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ファイル12.レスリングの女王

レベルの高い日本の女子レスリング界。
わずか4つしかないオリンピック代表の座を巡る戦いは熾烈を極めていた。
そんな状況の中、国内予選では前代未聞の出来事が起ころうとしていた。

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レスリング女子55キロ級に君臨する絶対女王、梅崎愛里。
「マットの女神」と呼ばれ絶大な人気を誇る美女アスリートは、その実力も他を寄せ付けない。
デビュー以来続く連続秒殺フォール勝ち記録は、153試合にまで伸びている。

そんな中、オリンピックの代表を決める国内予選で起こった前代未聞の出来事。
なんと多くの女子選手が彼女との対戦を避けて、同階級の男子の部にエントリーを決めたのだ。

男子55キロ級の世界選手権銅メダリスト、大泉康司は焦っていた。

彼は初戦から、名前も顔も知らない女性選手との対戦が決まっている。
2回戦でもまた女性選手と戦うかもしれない。
それなのに、彼女たちの情報が一向に集まらない。
一体どのくらいのレベルなのか、どういうレスリングをしてくるのか?
彼は不安でたまらなかった。

そこで彼は思い切った行動に出た。
彼女たちのことを1番良く知っている選手に教えを乞おうと考えたのだ。

彼は意を決して、女子55キロ級の世界女王、梅崎愛里の屋敷を訪れた。
個人道場を兼ねる目映いばかりに輝く白亜の大豪邸。
さすがは日本を代表する大財閥のお嬢様だ。

彼は出迎えた男に、道場へと案内された。
ピンク色のマットに花柄の白い壁。
無敗の女王を作り出した個人道場は、信じられないほど豪華で乙女チックだった。

20分ほど待って、ようやく梅崎愛里が姿を現した。
白いキャミソール1枚というラフな格好。
風呂上りのようなセクシーな姿に、彼はいきなり心を奪われた。

『なんて可愛いんだ!!』

流石は超人気アイドルアスリートの愛里。
小さくて可愛らしい顔に、存在感のある大きな胸。
そしてレスラーらしいピチピチした張りのある肉体が、可愛らしいキャミソールに包まれている。
康司の股間が一瞬にしてビンビンに固まった。

「どうかされましたか?」

椅子に座って脚を組み、長い髪を掻き上げながら愛里が尋ねる。
まだ17歳だというのに、その仕草はこの上なくセクシーに感じた。
康司は最高級の礼儀を表し、マットに土下座して彼女に頼み込んだ。

「こっ…、こんな夜遅くに申し訳ない。
 そして、恥を承知でお願いしたい。
 今度俺が対戦する選手のことを、何でもいいから教えてくれないか!!」

そこには、銅メダリストのプライドなんて微塵もなかった。
7つも歳下の女性に向かっての土下座。
なりふりなんて構ってはいられない。
彼はどうしてもオリンピックに出場したいのだ。

しばらく考えて愛里が答える。

「いいですよ。別に教えることは構わないわ…。でも…」

「でも???」

軽くため息をついた彼女が、康司の眼をしっかりと見つめて答える。

「この際だからハッキリ言わせて頂くわ♪
 幾ら特訓しても、アナタに彼女たちは倒せない…。
 女子レスリングの世界はそんなに甘くないの…。」

予想だにしなかった愛里の冷たい言葉に、康司は驚いた。

「ふっ、ふざけるな!!!
 俺は世界選手権の銅メダリストだぞ…。
 名もない女子選手になんか、負けるわけないだろう。」

精一杯強がって見せる康司に、愛里はさらに言葉を重ねる。

「大した自信ね…。
 いいわ、この場で分からせてあげる。」

不敵な笑みを浮かべてそう答えた愛里が、その場でゆっくりと立ち上がった。

恥ずかし気もなく白いキャミソールを脱ぎ始めた彼女。
黒いレースの下着に包まれた、肉感的なボディが露になる。

『ゴクリっ…』

愛里は長い髪を掻きあげると、頭上で巻いておしゃれに固定した。
あまりにも可愛らしい顔、そして美しい体に康司の股間は一段と大きく膨らんだ。

「本当にやるのか…。」

「遠慮はいらないわ、さぁ、掛かって来なさい。」

下着姿で腰に手をあて堂々と胸を張る愛里の前で、康司も準備を始めた。
Tシャツを脱いでスパッツ1枚の戦闘服姿になる。

『この女と戦ってみれば、女子選手のレベルは測り知ることが出来る…。
 あのピチピチの体を楽しめるとなれば、まさに一石二鳥だ…。』

康司にはそんな思惑もあった。

筋骨隆々とした逞しい男と、肉感的でセクシーな女が向かい合う。
両者同じ階級だから体重は変わらない。
それでいて身長は康司の方が10センチ近くも高いということは、
愛里のムチムチの体が半端なく鍛えられているということになる。

道場の中央で、そっと組み合う2人。
その瞬間、康司の体に稲妻のような電流が走った!!

