13.男子復興作戦
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ある日の男子ロッカールーム。
S組の主導権を女子に奪われている男子たちが、ぐだぐだと愚痴をこぼしている。
いつかクラスの女子たちに一泡吹かせてやろう。
そう考えている彼らの立てた作戦とは……
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「ホントにあいつらムカつくよな。」
「俺たちのこと完全に見下してるよね…。」
「っていうか最近眼中にもないって感じ…。」

休み時間…
男子ロッカールームではそんな会話が為されていた。

サッカー部の豊丘哲平と磯崎浩二、体操部の坂元大輔。
さらに陸上部の京極悠斗や柔道部の本郷紀彦、プロボクサーの笹島大樹といった面々だ。

彼らは中学までいわゆるガキ大将として威張ってきたタイプ。
女子に主導権を握られ、自分たちがロッカールームに追いやられている現状を快く思っていない。
特にリーダー格の哲平には、みんなの前で佳織に恥じを掻かされた苦い思い出がある。

「なぁ…何とかあいつ等を痛い目にあわせる方法はないかねぇ?大樹…ボクシングで何とかなんねぇのか?」
「無理だよ…。ボクシングはスポーツだから、ルールのないところではほとんど無力…。」
「だったら紀彦の柔道がいいんじゃないか?」
「難しいね…。柔道は普通体重別だから、あれだけデカイとパワーでやられちゃう…。」

ちょうどそんな会話が為されていたとき、僕は荷物を取りにロッカールームへと入っていった。

「あっ…太郎!」

哲平から声が掛かる。
昔は少し問題があった間柄だったが、今では関係も修復され普通に会話できる状態になっている。

「何ー?」
「なぁお前、うちの女子たちと結構仲良いだろう?」
「んーー…、まぁそこそこね。」
「アイツ等の嫌いな食べ物とか、生き物とか何か知らない??」
「えっ?嫌いなもの?? 何で急にそんなこと聞くの?」
「いや…、別に大した意味はないけど、単なる興味でさ…。」

僕は少し考えた。

「綾乃さんは、確か野菜が食べれないんだ。」
「あのギャルが野菜嫌いかよ!」
「野菜食わなくてもデカくなれるって証拠だよな。」
「はっはっはっ…。で、それから?」
「そうだなぁ…、七海さんがカエル嫌いなのは有名だね。ケロロ軍曹見ただけでも鳥肌が立つって言ってた。」
「えっ?ケロロ軍曹でも駄目?」
「あんなデカイやつがケロロ嫌いとはねぇ…。それから??」
「あとは蛇が苦手な人は結構多くて、美咲さんとか真央さんとか、里奈さんとか…。」
「それから??」
「んーー…、佳織さんはゴキブリが駄目だね。この前、廊下でゴキブリが出たとき大きな悲鳴上げてたし。」
「おぅ!!!。あの大女はゴキブリ嫌いかぁ。これはいい!」
哲平の顔がほころんだ。

「まずはゴキブリとカエルと見つけてきて、奴等の靴箱に入れてみよう!!」

彼のひと言に僕は驚いた。

「えっ??嘘だろう!マジでそんなことするの?」
「ジョークだよジョーク。仲良くなるためのコミュニケーション。
 別に太郎は関係ないし。誰もお前に聞いたなんて言わねえから。」
「アイツ等の悲鳴が聞けるかもな。」
「結構体に似合わず可愛らしい悲鳴だったりして…。」
「泣き出したら面白いけどね。」

哲平たちはこれで一泡吹かせてやることができるとほくそ笑んだ。
太郎は変なことに巻き込まれてしまったとかなり後悔した。

「よし!こうなったら今日の夕方、部活が始まる前に準備しよう。」
「河川敷に行けばカエルはすぐ捕まるし、部室のホイホイにはいつもゴキブリが掛かってる。」
「じゃぁ今日の放課後な!」

大輔は意気揚々とロッカールームの扉を開けた。

「はっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
哲平たちは思わず息を呑む。

扉の前でS組の女子たちが手を組んで待っていたのだ。
彼女たちの眼が怒っている。
はるか高いところから、哲平たちを睨みつけている。
すごい迫力…。
どうやらロッカールームの中の会話が、すべて筒抜けだったようだ。
テンションが上がりすぎて、大声で会話してしまったのが大きな間違いだった。

恐怖のあまり額から大粒の冷や汗がドクドクと流れ落ちる。
気まずい雰囲気……。
誰も言葉を発しない。

そのとき女子リーダー格のひとり、広末七海が一歩前に出た。
「全員、正座!」

僕らは言われるがままに正座させられた。
哲平と浩二、大輔、悠斗、紀彦、大樹の6人に何故か僕。
言い訳もできない空気が流れている。

ただでさえ大きな身長差があるのに、正座などしたら彼女たちはますます大きく見える。
僕らの視線の位置は、彼女たちの膝か太腿あたり。
迫力ある15人30本の長くて逞しい美脚が、壁のようにそびえている。

委員長の秋元麗香が説教を始めた。
「あなたたち最低よ。文句があるなら直接言えば良いじゃない。」
眼の前にはスカートからのぞく陸上部の鍛えられた美脚。

「それに影でコソコソ人の嫌がることするなんて…」
七海が言葉を続ける。
麗香よりさらにひと回り長い、オリンピック金メダリストの美脚。

「何か弁解することはある??」
麗香が口調を強める。

他の女子たちは、腕をくんだまま後方で睨みを利かせている。
一番後方では頭に血がのぼった綾乃を、佳織が羽交い絞めにして必死に抑えている。

「ごめんなさい…」
「すいませんでした…」
「もう二度と変な真似しません…」

同級生の女の子に無理やり謝らせられる男子たち。
彼らにとってはこの上ない屈辱だった。

「てめぇ等ホントにやったらブチ殺すぞ!」
遠くで綾乃が吼える。

「まぁ反省してるし、未遂で終わったんだから今回は許してあげようよ。」
佳織はやっぱり寛容だ。

「だけど、このままじゃ女子の気がすまないわよね……」
麗香が言った。

その声に続いたのは七海だった。
「そうねぇ、やっぱりお仕置きしなきゃ。
 哲平には空手部美由紀の回し蹴り、浩二にはテコンドー淑恵のかかと落とし、
、大輔にはレスリング智子の高速タックル、悠斗には柔道部里奈の三角締め、
 紀彦にはバレー部佳織のビンタ、大樹は夕菜の胸で窒息してもらいましょう。」

哲平たちにとっては死刑にも近い宣告がなされた。
彼らは正座しながら震え上がる。

「太郎くんは今回の主犯よね…」
「ち…違う………!!!!!」
「そうねぇ…やっぱり、綾乃に遊んでもらうしかないわね!」
「◇!!○▲☆■×!!!(殺される!!)』

「本当に…スミマセンデシターーー!!!」
土下座しての本気の謝罪。
7人が床に額を擦り付けて謝る。
女子たちの怒りも随分収まってきた。

七海がサンダルで哲平の頭を軽く踏みつける。
「今回は許してあげるけど、今度変なこと考えたらホントにお仕置きするからね!」

もう二度と女子には逆らえない……
彼女たちとうまく共存するしかない……
哲平たちはこれ以降、S組での生き方を学んでいくのであった。

つづく





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