02.恋の芽生え
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入学式を終えていよいよ本格的にスタートした高校生活。
まだまだ落ち着かない日々が続いているが、少しだけ気になる女の子がいる。
これってもしかして恋心なのか??
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『見えない。黒板が見えない・・・・・・。』

僕の名前は神宮寺太郎。
授業が始まったというのに、前の黒板が見えなくて困っている。

決して目が悪い訳ではない。

黒板が見えない理由・・・・・・
それは僕の前に座っている、喜多嶋佳織さんのためだった。

198センチの長身、そして大きな肩幅。
座っていても壁のように感じる。
恐らく教壇に立つ先生からは、僕のことが全く見えないだろう。
肩まで伸びたセミロングの黒髪は、全体にシャギーが入って軽やかなおしゃれを演出している。
僕はそんな彼女の後ろ姿を見つめながら、一昨年のオリンピックのことを思い出していた。

それには日本中が震撼した。
当時14歳の彼女が、女子バレー全日本チームのエースアタッカーとして抜擢されたのだ。
既に190センチを超えていた長身と抜群の運動能力を武器に大活躍した彼女。
東洋の魔女以来40年ぶりの金メダルは、彼女の大活躍抜きには為し得ることができなかっただろう。

当時の僕もTVを見ながら熱狂していた覚えがある。
そんな彼女が今、僕の目の前にいる・・・・・・
黒板が見えないのは痛いが、D学S組に入学できて本当に良かったと思う。

休み時間・・・・・・

彼女はいつも笑顔で友達と会話している。
どんな人にも分け隔てなく、明るく接している。
金メダリストだというのに、威張ったり奢ったりする気配は微塵も見せず、楽しそうに会話している。
そんな姿勢に彼女の人柄の良さが現れている。

「私、大きいから前が見えないでしょ。ごめんね。」
「そんなことないよ。大丈夫。気にしないで。」
「ありがとう。でも見えにくいときは遠慮なく言ってね。」

彼女が見せる目映いばかりの笑顔はとてもキュートだ。
僕は一瞬にして心を奪われてしまった。

「佳織?ちょっとこれ見て。」
「ナニナニ・・・・・・」
友達の広末七海に呼ばれて、彼女が席を立った。

デ・・・デカい・・・・・・
やはりデカい。
椅子に座った僕の視線は、彼女のお尻の位置にあった。

とにかく脚が長い。
制服のスカートから出ている部分だけでも、十分に僕より長そうだ。
股下は軽く100センチを超えている。
膝から上は良く見えないが、ふくらはぎには異常なほどの筋肉がついている。
トップアスリートとしての風格が十分すぎるほど漂ってくる脚だ。

あの屈託の無い笑顔に騙されそうになってしまうが、やはり彼女は金メダリスト。
僕なんかとは所詮、釣り合うわけもない・・・・・・。
それでも僕の胸の中には、ほのかな恋心が芽生え始めていた。

つづく





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