ファイル05.マッスルエンジェルス 〜悪魔の薬〜

皆は愕然とした。
闘技室では武器を持った屈強な兵士たちが、ひとりまたひとりと惨殺されていく。

犯人はたった1匹の生物。
風を切り裂くような素早い動き。
1撃で兵士の首を飛ばし、1度跳躍すれば頭上3メートルの高さにも達する。

「ひっ…ひっ…うぎゃーーーっ!!」
最後の1人も謎の生物の手に落ちた。
強力な握力で兵士の頭蓋骨をりんごのように砕き潰す。

全滅………。
わずか1分足らずで12人の特殊分隊が消滅した。
生き残った兵士がいなくなり、闘技室はやがて静寂を取り戻す。

動きが止まってようやく分かったことがある。
謎の生物は1人の男であった。

分厚い筋肉に覆われた肉体は、とても人間のものとは思えない。
どちらかというとゴリラのような大型の類人猿に近い。
それでも体毛がなく顔が明らかなアジア系であることから、それが人間であることが分かる。

「パチパチパチパチ…。ブラボー!」
ひとりの男が笑みを浮かべながら賞賛の拍手を贈る。

闘技室から特殊強化ガラス1枚を隔てた討議室。
豪華な調度品が並んだこの部屋では、数人の男たちが目の前の惨殺劇を眺めていた。
一部の選ばれた人間で構成される特殊兵器委員会の会議だった。

「どうですか。この力……。
 これが我々の開発した人体改造薬アクシオンαの力でございます……。
 わずか一週間の投薬で、兵士を『獣人』へと進化させることができます。
 鈴木くん、詳細をご説明したまえ…。」

「はいっ。
 アクシオンαは、人間の筋肉量を最大で5倍から7倍程度にまで増強させます。 
 瞬発力や握力、跳躍力といった運動能力も、筋肉量にほぼ比例して進化します。
 今回の被検体では、100メートル走にして5秒台、垂直飛びで4メートル。
 握力は800キロを超える記録を叩き出しております。」

「ゴクリッ……」

まさに悪魔の薬。
会議の参加者たちは思わず息を呑んだ。

「首相いかがでしょう…
 このアクシオンαを量産し、最強部隊の編成を検討してみては…。
 現状ではまだ精神錯乱や自虐症と言った副作用が頻発しておりますが、
 2兆円もあれば、兵士として使えるレベルに改良して見せます…。」

「に…2兆円だと……??」

「はい…。新しい技術にはお金が必要です……。」

首相は迷った。
アクシオンαの恐るべき力は十分認識している。
それでも2兆円と言う額の予算はあまりにも高額であった。

「防衛大臣、どう思う…??」

「素晴らしい兵器であることは間違いありません。
 これが敵国やテロリストへ渡ることを考えますと、ここは少々値が高くても…。」

圧倒的な薬の力を見せつけられては、大臣もそう判断せざるを得ない。
首相は秘密予算の遣り繰りを考え始めていた。


そんな静寂の中、討議室にかわいらしい声が響く。

「大河内首相、ちょっとよろしいでしょうか?」
末席に座っていたひとりの女性が発言を求めた。

「おう桃子隊長か…、キミの意見を述べたまえ…。」
首相が発言を促す。

指名された若い女性が席を立つ。
背中まで伸びた艶のある長い黒髪。
やや童顔でアイドル顔負けのかわいらしい顔。
それでいて他を圧倒するほど大きくて逞しい体の持ち主でもある。

「それでは申し上げます……。
 ご存知のように、既に我が国には我々マッスルエンジェルスと言う最強部隊が存在しております。
 私たちは、これまで何度もこの国の危機を救ってまいりました。
 こんな醜い獣を作り出す薬など、まったく必要ありません!」

マッスルエンジェルス……。
極限まで鍛え上げられた女性たちによる首相直属の特殊部隊。

『初潮を迎える前に、ある臨界点を超えるまで鍛え上げられた女性は、その後驚異的な発育を遂げる。』
稀代の天才、嵐山教授によって提唱されたこの理論。
これに基づき極秘のうちに編成されたのがこのマッスルエンジェルスだ。

