ファイル03.格闘戦隊ファイトレンジャー

世界征服を企む悪の組織ドーパミン。
怪力将軍マッスラーと格闘戦隊ファイトレンジャーとの戦いは熾烈を極めていた。

「来たなマッスラー。今日こそは決着をつけてやるぜ!」
「望むところよ。行けっ!強化人間ドーパンども!」
「イイッーーーっ」

戦闘員ドーパンと特殊スーツに身を包んだファイトレンジャーとの戦いが始まった。

これまでの戦いでは楽勝だった。
戦闘員ドーパンとの戦闘など、単なる前座でしかなかった。
しかし今日は何かおかしい。
手も足も出ないのだ…。

「ちくしょう…こいつらただの雑魚じゃねえのか。」
「この前までは余裕で倒せたのに…。」

空手が得意なレッドの蹴りが、敵の戦闘員に躱される。
プロボクサーを兼ねるブルーのパンチは手の平でキャッチされる。
柔道家イエローは逆に投げつけられ、プロレスラーグリーンは関節技を極められる始末。
徐々に焦りだすファイトレンジャーたち。

「はぁ〜あ。情けない連中。
 私がちょっと稽古つけてあげただけのドーパン相手に手も足も出ないなんて…。」

一段高いところで戦いを見物しているのは、ドーパミンの女幹部フェミニン。
露出度の高い黒のエナメルコスチューム。
高さ15センチはあろうかというセクシーなピンヒールブーツ。
そして何よりグラマーなボディは男達を釘付けにする。
世界で一番美しく、世界で一番強い女。
それがこの悪の女幹部フェミニンなのだ。

将軍マッスラーが彼女のもとへ立ち寄る。

「さすがはフェミニン様。たった半日の稽古でドーパン共が桁違いに強くなっております。」
「まぁね。稽古について来れなかった何人かは殺しちゃったけどね…。それにしてもマッスラー?」
「はいっ?」
「こんな連中を相手に手こずっていたなんて、アナタも修行し直したほうがいいんじゃない?」
「もっ、申し訳ございません。次は必ずやお力になって見せます。」


勝負は決した。
ドーパンに拘束された4人のファイトレンジャーがフェミニンの前に連れて来られる。

「もう下がっていいわ。」

彼女がそう言うと、拘束したファイトレンジャー達を解放して後方で待機するドーパンたち。
その場にはセクシーな衣装に身を包んだフェミニンとファイトレンジャー4人だけが取り残された。

「アタシ、あなた達みたいな弱い男には興味ないの…。
 秘密基地の場所を教えなさい。命は助けてあげるわ。」
余裕の表情で迫るフェミニン。

「誰が教えるか…。」
「何なら、ここでお前を人質に取ってもいいんだぜ。ぺっっっっ!」

強気で返したグリーンの唾がフェミニンの右脚ブーツに掛かった。
呆れた表情で見つめる彼女。

「アタシを人質に取るですって??? 雑魚相手に負けといて冗談やめてよ。
 でもいいわっ。少し遊んであげる。4人まとめて掛かってらっしゃい。
 でも怖がらなくていいわよ。手加減してあげるから。
 あなた達の相手なんて、この右脚1本で十分よ。」

彼女はハイレグボンテージからすらりと伸びるセクシーな美脚をアピールした。

立ち上がったファイトレンジャーの4人は戦闘体勢に入る。
将軍マッスラーと戦闘員たちがフェミニンの元に駆けつける。
しかしフェミニンはその動きを手で制すると、笑みを浮かべてこう言った。

「アタシの楽しみを邪魔しないで。
 手助けするやつは、あんた達でも容赦しないから…」

「たっーーーっ!」
リーダーのレッドが彼女に襲い掛かり、得意の上段蹴りを放つ。

しかし、
「ボコッ!」
ヒットしたのはフェミニンの放った華麗な右脚ハイキックだった。
カウンター気味の蹴りが側頭部に当たる。
レッドの蹴りと比べると、スピードもキレも格段に上だ。

