共に戻していけば良い。
だが、鼻腔内の出血は呼吸の妨げとなり氣を練る事を不可能とする。しかも、被害はそれだけでは無い。
呼吸が乱れれば体力の消耗も激しくなる。驍ヘ目の前の女拳士の勝負観に戦慄を覚えた。


長期戦は不利になる。そう踏んだ驍ヘ一気に勝負をかける事にした。中段や下段への
ラッシュを仕掛ける驕B春麗はそれを冷静に防御し受け流した。しかし、驍ヘ愚直と
も言える程その攻撃を繰り返す。対する春麗もそれを完全に捌いた。
驍ヘ中段と下段の攻撃を十分、印象づけた頃に突然、宙を舞うと旋回し蹴りを放った。
それは驍フ必殺技の一つ竜巻旋風脚だった。その一撃は並の格闘家なら十分に奇襲効
果を発揮していたであろう。だが、春麗は違った。竜巻旋風脚に対し春麗は後ろ回し
蹴りで対抗した。交錯する二人の蹴り。その勝負を制したのは春麗だった。
無様に跳ね飛ばされ地面へと叩付けられる驕B
「あれだけ中段と下段を見せ付けられれば何かあると思うわよ」
春麗はつまらなさそうにそう告げる。驍ヘその言葉に何も答えずぎこちなく立ち上り
構えを取る。しかし、その表情には苦痛が浮かんでいた。先程の蹴りで脚を負傷している事は確かだった。
だが、その目はまだ負けを認めていなかった。

再び対峙する二人。先に動いたのは春麗だった。一気に間合いを詰めると春麗は回し蹴りを放った。
その一撃は驍フ側頭部を捉え脳を揺さぶる。しかし、春麗の攻撃はそれでは留まらなかった。
回し蹴りの回転を殺さず、更に後ろ回し蹴りを放つ春麗。
その踵は寸分違わず先と同じ部位に吸い込まれていく。驍フ身体はその一撃で傾いた。
しかし、驍ェ倒れる事は許されなかった。春麗は後ろ回し蹴りを放った脚で内回し蹴りを驍フ側頭部へ見舞う。
無理矢理、直立させられる驕B
そこへ更なる蹴りの連打が驍襲った。前蹴り、横蹴り、回し蹴り、様々な蹴りが様々な角度から
驍フ上半身へと打ち込まれる。しかも、それらの蹴りはどれも鋭く重い。それは春麗の持つ筋力と技量を以て為せる技だった。

次第に春麗の蹴りは驍フ頭部へと集中し始める。
やがて、驍フ顔は無惨な状態へと化した。頬や目蓋、至る所が腫れ上がり痣と裂傷と流血に覆われた。
そして、春麗の蹴りが頬を捉えると口から血を迸らせ折れた歯を撒き散らす。
更に驍フ目は焦点が合わず闘志も意識もない虚ろなものとなっていた。
「そろそろ終わりにしましょう」
春麗は片足立ちで蹴りを乱打しながら酷薄な笑みを浮かべそう告げた。そして驍フ顎へ目掛け突き上げる様に渾身の上段横蹴りを放った。
顎が砕ける音が響き渡り驍ヘ宙を舞うと再び大地へと叩付けられた。
「噂ほどでもなかったわね…」
春麗はそう言うと失神し痙攣する驍尻目に立ち去った。その顔には言葉とは裏腹に
嗜虐心を満たした笑みが浮かんでいた。



春日野さくら&神月かりん vs 男子格闘家一同

グローバル格闘武術大会。
世界各地から推薦された16名の格闘家が一堂に会し、
1DAYトーナメントで真の最強を決める年に1度の大イベント。

開会式が30分後に迫り、選手控え室には並々ならぬ緊張感が張り詰めていた。
在る者は念入りにテーピングを巻き、また在る者は集中力を高めるために瞑想している。
緊張感を隠し切れず小刻みに体を震わせている者もいた。
彼らはこの大会を勝ち抜くために尋常ならざる鍛錬を積み重ねてきたのだ。

そんな控え室に、突如2人の少女が駆け込んできた。
春日野さくらと神月かりん。
このトーナメントに出場する女子高生ストリートファイターの2人だった。

「ここが控え室ね…。」
「汗臭いところですわね…。香水を撒かないと耐えれませんわ…。プシュッ、プシュッ…」

うるさくハシャぎながら部屋の奥まで歩いてきた2人。
彼女たちは机に置いてあった誰かの荷物を片手で払いのけると、そこにどっしりと腰を下ろした。

「まだ30分もあるわ。間に合って良かったですね。」
「おーーっほっほっほっほっ。神月家の自家用ヘリを甘く見られては困りますわよっ。」
「それにしても春麗さんも無茶言うわよね…。突然こんな試合に出なさい!だなんて…。」
「早朝練習を切り上げてこんな所に来ようとは、流石の私も予想できませんでしたわ。」

騒がしい女子高生2人を唖然とした表情で見つめる他の男子格闘家たち。
彼らのペースは完全に乱されてしまった。
特に自分の荷物を床に散らかされたロシア人レスラー、ザンギエフは怒りを抑えるのに必死だった。
そんな彼らの視線など全く意に介さず、当の2人は配られたトーナメント表を手にお喋りを続けている。

「かりんさんとの対戦は決勝戦ね。それまで3試合もあるからウォーミングアップには十分かな。」
「今日こそは必ず勝って見せますわよっ。」
「私も負けない…。あの人に勝つまでは絶対負けられない!!」

160センチ前後しかない小柄な女子高生2人の信じられない会話。
恐らくこのトーナメントのレベルの高さを知らないのだろう。
あまりにも世間知らずなその態度に、他の男子選手たちはただただ呆れるばかりだった。

「それはそうと…。練習の途中で来ちゃったから汗びっしょり。今のうちに着替えとこっ。」
「私もそうしますわ。」

男子選手の存在すら無視するように、彼女たちは着替えまで始めてしまった。
彼らの視線が自然と2人に集中する。
それでも彼女たちは、何の恥じらいも見せずに堂々と脱ぎ始めた。

2人はまずブーツを脱ぎ、靴下を脱いだ。
そしてセーラー服のネクタイを外し上着を脱ぐ。
さらにスカートを脱ぐと、2人は完全な下着姿になった。

彼女たちの若々しい肉体が次々と露になっていく。
最初のうちはそのセクシーな光景に興奮を覚えていた男子選手たち。
しかし露出度が増すにつれ、彼らの興奮は驚愕へと変わっていった。

彼女たちの肉体は、芸術と呼べるほどに洗練されていた。
特に格闘の基礎となる下半身は異常なまでに発達していた。
太腿やふくらはぎの逞しさは、それだけで彼女たちが超一流のファイターであることを物語っていた。
腹筋は当然のように割れており、腕や首回りの筋肉もしっかり盛り上がっている。
セクシーであるはずの胸の膨らみが、どうしてもアンバランスに思えてならなかった。

男子選手たちは彼女たちの肉体を見て冷や汗を浮かべていた。
他のどの男子選手の肉体も、彼女たちと比べると明らかに見劣りするのだ。
ストリートファイトで鍛え上げた彼女たちの筋肉は、本物でしか醸し出せない特殊な輝きを放っていた。


「ようようお嬢さんたち…。控え室はみんなのものだ。もう少し静かにしてくれないか…。」

着替えが済んだのを待って声を掛けたのは、タイ人のムエタイチャンピオン、サガットだった。
ベテランであり優勝候補の一角でもある彼が、他の男子選手を代表して彼女たちを注意したのだ。
しかし彼女たちのお喋りは一向に止む気配を見せない。

「おいっ、聞いてるのか!!周りの人に迷惑だろ!!」

話を聞かない彼女たちに怒って、大声で怒鳴りつけたサガット。
しかし彼女たちはそんな怒鳴り声も無視して騒ぎ続けている。
女子高生のお喋り好きはちょっとやそっとじゃ治らない。

いつもは冷静で紳士的なサガットも、これ以上怒りを抑えることが出来なかった。
彼は拳を震わせると、目の前にいたかりんに殴りかかってしまった。
後頭部目掛け背後から襲ってくる怒りの鉄拳。
控え室にいた選手たちも、思わず顔を背けてしまった。

控え室を静寂が包み込む。
男子選手たちは口を大きく開けて驚きの表情を見せている。
一番驚いたのは、鉄拳を振るったサガット自身だった。

神月かりんは首を少し傾けるだけでそのパンチを躱していた。
背後から襲い掛かってくる拳筋をその気配だけで完全に読み切る。
それは並の格闘家には想像すらできない神業だった。

彼女は振り返ってサガットを睨みつけた。
その気高くも美しい視線に、彼の心は凍りついた。

「庶民の分際で私に襲い掛かってくるなんて、なんて身の程知らずなのかしら…。 」

そしてサガットの体が宙を舞った。
彼はそのまま控え室の壁に激突し、白目を剥いて失神してしまった。
神月かりんは机に腰を掛けたまま、その鍛え上げられた右脚で彼を蹴り飛ばしたのだ。

スカートの下から覗くスパッツに包まれた逞しい太腿。
サガットの巨体を蹴り1発で弾き飛ばすその脚力は、紛れもなく本物だった。

「てめぇ何しやがるんだ!!」

サガットの惨劇に業を煮やしたザンギエフが神月かりんに襲い掛かる。
レスリングで鍛えた身長214センチ体重121キロの巨体。
しかし世界中のあらゆる格闘技に通じているかりんにとって、そんな巨体など恐れるに足りぬ存在だった。

気がつけばザンギエフの巨体はかりんの尻に敷かれていた。
合気道の奥義で投げられたと思った瞬間、柔術技で腕関節を極められ、サンボの足技で首を絞められてしまった。
武芸百般に通じる彼女にしか出来ない美しいオリジナル技。
全身が悲鳴をあげ、もがき苦しむザンギエフの顔を、かりんは余裕の表情で見下していた。
一方のさくらは、短めの髪をいじりながら困った様子を見せている。

「かりんさん…。控え室でやるのは止めた方が…。」
「あらっ、さくらさん。彼等の方からいきなり襲い掛かって来ましたのよ。」
「それはそうだけど、選手が減っちゃったら主催者の方が気の毒でしょう?」

ザンギエフを捻じ伏せたまま、女子高生ファイター2人は何かと相談し始めた。
彼女たちの圧倒的な強さに驚いて、他の男子格闘家たちは身動きがとれない。

「春麗さんにも怒られるかもよ…」
「心配御無用ですわっ。主催者の方には神月財団から損失を穴埋め致しますわっ。」
「それは心強いけど…。でもホントにこれで良いのかなぁ…。」
「仕方ありませんわよ。ここでもう準決勝まで終わらせてしまいましょう!」
「それしかないか…。よしっ!そうと決まったなら、開会式が始まる前にさっさと片付けましょう!」

女子高生2人の出したあまりにも身勝手な結論。
そして春日野さくらがフロアに下り立った。
控え室を再び緊張感が包み込む。

「Aブロックの方は私へ、Bブロックの方はかりんさんの方へどうぞ。
 時間がないから、できるだけまとめて掛かってきて下さいね。」

両手を腰にあてて胸を張りながら、さくらは平然と言ってのけた。
神月かりんも巨漢のザンギエフを太腿で絞め落としてた後、悠然とさくらに続いた。

軽く首を回して戦いに備える2人。
女子高生2人でトーナメントに参加する男子選手全員をまとめて相手にしようというのだ。
少々腕に自信があるとは言え、世界の有名な格闘家14人と一度に戦うなんて正気の沙汰とは思えない。