桃子はかわいらしい顔からはとても想像できないが、マッスルエンジェルスの中でも最強を誇る戦士。
年齢は20歳と若いが、完全実力主義という組織の掟に従い隊長という要職についている。

「犬神会長…。
 桃子隊長がああ言っているが、何か反論はないかね…。」

「首相………。彼女の意見には何一つ根拠がありません。
 確かにマッスルエンジェルスはこれまで申し分ない実績をあげてきました。
 しかし兵器とは常に進化を繰り返すものです……。
 いつまでも彼女のような筋肉女性たちに、この国を任せ続けるのはどうかと思いますが……。」

マッスルエンジェルスを侮辱する発言に桃子が噛み付いた。

「それでは犬神会長にお尋ねしますが、
 会長はこの薬で、本当にマッスルエンジェルスを超える最強部隊を作れるとお思いなのですか?」

「あぁ…私はそう信じている。さっきも言ったが、いつまでも筋肉女の時代ではないのだ!」

しばらく沈黙が続く。
首相も防衛大臣もこの決断に頭を悩ませている。

長い沈黙が続く。
おのおのがそれぞれの立場で思考を廻らせている。
やがて覚悟を決めた桃子が沈黙を打ち破った。

「犬神会長……。今日はこの『獣人』を何体ご用意しておられますか?」

「ん?確か…予備も含めて5体ほど連れてきておるが……、それが何か?」

「そうですか…。それでは今すぐその5体を闘技室にお連れして頂けませんか?」

「ん??????」

桃子の言葉の意味を理解できなかった犬神会長。
それは首相たちも同じだった。

「桃子隊長、一体何をするつもりかね?」

「首相、実に簡単なことですわ。今この場で結論を出して見せますわ。」

桃子は最高の笑顔でそう答えた。
首相はそのかわいらしさに思わず心を奪われてしまう。
彼女はそのまま意気揚々と討議室を後にした。


しばらくして闘技室に姿を現した桃子。
スーツ姿から一変して、マッスルエンジェルス伝統の美しい戦闘スタイルに着替えている。
そこにいた全員が、その超筋肉美に心を震わせた。

頭には長い黒髪を結ってバラの花飾りをつけている。
耳には大振りな花柄のイヤリング。
首筋には中世ヨーロッパを感じさせる派手なチョーカー、腕と足首には布の包帯が巻いてある。
これらの装飾品によって彼女の魅力は何倍にも増幅されていた。

そして豪華なアクセサリーとは対照的な実に簡素な衣装。
上半身はバストのトップだけを隠すようなアンティークブラジャー。
下半身は局部のみを覆った極小の紐パンツ。
彼女たちマッスルエンジェルスにとっては、その鍛え上げれれた肉体こそが何よりも美しい衣装なのだ。
特殊ガラス越しに彼女を見つめる男たちは、その美しさと力強さの融合を前に股間を膨らませた。

やがて桃子の前に5人の獣人たちが連れてこられる。

特殊な鎖で繋がれている獣人たち。
そんな彼らを桃子はかわいらしい笑顔で出迎える。
久しぶりに女性の色香を目の当たりにして、彼らは激しく発情を始めた。
白目を剥き、異常な量のよだれを垂らしながら今にも襲い掛からんとする迫力だ。

「本当にいいのかね?桃子くん…。」
首相が再び確認する。

「ええ、もちろん。彼らを可愛がって見せますわ。」
桃子は余裕をみせてそう応えた。

5人の獣人と桃子が向かい合う。

身長はお互いに2メートルほど。
筋肉の量も見た目には変らない。
会議の参加者たちはこれからの闘いをほぼ互角と予想していた。

しかし犬神会長だけは違っていた。
彼は医学博士の称号を持つ専門家。
桃子の筋肉が獣人とは比べ物にならないほど良質であることを見抜いていたのだ。

『な…なんという肉体…!!彼女は戦う女神なのか…??』

桃子の胸は強烈な女性らしさを放っている。
球形に膨れ上がった大きなバスト。
闘いには邪魔な存在にも思えるが、この下には極度に発達した大胸筋が隠されていた。
さらにその重みを支える胸鎖乳突筋も異様に発達している。
岩のようにゴツゴツとした獣人たちの胸よりも、産み出せるパワーは何倍も大きい。