全身が硬直し膝から崩れ落ちるレッド。
その様子を物足りなそうに見下すフェミニン。

「あれっ?1発で終わり??
 空手で鍛えてるんじゃないの? 男のくせに情けないわね…。」

次いでボクサーのブルーがラッシュを掛ける。

しかし、
「パシッ、パシッ、パシッ。」
彼女は右脚1本ですべてのパンチをガードする。

『パンチを脚でガードするだと!!うっ…嘘だろ…』
驚きの表情を見せるブルー。

「こんなパンチじゃ一生掛かっても当たらないわよ。」

次の瞬間、強烈なアッパーカットが彼の顎を襲う。

美しい右膝蹴り……
顎が完全に砕け散ると同時に、ブルーの体は宙を舞った。
吹き飛ばされ激しく地面に叩きつけられる。

「あらら。ちょっとやり過ぎたかしら。」
ペロっと舌を出して可愛らしい一面も見せるフェミニン。

続いて襲い掛かったのはイエロー。
柔道家の彼は接近戦を挑む。

しかし簡単に捕らえられるほどフェミニンは甘くない。
タイミング良く彼の出足を払うとイエローの体を軽々と地面に転がす。

受け身が取れず背中を激しく打つイエロー。
すぐさまその喉元にセクシーな右脚が迫る。
フェミニンがピンヒールを履いた右脚で彼の喉元を踏みつけたのだ。

「うぐっ……」
呼吸が苦しくなりもがき苦しむイエロー。
脚を振り落とそうと必死にばたつくが、彼女の脚はピクリとも動かない。

「あら、苦しそうねぇ。その表情最高だわ。
 ねぇ、このままアタシが脚に力を入れたらどうなると思う?」

そう脅しながら彼女はイエローを見下す。
グラマーなスタイルはより一層美しさを増している。

「あらっ、もうお寝ンネしちゃったのかな〜坊や?」
失神して意識を失ってしまったイエロー。
それを確認したフェミニンは、ようやく踏みつけるのをやめた。


セクシーな右脚1本だけで3人のレンジャーを軽々と倒していったフェミニン。
その異次元の強さを前に、グリーンは既に戦闘意欲を失っていた。

「最後はあなたね。
 アタシの脚に唾をかけたこと、謝ってくれるかしら?」

ゆっくりと歩き迫ってくるフェミニン。
おちゃめな笑みを浮かべている。
対するグリーンは、腰を抜かして座り込んでいる。

「さぁ謝りなさい。」
「………」
「さぁ。」
「……ごっ…ごめんなさい。」

男のプライド。
格闘戦隊ファイトレンジャーの一員としての誇り。
それらすべてをかなぐり捨ててグリーンは謝った。
ただひたすらに謝った。

しかしフェミニンはまだまだ許す気などない。
グリーンの頭を上から踏みつけ、さらに謝罪を迫る。

「ごめんなさいって言ってる割には頭が高いんじゃないの?」

グリーンは土下座した。
地面に顔をつけて謝った。
フェミニンはセクシーなピンヒールでグリーンの頭を踏みつける。

「ファイトレンジャーも大したことないわね。
 強い相手と戦えると思って楽しみにしてたのに…。」

冷や汗で湿ったグリーンの顔中に、地面の土がべっとりとまとわりつく。
プライドを踏みにじられ怒りがこみ上げてくる彼だったが、今はただ従うしかない。
もし何か気に食わないことがあれば、彼女は何のためらいもなく自分の命を奪うだろう。

「もういいわ、退屈。アタシのブーツをキレイにしてちょうだい。」
フェミニンは右脚を目の前に差し出した。
グリーンは彼女の言いたいことをすぐに理解した。

渇きかけの舌でフェミニンのブーツを磨き上げる。
彼女を怒らせないように、丁寧に細心の注意を払って舐め続ける。
セクシーなブーツは再び漆黒に光り始めた。

「やればできるじゃない。」
機嫌の良さそうな彼女の反応にほっとしたグリーン。

「じゃぁ、そろそろ…お・や・す・み」
「………!!」

全身から血の気が引いた瞬間。
彼女のブーツが再び風を切り裂いた。

「ボコッ!」
セクシーな右脚がグリーンの顔面を容赦なく直撃する。
彼女にしてみれば手加減している蹴りだが、彼の体は勢い良く吹っ飛ぶ。
地面を転がり、グリーンはそのまま気を失ってしまった。

