17.大運動会(前編)
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年に1度の大運動会。
D学園の全57クラスが1年S組率いる『白虎団』、2年S組率いる『青龍団』
3年S組率いる『朱雀団』の3つに分かれてポイントを競い合う。
果たして1年S組率いる『白虎団』は優勝を手にすることができるのだろうか……
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「先輩相手だからって容赦はするな!絶対優勝するぞ!!」
団長に選ばれた哲平を中心に1年S組のみんなが団結する。

徒競走、玉入れ、綱引き、幅跳び、砲丸投げと競技が続いていく。
午前中が終わって、白虎団のポイントは最下位。
首位、朱雀団には159ポイントの大差をつけられている。

『このままではマズい…』
午後最初の競技である騎馬戦では、何とかして1位を取らなければ…。
意を決した哲平は直前になってメンバーを変更。
最強のカルテットでポイントを取りにいく作戦をとった。

大運動会名物のひとつ、大騎馬戦…。
各クラスの代表が一騎ずつ参加し、各団19騎ごとで対戦する。
騎馬を崩されるか、被った帽子を取られたら負け。
3団が同時に戦い、2つの団が全滅するまで戦いを止めない。
迫力溢れる戦国絵巻が再現されるのだ。

白虎団のトップをきって入場してきたS組の騎馬。
前方にはクラス1の巨漢、レスリング部の御手洗智子。
後方は、右に喜多嶋佳織、左に広末七海のバレーボール金メダリストコンビ。
そして鞍上には、ケンカ最強ギャル藤崎綾乃。

間違いなく史上最強の牝馬。
4人の平均身長が190センチを超える彼女たちは、他の騎馬たちを遥か下方に見下ろしている。
ホンモノの馬以上に迫力が凄い。

「ドンドンドーーーン!」
派手な打ち上げ花火を合図に、戦いが始まる。

勢い良くグラウンド中心に突き進む1年S組の大型牝馬。
しかしそんな彼女たちに対して青龍団、朱雀団が取った作戦は、協力しての狙い撃ち。
まずは最強と思われる彼女たちを倒してから勝負しようというものだった。

白虎隊に属する他の馬たちは、当初の作戦通り戦いには加わらない。
結果としてS組女子最強牝馬1頭と、それを取り囲む38頭の牡馬との戦いが繰り広げられることとなった。

「仕方ないわね…」
「やるしかないでしょう…」
佳織と七海が気合を入れる。

「準備万端!まずは青龍団に突っ込めーーっ!」

綾乃の合図をきっかけに、彼女たちは青龍団の大群へと突き進んでいった。
凄まじいほどの迫力。
自分たちよりも倍近く大きい牝馬の突進を受ける青龍団の騎馬たち。

ある騎馬は彼女たちの体当たりによって崩壊し、またある騎馬は綾乃に引きずられて騎手が落馬する。
さらに綾乃の手によって彼らの帽子が次々と奪われていく。

1分ほどの戦いを終えてその場に生き残っていた唯一の騎馬。
それは紛れもなく1年S組の最強牝馬だった。

グラウンドの中央で一騎立ちつくす彼女たち。
綾乃の両手には数え切れないほど大量の帽子が握られている。
足元には彼女たちによって崩された19騎76人の男子生徒たちが横たわっていた。
敵を完膚なきまでに叩きのめした彼女たちは、次の目標を定めた。

「次は朱雀団だ!行けーーーっ!!」
最強牝馬が突進する。

「冗談じゃない…。」
「あんなのに勝てっこない…」
「逃げろーーーっ!!」

彼女たちの圧倒的な迫力に、朱雀団の騎馬たちは自らウマを崩しての総崩れとなった。
中には決死の覚悟で向かってくる騎馬もあったが、彼女たちは容赦なくそれを一蹴した。

無残に転げ回る朱雀団の騎馬たち。
そして最後に残ったのが、3年S組による大将の一騎だった。
ラグビー部、サッカー部、空手部、野球部のキャプテン4人による大柄な騎馬。
白虎団の19騎がそれを取り囲む。

「さぁどうするの、大人しく帽子を渡す?それとも勝負する?」
1年生綾乃が先輩たちを挑発する。

「ちっ…ちっくしょう…。勝負してやる!!!」
「受けて立とう!」

こうして最後の戦いが始まった。
両軍大将による一騎打ち。
激しく正面からぶつかり合った両者だが体力の差は歴然としていた。
青龍団の大将は5メートルほど吹き飛ばされて、無残にも崩れ去っていったのだった。

「敵大将の首取ったぞーーーっ!!」
「おーーーっ!!」
一騎も失うことなく生き残った白虎団19騎が勇ましく雄たけびを上げる。

彼女たちの一騎当千の活躍で一気にポイント差を詰めた白虎団。
大運動会優勝の行方は、これで最後まで分からなくなった。

つづく





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