腕の太さはほぼ互角。
両者とも、上腕二頭筋の力瘤が極度に盛り上がっている。
しかし桃子の腕は、獣人よりも圧倒的に力強く感じられる。
それは筋肉バランスの問題だった。
桃子の場合、上腕二頭筋に負けないくらい上腕三頭筋や三角筋、
さらに前腕の手根伸筋や手根屈筋も異常なまでに鍛え上げられている。

ウエストに関しても質の違いが如実に表れていた。
桃子のウエストは女性らしく細く引き締まっているが、腹筋は葡萄の房のように発達している。
大きくて丸い筋肉が整然と密集しているのだ。
表面だけ見れば板チョコのように割れている獣人の腹筋と同質だが、その厚みは何倍も厚い。
さらに外腹斜筋や広背筋といった脇腹や背中の筋肉も鍛え上げられており、体幹の強さは桁違いだ。

そして下半身。
女性らしい骨盤の形も影響して桃子のヒップは異様に大きい。
獣人の倍近くの大きさがある。
それでいて大臀筋はキュッと丸く引き締まっており、弛んだ様子など微塵も感じさせない。
前から見ると、紐パンツの脇で輝く腸腰筋が異常なくらい発達しているのが分かる。

桃子はヒップが大きい分、太腿の太さも尋常ではない。
大腿筋の迫力は獣人を圧倒しており、丸みを帯びるほどに発達している。
膝から下は下腿三頭筋、ヒラメ筋、前脛骨筋がバランス良く鍛えられている。
腰の位置が高いので、脚の長さも随分違う。

要するに下半身だけを比べれば、大きさ、太さ、長さ。
すべての面において桃子が獣人を凌駕している。
下半身の発達具合は重心の安定性に直結し、すべてのパワーの源となる。

犬神会長は冷や汗を掻いていた。
これから起こる戦いの結論がある程度予想できたのだ。


「本当にイイんだな…。」
防衛大臣の確認に、桃子は笑ってうなずいた。
首相からGOサインが送られる。

「バツンッ!」
研究員のボタンが押されると同時に、5人の獣人を縛り付けていた鎖が解かれる。
ついに闘いが始まった。

「キーーーーーッ!」
早速飛び掛ってきた1人の獣人。
10メートル近い間合いを一瞬で詰めると、そのままの勢いで太い拳を振り上げた。

桃子もそのスピードに対応する。
襲い掛かる太い拳に、自らの拳で対抗した。
お互いの左拳が激突する。

「ガシャーーーン!」
まるでダンプカー同士の正面衝突のような衝撃波が建物を震わせる。

戦っている両者の動きが一瞬止まったかのような感覚。
しかし次の瞬間、獣人の顔が激しく歪んだ。

「うっギャーーーッ!!!」
この世のものとは思えないほど大きな奇声。
桃子の拳が、獣人の拳を砕いたのだ。

拳と前腕の骨は粉々。
皮膚も裂けている。
獣人自慢の上腕二頭筋もあらゆるところで筋繊維が断絶。
上腕骨にもひびが入っており、肩の関節も修復不可能なまでに砕けている。

桃子はただ軽く拳を重ね合わせるだけで、獣人の左腕を完全に破壊してみせた。
かわいらしい顔からは想像できない凄まじいパワー。
早くも強さの片鱗を見せ始めた。

「アナタもかわいそうな男ね。
 そんな弱々しい体で私に立ち向かおうなんて……。」

桃子は左腕を砕かれて勢いを失った獣人の前にゆっくりと歩みを進める。
憐れみの表情で獣人を見つめる彼女は、両手で軽く拳を握った。

「ボコッ…ボコッ…ボコッ…ボコッ…」

右のフックをテンプルに、左のストレートをチンに当てる。
さらに左右のボディブローを1発ずつ。

一瞬のうちに軽く4発。
彼女にとっては、ほんの軽いパンチでしかなかった。

しかし獣人の体は異常なまでの反応を見せる。
頭は上下が逆さになるほど変形し、首から胸にかけては大きく湾曲した。
屈強な胴体も針金のようにくにゃくにゃと折れ曲がっている。
獣人の上半身は、まるで盆栽のように美しい屈曲を見せていた。
それでいて未だ慣性で立ち続けている下半身が、より一層桃子の強さを際立たせる。

