16.テニス部見学
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夏休みも終わっていよいよ2学期がスタートした。
今日水曜日はサッカー部の練習が休み。
暇な僕は、翔太を誘って他の部活を見に行くことにした。
今日はテニス部の練習を見学。
S組のテニス部員には、レズで有名な松浦ひとみさんがいる。
果たして彼女の練習風景とは…
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僕と翔太は非常階段に腰掛けて、テニス部の練習風景を眺めていた。

「あっ、松浦ひとみさんが来た!」

白い純白のスコート姿。
スカートの丈がドキドキするほど短い。

彼女はスタイルが抜群で顔もカワイイ。
177センチの長身だが、それでもS組女子の中では最も背が低い。
入学当初、男子から一番人気の高かったのが実は彼女。
しかしレズの性癖が明らかになって以来、彼女に近づく男子は誰一人いなくなっている。

ウォームアップが終わって、試合形式の練習が始まった。

コートに入るひとみ。
相手コートには男子選手が2人準備している。

「えっ、2人相手?」

「そうだよ太郎くん。しかも3年生のキャプテンと副キャプテンのペアだ。
 まぁそれでも相手にはならないだろうね。
 何せ彼女は、日本テニス界期待の新星だから…。」
翔太が自慢気に答えた。

男子ペアがサーブを放つ。

「フッ……」
「ポーーン」
「シュパーーーッ!!」

ひとみの放ったフォアハンドのリターンが男子ペアの間を抜けていった。
キャプテンが打ったサーブよりも圧倒的に速い弾道。
男子ペアは彼女のスピードについていけない。

2本目のサーブ。

「フッ……」
「ポーーン」
「シュパーーーッ!!」

再び矢のような速さのリターンが男子キャプテンの足元を抜けていく。
スカートの裾がヒラりとめくれる華麗なフォーム。
力強さと美しさが絶妙に混在している…。

「ひとみさん凄いね…。男2人でも相手にならない…。」
「言っただろ、日本テニス界期待の新星だって。
 彼女はジュニアの世界ランキング1位。
 これまでの日本人選手と違って、パワーで外国人選手を圧倒できるんだ。
 こんな選手、今まで日本にはひとりもいなかったね…」

結局4本のリターンエースで1セットを奪ったひとみ。
引き続いてサーブの準備に入る。

「シュ…ポーン!」
「!!!!」
弾丸サーブが男子副キャプテンのすぐ脇を通り抜けていく。
時速200キロに迫るスピード。
とてもじゃないが彼のレベルではラケットに当てることができない。

圧倒的な実力差……。
このままでは練習にならない。
ひとみは2本目のサーブから、相手に合わせて手を抜いてあげることにした。

「スポン!」
「パン!」
3割ほどの力で放ったサーブを、男子副キャプテンが必死にレシーブする。
ボールはダブルスのサイドラインぎりぎりに向かっていった。

『良しっ…』
会心のリターンに男子ペアの頬が思わず緩む。

しかし、
「ダダダダダダッ……シュパーーーッ!!」
素早いフットワークでボールに追いついたひとみが、逆サイドライン一杯にクロスを決める。
パワーだけでじゃない。
スピードもレベルが違う。
男子ペアは、これでは1点も取れないと諦めかけた。

しかし次の1本で、思いがけないチャンスが訪れた。

「スパーーン!」
「ガサッ!」

サービスのリターンが、うまくネットに当たって相手コートにこぼれ落ちたのだ。
完全に逆を取られたひとみ。
単なるラッキーでもポイントはポイント。
誰もがそう思った。

しかしひとみは諦めなかった。
こぼれ落ちたボールに対して全力のダッシュを見せる。

「ダダダダダダダダダダダッ!!!!」
凄い迫力、そしてスピード。
脚の筋肉が激しく躍動した。

「ダッ……パーーーン!!」
そのまま体を投げ出して飛び込みながらボールを返す。
渾身のバックハンドは、男子選手が追いつけないエンドラインぎりぎりに決まった。

「ズサーーーッ!!!」
そのまま肩から激しく地面にぶつかるひとみ。

「大丈夫か?」
テニス部のマネージャーが駆け寄るが、ひとみは平気な顔をして立ち上がった。
肩には大きな擦り傷の跡が見える。
しかし彼女は何事もなかったように練習を続けた。

「やっぱり彼女はホンモノだね。
 パワーやスピード、テクニックだけじゃない。
 ボールに対する執念、テニスに取り組む意識が他の選手とは違うんだよ。」
翔太が言った。

そのまま男子ペアに1ポイントも与えることなくゲーム練習を締めくくったひとみ。
コートサイドから汗拭き用のタオルを持った10人ほどの女子選手が駆けつけてきた。

その後は、高校総体を控えた3年生の男子ペアに、細かい指導をはじめるひとみ。
1年生の女子が、3年生のキャプテン2人を厳しく指導する姿は、少し異様な光景だった。

「さぁそろそろ教室に戻ろうか。」
「うん、そうしよう。」
僕らは教室に向かって歩き始めた。

「それにしても太郎くん、テニス部の練習はどうだったかい?」
「いろいろ勉強になったよ。ひとみさんの凄さが良く分かった。」
「だろう…。S組のみんなが本当の意味で輝いているのはこの放課後の時間帯なんだ。
 これからも練習が休みの水曜日には、いろんな部活を見て回るといいよ。」
「うん!」

つづく





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