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ファイル11.横綱の挑戦

大相撲初場所、千秋楽結びの一番。
東の横綱『男気山』と、西の前頭14枚目『女闘裟』の全勝対決。
幕内優勝を決める大事な一番を前に、満員御礼の国技館は最高の盛り上がりを見せていた。

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東〜〜…男気山〜〜男気山〜〜〜〜〜〜。
西〜〜…女闘裟〜〜女闘裟〜〜〜〜〜〜。

呼出を受け2人の関取が土俵に上がる。
東の横綱『男気山』と西の前頭14枚目『女闘裟』。
幕内全勝優勝を掛けた千秋楽結びの一番。

大観衆の声援を受けて土俵入りを始める2人。
しかし横綱の様子が明らかにおかしい。
全身から大粒の汗を流し、膝はガクガクと震えている。
彼は処刑台にも登るような心境で、この一番を迎えていた。

20XX年、男女雇用機会均等法の改正を受け、日本相撲協会は相撲規則を一部改めた。
これにより史上初めて登場することとなった女力士は、とんでもない怪物だった。

四股名『女闘裟(メデューサ)』。
本名はドナ=チェイニー。
アメリカ出身の元ボディービルディング世界チャンピオン。
並み居る男子選手を抑えてミスター・オリンピアにも選出されたことがあるという筋肉女傑。
身長2メートルオーバーの超マッスルボディは、横綱が華奢に見えるほど逞しかった。

膝が震える横綱とは対照的に、女闘裟は堂々と仕切りを繰り返している。
気品と自信が溢れるその振る舞いは、どちらが横綱なのか分からなくさせる。

彼女は初土俵以来負けたことがない。
今日の取り組みには、史上初となる無敗での賜杯獲得と言う栄誉が掛かっていた。

最後の砦となった横綱『男気山』は、内心怖くて仕方がなかった。
これまで彼女は圧倒的なパワーで、並み居る強豪力士たちを子ども扱いしている。

13日目で対戦した関脇は、張り手1発で病院送り。
昨日対戦した大関は、片手で吊られて土俵下まで投げ転がされた。
いくら横綱と言えども、まともに勝負しては勝ち目がない。

仕切りを繰り返すうちに彼女の筋肉がより一層膨らんできた。
上腕や太腿のボリュームは軽く横綱の2倍を超えている。
筋肉のひとつひとつが丸々と盛り上がり、圧倒的な存在感を放っている。

ボディビル時代よりひと回り大きくなったという身体が美しく光り輝く。
長い金髪をオシャレに巻き上げた女性特有の髷。
そして信じられないほど豊満なバストが圧倒的な存在感を放っている。

時間一杯―――――。

仕切り線を挟んで両者が睨みあう。

近くで見るとより一層大きくみえる女闘裟の逞しい体。
あまりの迫力に、男気山は逃げ出したい気持ちになった。

しかし彼にはプライドがあった。
ここ5年間、1人横綱として相撲界を引っ張ってきた。
優勝回数も20回を越え、既に名横綱の仲間入りを果たしている。
相手がどんな怪物であっても、逃げるわけにはいかなかった。
彼はそんな横綱のプライドを掛けて、正々堂々と正面から立ち向かうことを決めていた。


「はっけよい…のこった!!!」

横綱は思い切って踏み込み、巨大なバストを目掛けて頭から突っ込んでいった。
彼にとっては精一杯のぶちかましだった。

「ドスーーーン!!」

衝撃波が国技館を包みこむ。
横綱の頭が女闘裟のバストに弾かれて大きくバウンドした。
女闘裟の巨乳は、横綱が思っていた以上に弾力があった。

脳震盪を起こしそうな衝撃に耐え、男気山は何とか彼女の懐に潜り込んだ。
彼女の豊満な胸に顔をうずめ、両手でがっちりと前廻しを引く。
絶好の体勢、双差し!!

『よしっ!!いけるぞ!!』

軽く一呼吸置くと、横綱は力の限り廻しを引き付けた。
太い腕に力瘤が浮かび上がる。
彼は自分の体を彼女の体に密着させると、渾身の力を込めて一気に寄った。

「ウウォーーーーーーッ!!!」

顔を赤らめて力を振り絞る横綱。
得意のがぶり寄りで勝負を決めに掛かる。

「ンンーーーーーーッ!!!」

横綱はありったけの力を彼女にぶつける。
しかし彼は気付いてしまった。

女闘裟の逞しい足はただの1歩も後退していない。
さっきから滑っているのは自分の足ばかり。
彼女の下半身は、まるで土俵に根が生えたかのように磐石の安定感を保っていた。