しかし彼女たちは確信していた。
彼らをまとめて相手したところで準備運動にすらならないことを。
ここにいる男子格闘家たちなど最初から虫けら同然としか思っていないのだ。


「やぁーーっ!」
春日野さくらの蹴りで、相撲レスラー本田の巨体がサッカーボールのように弾んでいった。
玉川南高校の1年生、若干16歳の彼女だが、その素質は他の追随を許さない。
最強の格闘家として誰もが認める春麗も、彼女こそが自分の後継者であると断言している。

「ボボボボボッ…シュバーーーン!!」
プロボクシング王者バイソンを、かりんは敢えてパンチで葬り去った。
美しい金の巻き髪が靡くたび、男たちは悲鳴をあげながら意識を失っていく。
クラスメイトのさくらには及ばないものの、彼女の実力も並の格闘家とは比較にならない。

「さぁ、次にヤラレるのは誰??」
「情けないですわね。もっと手ごたえのある男は居ないの??」
「たっ…助けてくれ〜〜!!」
「あははっ、私たちから逃げられるとでも思ってるの?」
「ひっ…ひひぃ…、ゆっ…許して…。」
「おほほほほっ…。敗者に口なし!!ギブアップなんて許しませんわよっ。」
「あががががががががががががふっ……」

控え室には男子格闘家たちの悲鳴がこだました。
女子高生ファイターの2人は、余裕の笑顔を見せながら次々と彼らを葬り去っていく。

「さぁ…残りはもうあなた1人よ。男らしく正々堂々と掛かってらっしゃい!!!」

春日野さくらが挑発する。
アメリカ空軍出身のガイル少佐は、絶体絶命のピンチに陥っていた。
ふと横を見ると、神月かりんがブラジルの獣人ブランカを片手で絞め上げている。
控え室に残った男はもう自分しかない。

「さぁ早く!手も足も出さないでいてあげるから!」

女子高生にここまで挑発されてはどうしようもない。
ガイルは腹を決め、厳しい鍛錬の成果すべてを彼女にぶつけることにした。

小柄なさくらに全力で襲い掛かっていく長身のガイル。
彼は世界トップレベルのスピードを武器に、次々と攻撃を繰り出していく。
しかし稀代の天才少女にとって、彼の攻撃はあまりにも退屈なものでしかなかった。
さくらは最低限の動きだけで、ガイルの攻撃を軽々と躱していく。
あまりにもレベルの違うその動きに、彼は戦う意欲すらすぐに失ってしまった。
そんな惨めなガイルを蔑んだ表情で見下すさくら。

「全然ダメね…。鍛え方からなっていないわ…。」

さくらは首を横に振りながらそう呟くと、セーラー服の袖を撒くって腕に力を込めた。
格闘家としては随分華奢に思える腕に逞しい力瘤が浮かぶ。

「ほらっ、触ってみて。」

言われるがまま、彼女の腕に恐る恐る手を伸ばすガイル。
アメリカ人男性の大きな手が、女子高生さくらの腕に触れた。

感触がまるで違う…。
人の肌いうより、何か生温かい金属でも触っているような感覚。
一体どんなトレーニングをすれば、このような固い筋肉を身につけられるというのか…。
ガイルは驚きを遥かに通り越して、恐怖に近い絶望すら感じていた。

次の瞬間、さくらのスカートがひらっと靡いた。
気が付けばガイルの顔先1ミリのところに、彼女の寸止めの蹴り足が迫っていた。
驚くことすらできない驚愕のスピード。
その風圧だけで、彼は力なく後ろに倒れこんでしまった。
全身に冷や汗を浮かべるガイル。
スカートの下に穿いた彼女のブルマーが、彼の脳裏には残像として残っていた。

「この程度は鍛えてないと、こんな蹴りは打てないわよ。」

さくらは自分の力瘤を指差しながら自慢げにそう語った。
一見カワイイ女子高生にしか見えない彼女。
しかしセーラー服の下に隠されたその肉体は凶器以外の何物でもなかった。

いよいよ開会式が始まる。
大会プロデューサーが選手たちを迎えに控え室までやってきた。
扉の向こうからは女の子2人の賑やかな話し声が聞こえる。

「ガチャッ…。そろそろお時間です。選手の方は…」
部屋の中を見廻したプロデューサーの思考が停止した。

控え室の床には男子選手14名の屈強な体が平積みにされていた。
全員が全裸にされており、完全に意識を失っている。
格闘王者を目指して厳しい鍛錬に耐えてきた彼らを女子高生2人は楽々と料理していた。

部屋の中央にある机では、セーラー服をの2人が楽しそうにお喋りしている。
プロデューサーが来たのに気付いた彼女たちは、少し気まずそうにこちらを振り返った。

「すっ…すいません…。面倒だから、先に全員片付けちゃいました。」
「心配はいりませんですわよ。これからの決勝で、素晴らしい戦いをお見せいたしますわっ。」



春日野さくらvs前に敗れた男

「ついに見つけたぞ、小娘!勝負しろ!!」
「え?」
「貴様はわが流派に、死にも勝る耐え難い屈辱を与えた!今この場でこの無念、晴らさせてもらう!!」
「あの〜、今私急いでるんで…今度にしてもらえますか?」
「こっ…この女!!」

 通学中の1人の女子高生の前に、道着姿の男が立ちはだかる。
おそらく、どこかの道場の師範なのであろう。
その憎悪に満ちた表情と口調から、彼の道場が彼女の手でどんな生き恥にまみれさせられたかがうかがえる。
かなりの長い間、彼女を捜し求め、追い続けていたのに違いない。
しかし、その程度のことはこれまで数え切れないほど行ってきたさくらにとって、ごくありふれた実に小さなことでしかない。
その証拠にさくらは、目の前に立つ男のことなどほとんど覚えていない様子だった。

 彼女がストリートファイトの世界に身を投じるきっかけとなった、憧れのあの人は
数ヶ月前に彼女の拳によって、顔を2倍近くに腫れあがらせながら血の海に沈んだ。
あっさりと目標が達成されてしまい拍子抜けしたさくらは、自らの力を試す場所を求めて道場破りを始めた。
こんなはずがない、憧れていた格闘技の世界はこんな底の浅いものじゃないはず、もっと強い人がきっといる…と。
だが、何箇所巡ろうと彼女のそんな思いは叶わなかった。
ごく短期間のうちに開花した天才的な格闘センスこそが、彼女自身の想像をはるかに超えていただけだ。
そんな女子高生1人に乗り込まれては師範以下全員ぶちのめされて、戦う男の沽券は彼女のスニーカーの下で泥にまみれ、
生き恥のままに看板をゴミ以下に失墜させられていった道場が続出した。
今彼女の前に立つこの男は、数多いそんな男たちの中の1人なのだ。

「遅刻しちゃうんで、それじゃ」
「ま、待て!貴様逃げるのか!今日まで我々が貴様のせいでどれだけ…」
 ズゴォ!!

 …一瞬だった。
時間ばかりを気にしてその場を去ろうとするさくらに追いすがり、殴りかかっていった師範の男の下顎を、
ちらりと軽く後方に目をやっただけの彼女の後ろ蹴りが鋭く、猛烈に打ち抜いた。
男の目になど、全く捉えることのできないスピードで。
顎をえぐられたその衝撃に大脳を揺さぶられ、男は電池の切れかかったオモチャのように数歩フラフラと足を進めた後、
朦朧とした意識に、ひらめいたさくらのスカートから覗いたブルマの赤い色を焼き付けながら…ゆっくりと崩れ落ちた。

「本当に時間ないんです、ごめんなさい!また今度」
 一瞬小さく手を合わせてから、走り去っていくさくらが少しだけ申し訳なさそうに残していった言葉は、
顔面をアスファルトに擦りつけながらヒクヒクと痙攣している男には届いたのだろうか。



ブラック・ウィドーvsヴィクター・オルテガ

CWA初代チャンピオン、マスター・オブ・マッスルボマーことヴィクター・オルテガの1年振りの復帰。
それを盛り上げるためのトーナメント、そのはずだった。
しかし、決勝戦でオルテガを破ったのは謎のレスラー、ブラック・ウィドー。
全身を蜘蛛柄のタイツで身を包み、顔も下半分以外はマスクで覆っていて素顔はわからない。
そのタイツの柄に相応しく、蜘蛛のようにしなやかな動きで翻弄され、
オルテガは全く手が出ず、たった15分でマットに沈んだのだ。

「まさか、この私がこんなワケのわからない奴にやられるとは・・・」
「CWA初代チャンピオンって言っても所詮はこの程度なのね・・・」
「・・・何!?」
今まで、一度も言葉を発したことのなかったブラック・ウィドーから聴こえた声。
それは、ハスキーだが明らかに女の声だった。

「もう、これも必要ないわね」
ブラック・ウィドーはおもむろにタイツの胸の部分を両手で掴んだかと思うと、一気にタイツを引き裂いてしまった。

「・・・・・っ!!?」
強靭なラバー製のタイツスーツをいとも簡単に引き裂いて現れた肉体。
それを見て、オルテガは思わず息を飲み込んだ。

タイツを着ていたブラック・ウィドーは確かに逞しかったが、それはタイツの着膨れだと思っていた。
だが、それは大きな間違いだということに気付く。

巨大な広背筋。括れたウェストには見事に六分割された腹筋。
ハイレグタイプのスポーツパンツから伸びる丸太のような太腿。
ウェストの括れさえ無ければ、男レスラーの肉体といっても差し支えなかった。
美貌の素顔と、首から下の圧倒的な筋量がどうしても同じ人間のモノとは思えない。

しかし、何故かブラック・ウィドーは胸と両腕の上腕をテーピングでグルグル巻きにしていた。
胸はまだしも、上腕があんなにキツく固められていては力なんて入れられないのではないだろうか。

「ふふっ、このテーピングが気になる?」
オルテガの視線に気付いたのか、ブラック・ウィドーは妖艶な笑みを浮かべた。

「・・・まず、この腕のテーピングは・・・ハンデよ!」
ブラック・ウィドーは、両腕を肩の高さで折り曲げ力を篭める。ダブルバイセップスのポーズだ。

ミチッ・・・ ミチッ・・・

ガチガチに巻かれているはずのテーピング。その上腕の真ん中辺りからテープが裂け始めている。
上腕二頭筋と上腕三頭筋が盛り上がり、徐々にテープの戒めを解いて行く。

ブチブチ・・・ ブチィッ!!

テープの拘束を解いた上腕には、見たこともないような巨大な力瘤が盛り上がっている。
そして、そのまま両腕を下げ、再び力を篭める。いわゆる、マスキュラーポーズだ。

ミチッ・・・ ミチッ・・・

今度は、背中の辺りからテーピングの裂ける音がし始める。

ブチブチブチィッッ!!

