5年3組物語 第10話

学級新聞

「はぁ〜あ…なんか記事になるようなおもしろいことない?」
 智恵理は小学校で最大サイズの椅子でも潰れてしまいそうな巨体を伸ばして、ひとつあくびをした。
「う〜ん…じゃああの手でいこっかな…あたしの身近でけっこういいネタあるけど」
 それに、智恵理に負けず劣らずの巨躯を誇る亜由美が答えた。

 放課後。相沢智恵理と井上亜由美の2人は学級新聞作りのため教室に居残っていた。
毎週、クラスで2名がペアを組んで模造紙1枚で新聞を作る試みが、この5年3組では行われている。
今週は、彼女たちがその当番なのだった。
「ほんと?どんなのがあるの?教えて、亜由美」
「ふふ、見てからのお楽しみ。これから、取材しに行ってみようよ」
「取材?」
「うん。あっそれと、智恵理に持ってきて欲しいものがあるから、忘れないようにお願い」

 2人が向かった先は、町内にあるアマチュアレスリングのジムだった。
「ここって、亜由美が通ってるジム?…で、ここで何があるわけ?」
「実はね、このジムで今すっごくがんばってる人がいるの。
その人のことを書けば、超感動もののドキュメンタリーになること間違い無しよ」
「感動、ねぇ。亜由美の言ってること、まだよくわかんないんだけど…」
「あっ来た来た。あの人だよ、智恵理」

「こんにちは、実さん!」
「ぅ、ぁっ…」
 いつものようにジムに顔を出し、レスリングコスチュームに着替えて出てきたその男は
突如目の前に立ちはだかった巨大な少女2人に息を詰まらせた。
「智恵理、紹介するね。この人は、窪田実さんって言うの。
なんとかっていう大学の、プロレス研究会のメンバーなんだよ」
「えぇっ、プロレス!?こんなちっちゃい人が?ウソでしょ!?」
「ウソなんかじゃないよ。この人がいるサークルって、みんなこんな感じでか弱い男の人ばっかりなの。
こんなに小さな体っていうハンデを背負いつつ必死にがんばる男たちの熱きドラマ、なんてテーマでどう?」
「どう、って…そんなのいい記事になるかなぁ、亜由美ちゃん…」
「き、君たちは、何を言ってるんだ??」
「そっか、実さんにも紹介しなくちゃいけないね。この子は、智恵理ちゃん。あたしの同級生で、5年生だよ」
「ごっ…ごねん…せい…」
 実と呼ばれたその男は、ただただその現実に立ち尽くすしかなかった。

 高校時代からレスリングに打ち込んでいる、実。
新東都大学進学後はプロレス研究会入りし、そのアマレス経験を生かして一暴れしてやる心づもりだった。
しかし、高校時代から全く芽の出なかった実力は学生プロレスの世界でもまるで通用せず、
全然格闘技のバックボーンがない他の研究会メンバーともども、日々無残な負け姿ばかりを晒すだけだった。
160cmそこそこの背丈と肉付きの悪い体格は、格闘技経験云々以前のレベルで相手に軽々と蹴散らされてしまう。
それでも彼はめげることなく、自宅に近いこのアマチュアレスリング道場へと足を運ぶようになった。
小さな体というハンデを乗り越えるには、更なるレスリング技術の向上しかないと踏んで。
…そして、その道場には亜由美がいたのである。
未成年の練習生、いや成人男性でも相手を勤められるものがいなくなっていた亜由美の前に、
実は最初から対等に練習相手という位置付けは許されなかった。…練習台だった。
体格からして違いすぎる亜由美に、実は連日なすすべなく投げ飛ばされ、叩きつけられ、極められ、締め上げられた。
実をはじめ、この道場で亜由美とスパーリングを行って最後まで意識を保っていられた男子練習生は皆無といってよかった。
そしてさらに今日、実の目の前には亜由美と、彼女と同等かそれ以上に巨大で逞しい肉体の少女の姿。
実は何やら、とてつもない悪しき予感に体の芯を震えさせた。

「あたし、実さんのことは決して弱いなんて思わないわ。
毎日あれだけハードにやって、あたしのスパーにも付き合ってくれて、それでやめないでがんばってるんだもん。
このごろ男の人ってすぐにやめちゃう意気地なしが多いのに、実さんはガッツがあってえらいと思うよ」
 次々に男子の練習生がやめていくのは自分のせいじゃないか…と実は思ったが口に出すことはなかった。
「……〜というわけだから、ぜひ実さんにあたしたちの学級新聞作りに協力してくれないかなって思ってさ。
他のプロレス研究会の人たちも呼んでくれたらうれしいな。個人的に、もっと詳しく知りたかったし。
みんなで練習ついでっていうか。…智恵理も着替えてきて?」
「あっ、うん」

