25.クラスマッチ球技大会
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新年に入って最初の行事は、1月最終週に行われるクラスマッチ球技大会。
今年の競技は、男子がラグビー女子はバスケットと発表になった。
男子チームのライバルはラグビー部員6人を揃える3年S組。
僕らはその強豪を破るため、女子をコーチに迎えて特訓に望むことになった。
果たして僕らは女子のシゴキに耐え、強豪3年S組に勝利できるのか?
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正月気分も冷め、いよいよ3学期が始まった。
1月にはD学園名物のクラスマッチ球技大会が開催される。
学級会ではその対策について話し合われていた。

「女子のバスケットは優勝間違いないとして…、問題は男子のラグビーね。」
「うちには辻元くん1人だけど、3年S組にはラグビー部員が6人もいるわ…。」
「あそこに勝つのは至難の技ね……。」
「仕方ない…。特訓しましょう!!」

男子になど発言権もない最近の学級会で、その強化方針が決められた。
大会まで毎日放課後、部活前に1時間の強制練習。
フォワード担当には筋肉ギャル藤崎綾乃、バックス担当にはバレー部広末七海がヘッドコーチとして就任した。

グラウンドの隅ではフォワードの練習。

「基本はスクラムよ。しっかりバインドして力を前に伝えるの。」
綾乃からの指示が飛ぶ。

男子8人がそれぞれ適材適所に割り振られスクラムを組む。
その相手を買って出たのは女子のコーチ陣。
筋肉ギャル藤崎綾乃、レスリングの御手洗智子、ソフト部の安岡和美の3人で男子に対抗する。

「せーーのっ!」
男子8人で作るスクラムに対し、フロントロー3人だけで相手する女子。
一方的に押せるかと思った男子フォワード陣だが、女子の3人は壁のように立ちはだかり微動だにしない。

「くーーーっ!!!」
精一杯スクラムを押す男子だが、女子3人はやはり動かない。

「それで精一杯なの????」
綾乃から喝が入る。
女子の3人は力を入れている素振りさえ見せていない。

「情けないわね…。スクラムはこうやって押すのよ!」
綾乃の大腿筋が盛り上がった。
智子と和美もタイミングを合わせる。

「!!!!!!!」
「ズズズズズズーーーーーーーーッ!!!」
凄い圧力。
男子8人は必死に踏ん張るが、とても耐え切れない。
重量級のトラックで押されているような感覚。

「うりゃーーーっつ!!」
10メートルほど一気に押し込まれ、男子のスクラムは軽々と潰されてしまった。
女子3人のパワーの前に、まったく歯が立たない。

「やれやれ…。これじゃ先が思いやられるわね……。」
綾乃が珍しく困った表情を見せた。

一方グラウンドの中央ではバックス7人が練習を始めている。

「まずは基本中の基本のタックルね。確実に相手を止めるのよ。」
そういって七海は自らボールを手にする。

「これから私が突っ込むから7人で協力してしっかり止めて頂戴。いくわよ…。」
七海は軽やかに走り出した。
男子7人が止めに入る。

しかし、
「シュッ…」
「ササーーッ!」
七海の圧倒的なスピードと華麗なステップで、男子一同は軽々と躱されていく。
タックルどころか触れることすら許されない。

「よっしゃっ…!」
男子のエース哲平がようやく七海に手を掛ける。
しかし運動神経抜群の彼と言えども触れるのがやっと。
軽々とスピードで振り切られてしまう。

「もらった!」
哲平に気を遣った隙をついてラグビー部の辻元智也がタックルに入る。
さすがは本職だけあって、七海の腰の部分をしっかりと捕えた。

しかし、とっ…止まらない!!
七海はタックルを受けても前進を続ける。
倒れる気配など全くない。
ラグビー部智也も体験したことのない驚異的な足腰の強さ。

そのまま5メートルほど智也を引き摺った七海。

「タックルが高いのよ!」
彼女はそう言ってハンドオフ。
智也はその力の前に為すすべなくタックルを離してしまった。

「私1人を止められなくてどうするの!!」
七海はグラウンドに倒れこむ7人に説教を始めた。

「タックルはもっと低く。勇気をもって突っ込んで来なさい!」

その後も女子コーチ陣による厳しい特訓が続いた。
そして数日後。

「おお、おっ!!!」
男子フォワード7人がドライビングモールで押し込む。
智子と和美が2人掛かりで止めに入るが、男子はうまくポイントをずらしながら前進する。
男子7人対女子2人と言うハンデ勝負だが、始めて男子が女子を押して見せた。