もはやハッキリした。
桃子の強さは獣人を遥かに凌駕している。
軍隊を秒殺できる彼らだが、桃子にとってみれば赤子も同然。
これがマッスルエンジェルス最強を誇る彼女の実力なのだ。


「ボコーーーッ!!!」
隙をついて2人目の獣人が桃子に襲い掛かる。
強烈な蹴りが彼女の太腿に直撃した。

1撃で橋の橋脚をも粉々に砕くことのできるという獣人の蹴り。
そんな威力でも桃子にはかすり傷ひとつ負わせることができなかった。
彼女の筋肉は完璧な硬さと同時に、すべての攻撃を吸収する柔らかさをも持ち合わせているのだ。

2人目の獣人に視線を移す桃子。
悲しげな表情で獣人を見つめる。

「弱いっ…、弱すぎるわ……。鍛え方がまるっきりなってないわね……。」

桃子は獣人の体に本当の蹴りを教え込むことにした。
彼女の長くて逞しい左脚がゆっくりと地面から離れる。
獣人は太い両腕を交差させて桃子の蹴りに備えた。

「フッ…」
桃子の左脚が風を切り裂く。

「ボコッ…メキメキメキッーーー!!!」
凄まじい重さの蹴りが獣人を襲う。
彼女の左脚は獣人の両腕を軽々と粉砕するとそのまま脇腹にめり込む。
さらに獣人の腹斜筋を押し潰し体の中心へと向かう。

「メキメキッーーーー…!!」
ようやく彼女の左脚が止まった。
獣人の腹筋が体内で2つに裂け内臓も上下に分割された。
背骨も大きく湾曲し肋骨などは細かい欠片に粉砕されている。

それでも彼女が手加減している分、獣人の体が2つに分裂するには至らなかった。
外見的には出血もないが、腹部は異様に変形している。

桃子は獣人の体にめり込んだ左脚を引き抜く。
彼の体には彼女の蹴りによって作られた大きな窪みが残っている。

「シュッ…」
今度は桃子の右脚が動く。
長くて逞しい脚が、獣人の目前で止まる。
太く逞しい脚が2メートルの高さにまで一直線に伸びる。
この巨体からは想像できない恐るべき柔軟性。
蹴りのスピードも凄まじく、風圧で獣人の体がよろける。

