ファイル02.エクスキューション・アクトレス

ここは中央アジアの小国。
アメリカはテロとの戦いを名目に、この国を統治する軍事政府との戦争に突入した。
当初は数ヶ月で終了すると思われていた作戦だったが、軍事政府の激しい抵抗により戦況は泥沼化。
現在は先の見えない状況に陥っている。

敵の将軍を捕らえた・・・・・・

作戦本部にその第一報が届いたのは、1時間前の出来事だった。
これまで米軍の作戦をことごとく邪魔してきた軍事政府の将軍セリゲー・メリノフ。
彼は勇敢な戦いぶりで、アメリカ軍の誇る特殊部隊を何度も壊滅に追い込んできた。
軍事政府きっての猛者である。

後ろ手に縛られ、作戦本部へと連行されてくるメリノフ。
身長2メートルを超える屈強な肉体。
レスリングの元オリンピック選手だけあって、並外れた殺気を放っている。

そんな彼の様子を見ながら現地の作戦司令官が側近に告げる。
「エクスキューション・アクトレスを呼べ・・・・・・」

マットの敷かれた広い部屋。
数人の男達の手によって、照明とテレビカメラのセッティングが進んでいる。

マットの中央で腕を組み、スタッフに指示を送る女性がいる。

褐色の筋肉に小さくて黒いブラジャー。
下半身もほんの一部にだけ布が当てられた紐ショーツ。
戦場には似つかわしくない、ほぼ全裸に近い格好。
そしてその全身は、筋肉の鎧に包み込まれた超マッスルボディ。
男性ボディビルダーも真っ青の迫力を放っている。

肩まで伸びたブロンドヘアーはとても美しく、
メロンのような真ん丸なバストは女性らしさを演出している。

彼女こそがアメリカ軍の秘密兵器。
エクスキューション・アクトレス=処刑執行女優のシルビア・ウィリアムス。

男性兵士が3人がかりで運んできたダンベルを使ってウォームアップ。
彼女の美しい筋肉が張り裂けんばかりに膨れ上がってきたところで準備は完了した。

「さぁ、仕事を始めましょう。」

兵士数人に連行され、メリノフが部屋に連れてこられた。
手錠を外され完全に開放される。
テレビカメラと照明の数に少し驚きの表情をみせた彼。

シルビアが礼状を手に話し始めた。

「あなたはこれまで64人のアメリカ兵殺害に関与し、多くの民衆を戦争へと導いてきました。
 自らの信条のためとは言え、これは決して許される行為ではありません。
 これからアナタはアメリカの陸軍法に基づき、戦争終結のための生贄となって頂きます。
 刑の執行は私シルビア=ウィリアムスが担当することになりました。」

「やっぱりアメリカ人は頭がおかしいのかな。
 何を言っているのかさっぱり解からない。」

「特に心配はいりません。
 あなたはただここで私と戦うだけです。
 万が一私に勝てればあなたは無罪となり、すぐに釈放となります。」

「釈放だと?」

「えぇ。これは法律でそう決まっています。
 アメリカでは、例え司令官と言えどもこの法律に逆らうことができません。」

「ほぉ。とにかくテメェをぶちのめせば釈放ってことでOKかい?」

「それで結構です。
 さぁ時間もありません、撮影を始めましょう。
 時間は5分、ルールはありません。」


Tシャツを脱いで戦う準備をしながら目の前のシルビアを見つめるメリノフ。
屈強な自分よりさらにひと回り大きな彼女。
ひとつひとつの筋肉が芸術的なレベルにまで発達している。

『筋肉お化けか・・・』
シルビアの迫力に少し圧倒されている。

「3・・・、2・・・、・・・・・アクション!」

テレビカメラが一斉に回りだす。
メリノフがシルビアの周囲をゆっくり回りながら、彼女の様子を伺っている。
対するシルビアは余裕の表情。
美しいブロンドヘアーをまとめながら、準備運動ついでに首を回している。

『あの巨体じゃろくに動けまい・・・』
メリノフは素早く踏み込んでローキックを放った。

「パチッ!」
強烈な蹴りがシルビアの太腿にヒットする。
しかし効いていないのか、シルビアの表情は全く変わらない。

それ以降も素早い動きで相手を撹乱し、強力な打撃を次々に放っていくメリノフ。
対するシルビアは打撃を躱すこともなく、ノーガードでそのまま受け止めている。
並の男なら1発でKOするほどの威力。
それでもシルビアには効いていない。