地球の平和を守る格闘戦隊ファイトレンジャー。
特殊強化スーツを身に着けた4人の精鋭たちが、今や虫の息となって地面に横たわっている。
世界で一番美しい女性フェミニンの、たった1本の右脚によって。

「あー、つまんない。ファイトレンジャーが相手なら少しは楽しめると思ってたのに…。
 男ってなんでこんなに弱いのかしら…。」
「フェミニン様が強すぎるのでございます。」
「マッスラー、あなた死にたい?
 アタシは強すぎるじゃなくて、美しすぎるの。」
「そっ…その通りでございます。」
「でも、このままじゃストレスが溜まってしまうわ。
 ここにいる男達をみんな血祭りにあげて、ストレス解消しようかしら…。」
「……」
将軍マッスラーの額に大粒の汗が浮かぶ。
それを見ていたずらっ娘っぽく笑みを浮かべるフェミニン。

「まぁいいわ。マッスラー。
 ファイトレンジャーを始末しなさい。」
「ははっ。分かりました。」

フェミニンが悠然と戦いの場を去っていく。
戦闘員ドーパンの全員が、尊敬と羨望の眼差しで敬礼する。


「さて始末に取り掛かるか…」
将軍マッスラーが動き始めた瞬間、奇妙な叫びが響いた。

「イッ、イーーーッ!」
戦闘員ドーパンのひとりが空から降って来た。
泡を吹いて完全に気を失っている。

「どうしたぁーーーっ!」
マッスラーが駆け寄る。
ドーパンが飛んできた方向をみると、そこにはひとりの女性が立っていた。

「ぴっ…ピンク…!!」
「恵理子だ…恵理子が帰ってきた!!!」
殺される寸前だったファイトレンジャーの眼には涙が滲んだ。

紫ピンクのポロシャツに黒いホットパンツ姿。
素足に白い運動靴を履いている。
身長は160センチほどと小柄だが、全身がムチムチに鍛え上げられているのが分かる。

ファイトレンジャーの紅一点。
ピンクこと若宮恵理子。
器械体操の世界チャンピオン。
むっちりボディに可愛らしい笑顔の人気者だ。

「みんな大丈夫?」
「あぁ何とか生きてる…」
「もう、私がいないといつもこうなっちゃうんだから…。
 でも、もう安心して。マッスラーなんかこてんぱんにやっつけてあげるから」
「でも恵理子、気をつけろ…。ドーパンの奴らも今日はエラく強いぞ…。」
「ドーパンを怖がるなんて困ったものねぇ。
 基地に戻ったらみっちり訓練してあげるから覚悟しといてね。」

「おのれピンク…戻って来よったか。
 今頃ジャングルで我々の精鋭部隊と戦っているはずだったのに。」
「確かに私は世界政府の要請を受けてジャングルに行ってきたわ。
 でもみんなが心配だったから急いで仕事を終わらせてきたの。
 ドーパミンの精鋭部隊、3日で壊滅してきたわ…。
 もうあなたたちの好きにはさせないんだから。」

「こしゃくなーーーー。やれドーパンどもよ!」
「イイーーーッ!」

大勢で襲い掛かるドーパンたち。
恵理子は変身せず、生身のままで彼らに立ち向かっていく。

ヒュッヒュッヒュッヒュッ!
彼女は超高速のバク転を繰り返しながら敵の群れに突入していく。

イイーーッ、イイーーッ……
恵理子の猛烈なスピードの前に、ドーパンが次々と吹き飛ばされていく。
レッドたち4人を倒したドーパンたちだったが、彼女にはまったく歯が立たない。

バク転、バク宙、前転、側転、ムーンサルト……
大技を繰り返しながら敵を次々と葬り去っていく。
まったく澱みのない動きの連続は、芸術性も満点だ。

1人で大勢を相手にする場合、相手に捕まるのが一番怖い。
それを知り尽くした彼女は、一切動きを止めない。
全身をバネのように弾ませながら、敵をスピードで圧倒する。
どれだけ激しく動いても、バランスは一向に崩れない。

それだけの動きを可能にする彼女の筋力は半端ではない。
軽い蹴りでも相当の威力がある。
さらに回転の遠心力が加われば、蹴りの威力は数倍にも大きくなる。

鍛え方の足りないドーパンなど、彼女の蹴りを受ければ1発で吹き飛ばされてしまう。

気がつけば失神したドーパンたちの体が丘のように積み上げられていた。
恵理子は最後のひとりを脚払いで倒すと、後方2回宙返りでドーパンの腹部に着地する。
ピタりと止まる10点満点の着地。
彼女の全体重と遠心力の加わったその威力。
ドーパンは胃液を吐いて気絶した。