 道場のリングの上に、プロレス研究会5名、女子小学生2名の計7名が顔をそろえた。
5人の男は一様に、女の子2人の小学生離れしたボディを愕然と見上げ続けていた。
5人の中では誰も及ぶことのできない身長。
肩紐部分から外側に高く、広く盛り上がる肩幅。
自分たちが精一杯力を込めても、今の通常状態の彼女たちのレベルには届きそうにない、太く逞しい二の腕。
レスリングウェア越しにはっきりと確認され、自分たちを威嚇するように盛り上がり溝を刻む腹筋。
男たちは皆、彼女たちの前で自らの肉体を晒していることに恥じらいと惨めさを感じ始めていた。
この屈強な女子小学生を前に、自分たちは日頃レスラーを名乗りながらなんと脆弱な体つきなのだろうと。
「うわぁ、よっわそ〜〜…こんなひ弱な人たちが、ほんとにプロレスやるわけ?死んじゃうんじゃない?」
 レスリングをやったことがなく専用のウェアを持っていない智恵理は、学校指定の競泳型スクール水着に身を包み
その強靭な体をむき出しにして小さな男たちを上からしげしげと覗き込む。
その迫力に、男たちはますます情けなく縮こまってしまう。
第三者からの目からは、女子小学生と成人男性が向かい合った光景だとは絶対に思えないはずである。
「ううん、この人たちは見た目以上の強さがあるってあたしは思ってるわ。
小さく弱々しい体をものともしない心がなくちゃ、まともに試合なんかできるわけないもん。
体が足りない分は、ハートでカバーだよね?みんな♪」
「ぅ、ぅん…」
 亜由美と智恵理の巨体に気圧され、プロレス研究会の男たち5人はそろって体格以上に弱々しい返事を返した。

「…見てる限り、心だって強そうにはとても見えないけどね…
それじゃ早速始めよっか。見た目じゃわからない強さっていうの、見せてもらっていいよね?」
 智恵理が半信半疑の表情のまま、目の前の集団の中で最も大きな男の腕を片手で強引に取ると
「ひっ…!」
 その男がうろたえの声を喉から発し切る前に、男の体は智恵理の逞しい腰の上に乗せられ宙を舞っていた。
 ダンッッ!!
「ぎぇええぇぇ!」
 智恵理の怪力によって、175cmの男は残り4人の男の目に止まらない速度で円を描いて背中から着弾していた。
男は背骨を芯まで襲う激痛にそれ以上の声を発することもできず仰け反り悶絶している。
「うちのクラスの男子じゃあんまり弱くて全然力入れられないからいっつも欲求不満気味だったんだけどさ、
あんたたちは大人の男だから手加減はそんなに必要ないよね?久しぶりにがんばっちゃうよ、あたし」
 のたうちもがく男を背にして智恵理は、おもしろい遊びを発見したような顔で残りの4人を見下ろしながら
彼らの太腿すらを上回る太さの腕に力を込めてさらなる逞しさに膨張させて見せた。
背後で苦悶する仲間と彼女のそんな姿を交互に目で追いながら男4人は戦慄した。
自分たちの中で最も体格のできているメンバーを一瞬で戦闘不能に追い込んでおいて、
さらに今こうして楽しげな表情を浮かべて力こぶを盛り上げている姿に。