少し焦りの見え始めたメリノフ。
彼の体は薄っすらと汗ばんできた。

「もう終わりかしら?」
「・・・・・・」
言葉を返すことのできないメリノフ。

「そろそろ教えてあげるわ。アメリカ女性の強さをね。」

腰に手を当てたまま、メリノフ目掛けてゆっくりと歩き出すシルビア。
迫ってくる筋肉女の迫力に押され、彼はステップを踏んで横に躱そうとする。

しかし目の前にあったシルビアの姿が突然消えた。
彼女は驚異的なスピードで間合いを詰めると、メリノフの進路に立ちはだかった。

「パチッ!」
シルビアの軽いビンタがメリノフの頬を打った。
彼女にとっては手首のスナップを聞かせただけの軽い攻撃。
しかしメリノフにとってはヘビー級ボクサー並みの衝撃だった。
脳が揺れる。

『このまま捕まったら殺される!』

平衡感覚が乱れたまま必死に逃げようとするメリノフ。
しかしシルビアは彼に逃げることを許さない。

「パチッ!」
2発目のビンタが先程とは逆の頬を叩く。
彼女にとっては軽いビンタだが、ほんの一瞬だけ意識が飛んだ。
メリノフにとっては大きなピンチであったが、幸運なことに彼女はそれ以上攻撃してこなかった。
いつでも殺せると余裕を見せているのだろうか。

『単なる筋肉女じゃない。彼女は桁外れの運動神経の持ち主・・・・
 こうなったら少し危険だが、得意のレスリングでアイツを叩きのめすしかない・・・。』

メリノフは低い姿勢から思いっきり飛び込んだ。
シルビアの脇腹に彼の高速タックルが突き刺さる。

「ぐぐっ・・・」
シルビアの鍛え上げられた腰辺りに手を回し、そのまま押し倒そうと踏ん張るメリノフ。
だがシルビアはピクリとも動かない。
根本的なパワーのレベルが違うのだ。

次の瞬間メリノフの首筋に丸太のような逞しい腕が伸びてきた。

「メキメキメキメキッ・・・」
「あががががががっ」

フロントネックホールドで締め上げるシルビア。
彼女の上腕二等筋が固くなって大きく膨らむ。

メリノフの頭蓋骨がミシミシと悲鳴を上げ始める。
人間の力とは思えないとてつもないパワー。

このままでは殺されると思ったメリノフは、両手を使って彼女の右腕から必死に逃れようとする。
しかし筋肉で大きく盛り上がった彼女の右腕は全く動かない。

シルビアはカメラに向かって笑みを浮かべながらメリノフの苦しみもがく姿を眺めている。
その屈強な体つきばかりに眼が行きがちだが、彼女の顔は整っていてとても美しい。
頭蓋骨が強度の限界を迎えようとしたとき、ようやくメリノフは開放された。


力尽きてマットに横たわる。
しかし彼が一息ついた瞬間、今度はアナコンダのような太腿が彼の胴体を挟み込んだ。

「ギュギュギュギュギュギュッ・・・」
「あががががががっ」

今度は強烈なボディシザーズが彼を襲った。
体が2つに千切れそうな感覚。
彼がいくら抵抗したところで、シルビアのパワーには全く太刀打ちできない。
彼を挟み込む彼女の太腿は、彼のウエストを凌駕するほどの太さに膨れ上がっている。

「ギブ・・・ギブアップ!!!」
彼女の逞しい太腿をタップして服従の意を伝えるメリノフ。

「あら、もうギブアップ?? まだ始まったばっかりなのに。
 でも残念ね。このお芝居にギブアップはなくってよ。」

苦しんでいるメリノフを横目に、一方のシルビアは余裕を見せている。
自慢の金髪を両手でまとめながら、太腿の力を入れ過ぎないように調節している。

彼女はエクスキューション・アクトレス。
メリノフとの戦いに勝つこと、彼を殺すことが目的ではない。
その戦いをどう見せるのかが最も重要なのだ。

適度に痛めつけた後、再び彼を開放したシルビア。
女性とは言え圧倒的な戦闘能力を持つシルビアを前にメリノフの戦闘意欲は失われつつあった。
最強戦士のプライドをズタズタに引き裂かれてしまった彼はそのまま立ち上がれないでいた。
もはや軍事政府の英雄として名を馳せたセリゲー=メリノフの姿はどこにもなかった。

そんな彼の様子を見かねて、シルビアは仰向けに寝そべった。

「さぁ坊や、掛かってくるのよ!」

両手で手招きして彼を挑発する。
メリノフにとっては閉ざされかけた釈放への道に、わずかながら光が射し込んできた瞬間だった。
彼は最後の賭けに出た。

仰向けに寝そべるシルビアの腹部にどっしりと腰をおろす。
マウントポジション。
総合格闘技において絶対に有利な体勢。
こうなればもはや体の大きさ、スピード、パワーの違いなど関係ない。
上に座った者が勝つ。

メリノフは大きく1回深呼吸すると、シルビアの顔面目掛けて拳を打ち下ろし始めた。

戦闘再開・・・・・・

シルビアは両手を使って彼のパンチをうまくガードする。
メリノフはそれでも構わず拳を振り下ろし続ける。
彼にとっての勝機はこれしかなかった。
いかに屈強な彼女と言えども、頭を鍛えることはできない。
パンチが1発でもクリーンヒットすれば、勝利=釈放を手に入れられる。