タンクトップタイプのスポーツブラを押し上げるように、ブラック・ウィドーのバストが顕わになる。
大胸筋の広がりに負けないぐらいのビッグバスト。それを隠す為のテーピングだったのだ。

「・・・お前、ホントに女だったのか・・・。それが何故、男のリングに・・・」
「単に腕試しよ。鍛え過ぎちゃって女じゃ相手が居なくなったの」
「じゃあ、プロフィールも・・・・・」
ブラック・ウィドーの公称プロフィールは、205p95s・・・ということになっている。
だが、どう見てもブラック・ウィドーの筋肉ボディは95sどころではない。

「身長はホントだけど・・・体重はサバ読んじゃった♪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・85sぐらい」
「・・・・・!!」
オルテガは、210p156s。オルテガより5cm低い身長ながら、何と、体重はそのオルテガより重い180s。
女レスラーということを差し引いても、驚異的な数値だ。

「・・・くっ! 最初からそうだとわかっていれば、あんな試合展開には・・・」
「ふ〜ん・・・。別に良いわよ、決勝戦をやり直しても」
「本気か? もう手加減はせぬぞ?」
「あなたの気の済むまで、何度でもやってあげるわよ・・・ふふっ」
ブラック・ウィドーの明らかな嘲笑。

「この女、いい気になっているのも今のうちだ!」
キレて襲い掛かったように見せてその実、オルテガは冷静だった。
さっきは、トリッキーな戦法に翻弄されて敗れた。ならば、力勝負に持ち込めば良い。
オルテガはそう考えたのだ。

ガシッ!

リング中央で両者は両手を組み合わせ、オルテガが望んだ通りの力比べの形になった。
体重はともかく、上背ではオルテガが有利・・・なはずだった。
しかし、オルテガがどれだけ力を入れても、ブラック・ウィドーは微動だにしなかった。

「ふふふっ。私がトリッキーなレスラーだから、力勝負に持ち込めば勝てる・・・なんて思った?」
前傾姿勢で全体重を乗せて、相手を倒そうと必死の形相のオルテガとは裏腹に、
ブラック・ウィドーは直立不動のまま、涼しい顔をしている。

「ならば・・・!」
このままではらちがあかないと考えたオルテガは、体勢を変えようとする。

「ダ〜メ♪ もう少し、力比べを楽しみましょう」
「ぐぁっ」
オルテガは、組んだ手を解こうとしたが、全く手を離すことが出来ない。
ブラック・ウィドーの強靭な握力がそれを許さなかったのだ。

「何で腕のテーピングのハンデが必要だったか・・・教えてあげる」
そういうとブラック・ウィドーは、オルテガの左右の手を揃えて左手一本で握り直した。
男のオルテガが両腕、女のブラック・ウィドーが左腕一本という屈辱的な力比べ。
しかし、オルテガに圧倒的に有利な状況にも関わらず、押しているのはブラック・ウィドーの方だった。

「ぐっ・・・!」
ついに、オルテガが片膝を付いてしまった。

「ほら。これだけ腕力に差があるんだもの。ハンデ、必要だったでしょ?」
ブラック・ウィドーは、空いた右腕を曲げ、力瘤を作って見せた。

オルテガも、決してパワーが無いわけではない。
かつてのチャンピオンであり、その豪腕で多くのレスラーをマットに沈めて来た。
自分より大きいレスラーと闘っても負けることはなかった。
自分より腕が太いレスラーとも、力比べをして負けることはなかった。

しかし、目の前にある女レスラーの腕。
ここまで、筋肉を搭載しながら極限まで絞り込まれた巨大な力瘤。
シェイプされていて尚、自分よりも二回りは太い。

ブラック・ウィドーが更に力を入れると、ついにオルテガは両膝をマットに着いてしまった。
伝説のチャンピオンが、両手を揃えたような状態でマットに跪く。
それは、神に祈りを捧げているようでもあり、目の前の女レスラーに許しを乞うているようでもあった。

打撃でもなく、投げ技でもなく、関節技でもない。
ブラック・ウィドーは、純粋な力比べでオルテガを跪かせたのだ。しかも片手で。

「大の男が、両腕使って片腕の女を押し返せないなんて・・・情けないなぁ」
蔑むような、哀れむような、そんな表情だった。
単に、ブラック・ウィドーがオルテガよりも筋力において勝っていた。ただ、それだけなのだ。

「このまま、あなたをマットに這い蹲らせても良いんだけど・・・それだと、芸がないわね」
オルテガの両手をガッチリ掴んだ左手を、今度は宙高く差し上げた。
5pの身長差があるため、宙に浮きこそしなかったが、
オルテガは両手を頭の上でロックされたまま無理やり立たされた形になった。

「それっ」
ブラック・ウィドーが、空いた右手で水平チョップを放つ。
上腕囲80pという、信じられない極太上腕から放たれるチョップ。

ドガッ!

「ぐぁあああ!!」
オルテガの胸から、鈍い音がした。
上半身を固定され、力の逃げ場が無い状態。アバラが無事で済むはずが無かった。

「あれ? もしかして、たった一発でアバラ折れちゃったの?」
やれやれ、といった表情でブラック・ウィドーはやっと、左手のロックを解いた。その刹那。

ドゴッ!

再び膝を付きそうになったオルテガ目掛けて、その左腕でラリアットを放った。
助走の全く無い、ただのスタンディングラリアット。
しかし、その圧倒的な威力はオルテガの巨体を一回転させ、マットに叩き付けた。

「オルテガ。あなたの必殺技って確か、マッスルボマーって言われてるのよね?」
オルテガの必殺技、マッスルボマー。
相手を抱え上げ、ジャンプして上空から叩き付ける、豪快なジャンピングパワーボム。
オルテガは、この技で数々のレスラーをマットに沈めて来た。オルテガの代名詞といっても過言ではない。

「あなたに敬意を表して、マッスルボマーを参考にした取って置きを喰らわせてあげる」
「・・・なん・・・だと」
ブラック・ウィドーは、アバラが折れ息も絶え絶えでマットに横たわるオルテガの両足首をそれぞれの手で掴んだ。
ジャイアントスイングならわかるが、パワーボムは普通、もっと太腿よりの膝を抱えるようにして持つ。
足首を持っても、リフトアップなど先ず無理だからだ。尤も、それは普通のレスラーの話。

「じゃあ、行くわね。覚悟は良い?」

グンッ!!

「うおぉぉぉ!」
何と、ブラック・ウィドーはオルテガの足首を持った両腕を一気に頭上まで持ち上げたのだ。
それは、まるでサーカスやチアリーディングのような軽がるとしたリフトアップだった。
しかし、リフトアップされているのは210p156sの巨体レスラー。
ブラック・ウィドーの身長が205pだから、リフトアップしている腕の長さとオルテガの身長を合わせれば
オルテガの頭は、5m近い高さにあるということになる。天井の照明まであと数mもない。

156sの巨体を持ち上げ、尚且つ、崩れることなく頭上で立たせるバランス感覚。
ブラック・ウィドーの怪力でなければ、到底出来ない芸当だった。

「・・・まさかっ!」
「その、ま・さ・か・よ♪」
ブラック・ウィドーは、オルテガを持ち上げている両手を無情にも、一気にマット目掛けて振り下ろした。

ドゴォォォンッッ!!!

オルテガは、轟音と共に5m近い高さから物凄いスピードで後頭部からマットに叩き付けられた。

「これが、私の取って置き。名付けるなら差し詰め、アルティメットパワーボムってところかしら」
「・・・う、が・・・あぁ・・・」
幾ら、衝撃を吸収するマットとはいえ、今のを喰らってもオルテガはまだ意識があった。
さすがは元チャンピオンといったところか。

「ふふ、そうこなくちゃね」
ブラック・ウィドーも、まだ終わらせるつもりではなかったらしい。
今度は、オルテガをうつ伏せに引っくり返して、また同じように足首をガッチリ掴んだ。

グンッ!!

あっという間に、さっきと同じ体勢になった。ただ、オルテガが前後ろ逆になっているが。

「・・・・・や、やめ・・・」
「さぁ、マットと熱いキスをさせてあげる」

ドゴォォォンンッッ!!!

グチャッ

二発目のアルティメットパワーボム。オルテガは、爆音と共にマットと熱いキスを交わした。

「どう? キスの味は」
オルテガから答えは返って来ない。

「あら? どうしたの?」
慌てて、オルテガを仰向けにひっくり返す。

「あちゃー・・・。ちょ〜っと、やり過ぎちゃったかな・・・? てへ♪」
ブラック・ウィドーは、ウィンクをしながら舌を出しておどけて見せた。

仰向けになり、露わになったオルテガの顔面。キスの代償は、大きかった。
鼻は完全に潰れて陥没し、前歯は全て折れ、ボロボロになっていた。

「ストーップ! ストーーップ!!」
レフェリーが慌てて止めに入る。


▽CWAトーナメント決勝戦
○ブラック・ウィドー [8分3秒 アルティメットパワーボム] ×ヴィクター・オルテガ


「ベルトは要らないわ。貰ってもしょうがないもの。ホント、もっと強い男は居ないのかしら・・・」



ボンバー来島VS男子レスラー

ここ東京ドームでは設立十五年周年を迎えた新日本女子プロレスのメインイベ
ントが始まろうとしていた。
リングの上に立っているのはパワーを売りとした二人のレスラー。青コーナー
には分厚い筋肉とスタミナ源である脂肪で覆った典型的な重量級の男子レスラ
ー。そして、赤コーナーでは新女ナンバー2と目され、大型女子レスラーとし
ては珍しく筋肉が目立つボンバー来島がウォームアップを行っていた。
レフェリーの呼びかけに応じリング中央に歩み寄る二人。男子レスラーと来島
の体格差はヘビー級とジュニアヘビー級ほどの差があった。
そんな二人に対しレフェリーははボディチェックを行う。そして、凶器を隠し
持っていないことをレフェリーは確認すると二人の中央に立ち一歩、退いてか
ら試合開始の合図を付けた。

ゴングが打ち鳴らされると同時に二人は組み合う。男の手に見た目以上に来島
の鍛えられた筋肉の感触が伝わった。しかし、男はその感触を無視し来島を投
げようと力を込める。どれだけ鍛えていても所詮は女。重量級の自分が力比べ
に負けるはずがない。男はそう考えていた。
だが、男の考えに反し来島は微動だにしない。
「おいおい、遠慮してるのか?だったら、目を覚まさせてやるか」
来島はそう言うと男を自分の肩に倒立させるように持ち上げた。そして、その
まま余裕の表情を浮かべその体勢を一分程、維持してから身体を反らし男をリ
ングへと叩付ける。
長滞空ブレーンバスター。それはパワーレスラーが己の力を誇示する為の魅せ
技として用いる技の一つだった。

背中からリングに叩付けられ一瞬、息が乱れる男。先ずは来島が立ち上がり、
遅れて男が立ち上がった。リング上で睨み合う二人。
「お前の得意技、見せてくれよ。オレと勝負しようぜ」
しばしのにらみ合いの後、来島が男を挑発する。男はその言葉にのり来島に対
してその場から助走を付けラリアットを放った。
強靱な肉体がぶつかり合う音が会場に響き渡り、観客の誰もが来島が倒された
と思った。しかし、その予想に反し来島は微動だにせずに立っている。
男のラリアットを受けた来島は如何にも効いてないと言う不敵な表情を浮かべ
た。男はその表情に激高し、ロープへと走るとその反動を利用し再びラリアッ
トを放った。