「さあ、次は誰?見た目以上の強さっていうの、見せてほしいな。早く」
「ぅ…わ、わあぁーっ!」
 実は勇気を振り絞り、しかしそれでもためらいが残るぎこちなさで智恵理に突っ込んでいった。
いくら事実だとしても、女子小学生に小さいだの弱そうだの言われてバカにされるままでいいはずがなかった。
強さを競う競技を行う大学生の男として。
アマレス流の片脚タックルで一気にダウンを奪おうとする、実。
(いくら体格が違うったって、寝かせれば同じだ!寝技で泣かせて後悔させてやる!)
しかし、智恵理の右脚は実の全力を持ってしてもビクともしない。
「そ、そんな…そんなはずが!」
 実はやけになって、ただ智恵理の膝を折り曲げようと何度も勢いをつけてぶつかるように脚に組み付く。
真っ赤になって、必死に…
「ふふっ、亜由美が言うとおりガッツがあってえらいね。がーんばれ、がーんばれ♪」
智恵理の右脚に抱きついて汗だくで踏ん張る実の頭上から、智恵理の他人事のような明るい声が注いできた。
持てる力を出し切ってタックルを続けていた実は愕然とした。通用しないどころか、何とも思われていない!
そして、あらためてこの少女の太腿の強靭さに実はたじろぐ。
確かにローティーンの少女らしいすべすべとした太腿だが、
その太さ、硬さは今までに戦った男たちでも目にしたことがないほどのものだった。
ふと、その太腿に智恵理が力を込める。
グンッ!
「ひっ!!」
 それはしがみついていた実を跳ね除けるように、さらにその太さと硬さを増し深い筋肉の割れ目を刻んだ。
(な、なんてことだ…今まで力を入れてなかったのか!?…か、怪物だ!!)
 実にはその太腿が電柱のようにも感じられ、彼の戦意は根本から大きく揺らいだ。

「ほらぁ、やめちゃダメでしょ。男の子ならもっと根性入れなきゃー」
 バシーン!!
「あぐぅ!!…ぐ…ぇ……」
 真上から振り下ろされた智恵理の大きな手のひらが実の背中に炸裂し、ジム内に乾いた音が響いた。
背中に真っ赤な手形を刻印された実は、嘔吐寸前の悲痛な咳き込みをしながらズルズルと崩れ落ちる。
しかしそれも束の間、目に涙を浮かべながら必死に酸素を求めて口をパクパクさせる実の体が宙に浮いていく。
智恵理が実のレスリングウェアの、背中の細くなった部分を掴んで引っ張り上げ、
まるでスポーツバッグでも持ち運ぶように軽々と実そのものをリフトアップしてしまった。
滑稽な感じに伸びきったレスリングウェアで吊るされた体勢で、実はますます顔を青ざめさせ情けなく四肢をバタつかせる。

「んふふ、あたし調子出てきちゃった。
あんたたちの得意なプロレスルールでたっぷり相手してあげちゃうね。さぁ、かかっておいで!」
「た、助けて!」
 惨めな格好で宙吊りにされたまま、実は目の前の巨大少女に怯え思わず泣き言を口にする。
(そういえば他の仲間たちは何をやっているんだ!?見ている暇があったら加勢してくれ!)
実は心の中で叫び、助けを求める目で辺りを見回す。
自分たちのサークルで最も体格に恵まれているはずの猛はさっき智恵理に放り投げられたまま未だにのたうっている。
ならば主将の毅は…!?と違う方向を振り向いた実はそこにある光景にまた絶望させられた。

「さぁっ、実さんもがんばってるよ!根性で、あたしをギブアップさせてごらん!」
「ががが…ぎゃ、ぎゃぁぁぁぁぁ」
「も、もうダメ!勘弁、勘弁してください…」
 実の目の先には、プロレス研究会主将の毅ともう1人、保の姿があった。
毅と保が2人がかりで、小学5年生である亜由美の寝技の餌食となり、許しを乞いながら泣いていた。
毅の顔面は彼のものとは比べ物にならないほど太く力強い亜由美の右腕にガッチリと捕縛され、
硬い力こぶとレスリングウェア越しの柔らかなバストの間でとめどなく涙を流し続けて亜由美の腕をびっしょりと濡らしている。
そんな亜由美の腕の倍以上も太く逞しい両の太腿には、それに比べて非常に頼りない保の胴体が強固に監禁されている。
締め上げられるたび、保の肋骨の軋みが聞こえてくるような気がするが、
それ以上に大きく保の口からうわずった呻きが響き渡ってかき消される。
毅も保もそろって、大男に犯される少女のように大粒の涙を溢れさせながらマットを乱打して降参の合図を送り続けている。
犯される…そう、これこそが、実がこのジムで何度も目にした亜由美のグラウンド技地獄なのだった。