全滅………

30人近いドーパンが、わずか1分足らずで全滅した。
やはり恵理子の強さはレベルが違う。


将軍マッスラーの出番となった。

「変身しなくていいのか? 俺のパワーはドーパミンの中でも一番だぜ。」
「あらご心配なく。あなた程度なら、あんな暑い特殊スーツなんて着なくても十分だわ。
 あなたにはこれまでレッドたちが随分お世話になってみたいね。
 ただじゃ済まさないから覚悟してね。」

「いくぞっ…」
身構える怪力将軍マッスラー。
身長2メートル近い巨体。
強化薬で作られた、ボディービルダーを凌駕する筋骨隆々の体。
小柄な恵理子1人ではさすがに太刀打ちできなそうだ。

「はぁっー」
マッスラーが突進する。
素早い動きで逃げるかと思った恵理子だが、突進を躱すことができず正面から捕まってしまう。

「もらったー、捕まえてしまえばこっちのもんだぁー!!」
マッスラーが吠える。
彼は小柄な恵理子を捻り潰そうと全身に力を込める。

ゴキッ…ゴキゴキゴキーーっ!
体を締め上げる音が鳴り響く。

横たわる4人のファイトレンジャーたちは思わず目を背けた。
しかし様子が変だ。
恵理子の表情には笑みがこぼれている。
一方で苦痛の表情を浮かべているのはマッスラーの方だった。

そう、抱き合ったまま相手を締め上げているのは恵理子の方だったのである。
体操で鍛え上げたむっちりボディは伊達ではなかった。
強烈なベアハッグで、自分より遥かに巨大なマッスラーの体を痛めつける。

「うがぁーーーっ……ああーーーっ!!!」
マッスラーの苦痛が悲鳴に変わる。

「まだまだこれからよ。
 残念だけど、力も私の方が全然上みたいね。
 体操選手ってみんな小柄で華奢に見えるけど、
 筋力だったら格闘技やってる選手より上なんだから。」
恵理子はさらに締め上げる力を強くする。

恵理子が解放した頃、既にマッスラーの戦闘意欲は失われていた。
背骨が軋んで激痛が走る。
内臓にも深刻なダメージがあるようで、口の中では血の味がする。
それほど強烈なベアハッグだった。

何とか這いつくばってその場から逃げようとするマッスラー。
数メートル進むと、目の前にはセクシーな美脚があった。
戦いの一部始終を見ていたフェミニンが立っていたのだ。

フェミニンと恵理子が数メートル離れた距離でにらみ合っている。
お互いの強さを十分認識しているようだ。

「フェ…フェミニン様。助けて下さい……」
マッスラーが彼女の美脚にすがって助けを請う。

フェミニンはゆっくりと視線を降し、哀れなマッスラーを見下す。

「惨めね…。助けてあげても良いけど…。アタシ、あなたのこと嫌いなの。
 下品だし、臭いし、うるさいし…。十分死刑に値するわね。」

フェミニンの左手がマッスラーの肩に伸びる。

「ひっ…たっ…助けて……」
「いやよ。」

ゴキゴキゴキーーっ!
「ウギャーーーッ!!」
フェミニンによる公開処刑が始まった。

凄まじい握力でマッスラーの右腕を粉々に砕く。
強烈な膝蹴の連打で肋骨は折れ、内臓が潰れる。
セクシーな太腿で頭を挟み込み、首の根元から一気に圧し折る。

このセクシーなボディのどこにそんな力が秘められているのか。
彼女がその実力の一端を垣間見せたとき、将軍マッスラーの体はもはや肉の塊と化していた。

「久しぶりだわ。アタシを本気にさせる相手なんて……」
フェミニンがピンヒールブーツを脱いで素足になった。

「私も興奮してるわ…。変身!ファイトレンジャー!」
ピンクが特殊スーツ姿に変身した。

悪の組織ドーパミンと格闘戦隊ファイトレンジャーとの戦いはクライマックスを迎える。

おしまい





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