先程よりも激しい音が場内に響く。男も観客も今度こそ来島にはその一撃は耐
えられないと考えた。だが、またも予想に反し来島は微動だにせずに立ってい
る。
「情けない男だなぁ…それじゃ、こっちから行かせて貰うぜ」
そう言うと来島は二、三歩後退してからショートレンジラリアットを放った。
ひときわ激しい音が鳴り響き、それに続いてマットに身体が叩付けられる音が
響き渡る。
僅か数歩の助走で男のロープの反動まで利用したラリアットを上回る威力のそ
れを放つ来島に観客は驚愕した。
一方、男は来島とぶつかった衝撃とリングに叩付けられた衝撃で意識が朦朧と
していた。そんな、男を来島は冷ややかに見下ろしている。

ようやく意識を取り戻した男の視界に自分を見下ろしている来島が飛び込んで
きた。倒れた相手に寝技もかけずに待っている来島の余裕に男の怒りが込み上
げてくる。しかし、それ以上に来島のパワーと強靱さに対する畏怖の念が男を
支配していた。
「これ以上、続けても試合は盛り上がりそうもねぇなぁ…さっさと終わらせる
か」
来島はそう言うと男を立たせロープに振った。短距離走の選手のようにロープ
へ走る男。男は何とかロープを掴み来島の元へ戻ることを拒もうとしたがあま
りの速さにタイミングを逸した。
男は腹を据え来島の攻撃を受ける決意をした。そして、自分はその一撃に耐え
られる。ここから反撃に転じ自分が勝つと必死に言い聞かせた。
そんな男に対し、来島は助走を付けラリアットの体勢に入る。
二人が交錯し、この試合で最も激しい肉体がぶつかり合う音が会場に響き渡る。
そこで男の意識は完全に途切れた。男は見えない鉄棒で逆上がりをするように
吹き飛ばされリングに叩付けられる。男は白目を剥き完全に気を失っていた。



大空みぎり vs 男子レスラー


メキメキメキ・・・

男子レスラーが2人、宙に浮いている。いや、厳密には浮いているわけでない。
鍛えられた大の男2人が、一人の美少女レスラーによってアイアンクローでリフトアップされているのだ。

「私にならともかく〜、私の大事な社長に暴力を働くのは許せませんね〜」
若干19歳ながら、身長190pという恵まれた体躯。そして、それに見合うどころか、必要以上に搭載された筋肉。
大柄の男子レスラーを片手で軽くリフトアップしているその腕には巨大な力瘤が盛り上がっている。

男子レスラーの太腿と比べても遜色のないぐらい太い剛腕。
握力も半端ではなく、素手でスイカを引き裂くほどだ。

しかし、その有り余る怪力は、同じ女子同士では脅威となる。
実際、スパーリングで同じ団体のレスラーを何人も病院送りにしてしまった。
それなら、と社長の伝手で男子の団体を頼ったのだが・・・。

ちょっとした行き違いから、女子レスラーなんか相手に出来るか、と口論になり、
血の気の多い若手レスラーが、勢いに任せて社長を殴り倒してしまった。

それが口火だった。

社長を心酔しているみぎりが一発でキレてしまったのだ。

「怒らせた相手が私だなんて〜、運が無かったですね〜」

メキメキ・・・グシャッ! バキバキ!!

「「うぎゃあぁぁぁ〜!!」」
吊り上げられた2人の男から悲鳴が漏れる。
みぎりの両手の指が、明らかに2人の顔面に食い込み、血が滴り落ちていた。

「こ、このアマ〜!」
それを見ていた別の男子レスラーがみぎりに殴り掛かった。

「ん〜、うるさいですね〜」

ドカァッ!!

「うごぁ!!」
何と驚いたことに、みぎりは両手に男2人を持ったまま、向かって来た男を殴り付けた。
100s近いであろう男子レスラーが2人、まるでメリケンサックかのように扱われてる。
殴られた方は堪ったものではない。単純に、100sの鈍器で殴られているのと同じなのだ。
当然、人間サイズの鈍器など、かわすことも防ぐことも出来ない。
5、6発殴られたところで、男は血だらけになり崩れ落ちた。

「・・・あっ、まだ持ったままでした〜」
男を殴り倒したところで漸く気付いたのか、手に持っていたレスラー2人をやっと放した。

「ひっ、酷ぇ・・・」
文字通り、アイアンクローで潰された顔面は、血塗れで見るも無残な状態になっていた。

「さっ、次はあなたですか〜?」
「・・・えっ」
特大美少女レスラーの十六文キック。実際は、何の変哲もない只の前蹴り。

ドガアァァァンン!!!

しかし、その只の前蹴りに、男は悲鳴を挙げる暇なく、5mは離れた壁まで吹っ飛ばされた。

「あなたたちも〜、そんなとこで固まってないで掛かって来たらどうですか〜?」
みぎりと目が合ってしまった隅に居たレスラー2人は、完全に縮み上がってしまっている。

「・・・た、たすけて・・・」
「・・・ダメですよ〜♪ 掛かって来ないならもう潰しちゃいますね」
死刑宣告を受けビビッて固まるレスラー2人を、腰の辺りをロックして持ち上げた。
2人まとめてのダブルベアハッグ。

メキメキメキ・・・

「実は〜、私ってまだ全力を出したことなかったんですけど〜
 思いっ切り力を入れたらどうなるか、試したかったんですよね〜」
「「ひぃっ! や、やめ・・・」」

メキャッ・・・バキバキバキッ!!!

「「ぎゃあぁぁぁ〜!!」」
レスラーらしからぬ情けない悲鳴を上げ、男たちはみぎりの腕の中で2つ折りになった。

アイアンクロー、パンチ、キック、ベアハッグ。

そのどれもが単純な技。ただ、みぎりの怪力が男子レスラーを圧倒的に凌駕していたというだけ。

「ん〜」
みぎりは、近くにあったベンチプレスマシンに目をやった。
ラックには、50sと掛かれたプレートが左右に2枚ずつ、つまりシャフト込みで200s超のバーベルが置かれている。

みぎりはそのバーベルを逆手に持つと、右手一本で持ち上げてしまった。
男たちが、横になって両腕で何とか持ち上がる程の高重量のバーベル。
それが、その男たちの目の前でリズミカルに何度も上下している。
みぎりの怪力だからこそ可能な、ワンハンドバーベルカール。

バーベルが上下する度に、みぎりの腕に大きく盛り上がる特大の、山のような力瘤。
それは、男たちの心を折るには充分過ぎるモノだった。

「こんな〜、軽いウェイトでやってても強くなれませんよ〜」
みぎりは片手で持っていたバーベルを両手で持ち直した。

グニャリ

「「「・・・・・!!」」」
引き攣る男子レスラーにトドメをさすように、みぎりはバーベルのシャフトを折り曲げて見せた。
200sのウェイトを支える鉄のシャフトが、まるで飴細工のようにU字に折れ曲がっている。

「今日のところは〜、社長の怪我も心配なので帰りますけど〜
 今度またお世話になりに来るので、その時までにもうちょっと鍛えておいて下さいね〜」
そういうと、みぎりは気絶している社長を抱きかかえて出て行ってしまった。



バイス&マチュアvs殺し屋数人

 華やかな格闘技大会、キング・オブ・ファイターズの裏に隠された恐るべき陰謀。
それを知りすぎた者、探ろうとする者は『消される』こととなる。
勝ち進みながら情報収集を続けてきたこのチームにも、実行委員会が差し向けた殺し屋の手が伸びてきた。
だが…
「あ〜〜〜〜〜〜!!」
 命が風前の灯となり、夜空に情けない絶叫をこだまさせているのは、首を狙いに来た男のほうだった。
「私を黙らせるんじゃなかったの?ほ〜ら」
「ひぃっ、い、い……はがが…!!」
 強いビル風が吹きぬける中、男の視線の先には豆粒より小さくしか見えない車が行き交う道路、明かりのきらめく広大な夜景。
男はターゲットだった短髪の大女に…片手で足首をつかまれ超高層ビルの屋上から宙吊りにされているのだ!

「どこの誰から頼まれたんだい…吐きな」
「はひぃっ…あ―――!!」
「どうやら甘く見られてるみたいだねぇ。言っとくけど、こっちは利き腕じゃないからね。
いつまでもハッキリしなかったら、手がだるくなって離しちゃうよ」
 女は、前に突き出した腕の手首を軽く左右にひねり、100mを超す空中にぶら下げた男を揺らして遊ぶ。
「ぁ…あばば…ば……」
 じょろじょろじょろ…ぶりっ、ぶりぶりぶり……
 この状況を前に殺し屋としての、男としてのプライドなど、トランプを立てかけて作った家並みに脆かった。
男のスーツに湯気を立てて汚物の染みと膨らみが広がっていく。
「フン、だらしないねぇ…組織でどれほどの位置にいるか知らないけど、所詮男は男ってことか」
 その醜態に呆れながら女は、握っていた手を離した。断末魔とともに、見下ろす夜の街へと消えていく男。
その女…バイスにとって、ありふれたいつもの出来事だった。

 2人で暗躍するエージェント、バイスとマチュア。
しかし相手も情報には長けている。彼女たちに狙われた組織から逆に殺し屋を送り込まれることも多々ある。
だが、どんな凄腕の男を差し向けたとしても、これまでに彼女たちを黙らせられた組織は…ただの一つとして存在しない。
「マチュア、そっちは済んだ?」
 ロングスカートを翻し、バイスが向かう先にはもう1人の大女がいた。金髪のスレンダー美女、マチュアだ。
彼女の足元には、ナイフや拳銃を握り締めたままの男が3人、累々と転がっていた。
武器など何一つ持たない丸腰のはずのマチュアの下で、逆に刃物でできた鞭で切り刻まれたかのように血の海に溺れている。
男3人を一瞬にして6〜7体の肉塊へと変えた当のマチュアには、息切れや着衣の乱れはおろか返り血の一滴すら見られない。
ただロングスカートの深いスリットから、光沢の輝く黒いストッキングに包まれた美脚を覗かせているだけだ。

「あんたばっかりいい運動してさ。あたしにも少し残しといてくれてもいいじゃない」
「バイスは時間をかけすぎるのよ…男の悲鳴が好きなのはわかるけど、目的を忘れてはいけないわ」
 こんな地獄を作りながら冗談を交えた楽しそうな会話を交わす2人の長身美女を見上げながら、
ただ1人取り残された殺し屋は立ち上がることができない。持っている武器など彼女たちの前では到底通用しないことなど、
先に仲間たちがたどった末路を目にして十分思い知らされていた。そしてこれから、自分も…
震え上がる男を見下ろしつつ、袖の長いドレスの上からでもわかる豪腕を組んだバイスが迫る。
「特別サービスだよ。おまえ自身に選ばせてあげる。
苦しむより先に気持ちよーく天国に送ってほしいならそこのマチュア、
これから行く地獄を心行くまで体験しながらじっくりと送ってほしいならあたし。
どっちがいい。ん?」