『!!!!!!!!!!!!!!!、ばっ…化け物か!!』

康司は愛里の強さを直感で感じ取ってしまった。
一流レスラーだからこと分かる感覚。
彼はその本能で、彼女の規格外の強さを読み取ったのだ。

『こっ…殺される!!』

康司の額から冷や汗が湧き出る。
彼はまるで虎につかまったウサギのように、自分の命が彼女に委ねられたことを悟った。
康司の動揺を見逃さなかった愛里が、サディスティックな笑みを見せて彼を蔑む。

軽くいなされただけで大きく体勢を崩した康司。
その隙に愛里は楽々とバックを奪った。

『はっ、速い!!』

これまで感じたことのないスピード感覚に、康司は面食らった。
防御の体勢に入って必死にディフェンスを試みる康司。
しかし彼の体は、愛里のスープレックスによって簡単に投げ飛ばされた。

その後もアンクルホールドによって何回も何回も転がされた康司。
試合ならとっくにテクニカルフォールを奪われている。
背後から押さえ込む愛里が康司の耳元で言った。

「そんなスピードでは、彼女たちに弄ばれるだけよ。
 あなたが戦う1回戦の相手。
 そんなに強くはないけど、スピードはこんなもんじゃないわ…。」

彼女は技を解いてすっと立ち上がった。
まだまだ朝飯前と言った余裕の雰囲気。

一方の康司の体から大量の汗が流れ落ちる。
到底勝てる相手でないことは、当の本人が一番良く分かっていた。

「うっ!!!」

今度は愛里の超高速タックルが決まった。
康司のレベルではとてもディフェンスなんてできない。
彼の逞しい体が、セクシーな彼女に軽々と抱え上げられた。

「ぐああああああっ!!!」

ベアハッグ。
圧倒的な実力差を物語るその体勢で、愛里は康司を締め上げた。
下着姿の小柄な愛里だが、彼女はパワーでも彼を寄せ付けなかった。
康司はただ悲鳴をあげることしかできなかった。

「万が一初戦に勝てたとしても、2回戦でアナタと当たる悠木恵美さん。
 彼女、私にしか負けたことのない強豪よ…。
 生意気だったから去年の試合で病院送りにしてあげたんだけど、結構早く復帰したみたいね。」

愛里は優しくレクチャーした。
しかし彼にとっては、それどころではない。
全身の骨が砕かれるかのような痛みに耐えることだけで必死だった。

「あら苦しそうね♪
 だけど恵美さんの力はもっと強いわよ…。
 私に痛めつけられてストレスも溜まってるでしょうから、
 もしアナタが対戦することになったら、骨の1本や2本は覚悟しておくことね。」

愛里はそう言うと、康司の体をマットに叩きつけた。
そのまま彼女は彼の体を丸め込むと、その上に座り込み腕を組んで余裕を見せた。

「はい、フォール♪」

椅子のように扱われてフォールを奪われてしまった康司。
精一杯脱出を試みたものの、彼の動きは愛里によって完璧にコントロールされていた。
年下の世界女王に、まったく歯が立たなかった男子銅メダリスト。
あまりにも惨めな格好に、彼は涙が止まらなかった。

「所詮、男子の代表ってこの程度なのよね。
 女子で言うと中学生レベル…。
 男子の方が体も大きいし力も強いんでしょうけど、日本のレスリング界では完全に逆…。
 競技人口が10倍も違うんだから、仕方ないことなのかもね。」

銅メダリストを椅子代わりにして座り込んだまま、冷酷な言葉を浴びせる愛里。
セクシーな下着姿の彼女の体には、まだ薄っすらとした汗すら浮かんでいない。

「さぁいつまでも寝ていないで!
 夜はまだまだ長いわっ。もっといろいろと教えてあげるわよ♪」

30分後。
マットの上には全裸の康司が横たわっていた。
全身が悲鳴をあげ、体力は根こそぎ奪われている。
自力ではもうピクリとも動けない。

愛里はその圧倒的な強さで康司を痛めつけ、調教して、奉仕させた。
「マットの女神」なんてとんでもない。
彼女の本性は力で男を支配する、超サディスティックな悪女だったのだ。

再び白いキャミソールを身につけた愛里が巻き上げた髪を解いた。
美しい黒髪がサラサラと流れてふわっと収まる。
彼女は動けない康司を蔑んだ眼で見下ろして告げた。

「悪いことは言わないわ…。次の試合は棄権しなさい。
 恥を晒さずに済む方法は、もうそれしかないわ。」

結局、康司は試合の欠場を決めた。
公式には練習中の怪我による棄権と報道された。

そして予選の当日。
準々決勝の第4試合。

康司のライバルだった近藤義弘選手が担架で運ばれていく。
マットの中央で高々と右手を掲げられているのは、悠木恵美選手。
彼女は圧倒的なパワーで、近藤選手の両腕を圧し折ってしまった。

試合時間はわずか24秒。
まるで大人と子供の戦いような、一方的な試合内容だった。

これでこの階級のベスト4は、すべて女子選手によって占められることが決まった。
次回のオリンピックには、結局9人の女性選手のみが参加することになった。

おしまい





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