メリノフは最後の力を振り絞って攻撃を続ける。
そしてようやくシルビアのガードが開いた。
シルビアの美しい顔がダイレクトに見える。

『もらった・・』

彼は渾身の力をこめて拳を握った。
しかし次の瞬間メリノフの体が宙に浮いた。
シルビアが腹筋に力をこめてブリッジの体勢に移行したのだ。
メリノフの巨体を腹筋ひとつで軽々と持ち上げる彼女のパワー。

彼女からすれば、メリノフのマウントポジションから逃れることなど簡単なことだったのだ。
彼にパンチを打たせたのも、ガードを開けたのも、所詮演出のひとつ。

お腹の上でバランスを崩したメリノフとうまく体を入れ替えるシルビア。
今度は彼女の巨体が彼の上に覆い被さった。

メリノフの両手首を握ってマットに押さえつける。
逞しい両脚で彼の両脚を固定する。
仰向けで『大』の字になったまま、メリノフの体はまったく動けなくなった。

彼の目前には美しいシルビアの笑顔。
そしてメロンのように真ん丸のバストが迫っていた。

全く動けない状態で顔面に巨乳を押し付けられるメリノフ。
屈辱以外の何物でもない。
呼吸も苦しくなってきた彼は、徐々に意識も遠のいてきた。
それからしばらくの間、シルビアによる悩殺的なドミネーションが続いた。


「パチッ」
軽いビンタを受けて再び意識を取り戻したメリノフ。
眼を見開くと、今度は目前に彼女のヒップが迫っていた。

フェイスシット。
鍛え上げられた女のフェイスシットは時に殺人技となる。
シルビアは太腿で彼の頭を挟み込み、陰部を顔面に押さえつけた。

頭蓋骨が割れそうな痛み。
とても外せそうにない圧倒的な力・・・・・・
抵抗する気さえ奪ってしまう。
ほのかな女性の香りを感じながら、メリノフは再び気を失ってしまった。

次に目が覚めたとき、彼は何故か天井を見みつめていた。
首筋には逞しい右腕が、そして太腿には左手が掛けられていた。

「ミシミシミシッ・・・」
「ガガがっ・・・」

逞しい両腕に徐々に力がこめられて来た。
体が曲がる、背中が痛い。
背骨が折れそうだ・・・
その時彼は、自分がシルビアの逞しい肩の上に担がれているのに気付いた。

アルゼンチンバックブリーカー・・・・・・

シルビアはこの技で、この芝居を締めくくろうとしていた。
満面の笑みを浮かべたまま、彼の体を折り曲げていく。

「ぐ・・・・・・・・・・・・っ」
体が90度近く反り返ってきた。
メリノフの柔軟性ではもはや限界。
シルビアはまだ半分も力を入れていない。
彼の死はもはや確定していた。

笑顔を浮かべ、すべてのカメラの角度を確認したシルビア。
良い絵が取れているのは間違いない。
最度満面の笑みを浮かべた後、彼女は最後の力を込めた。

「ボキボキボキッ・・・・・・」
限界を超え、音を立てて折れ曲がるメリノフの体。
シルビアはその肉体を肩から外し、両腕でさらに折りたたむ。
メリノフの後頭部は、とうとう自分の背中とくっついてしまった。

メリノフが最後に見たもの。
それはこれまで鏡でしか見たことのなかった自分の背中だった。
シルビアは彼の肉塊をマットに投げ捨てると、右脚で踏みつけて勝利のポーズをとった。

両腕には逞しい力瘤が浮かぶ。

「カーーーーット!」

撮影が終わった。
ちょうど5分。
プロらしい時間ぴったりの仕事だった。

メリノフの死体は兵士によって片付けられた。
シルビアはそれを確認することなく、ガウンを纏い部屋を去っていった。

翌日・・・・・・

ここで撮影された映像が、電波を通じて戦場に流された。

政府軍の動揺は尋常ではなかった。
自分たちの英雄が、敵軍の美しく逞しい女性によって弄ばれたのだ。
ハンデなし、ルールなしの戦いで嬲られたのだ。

アメリカに逆らったら自分もこういう目にあうかも知れない。
投降する兵士が相次いだ。

それからわずか3日。
士気の落ちた軍事政府は無条件降伏を受け入れた。
これはまさにシルビアの為した仕事だった。

それから1週間後。
シルビアは別の戦場に赴いていた。

「敵のエリート兵士を3名同時に。今回はできるだけ短く。
 1分でできるかね、シルビア?」

「私を誰だと思ってるの?エクスキューション・アクトレスよ。
 10秒で十分だわ。」

平和のための戦いは終わらない。

おしまい





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