春麗vs大男

「ご苦労なことね…私に負けるために修行を積んできたんでしょ?」
 ビシバギドグベキボグゥゥッ!!
 余裕たっぷりに侮蔑を投げかける春麗。その一方で、彼女の豪脚を包む白の編み上げロングブーツは
猛スピードで絶えることなく男の肉体をえぐり、体の芯まで響き渡る衝撃と痛々しい重低音を奏で続けている。
『千烈脚』―――。

 デモンストレーションの一環として、頑丈に作られた大型セダンをその脚だけで歪んだ骨だけのガラクタに変貌させ
ギャラリーを震撼させた春麗。それを目にして彼女との対戦から逃げた男も多いと聞く。
その蹴りの嵐が、鍛えられているとはいえ人体相手に炸裂しているのだからひとたまりもない。
華麗で無駄のないフォームから、素早く鞭のようにしなりつつ迫り来る脚は
インパクトの瞬間には何tもの鋼の塊と化す。速さ、重さも別次元のキックが防戦一方となった男を嘲うかのごとく
ガードのつもりで出した腕や脚ごと叩き潰し、男の体の中へとめり込ませていく。
それが…秒間数十発という怒涛の勢いで襲い掛かるのだ。
そのダメージに悲鳴を漏らす余裕さえ与えられず、数人から重機関銃で一斉射撃を加えられたかのように無様に踊る男…

 たとえこの様子を撮影したビデオカメラをスローモーションで再生したとしても、おそらく彼女の脚を目で追うことは不可能。
そして春麗はただ叩きのめすだけではなく、一つ一つの蹴りに微妙な強弱をつけて何らかの調整を施している。
サンドバッグ以下の扱いを受けている男の姿が、次第に平らにならされていく…

 ゴトン。
 春麗の両足が地面にそろい、ようやく嵐が過ぎ去った頃には、10秒前まで分厚い肉体を誇っていた大男の姿は
驚くべきことに、春麗の腰ほどの高さしかない正四角形の立方体に変わり果ててしまっていた。
その上…その四角形のそれぞれの面には彼女のブーツのソール痕が、1発から6発まで順番に深々と打ち込まれている。
つまり、男は春麗の千烈脚の前に、サイコロにされてしまったのだ!
男が変身した特大サイコロを弄ぶように、春麗の片足が乗せられる。
「このくらいの遊び心がないと退屈でしょ?実力が違いすぎるんだから」
「ぅっ、ぅぅ…」
 春麗に踏みつけられた四角い物体は、かすかにようやく聞こえる程度のうめき声を立てながら微妙な伸縮を繰り返していた。
これには…いや彼には、まだ息がある!
複雑に折り固められフラットにされた表面に、内部から透明な液体が滲み出てくる。…男の涙だった。
死ぬほど思い知らされた格の違い、恐怖、こんな女に戦いを挑んでしまった後悔、
そして命や意識を保たされたまま、こんな姿で見世物にされてしまう屈辱……
これまでその体格と力をもって、格闘技界で名を通してきた男だったが、
この女にははじめから対等な相手として見られず、単なる遊び道具として扱われ、終わったのだった。

「少しは汗ぐらい、かかせてよね。
はぁ、やっぱりこの程度なのかしらね。男って…」



キャミィvsテロリスト

「どうした、あいつはどこへ行った!」
「見当たりません…やたらすばしっこくて車内からじゃ追いきれません!」
雑然とした駐車場の中、大雑把に鉄板などが打ち付けられたワンボックスカーから
男たちの興奮した声が響く。
煌々と照らす照明のすぐ近くから、車の周りに打ち倒されているは数人の男たちを見つめる目があった。


ここはとあるテロリストグループのアジトとして使われてる建物の地下。
近々大掛かりなテロを行うとの事前情報を得、特殊部隊デルタレッドによる突入が行われたのだ。
しかし投入されたのはわずか1名。
緑色のレオタードを身にまとうその小柄な影は、テロの準備を行っていた男たちを疾風がごとく打ち倒した。
その場で意識があるのは、たまたま車内で作業していた2名のみ。
急いでドアにロックをかけ、装甲された狭い窓から必死になって相手を探す。

「…仕方ない、続きの作業は向こうでやろう。とにかくここを離れるんだ」
「わ、わかった、すぐでよう」

しかし、打ち倒された仲間を見捨てエンジンをかけた車だったが。
空転するタイヤが耳障りな音を立てるばかりで一向に前進しない。

「なにやってるんだ!早くしろ!」
「それは無理ね。あなたたちはここでつかまるのよ」

突然前方から響く若い女の声。
あわててドライバーがフロントガラスに顔を押し付けると、赤いベレー帽をかぶった娘の、猫のような笑顔が目に入る。

「なんだお前・・・は・・・!?」
二人のテロリストはそこで信じられない事実を認識した。
自分たちの車がその小娘の逞しい両腕に抱き止められているという事実に。
ハイレグのレオタードに包まれた肢体は、女性らしい曲線を描きつつ力強い筋肉を存分に見せ付けている。

「街中にこんなものを持ち出させるわけにはいかないわ…んん!」
彼女の全身の筋肉が一際膨れ上がったかと思うと、テロリスト二人を乗せたままの車がゆっくりと持ち上げられていく。
くびれた腰から見事な逆三角形を描く背中や引き締まった尻から伸びる牝馬のような両足に汗を浮かべつつ、
数トンにも及ぶ重量をさしあげると、一気に横転させるように床にたたきつけた。

追加された装甲ごとフロントガラスが打ち砕かれ、赤い手甲に包まれた指先がつきこまれると
激しい衝撃に気を失ったテロリストたちを車外へと引きずり出された。

「こちらキャミィ。目標の無力化を完了。今後の指示を乞う」



ある日の風景

「へへっ、道着に袖を通すのも久しぶりだな〜」
小柄でショートカット、ボーイッシュな雰囲気が印象的な少女はそう言うと腰の黒帯を締め嬉しそうな笑みを浮かべた。
少女の名は菊地真。765プロ所属のアイドルであり切れのあるダンスと
パンチの効いたボーカルで男女を問わず人気を集めている少女だった。
そんな真がオフを利用し久しぶりに訪れたのは昔、父親に言いつけられ通っていた空手の道場。
女の子らしくありたい。そう考える真は初めの頃は嫌々ながら通っていた道場だが、
一度始めた事は全力投球しなければ気が済まない性格と生来の運動神経が相俟ってその腕前は並々ならぬものになっていた。
そうする内に真は空手を続ける事に対して抵抗を憶えなくなっていった。
自分にとって身体を動かすのは何より楽しい事だと改めて自覚していたからだ。
そして、その思いも真の空手の上達へと力を貸していた。

着替えを終えた真が道場へと足を踏み入れると一人の体格の良い青年が真へと歩み寄ってくる。
大きな大会で何度も優勝をさらい、空手界の将来の星とも未来のK−1ファイターとも言われている存在である。
しかし、そんな青年も真の腕前には遠く及ばないでいた。
「真さん、今日の自由組手もよろしくお願いします!」
青年は一礼してから真に組手を申し込む。その言葉遣い、態度から青年は
年下である真に対して敬意を払っている事が伺えた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ボクもあなたとの組手、楽しみにしてきました」
青年の申し出に対し、真も快くそう答えた。会う度にその腕を上げてくる青年。
真はそんな青年に対しいつの間にか競争心を燃やしていた。しかし、真にとってそれは強さへ対する執着ではなかった。
競い合う事への純粋な楽しさ。それは真がこの青年との組手へ対する情熱の原動力だった。

準備体操を行い、技の練習、型、約束組手など一通り終えた後、有志による自由組手が開始された。
初等の者から次々と行われる自由組手。
組手を終えその結果に対する総評を先輩、師範等から受ける門下生達を眺めながら
真と青年は自分達の出番へと向け精神を研ぎ澄ましていった。
そして今日、最後の組手として二人が呼び出される。
真と青年は白線の前に立つと師範の号令に従い一礼してから構えを取った。
間合いを計りつつじりじりと動く二人。道場をまるで本当の試合の様な張り詰めた空気が支配する。
先に動いたのは真だった。瞬く間に青年へと向け一歩踏み出すと中段の正拳追突きを繰り出す真。
その突きは青年の反応を許さず鋭く鳩尾を貫いた。
激しく咳き込みながら膝を突く青年。
それに対し真は構えを解かず真剣な面持ちで相手の反撃に備え残心している。

「もう一本、お願いします!」
青年は呼吸を整え立ち上がると構えを取った。
師範が組手の再開を宣言する。それと同時に青年は真へ対し次々と突きを放った。
それに対して真はその突きを受け流し次々と捌いていく。その様子はさほど力を入れている様に感じなかった。
なかなか、突きが当たらない事に焦れてきた青年は一度、間合いを取り仕切り直そうと前蹴りを放った。
しかし、その前蹴りもあっさりと捌かれ青年は体勢を崩す。
そこへ真の上段回し蹴りが放たれた。綺麗な弧を描きその回し蹴りは青年の頭部へと吸い込まれる。
その一撃は青年の脳と三半規管を激しく揺さぶり平衡感覚を失わせた。
青年はたたらを踏むとそのまま板の間へと倒れ込んだ。
白目を剥き気を失った青年。そんな青年に対し真は再び残心する。
そこにはステージの上や普段、見せている快活さはなかった。
だが、プロ格闘技の選手の様な闘争心も感じられない。
真から感じられるのは悟りを開いた聖者の様な静けさ。
それは真が強さへの執着を持たないからこそ辿り着いた境地だった。
そして、それは真が体格に勝る青年を打ち倒す実力の源でもあった。



武内優香vs男2人組

 とあるファミリーレストラン。2人の男が、店員に食ってかかっていた。
自ら持参したゴキブリの死骸を出された料理に入れ、因縁をつけていたのだ。
柄の悪い2人組が大声でわめき散らす様子に、周りの客もただ自分たちに被害が及ばないようにと見て見ぬふりだ。
「お前らの誠意ってもんはどうなってんだよ!あー!?」
 うち1人が、呼び出した店長の胸倉を掴み、いよいよ殴りかかろうとする。
 バシッ!
「!」
 自分が殴られたのではないその音に店長が恐る恐る目を開くと、男の拳は横から遮るように伸ばされた
何者かの手にキャッチされていた。
横から邪魔に入った相手を睨みつけた男の表情が一変する。ここのウェイトレスの制服を着用した女だったからだ。
「お客さん、自分で入れましたよね、その虫。私の目はごまかせませんよ」
「何だと、この店は客にこんなもの食わせて言いがかりまでつけようってのか!殺…!」
 脅し文句を言いかけた男の口が動揺で止まる。拳を引っ込めて振りほどこうとした彼女の手が、離れない!
凄まじい握力だった。手の骨がメキメキと悲鳴をあげ、少し涙目になった男の視線の先にいるウェイトレスは
普段の接客時のスマイルを保ったまま口を開いた。
「おなかがおすきでないようでしたら…軽く運動なんていかがですか?」

 この男たちにとって、全くの災難だったとしか言いようがない。
恐喝のためにたまたま目をつけたこのファミレスが、先月行われた日本一強いウェイトレスを決める格闘技大会
『ヴァリアブル・ジオ』で見事優勝を飾った武闘派美少女・武内優香の所属する店だったことは。
…レベルが違いすぎる。とても、日頃弱そうな相手にクレームをつけてチンケな金儲けをしているだけの男が
2人まとまっている程度で、日々鍛錬を欠かさない最強のウェイトレスをどうこうできるはずが…
店内で始まった喧嘩、いやそうは呼べない、悪質な客への公開懲罰、修正と呼ぶほうが相応だった。
白いブラウスにオレンジのミニスカート姿の優香が躍動を見せるたびに加えられる、目で追えないパンチやキックに
男たちは自らの行為が、取り返しの付かない過ちであったことを知らされていく。