 このジムに入門した全ての男は、ほぼ例外なくやがて亜由美に呼ばれてスパーリングの生贄とされる。
亜由美と組み合って一旦寝かされたが最後、その男はスパーの最中、二度と起き上がることは不可能。
亜由美の有り余るパワーとスピード、テクニックにより、一切の抵抗が許されないまま寝技で嬲りものにされるのだ。
腕、脚、肩、腰、首…あらゆる部位をテキパキと捻られ、軋まされ、締め上げられて、泣かされる…
それでも亜由美本人は普通のスパーリングとして、小学生らしく無邪気にやっているだけなのだから始末に終えない。
亜由美はほんの練習のつもりでも、相手の男たちにとってそれは気絶するまで放してもらえない寝技の強姦なのだ。
だから、実を含めこのジムに通う男たちの間で亜由美とのスパーは「レイプ」と呼ばれ恐れられている。
男たちはほとんど全員、一度はこの亜由美にグラウンドでなすすべなく『犯され』、マットの上で意識を失わされている。
失神だけならまだしも失禁してしまった者、そのまま病院に直行してしまった者も決して少なくない。
さらには、鍛え上げられ強固ながらも柔らかく発育したピチピチのボディと少女らしい芳香の前に
極限の苦痛と同時に快楽の絶頂へと導かれ、だらしなく緩みきった悦楽の表情で落ちてしまう者…
実も例外ではなかった。亜由美の大型ペンチともいえる手足で圧迫されながら彼女のぷにゅっとした感触と甘い汗の香りに包まれ
突き破らんばかりのレスリングウェアの内側をドロドロに汚しながら眠りについてしまった恥ずかしい記憶がある。
その瞬間は、妙な表現だが『天国に落とされる』感覚だったと実は覚えている。

「あ、がぐぐ…は…ぁ……」
 保が落ちた。
彼の胴体から首筋に移行した亜由美の太腿の間で、保は半ば恍惚とした悲鳴を漏らしてジタバタを止めた。
保が着用している試合用のショートタイツは、上からその形がくっきりとわかるほどに怒張しきっている。
保もまた、亜由美の寝技レイプで地獄から天国へと送られたのだ。
「ほらぁ、反撃してこなきゃダメ。男でしょ?」
「ぎゃあああ!!」
「ひ、ひぃぃ…ぁだだだだだ!!」
「許して、ゆるし…ぁ、あああーっ!!」
 亜由美の標的は、残る毅1人に絞られた。
袈裟固め、肩固め、逆片エビ固め、STF、首4の字固め、ストレッチプラムetc…
毅たちの分野に合わせたのかプロレス技へと移っていき、毅を思うままに仰向けにうつ伏せにコロコロ転がしては
次から次へと様々な体位で犯していく。毅はもう泣き叫ぶだけの玩具だった。

「ウギャー!!」
「さぁて、うちのクラスの男どもはこれやるとみんな泣いちゃうんだけどあんたはどうかな?
亜由美の言うとおり根性あるんならこのぐらい平気だよね」
 今度は実の口から悲鳴が放たれた。
実の右手と右足、左手と左足がそれぞれ一まとめにされた状態で智恵理に真上から吊るされる。
吊り天井を逆さまにしたような、変形のバックブリーカーの一種だった。
スクール水着姿の智恵理の両脚の間で、両手脚を拘束された実は背骨を軋まされながら前に後ろに揺らされる。
「ほぉーら、隣の町にある遊園地でこういう絶叫マシンあるでしょ」
「…!ぁっ…ぁぁぁ……!」
「ふーん、あんたは泣き出さないね。やっぱり大人なんだー。えらいえらい♪」
「……っっ!!」
 泣き出さないのではない。あまりの恐怖に実は凍り付いて声すら出せないのだ。
おもしろがる智恵理がますますスピードを上げてそのパワーで股下の実を前後にスイングする。
何度も何度も、地面すれすれを猛スピードで往復飛行させられる実。もし智恵理が手を離せば実は次の瞬間、
そのままの勢いで前方に発射されるか、満足に受身も取れず頭から床に墜落するかだ。
ジェットコースターのような恐怖、遠心力でさらに両手足と背骨にかかる自らの体重による激痛、
そして女子小学生に脚の間でブランコとして弄ばれる耐え難い屈辱…実の涙が宙に舞う。

「こ、このっ…いいかげんにしろ!!」
 智恵理に投げ飛ばされてダウンしていた猛がようやく蘇生、智恵理の足元に蹴りを入れた。
「もうっ、うるさいなぁ!」
 智恵理は適当に実を放して投げ捨て、実は痺れた腕で受身がとれず胸板と顔面を床に打ちつけ鼻血を撒き散らした。
おののいたのは猛だった。蹴った瞬間のあの硬い感触、そして何とも感じていない智恵理の様子。
俺の全力のキックが…猛は背筋を冷やして思わず後ずさりをしていた。