『なっ、なんて重さなんだ!!』

彼女の足腰の強さに愕然としてしまった横綱。
そんな彼の肩越しに、女闘裟の腕が伸びてくる。

『しまった!!!!!!!』

横綱が気付いたときにはもう遅い。
女闘裟はその掌で、横綱の両上手廻しをがっちりと掴んでいた。

土俵の中央――――。

双差し両上手の体勢でがっぷりと組み合う両関取。
会場は割れんばかりの拍手で盛り上がる。

しかし実際のところ、この時点で既に勝負は決していた。
一度女闘裟に捕まってしまえば、横綱には万が一の勝ち目さえも残されていなかった。

「うぎゃあああああああああああああああああああーーーっ!!!」

突如国技館に、横綱の図太い悲鳴がこだました。
興奮状態にあった観客も一斉に静まり返る。

「がああああああああああああああああああああああああああ・・・っ!!!」

元ボディビルチャンピオン女闘裟の圧倒的なパワー。
女闘裟が軽く廻しを引きつけただけで、横綱の身体が音を立てて軋み始めた。
全身を襲う激しい痛みに、百戦錬磨の横綱も悲鳴を上げずにはいられない。

「があああああああああああああああ…、まっ参ったーーーっ、たっ…助けてくれっ!!」

観衆の前で恥も外聞もなく、横綱は必死に助けを求めた。
前代未聞の取り組みに唖然とする観客たち。
女闘裟はそんな雰囲気を楽しみながら、流暢な日本語で軽く答えた。

「残念ね、横綱さん…。相撲にギブアップがないことはご存知でしょう♪」

まさに女闘裟による『かわいがり』だった。
角界の頂点に君臨するはずの横綱が、観衆の前で惨めに公開処刑されていく。
眼の肥えた相撲ファンたちにとっても、これはとても信じられない光景だった。

女闘裟はサディスティックな笑みを浮かべながら、さらに力をこめた。
彼女の上腕に真ん丸とした力瘤が浮かび上がる。
横綱の顔面は彼女の豊満なバストに埋もれ、もはや悲鳴さえ発することができない。
男と女が廻しを引いて組み合えば、女性の胸は最強の凶器となる。

しばらくして色白な横綱の体が、紫色へと変色してきた。
彼女にとっては十分に手加減している状態だが、もはや横綱の身体は限界に達していた。
彼は小刻みに全身を震わせた後、眠るように静かに墜ちていく。
誰の眼にも明らかな、横綱の失神だった。

「もう終わり?
 まだ力の半分も出していなくてよ♪」

女闘裟は軽く横綱を小馬鹿にした。
そして彼女が両上手を緩めると、横綱の体は力なく垂れ下がった。
TVカメラが、白目を剥いて泡を吹き失神している横綱の憐れな姿をしっかりと捕えていた。


土俵上で行司は困っていた。
横綱が意識を失っているのは明らかだが、まだ勝負は決まっていない。
相撲という競技は、どちらかの体が地面に付くか土俵を割らない限り勝負は決まらない。

女闘裟はだらりと垂れ下がる横綱の身体を右手1本で持ち上げたまま、左腕に力瘤を作って観客にアピールした。
観客全員がスタンディングオベーションで彼女を賞賛する。

世界中の誰もが認めざるを得ない女闘裟のパワー。
彼女が練習で使うバーベルは男子の世界記録よりも遥かに重い。
彼女がその気になれば、東洋の島国の国技を支配することなどいとも容易いことだった。

横綱の体を小脇に抱え、観客に笑顔で手を振る女闘裟関。
さらに彼の身体を軽々と頭上に持ち上げ、その強さをアピールする。
横綱の肉体は、もはや彼女のおもちゃと化していた。

十分に観客を楽しませた後、女闘裟はようやくこの勝負を終わらせることにした。
彼女は横綱の廻しを両手で掴むと、まるでハンマー投げのようにグルグルと回転させる。
そして十分に勢いをつけたあと、彼の身体はようやく彼女の手から開放された。

まるでハンマーのように、大きな放物線を描きながら飛んでいく横綱。
花道の中頃まで投げ飛ばされた彼の体は、地面に叩きつけられて大きくバウンドした。

行司の軍配が西に上がる。
この時点でようやく、女闘裟の幕内初優勝が決まった。

気が付くと横綱は病院のベッドの上にいた。
外は明るいから、恐らく半日以上眠っていたのだろう。
全身に痛みが残っている。

彼は机に置いてあったスポーツ新聞を手にした。
1面には重い賜杯を片手で掲げ、マッスルポーズを極める女闘裟関の写真が大きく載っていた。

記事を詳しく読んで、横綱は昨日の取り組みの全容を知った。
組み合って失神させられた後、自分の体がおもちゃのように弄ばれ続けたこと。
そして最後は花道にまで投げ捨てられ、この病院に運ばれてきたこと。
それらの様子が写真付きで4ページにわたり詳細に述べられていた。
あまりの惨めさに、横綱は悔しい気持ちにすらなれなかった。

さらに記事を読み進めると、そこには面白いことが書かれていた。

なんと今回の初場所。
序の口、序二段、三段目、幕下、さらに十両に至るまで、すべての優勝力士が女性だったと言うのだ。

重心が低くて体が柔らかい。
さらに乳と言う最強の武器を持った女性は、まさに相撲に向いていると評論家は口を揃える。
角界が女性に牛耳られる日は、もうすぐそこにまで近付いていた。

おしまい





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