 2人の男を同時に相手してあげて、なおかつ圧倒的に叩きのめしながら店内に全くの被害をもたらさない。
吹き飛んだ男はすぐに腕を掴んで引き戻し、椅子やテーブルに倒れかけさせない。
男たちの汚い出血で店内を汚さないよう、攻撃は全てボディかそれより下に集中させる。
そして彼女の打撃の鋭さ、重みは彼らの喉から悲鳴さえ奪う。泣き叫ぶ余裕すら与えられない強烈な突きに蹴り。
この戦いで影響があるとすれば、客のテーブルに置かれたコップの水の表面にわずかな波が立つ程度。
これが優香の格闘家としてのみならず、ウェイトレスとしても優秀なところだった。

「はがっっ…」
「ぐ…ぇ……!!」
 力の違いを思い知らされ、遅きに失した後悔に揃って泣き出しているチンピラ2人組は
優香の右腕、左腕にそれぞれ裸絞めの餌食となり、爪先立ちのみに最後の力を振り絞っている有様だった。
自分たちとは比べ物にならない力瘤に頚動脈を遮られ、酸素の供給は途絶えている。
みるみる顔色が変わり、気絶も時間の問題となった彼らの耳元に優香が囁く。
「これでたっぷり反省して、いい子になれるって約束できるんでしたら、またお越しください♪」
 ズドッ!
 ドグッ!
 仕上げとばかりに優香が繰り出した右、左の膝蹴りが男たちの背中に炸裂、
優香特製のお仕置きフルコースを腹一杯ご馳走になった男たちは、これで完全に眠りへと誘われた。

「皆さん、お騒がせしました。ごゆっくりどうぞ」
 男2人をKOした後も全く息切れさえ見せず、普段の仕事中と全く変わらない笑顔で頭を下げた優香は
沈めた男たちの襟首を掴んで軽々と吊るしながら、店の裏のゴミ捨て場へと消えていった。



チチvsフリーザ

「バ、バカな…!!」
 小さなこの星に紛れ込んだサイヤ人の死に損ないを始末するついでに、ここも軽く征服してしまおうと
地球へと乗り込んだ大宇宙の帝王・フリーザは今起こっている現実を受け入れられないでいた。
ただ偶然目の前にいた、邪魔な『物』としか意識しなかった、一人の地球人の女。
だが自分のパンチもキックも、この女にはかすりもしない。
焦りのままに発した指からの怪光線も、彼女は少し首をかしげる程度の動きで難なく回避してしまった。
フリーザが意地になって繰り出すラッシュを、眉一つ動かすこともなくかいくぐった田舎娘は、
頬の辺りをポリポリと指先で掻きながら平然と歩み寄ってくる。
息を荒げながら顔を引きつらせ、得体の知れない冷たさを背中に這い登らせたフリーザ。
(な…何者なんだ、こいつは……!?)

「まったく男どもは、こったら程度で世界征服とか最強とか騒いでるだか…暇で羨ましいだ」
 ズン!
「ぼっっ!! っご……ぉ…!」
 一瞬の間を置いて襲来した、これまでの生涯で受けたことのない重い衝撃に背中が丸まり、膝が折れる。
あと一押しされれば内臓の全てが口から、パーティ用のスプレーのように勢いよくほとばしり出かねないほど。
腹に深くめり込んでいた女の拳が引き抜かれた後も、フリーザは息を吸うことも吐くことも封じられた地獄を彷徨う。
力なく上を向いた視界に映った、髪をアップにした細身の女の姿はぼやけてすぐに見えなくなった。
女のパンチ1発で、涙目となり途切れ途切れのうめきを漏らす以外に何もできないフリーザ。

「悟空さはしょっちゅう家さ空けて、こったら幼稚なおままごとばっかりして遊んでるだな。
後でしっかりお灸さ据えてやんなきゃなんねえだ」
「がっ!!」
 呼吸困難の苦痛と恐怖に泣く暇も与えられず、盆の窪に肘の鉄槌が打ち下ろされる。
ボディブローの重みに手から離れる寸前で必死に掴んでいた意識の糸が、ズルズルと抜けていくような幻覚の中、
涙が大きな粒となって、また涎が不潔な糸を引きながら宙を舞う。

 強すぎる…フリーザは生まれて初めて、戦いの最中に後悔と絶望の念に駆られていた。
目の前に立った瞬間、スカウターが異常な数値を計測して故障した時点で、逃げておけばこんなことにはならなかった。
こんな小さな星の、サイヤ人の生き残りならまだしもそこで生まれ育った雑魚にそんな力があるわけがない、
たまたま機械の故障だったんだと高をくくったのがこの結果だ。
(ぜ、全宇宙を震え上がらせる支配者の私が……
こんな取るに足らない星の、名も知らない地球人の、ぉ、おん、な…に……!!)

「悟飯ちゃんは今のうちから勉強して、立派な学者さんになんなきゃなんねえだよ。
つまんねえお遊びにばっかり付き合わされて、悟飯ちゃんにバカが伝染っちまったらどう責任取ってくれるだ。
オラを本気で怒らせる前に、消えてけろ!」

 ゴッ!!

 彼女の膝の形を忠実に形取った顔面から赤い噴水を噴き上げながら、宇宙最強の男は崩れ落ちた。
かろうじて、息はある。自らが虫ケラと蔑んでいた地球人よりももっと微弱な、文字通りの虫の息が。
もし彼が息を吹き返したとしても、おそらく復讐には訪れないだろう。
彼のDNA一つ一つの奥深くにまで刻み込まれた、地球の女の恐ろしさは決して拭い去られることはない。
この先地球の空気を吸うだけでこの日の惨劇が蘇り、彼は尻尾を巻き込んで震え上がり動けなくなるのに違いない。

 名も知られていない一人の女により、誰も知らないところでひっそりと地球の平和は守られたのだった。



千堂つぐみvs道場破り

「ほんま、だらしないわ…もうちょい、根性見せてや」
「ぁが…は、が……」
 一度に絞め落としてあげない遊び心を持った彼女のおかげで、本当に最低限の呼吸だけ許されている男。
途切れ途切れのか細い声を屁のように漏らす以外男からの行動はほとんどなく、反撃できる望みなどない。
決着は、見えていた…やる前から。

 元プロレスラーで、ジムの会長である男の一人娘、つぐみ。
熱血漢で知られる父に押し付けられるままに、幼少の頃からレスリング漬けの日々を余儀なくされてきた。
女の子らしい楽しみも、恋人作りも望めない環境は、年頃の少女には辛く苦しい毎日だ。
このジムが家なので、サボることもできない。
しかしもっと腹立たしいのは、こんなに嫌々レスリング一色の生活を送っていて何か辞めるきっかけを欲しがっているような自分に
勝てる男の練習生が誰一人としていないことだ。
(みんな、プロになりとうて努力してんのと違うの?仕方なしにやってるだけのうちに全然歯が立たへんてどういうことやねん)
 望んでもいないのに父から受け継いだプロレス向きの体格、才能が災いしているのか。
さらに一旦練習に入ればつい打ち込んでしまい、ジムのどの男よりも重いウェイトを扱い、
リングの上では全練習生がつぐみの前にただのスパーリング用ダミーと化し、一方的に捻り潰され虫の息でマットに転がるだけ。
好んで行っている練習ではないけれども、手を抜いてわざと負けるような真似も性に合わず、
一度向かい合って、気が付いたときにはもう相手の男は参りましたの声も上げられないボロ雑巾となって足元にある…
因果な格闘家の血が、彼女には流れているようだ。

「まい…り……ごがが…!!」
 今日ジムに乱入してきた、総合格闘技を名乗るこの道場破りも、
黒いスパッツを破裂させてしまいそうなほど張り詰めさせた、つぐみのスピードスケートの選手を思わせる極太筋肉太腿が絡みつく
処刑台とも形容すべき首4の字固めの餌食となり、男は今にも自らの首から上が、シャンパンの栓のごとく吹き飛んでいってしまう
恐ろしい幻想さえも抱かされながら、黒みがかった赤い顔で口をパクパクさせるだけ。
手がフリーならもう1分以上前に、床を叩いて降参の合図を送っていただろう。しかしそれも許されない。
つぐみの手が男の腕を握り締めているのだ。そこに加えられる握力だって、男から戦意を奪うのには十分な力の違いだった。

「自分から乗り込んで来てんから、道場破りの意味くらいわかってるやろ?
参りましたごめんなさいで済まされるほど甘いもんと違うてこと。
それなりの覚悟てもん、見せてもらわな」
 ギリッ…ググググッ
「……か………!!」
「泣いてる暇あったら、気合で外してみせてぇや。
言うとくけどうちは自分から外してあげるほど、優しないからな」
 田舎の大綱引きの綱で縛り首にされるような窒息地獄に男は、ギブアップではなく命乞いの目をつぐみに向けようとする。
だがそれも彼女の圧倒的な大腿筋に覆われるようにして届かない。届いたとしても、つぐみは許す気もないだろうが。
その戦いを見守るジムの男たちは、道場が守られた安堵感よりもつぐみへの恐怖感とあの男への哀れみで一同静まり返っている。
つぐみの力、特にあの脚の恐ろしさは自分たちがよく実感させられているからだ。

(ジムの中だけと違て、外の男かてこの程度かい…格闘技て、男て、何なんやろ……)



ヴァネッサvs力自慢の男

「お前、チャンピオンなら逃げずに受けるよな?この挑戦」
 目の前に設置したテーブルに肘を置き、自分の得意分野に引き込もうとする男。
彼の取り巻きの男数人がそれに合わせて笑う。

 この酒場での名物、ピットファイティング。
もちろん公式な格闘技などではなく、素人同士が金を賭け合っての喧嘩だ。
女でありながらこのピットファイティングを収入の一部とし、
しかも無敗の王者的存在であるヴァネッサ。
その噂を聞きつけたこの男が挑んだ勝負は、腕相撲だった。
その太い腕で力比べには絶対の自信を持つこの男。噂のこの女がボクシングを得意としていることは知っている。
パンチを封じた、力比べなら間違いなく俺の勝ちだ!と。

 男の挑発に、全く躊躇う様子も見せずヴァネッサは座り、テーブルに肘を置く。
不利な挑戦を堂々と受けようとする彼女に、周りを囲んだ男たちが囃し立てる。
「オイオイ、正気かよ姉ちゃん」
「得意のパンチは使えねえんだぞ?無理しねえで参ったしといたほうがいいぜ、今のうちに」
「言っとくけど、始まってから途中で逃げようなんてのは聞かねえからな?」
「余計なおしゃべりはいいわ。早く始めるわよ」
 自分のこの腕を前にして、そんな平然とした様子で勝負に乗ってきた女の態度に男はカチンときた。
「おい、合図かけろ!こいつの腕へし折って、ボクシングなんかできねえ体にしてやらぁ!」

「Ready...GO!」
「あがっ!!」
 取り巻きの1人がスタートの合図をかけた次の瞬間には、男の口から悲鳴が放たれていた。
彼は知らなかったのだ…これまでに多くの男たちを沈めてきた彼女のパンチ力は、
腕っ節よりも、その握力から生み出されているものだったことを。
強靭な握力で鋼のように固められた拳そのものが、凶器とも呼べる彼女自前の武器だったのだ。
それはまるで…不用意に出した手をクロコダイルに噛まれたようなものだ!