「ごぶぉっっ!!」
 しかし次の瞬間には、それよりも何倍も勢いをつけた智恵理の右腕が猛の首をえぐっていた。
智恵理の太い腕でのラリアットが火を噴き、仰向けに床に叩きつけられる猛。
「今度はあんたが相手ね。いいよ、どんどんおいで!」
 目の焦点も合わせられず立ち上がれない猛の右手を智恵理は左手で掴んで、猛を振り回すようにして強引に立ち上がらせ
猛スピードで引き寄せておいてそこにまた右腕が襲う!
「ぶぐぇぇえ!!」
 猛は涎を宙に舞い上げ背中からダウン。息つく暇なく強力に引きずり起こされ、またスイングされる。

「ゆ、有紀!見てないで助けろ!たすけ…」
 やっとのことで猛はそれだけ口にして、あと1人近くに残っている小さな男に協力を要請する。
しかし有紀と呼ばれたその男は目の前の、実を失神させ猛を一方的に痛めつける大きな智恵理の鬼神の如き強さに震え上がり
女の子のような座り込み方のまま身動きが取れないでいる。
「ゆ、ゆぅき…あがあああ!!」
 必死に助けを乞いながら猛は智恵理の3発目のラリアットで人形のように吹き飛ぶ。
しかしもう片方の手は未だ離してもらえない。またすかさず引き起こされ、振り回される。
「ふふっ、こいつが片付いたら次はそこのかわいいおチビ君の番だからお楽しみにね」
 4発目で猛を豪快になぎ倒しながら、智恵理は有紀のほうを振り向いて楽しげに微笑んだ。
このプロレス研究会の中で最も小柄で、こういうサークルにいることを日頃から笑われているほど華奢な有紀は
可能ならばもうこの場から逃げ出してしまいたかった。ただ、恐怖で足がすくんでしまって動けないだけだった。

 5発、6発と叩き込まれた智恵理の豪腕に、猛は半回転して後頭部から沈んでしまった。
「よっわーい。全然手ごたえないじゃん。やられっぱなしだったら、うちの男子と変わらないでしょ」
 もう虫の息となり、一部に赤い色を滲ませた泡を吹いてピクピクする以外は身動きの取れなくなった猛を踏み越えて
智恵理はまだ息も切らさずに悠然と有紀のほうへと歩を進めてくる。
「あ、あわわ…」
「さぁっ、あんたが最後の砦だよ。気合で逆転してごらん、ちびっ子レスラーさん」
「わぁぁーっ!!」
 迫り来る重圧に耐えかねたのか、有紀は智恵理に踊りかかる。窮鼠猫を噛む、そんな言葉を信じるかのように。

 ズダァァンッッ!!
「ぐふぅっ!!」
 …しかしそれは、まさしく無謀と言うほかなかった。
有紀の小さく軽い体は彼の太腿でも及ばない智恵理の太い腕に軽々とすくい上げられ、大きく弧を描くパワースラムで
強烈に叩きつけられる。
投げ飛ばされた衝撃と、80kgの智恵理の巨体が覆いかぶさる圧迫。
サークル内でも特に鍛え方の足りない有紀は、この一発だけで早くも息絶え絶えだ。

 そして間髪入れずに引き起こされ、今度は有紀の薄い胸板が智恵理の大きな素足にとらえられて吹き飛ぶ。
まるで、大型トレーラーにはねられる自転車だった。何もかもが、圧倒的に違いすぎるのだ。
本来こういうサークルに入るのが誤りなような貧弱男と、
今すぐ学生プロレス界に殴り込みをかけても敵う相手がいないかもしれない怪力女。
そうするより仕方がなかったとはいえ、一旦自分から勝負を仕掛けていったことを有紀は心の底から後悔していた。
絶対、勝てない…それどころか殺されるかも…遠目で見てわかるほどに震え、腰が抜けて立ち上がれない有紀。
そしてふと、仰向けの状態の有紀の視界は急激にフッと遮られ暗闇が襲った。

「智恵理ボンバーッ!」
 ズドオォォォンッ!!
「ぐぶっ!!……っっむぅぅぅぅぅ」
 ジャンプして宙を舞った182cm・80kgの智恵理。そこから全体重をその巨尻一点に集中させて、
ひ弱な有紀の顔面を襲い、覆いつくしてしまったのだからたまったものではなかった。
智恵理のヘビー級尻爆弾が投下・着弾した瞬間、有紀はその衝撃に首から下を大きくバウンドさせてしまう。
これこそが、5年3組をはじめ多くの男を震撼させるアマゾネス小学生・相沢智恵理の必殺技『智恵理ボンバー』だった。