「ごめんなさいね…。
 アナタに罪はないのよ。アナタはかわいそうな被害者…。
 今すぐ楽にしてあげるから、迷わず成仏してちょうだい…。」

桃子はそう言いながら、獣人の顔を足の裏でやさしく撫でてあげる。
彼女は獣人の不運を心から哀れんでいるようだ。

「うっ…ううぅ……。」

彼女の繊細なタッチに思わず声を漏らす獣人。
これは彼女が与えた最期の快感だった。

「さぁ、楽にしてあげるわ…。」

桃子は獣人の顔を撫でていた右脚を膝の位置で折りたたむと、目にも留まらぬ速さで動かした。

「バンバンバンバンバンバンバンバンッ!!!!」

彼女の右脚による高速ビンタが獣人の顔面を襲う。
1秒間に20発と言う驚異的なスピード。
男の顔は一瞬で腫れあがり、彼の脳はすぐさま液状に変質した。

「がっ…ががっ……」
力を失い前方へ倒れこむ獣人。
そんな男の屈強な体を桃子の左脚が蹴り上げる。

「ぶゴッーーーーッ!」
「ズドーーーン!」
200キロ近い獣人の体が軽々と宙を舞い、そのまま凄まじいスピードで天井に突き刺さった。

「ミシミシミシミシッ……、パキーーン!!」
建物全体が激しく揺れ、特殊強化ガラスが砕け散った。
桃子が戦う闘技室とそれを見守る討議室との境界が取り払われる。

討議室がパニックに陥った。

「たっ…大変だ……。獣人が暴走する……、首相!!早くご避難を!!」

会議の参加者たちは先を争って入り口に殺到する。
しかし混乱を目にした桃子が可愛らしい声を掛けた。

「首相!ご心配には及びませんわ。私が付いておりますから。」

桃子の声は落ち着き払っていた。
さらに彼女は笑顔を見せている。
首相はその笑顔を見て少し落ち着いた。

「桃子くんを信頼しよう…。」
討議場にいた会議参加者たちは再び席に腰を降ろした。


闘いが再開する。
残る獣人は3人。
しかし既に実力差は明らかだった。

3人の獣人は桃子の強さに恐れ慄き、闘技室の隅で身を寄せ合うように震え上がっている。

「しっ…信じられない……。
 獣人はアクシオンαの効力によって恐怖を感じないはずなのに……。」

研究員が呟く。
桃子の強さは科学の力をも超えていた。

「さぁ掛かってきなさい。これは闘いよ。」

桃子が挑発する。
しかし獣人の震えが止まらない。
もはや戦闘意欲は微塵も残っていなかった。

目の前に迫る桃子のマッスルボディ。
女性らしい丸みを帯びたその肉体。
獣人たちはその異次元の強さをまざまざと感じていた。

だらしない獣人の態度にため息をつき、桃子は後ろを振り返った。
大河内首相に対して首を横に降り、もはや戦いが成立しないことを伝えた。
首相も1回だけ大きく頷く。

「たかが1週間の投薬で、私たちのレベルに達するなんて所詮不可能なのよ。
 もう分かったでしょう? 私がこの恐怖と苦痛から開放してあげるわ……。」

桃子は震え上がる3人に近付いた。

まず鍛え上げられた右手で1人目の首根っこを掴み上げると、左腕に抱きかかえた。
さらに2人目、3人目の男も、次々と桃子の屈強な左腕に抱えこまれた。
獣人たちも観念したのか、もはや抵抗する気配さえ見せない。
それはまるで母親に抱かれた子供のようであった。

大柄な獣人3人を、左腕1本で抱え上げる桃子。
右手では3人の頭を優しく撫でてあげる。

「苦しかったわね…。怖かったでしょう…。でももう安心していいわよ…。
 私の胸の中で、安らかに眠ってちょうだい…。」

獣人の眼からは一筋の涙が零れ落ちた。
彼らの顔が天使のように和らいだ。

「ゴキゴキゴキゴキッ!!!」
桃子は静かに力を込め始めた。
獣人たちの体が軽々と折れ曲がる。

「ゴキゴキゴキゴキッ!!!」
さらに右腕も使って、両腕で獣人たちの体を砕いていく桃子。
凄まじい音に首相たちの背筋は凍りついた。
わずかな時間で獣人たちの体は一塊に練り上げられた。

桃子の腕の中で、巨大な人間スクラップが完成する
頭や手足、顔などのパーツはやや原型を留めているものの、もはやどれが誰のものだか区別がつかない。

「ドスン!」
獣人3体による巨大な肉団子を地面に置いた桃子は、討議室へと視線を向けた。
かわいらしい彼女の顔にもようやく薄っすらと汗が浮かんでいる。

「首相…。結論はこれでよろしいですわね?」
桃子が尋ねる。

「うむ…。よ…、良く分かった…。
 犬神会長、人体改造薬の開発は即刻中止したまえ…。いいな…。」

「はっ…、はい。了解致しました。」
流石の犬神会長もそう応えざるを得なかった。
議論のほうも桃子の圧勝であった。

桃子は破壊された5人の獣人たちに目を移す。

ひとりは彼女のパンチによって盆栽にされ、
もうひとりは散々蹴り上げられて天井に突き刺さったまま。
あとの3人はスクラップにされ、地面に置かれている。

「ちょっとやりすぎちゃったかな?」

桃子は少し照れたように恥ずかしがった。
彼女はまだ実力の10分の1も発揮していない。
かわいらしい笑顔の下で、彼女の肉体は薄っすらと滲んだ汗によりより一層輝いていた。

つづく





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