「いいじゃない!このドライビングモールはいい武器になるわ!」
綾乃が喜んだ表情を見せた。

「もらった!!」
「俺も!!」
走りこんでくる陸上部麗香のステップを、男子が決死の覚悟で止めに入る。

どうしても数人は躱されてしまうが、哲平が麗香の足首をうまくキャッチする。
そして彼女がバランスを崩した隙に、ラグビー部の智也がタックルに飛び込む。
そのまま次々と人が集まる。

7人に抱きつかれてはさすがの麗香も前進できない。
まだ相手を倒すことはできないが、7人掛かりで何とか女子を止めることには成功した。

「いいわよっ!その調子で思いっきりタックルするのよ!」
七海もようやく満足の表情を浮かべる。

そして2週間にわたる厳しい練習を終え、来週からはクラスマッチの本番。
最後の特訓は、男子フィフティーン対女子セブンズの壮行試合を行うことになった。

ここ最近の特訓でかなり強くなった男子チーム。
15人対7人での対戦なら、何とかいい勝負になるのではないかと思っていた。

しかし現実は甘かった。

いくら鍛えたところで、綾乃の突進など止められるはずがない。
七海の俊敏な動きにもまったく反応できない。
彼女たちの身体能力は、何をやっても対抗できるレベルではないのだ。

さらに紺野美咲の美しい新体操ステップに翻弄され、夕菜の巨乳には弾かれる男子チーム。
レスリング智子の高速タックルを受けた大輔は、体ごと担がれてトライされる始末。

前半30分を終えて124−0の記録的大敗。
体格の差がモノをいうラグビーでは、倍以上の人数がいても勝負にならない。
精根尽き果てた男子チームは前半終了の時点で全く動けなくなった。

「まぁ今日はこの辺でやめとこうか…。」
「来週の本番で動けなかったら大変だしね…。」
綾乃と七海のトップ2人が話し合う。
壮行試合は予定外に早く幕を下ろした。

そしてクラスマッチ本番。

1年S組のフィフティーンは特訓の成果を見せつけた。
1回戦から相手に1点も与えない完勝!
男子が相手だとここまで強いものか…。
その後も着実に勝利を重ね、ついに3年S組との決勝に駒を進めた。

女子も応援に駆けつける中、決勝が始まる。
ラグビー部員6人を要するチームを相手にも、序盤から堂々とした戦い振りを見せる。

ラグビー部キャプテンの突進を哲平が止める。
基本に忠実な低いタックルで、1発で確実に相手を倒す。
『こんなの…七海の突進に比べたら、朝飯前だぜ……』

さらにフォワード戦では得意のドライビングモールでどんどん押し込む。
『俺たちのモールは、綾乃じゃないと止められない!!!』

唯一のラグビー部で、スクラムハーフを務める智也も司令塔として大活躍。
終わってみれば44−12の完勝だった。

「おめでとう!良く頑張ったわね…」
七海コーチから褒められる男子一同。

「まだまだ甘いな…。来年に向けてこれからも特訓だ!!」
綾乃コーチも珍しく喜んだ表情を見せている。

「特訓、ありがとうございました!」
男子チーム15人は彼女たちに対して深々と頭を下げた。

クラスメイトとは思えない立場の違い。
他のクラスから見るととても異様な光景。
こんな女尊男卑の世界が、1年S組では既に当たり前になろうとしていた。

つづく





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