「んーっ!ん゙ん゙ん゙――――っっ!!」
 紺色のスクール水着に包まれた、どっしりと丸い智恵理のヒップに有紀は圧迫を通り越して密封されていた。
女子小学生のお尻の下で、ほとんど外に漏れることのない悲鳴をしぼり続ける有紀。
さらに智恵理は、両足を有紀の肩の上に置く形でベッタリと正座、有紀をさらに強固に固定する。
そればかりか、ジタバタと暴れる有紀の両脚を後ろ手でキャッチ、自分の脇の下に挟んで完璧に動きを封じてしまった。
ただ顔の上に座るだけでも、80kgもある智恵理相手だと並の男ではそうそう脱出できるものではない。
ましてやこの体勢は手足の自由まで奪ってしまった完全体のフェイスシッティング。
逃げられる望みなど、ありはしなかった…

「フン、子供だって大人だって大して違いはないってことね。やっぱり男なんて、どいつもこいつも軟弱な奴らばっか」
下敷きにした男を完全に失神KOしたことを確認した智恵理が呆れたような顔でゆっくりと立ち上がる。
自分のクラスの男子他、これまでに幾人もの男を『圧殺』してきた智恵理には、
お尻の下に敷いて相手の顔が見えない状態でも、相手の意識の有無が自然とつかめるようになってしまっていた。

 保が亜由美の太腿で絞め落とされ、実、猛、有紀の3名は立て続けに智恵理の前に易々と畳まれ、惨めに転がっている。
残るはプロレス研究会主将、毅ただ1人…しかし、彼もまた風前の灯だった。
「ねぇ主将さん、私、一回だけ試してみたいことがあるんです。
私、今まで男の人に思いっきり技かけたことってなくて…
主将さんはプロレス研究会の主将だから受身とかちゃんとできると思うし大丈夫ですよね?
お願い!一回だけ、一回だけでいいから手加減なしで技かけさせてください!ね、いいでしょ?」
 こんな屈強な体を持ちながら、亜由美は両手を合わせて小学生の女の子らしい笑顔で毅におねだりをした。
毅は横たわりながら、歯の根が合わないほどに震え、怯えた。
大人の男をこんな、全身の関節が違えてしばらく立ち上がれそうになくなるぐらいの
一方的な寝技レイプ地獄でいたぶりまくっておきながら、まだ本気じゃないなんて!
冗談じゃない、自分の妹の久美子を上回るこんな怪物女にさらに力を入れられでもしたら命にかかわる!
慌てて毅は首を横に振ろうとした…しかし亜由美に数度にわたって極められた首関節は少し動かすのにも激痛が走り
毅は涙を浮かべ、痛みからつい首をすくめてしまった。

「わぁ、いいんですか!?ありがとうございます主将さん!
私、この前テレビで見てどうしても全力でやってみたい技があったんです!」
 亜由美には、毅のその動きが頷いたように見えてしまったのだった。
毅が彼女の勘違いに気付いたときには、亜由美はもうまるで大好きなものをプレゼントに贈られたような表情で大喜びしながら
横たわっていた毅をものすごい力で引き起こして、早くもその彼女の言う技の発射体勢に入っていた。
毅は背筋を急速に凍らせ、全身に脂汗を滲ませて命乞いをしようとした。
「ちょ、ちょっ、待って、今のは違…」
 しかしその言葉はもう亜由美の耳には入ろうとしなかった。
「行っきまぁす!亜由美トルネード!!」

 ゴッ!!

 柔道の大外刈りをプロレス風にアレンジした流行のその技を、亜由美は毅で実験してみた。
手加減なしの、100%の力で。
電光石火のスピードで、毅は後頭部を強打して舌を出したまま完全に伸びてしまっていた。
「あ、あらら…やっぱり、本気出しちゃヤバいか…ごめんね主将さん」
 新東都大学プロレス研究会、小学校5年生女児2名の前にあえなく全滅。
「何よ亜由美、全然大したことなかったじゃん。小さな体をカバーするハートがどうのこうのって、何だったの?」
「うーん、もうちょっと骨のある人たちだと思ってたんだけどね…」
「ところでさぁ、これをどうやって学級新聞にするの?」
「え?」

 …戦いに熱くなるあまり、目的を忘れてしまう2人の悪い癖だった。


 つづく





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