「ぐぎっ…ぃ、あああああ!!」
「あ、兄貴!!」
 彼女の指が、井の中の蛙でしかなかった男の手にギリギリとめり込んでいく。
腕を折って思い知らせるどころか、もはや少し押し込む力さえも込められない。
まさに食いちぎられんとする獲物のような悲鳴と涙目を、その男の弟分たちは初めて見せ付けられた。
女に腕相撲で泣かされる男と、それを見ているだけで何もできない取り巻きの集団を眺めながら
ヴァネッサは左手で頬杖をついて余裕と蔑みのこもった笑みを送って、
いつでも押し倒せる手をあえて中央にとどめて握力でいたぶり続ける。

 もう女の手を押し倒すどころではなく、とにかく早く終わらせてその手を離させたい一心で
むしろ自分の手の甲をテーブルへと引っ張っていこうとしている男。
だが、そっちの方向にも倒れてくれない。絶望に支配された男の叫びは、言葉にならない。
しかしヴァネッサはそれをたっぷり彼の仲間に聞かせてあげるかのように、降参を許さず腕を止めながら
さっき男たちから投げかけてきた言葉をそっくり返してあげる。
「途中で逃げようなんて…思っちゃいけないわよねぇ」
 グギリッ!ゴギボキボキィィッ!!
「ギャアアアア―――ッ!!」

 テーブルから転げ落ち、5本の指全てがそれぞれ根本から別々の方向を向いた無残な右手をさらして
泣き叫び転げ回る男を長い脚で軽く跨いで通り越し、ヴァネッサは指定席となったいつものカウンターに腰掛けた。
「よくいるのよね…ああいう変な勘違いしちゃってるのが。
マスター、一杯ちょうだい」



レイチェルvs逃走する男たち

レイチェルのトレードマークともいえる脚線美を備えた太腿、レガースをはち切れさせそうなほど
筋肉の隆起したそれが唸りをあげ、綺麗な曲線軌道を描いた足先が逃走する車体を捕らえてそのまま弾き飛ばした。
軽自動車とはいえ4人の男たちを乗せたままの車体が、追突事故でも受けたように壁へと叩きつけられたのだ。
「まったく面倒な仕事だわ…あなた達を生きたまま捕らえなくちゃいけないなんて」
あわてて降りようとするも車体がゆがんで扉が開かずにいて喚く男たちにうんざりした顔を見せて
「満足に車を降りることもできないの?…仕方ないわ、手伝ってあげるわね」
車の脇に立ったレイチェルは、手甲を付けた拳を振りかぶるとドアを打ち抜き、玩具の部品をはずすように
もぎ取り、路肩に投げ捨てる。簡単にやって見せるが中央に穴を開けたドアの立てる音は重い。
男たちが驚きのあまり動きを止めていると、車体の下に手を差し入れ、グラマラスな全身に力を込める
レイチェルの怪力は、車体と搭乗者の体重を合わせれば900kg以上あるだろうそれを頭上に持ち上げ、
さらには揺さぶってすらみせる。
いびつな車内からボタボタと地面に落下し、うめき声を上げながら顔を上げる男たちを見下ろすレイチェル。
上着を脱いでハイレグレオタード風の黒いラテックスのようなボディースーツだけのその肢体は
豊かな胸がはちきれそうなほどでありつつ、くっきりと浮かぶ腹筋の艶かしいくびれたウエストから
逆三角形の上半身のシルエットが力強く広がり、車体を持ち上げている両腕の筋肉が逞しい。
おびえる男たちに笑みを送ると、頭上の車体を後ろに投げ捨てる。地面に叩きつけられた車体はさらにつぶれ、
程なく引火して高い火柱を上げる。
煌々とした炎を背後に指を鳴らしながら笑顔のレイチェルが歩みよっていく。
「最近は軍隊を相手にしていたから楽な仕事だけど…逃げられないように手足は覚悟してもらうわよ」



風林寺美羽VS力自慢のボディビルダー

路上で何やら揉めている。巨大な男が会社員を脅していた。「おい、ケガしたくなければ持ち金全ておいてけ」180センチ後半のその男は筋骨隆々で服越しに肉体の厚みがわかる。
「そっそんな……」会社員がヘナヘナと嘆く。そこに「やめなさい!」と1人の女子高生が現れた。その女子高生のレベルの高さはハンパではない。
制服を破裂させんばかりの胸と尻、それら以外は美しい曲線を描く。
顔もビーナス級である。
この女子高生の名は風林寺美羽。無敵超人の孫娘である。「あなたさっきからみてましたわ!たかりはやめなさい」正義感の強い美羽は激しい男を咎める。
しかし、「なんだ姉ちゃん可愛いが調子に乗りすぎだ、犯してやるよ。見ろ!」男はいきなり上着を脱ぎ出した。

すると鍛え上げられた肉体が現れる。まるでバキのビスケットオリバのようだ「どうだ?こんな逞しくて強い相手とやれるなら光栄だろ?」男はもはやカツアゲより美羽を喰らうことを考えている。
とうの美羽は顔に怒りが見える。犯すなどと自分を安くみられたからだ。「逞しくて強いですって?笑わせないで下さい。私の方が強いですわ。それにあなた以上の方は何回もみてますわ」

男は「なんだと?まーいい押し倒してねじ伏せてやる」と突進してきた。体重は100キロは軽くあるだろう。美羽は避けるのは簡単だったが今日は意地悪な気持ちだった………
なんて真正面から受けたのだ。ドン!!!ぶつかり合う瞬間なんと男が吹っ飛ぶ。!!!!男は状況が把握できない。今確かに目の前の女子高生に渾身の突進をかましたはずだった。
そしたら柔らかい感触があったが次の瞬間吹っ飛んでいたのだ。
「この程度ですか?口ほどにも無いですわ」と挑発する。今日の美羽は機嫌が悪い分恐ろしい。いつもなら蹴り一撃で病院に送って終わらせるのだが今回は犯すなどの禁句を使ったから嬲る気まんまんだ。

美羽は男のものである大型バイクのそばに行くと「悪い子にはお仕置きですわ」とバイクの真ん中にあたるシートに手を当てると少しずつ力を込めた。
するとグシャグシャグシャグシャ!と金属が潰れる音とともにタイヤがパンクしていく。片手で地面にむかって圧をかけてるだけで……男は美羽のパワーに驚愕した。
パンクしたあと手を離すと次は持ち上げる。あまり苦戦してるようには見えないほどヒョイっと持ち上げ……次は中央に圧をかけていく。ミシミシミシミシ!グシャグシャグシャグシャ!
バイクは鉄くずになった。
男は腰を抜かす。美羽は「私は見た目は普通のプリティな女の子ですが筋肉は極限まで絞り込み柔らかくなるようにしてるんですわ」「あなた程度の肉体より筋肉により発揮されるパワーはあるんですわ」
と微笑む。そして男に寸土目の蹴りを見舞い気迫だけで気絶させた。
「いっけない今日はお爺様と筋トレの日ですわ、ベンチ、スクワット、デッドリフト全て1000キロ超えのお爺様に早くおいつかないと」
まだまだ達人になるため修行中である



風林寺美羽VSトール

ガシャン!!!長老と美羽のウエイトトレーニングが今終わった。例の各門派秘伝の技術による美羽の肉体改造計画は思わぬ方向へ向かっていた。
企画した馬や秋雨でさえ予想しなかった事態……美羽の変化が過激といえるほど早かったのだ。

無敵超人と言われた長老でさえ驚きが隠せない。自分の血を引いているとはいえまさかこれほどのポテンシャルとは……

緻密に練られたメニューと理論に加えよく当たると言われた秋雨のカオス統計学をもってしてもこの結果は予想できなかっだろう。
美羽は約三ヶ月で圧倒的なパワーを身につけていた。外見はさらに色気がまし胸やお尻は増してサイズがアップした。
他の部位もほんの少しだけ体積が増した。しかし見た目の女性の柔らかな印象は全く損なわれてない。

これぞまさしく各門派秘伝の肉体改造と美羽の神がかったポテンシャルが可能とした肉体である。
国内外のグラビアアイドルや女優全てを制圧しかねない肉体、しかし表面上はそうだが体脂肪率は極めて低い。極限まで柔らかさを追求し無駄なく絞りそれでいて全身全てピンク色筋。
見た目や重量や体積では筋肉がめちゃくちゃあるボディビルダーでさえ美羽のパワーにひれ伏すだろう。
ボリュームアップしたように見えるのは全て最強に上質な筋肉だったのだ。さらに今までの美羽の筋肉もその上質な筋肉に変わっている。

馬や秋雨はヒソヒソ声で会話している
「おいちゃん美羽がこんなに早く結果出すとは思わなかったネ」
「私もだ…私のカオス統計学が外れたのは今回が初めてだ」
「多分活人拳でも闇でも弟子クラスの今の頂点は美羽かもしれないヨ」
「そこには私も異論はない……元々トップ層には間違いなくあのパワーとなれば頂点だろうな」

美羽もパワーの急な上昇に心が弾む(これが私の今の力…すごい…すごいですわ)蹴りや突きは以前に増して速く鋭くなり破壊力も爆発的についた。
皮製の100キロはあるサンドバッグにベアハッグをかけたらサンドバッグが破裂した。
金属バットを飴のように折り曲げた。

新しい力を得たら実戦で使いたい衝動に駆られるのは優しい心の美羽とて例外ではなかった。
しかし馬に警告されたように力加減がわからず殺めたらシャレにならない。
そして閃いたのが打撃や関節技を用いない純粋なパワーでできるスポーツの相撲であった。

新白連合のトールに頼みにいく。「トールさん私と相撲で勝負しませんかですわ?」「いきなりどうしたんじゃ風林寺?」
「その……色々あるんですわ」美羽は新島のようにあまり饒舌ではない。「まーいいが…ワシは。風林寺がワシより強いのは認めるが相撲となると体格差で負けると思うぞ」
「大丈夫ですわ!私も力強いので」と微笑む。

仕方ないなとトールは土俵に案内して早速勝負に移る。「手加減せんぞ!」とトールが言った瞬間トールはひどく動揺した。美羽からあきらかにオーラのようなものを感じる。
自分がこのままでは負けると勝負前から感じさせるオーラ。
「はじめ!!」合図がかかってからトールは本気で美羽に突進していく(なんかわからんが全力でいかなこちらが殺られる)トールは追い詰められていた。
しかし美羽は真正面から迎えうち次にヒョイとトールを持ち上げてしまった。
軽々と持ち上げ高く頭上にリフトアップ。その状態はあまりにも衝撃的だった。
そしてひどく焦っているトールを下に降ろすと「ありがとうございましたですわ」といい梁山泊へ戻っていった。

