14.S組の恋愛事情
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夏休み前最後の体育は水泳だった。
翔太と一緒に、僕は迫力あるS組女子の泳ぎを眺めていた。
中でもズバ抜けて速いのが、クラスで一番の巨乳が目立つ水泳部の五十嵐夕菜。
さすがはオリンピック出場経験者。
そんな彼女が泳ぎを終えて向かった先とは…。
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更衣室で着替えを済ませ、S組の女子たちがプールサイドに現われた。
抜群のスタイルを誇る彼女たちにサイズの合うスクール水着はない。
全員がハイレグの競泳水着を身に着けている。
その圧倒的な迫力を前にすると、男子はただ腰を屈めて我慢するしか他にない。

みんなが次々に泳ぎ始めた。
まず最初に目立ったのは男子水泳部の栗本小次郎。
168センチと小柄だが、無駄のない平泳ぎで水を掻き分け進んでいく。
さすがは平泳ぎのスペシャリストだ。

その小次郎を猛烈な勢いで追い抜いていく隣のコースの女子。
凄まじい水飛沫が上がるパワー溢れるクロール。
茶髪に筋肉質な体、間違いない…綾乃だ。

さらに隣のコースでは、佳織が流れるような美しいフォームで泳いでいる。
あれだけ恵まれた体だけに、軽い泳ぎでもスピードは抜群。

「さすが綾乃さんと佳織さんだね。泳ぎも速いんだ…。」
「そんなことはないさ。彼女たちより速く泳げる男はたくさんいる。
 あの筋肉質な体は完全に陸上向きだよ。十分な浮力を得られない。
 水の中に適した体はね、あんな体さ。」

翔太が何気なく指差した。

中央のコースでひとりの女性が泳いでいる。
いや、水の中を突き進んでいるといった感じ。
綾乃や佳織と比べても次元の違う速さ。
僕は一瞬だけイルカが泳いでるような感覚に襲われた。

100メートルのタイムを計測してプールから上がる彼女。
180センチの長身で、広い肩幅に厚い胸板。
適度に脂肪のついている丸みを帯びた逆三角形の体。
長い手足に大きなバスト。
女子自由形で一昨年のオリンピックに出場した水泳部の五十嵐夕菜だ。
今では400メートルと800メートルの日本記録保持者でもある。

泳ぎ終わった夕菜がプールサイドに座る僕らの前を通り過ぎていく。
水着姿の彼女は、綾乃や佳織に匹敵する迫力を放っている。

「そうだ太郎くん、今日はキミにひとつ面白いことを教えてあげよう。
 夕菜さんからそのまましばらく眼を離すんじゃないぞ!」
「えっ何で???」
「いいからじっと見ておけ!」

僕は翔太に言われるがまま彼女の動きを注視した。

僕らの前を通り過ぎた彼女は、そのままプールサイドの一番奥まで歩いていく。
そしてひとつだけ開いていた座席に腰を掛ける。
すると隣に座っていた卓球部の兵頭幸雄が彼女にバスタオルを手渡す。
彼女は軽く体を拭くと、何気なく幸雄の手を握った。

!!!!!!!!!!!!!!

「何だアイツら、もしかして付き合ってるのか???」
僕は興奮して翔太に言った。

「やっぱり知らなかったか……。キミの鈍感も尊敬に値するよ。
 あの2人は1年S組のカップル第1号だと言われている。
 キミ以外のクラスメイトは全員それを知っているけどね……。」
「へぇーーーっ、知らなかったなぁ。確かに休み時間も2人でよく話をしてるよね。」
「それは知ってたのか…。普通高校生にもなったらその時気付くだろ!」

僕は理由なく嬉しくなった。
情報を得ると言うことは、人間の基本的欲求なのだろう。

「で、今日キミに教えてあげたいことはそんなことではない。
 実は彼らより前に、S組には既に付き合い始めていたカップルがいるんだ。
 このことはまだ知らないクラスメイトも多い。
 今でも隣に座って仲良く手を繋いでいるんだが、キミに見つけることができるかな?」
「えっ…どこだろう……。」

僕は一生懸命探した。
プールサイドを中心に、隅から隅までじっくりと注意して見ていった。
何度も何度も見返した。
しかし僕の眼には、怪しい動きなど何ひとつ入ってこなかった。

「いないよ…。翔太くん、僕をからかってんじゃないよね?」
「ふっ…、やっぱりキミには分かるまい。
 いいかい…、女子更衣室の前。今日の水泳を見学している2人を良く見たまえ。」

僕は言われた方向に眼を移した。
確かにその方向には、制服を着た2人の見学者がいた。
ソフトボール部の安岡和美さんとテニス部の松浦ひとみさん。
女の子2人だけ。

「言われたとおり見学者は2人いるけど、男子はいないよ…。」
「キミの鈍感には感心するよ。もう一度あの2人を良く見たまえ!」

僕はもう一度注視した。
制服を着て日陰で椅子に座っている2人。

「えっ!!!!!!!!まっ…まさか!!!」

僕は喉から胃を吐き出しそうになった。
よく見ると、彼女たち2人が仲良く手を繋いでいるではないか!!
僕は驚きのあまり、しばらく声を出せなかった。

ソフトボール部の安岡和美はショートカットでボーイッシュ。
日焼けが目立つ体も大きく筋肉質で、並の男よりよっぽど男らしい。

対する松浦ひとみさんは、テニスプレーヤーらしくキュートでチャーミング。
腕や脚の筋肉は発達しているが、身長はS組女子の中では一番低い177センチ。

よく見るとお似合いだったりもする…。

「いいかい太郎くん。恋愛の形はさまざまなものさ…。よく覚えておくといいさ。」
翔太のひと言が胸に響いた。

つづく





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