その後トールはこの話は恥ずかしさもあるが恐ろしくて誰にも言えなかった。
その様子を遠くから見ていた長老は「上出来じゃな……にしても孫娘でありながらわしですら将来の可能性に身震いしてしまうわ」
と言い梁山泊へ帰っていった



美羽VSコーキンの残党

放課後にケンイチ、美羽、カストル、千影、新島で帰っていた。表立って何もしなければヨミとは仲良くできていてホッとしているケンイチ達である。
武術に関する話はお互いしないし遠回しに新島が話を振ってもボカすだけだった。

そんな穏やかな?日常風景で事件は起きた。カストルが「オー!そういえばコーキンがムエタイを仕込んだ方々は彼が消えた後大丈夫なんでしょうか?」
と言い出した。
ケンイチが「え?どういう意味ですか?」と返す
「真面目な部員は元々の部活に戻ったみたいですが一部は不良になって悪さしてるって噂です」
「なんだって?!」
「まー力の無いものが力をつけたら精神的に未熟な方々はまず強気になりましからねーハハハ」カストルは呑気である。
「噂では車やバイクを窃盗して悪事をバリバリしてるみたい」

と言っていたとこ曲がり角の空き地に何やら見える。
どうやら噂していたコーキンの残党達だ。10人程度の人数で女の子4人を囲んでいた。
窃盗車と思われるセダンが2台と大型バイク5台があった。

様子を見ようと新島以外の物達は高い場所へ飛び移る。何をしてるかまだ具体的にはわからない。
美羽が「あっあの子達は私の新体操部の1年生ですわ」と驚く。美羽は可愛い後輩なだけに他より深刻な表情だ。
カストルが「まだよくわかりませんね〜あっ泣いてるわ……ケンイチボーイあなたのガールフレンドをいますぐ先に帰らせなさい、後は私と千影でやるから」
何やら急に焦り出した。………何か腑に落ちない…美羽を返したがる理由……あっケンイチも気づいた。

なんとヤツらは車の中で美羽の後輩達を強姦していたのだ。さすがに美羽が見たらお仕置きで済むわけがなく最悪殺しかねない。
が……遅かった

「わ!!」千影、カストル、ケンイチは自分の認識できる空間内に達人クラスの動の気と殺気を感じて後ずさりを無意識にしてしまった。
その主は美羽である。いつも組みてをしているケンイチでさえ動揺を隠せない(美羽さん?おかしい、こんなに巨体な気を纏うなんて怒りだけでは無理なはずなのに)
怒りと進化した肉体により今の美羽はその場にいる人間に止められるものではなかった。
「許さない…………」静かに呟くとゆっくりとコーキンの残党達の前に歩いて行く。

「なんだてめー!!」最初の犠牲者は威勢ね良い男だった。ハイキックは美羽の手に吸い込まれるように収まり次の瞬間握力のみでアキレス腱ごと足首を潰した。
グシャグシャ!
悲鳴もあげられないほど苦しみ倒れた。目の前にあった大型バイクに蹴りをいれ大破させる。片腕で持ち上げ地面に叩きつける。踵落としでVの字に潰してしまう。
コーキンの残党達はどうしようもない。震えている。
しかし逃げることも不可能なので数の力で勝ちにいく。全員で同時にかかっていく。美羽は全く動じない。
2人同時に蹴りをまたキャッチし同じように掴んだ部分を握り潰す。その後無敵超人の技「人手裏剣」を真似た技を編み出す。
「人剣(つるぎ)」と美羽が呟くと脚を掴んでいる2人を剣のように扱い他をなぎ倒していく。

しぐれから伝授された武器扱いの基礎も美羽のポテンシャルからすればかなりのレベルに昇華される。
しかし何て力だ……80キロはあるだろう男性を片腕でまるで竹刀を扱う剣道部のように扱う。
カストルとケンイチはかなり驚いているが千影が1番驚いている
(なんなんだあれは???柔術の類ではない…純粋な腕力でしか実現しない動きだ…あの女性の肉体でなぜ?解せね!解せねぞ)

全員倒しても美羽の怒りは収まらない「こんなやつら…こんなやつら…」2台のセダンへ向かう
ドアを引っ張り引っぺがす…ドア、ボンネット、バック、全て引っぺがす…そしてさいごに下から掌底をかますと車はひっくり返ってしまった。

残る一台に美羽が向かう。次はなんと前から持ち上げる。まさしく「戦車返し」の劣化版「車返し」である
「んーあっ!!はー!!あー!」さすがにこれは楽でないのだろう叫び出し更に力む。
そしてひっくり返してしまった。

力を出し切った美羽は「あれ?私なにを」と正気に戻ってしまった。
ケンイチ、カストル、千影はそれぞれ戦慄を覚えまだ動けなかった。勝てない…間違いなく今の美羽には誰も勝てない。
弟子クラストップは美羽だと3人とも認識せざるえなかった。

そしてみんなとはぐれてた新島も失禁しながら端末をいじっていた。
学ラン、正式名称学生ランキングのトップを美羽にかえたのだ



美羽VS裏闘技場

美羽は梁山泊の家事全般を回している。家計簿付も日課であり唯一楽しめない家事だった。
「は〜、また今月も赤字ですわ。大金を稼げたらどんなに楽かわかりませんわ」資金難なのは毎度であるがやはり数字を直に見るとさらにリアリティが増し悠長にはできない。

そこに新島が現れる「ケケケ、風林寺なんかお困りか?」
「あ、新島さん、実は財政難がまたきてるんですわ」
「武道教室より儲かるもの教えてやろうか?」
「え!?なんですか」美羽は目が輝いている。
「風林寺が闇闘技場で荒稼ぎしたらいいのさ。最近の力を見たら負けはないからな」
「お爺様が許すはずありませんわ」
「それが俺様と組めば可能なんだよ」新島が怪しい笑みを浮かべる。
ネタはこうだ。美羽が荒稼ぎした闇闘技場のギャラを新島が全て預かりそのカネを逆鬼が毎週決まってうちにいくパチンコ
屋に渡す。
全体の1割を新島、1割をパチンコ屋、8割を梁山泊の分配率でロンダリングをする約束を新島が持ってきたのだ。
何も知らない逆鬼がパチンコで大勝ちして帰宅する。他から見たらそうしか見えない完璧なマネーロンダリングである。

美羽も背に腹はかえられないし新島のプランはなかなかよくできていたので乗ることにした。
身元がばれないようにプロレスマスクといつもの密着スーツでなくスクール水着を着用して上から私服を着る。

そして受付に向かう。「挑戦を希望しますわ」
「おー女の子なんて珍しいね。これは倍率上がるな。ちなみに何か条件や希望はあるかな?」
「倍率を可能な限り上げたいですわ、1対複数人、相手の武器使用、極端な体格差、全て希望しますわ」
「え…え?!お嬢ちゃん死んでも知らないよ」
「おかまいなく、ですわ」受付の係りは最後にフっと殺気を感じた

仕方がないのでセッティングをする
[謎のセクシー美少女対残虐なファイターズ]と題して客を集めた。
覆面をした美羽1人に対して相手は10人、アメフトでもしてそうな体格のよい素人×8と弟子クラスが2人を同時に相手をする。しかも全員金属バットか木刀を装備している。
外見上は勝負にならない。素人8人でさえ100キロ超えているであろう肉体である。弟子クラスもかなりの肉体だった。
素人目からしたら賭けにならない。倍率は案の定1万倍。そこに新島が美羽から預かってた梁山泊のヘソクリ1万円を賭ける。

これで準備は完了。後は美羽が勝つだけである。
広めのフィールドに選手が入り試合開始を待つ。美羽は覆面にスクール水着という不思議な格好。あのムチムチの肉体でスクール水着である。相手10人は理性が飛ぶほど釘付けになる。
いや理性が飛んで飛躍的に戦闘力が上がるかもしれない。
新島だけが別の心配をしている(勝つのは勝つだろうが相手は生きてるかな…)

カーン!!ゴングがなる、その瞬間 フュン!!10人みんな異変に気づいた。美羽からとてつもないオーラが放たれている。
エロ目線でもはや美羽をみれない、生命の危機すら感じる。
美羽から仕掛ける。
目にも止まらぬ速さで相手に接近し肩をグシャリ!と掴む、肩が外れる。それを全員に対し一瞬でやってしまう。
そして苦しむ時間すら与えず1番体格のよい男に強烈な蹴りを見舞いノックアウト。その男を武器に使う。

「人手裏剣」美羽が呟き集団目掛けて投げつける。
今の時点で生き残りは弟子クラス2人だけになった。美羽の動きが目で追えないだけに恐怖感しかない。
なんと美羽は素人8人を次々と投げつける「人手裏剣乱れ舞い!!」弾丸のように人間が次々に自分に目掛けて飛んでくる。全て直撃し全滅。
2分もかからず制圧してしまった。

美羽はさっさと私服に着替え帰宅し新島は現金をあずかりパチンコ屋へ向かった。

次の日……パチンコで8千万稼いだ男と騒がれ様々なメディアの取材を受ける逆鬼がいた。



爆乳大佐vs新人巨漢海兵

グラビアアイドルをかるく凌駕する肉体、そんなセクシーさに似合わない腕力、そしてメートル級の天然バスト
爆乳大佐の存在感は健在だった。
荒れ狂う猛者ばかりが志願してくる海兵隊で常に新人を教育するエキスパートとされてきた大佐。
他では獰猛過ぎる海兵隊も大佐からすればチワワのようなものでしかない。

「制圧するのに必要なのは力と武器だ」と言い放つ迫力はハンパではない。
女性と舐めていてひれ伏すまで教育された新人は数が多過ぎるほどだ。

爆乳大佐の新人教育には最近新しいやり方があった。
いちいち歯向かう物を折っていては時間が足りない、最初に1番強いヤツを再起不能にして一気に統率を取る。
そして今日志願兵との対面だ。

1番反抗的で強そうなやつを探す。ちょうど白人の相撲取り体型のチンピラをみつけた。筋肉質で脂肪もあり体だけなら志願兵の中で1番だろう。
そいつに向かって「おい!お前、何か不服があるのか?あるなら来い、力比べでもしてやろう」
巨漢の白人も勢いよく大佐に向かって行く「へ、へ女に軍人は無理だとわからせてやる」邪悪な顔つきだ。

両津にした時と同じ手をがっつり組み合う。力を込めると巨漢が呻く「な、なにー」大佐は涼しい顔でどんどん追い詰めていき握力で関節を一気に外す

巨漢は転げ回る、しかし大佐は冷淡にまだ追い詰める「貴様らよくみておけ、上官に服従しなかったり反抗的なものはこうなるのだ」
巨漢を片腕で掴むとグイっと頭の高さまで持ち上げ周りに力をみせつける。
そして地面にたたきつけるとまた片腕で持ち上げ次は振り回す。

もはや生意気な志願兵は恐怖で従順なチワワになっていた。
巨大な乳は軍服からでも絶大なセックスアピールをしていたがもはや大佐をみて勃つ者はここにはいない。
例えビキニやヌードでも大佐では興奮できないだろう。

それだけの恐怖を植え付けられたのだ。
まだジョディですら片腕だけでねじ伏せる最強軍人。
ヒヨッコの志願兵は大佐の教育により規律や規範を学ぶのだ。







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