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ファイル06.インタビュー

新聞の取材で、11歳の天才空手少女に出会った元政治記者の男。
彼女の底知れない素質に驚き、彼はその取材にどんどんのめりこんで行く。
やがて迎えた彼女の試合。
試合が終わった直後、彼に与えられた仕事とは…。

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『なんでこんな仕事をしなきゃいけないんだ……』
俺は怒っていた。

突然命じられた政治部からスポーツ部への人事異動。
ケンカした部長の嫌がらせだ。

これでも一応名の知れた政治記者だった。
俺の記事で国を動かしたことさえあった。
『なのに、どうして……』
俺は苛立ちながらも、仕事先へと足を進めていた。

タクシーの中で企画書に眼を通す。

今日の仕事はインタビュー記事の取材。
相手は太田茜さん。
11才の天才空手少女と書いてある。

『先週までは大臣を相手に仕事していた俺が、今日は小学生のガキが相手かよ…。』
悲しくなって深いため息が出た。

それでも仕事は仕事。
割り切って企画書を読み進めていく。

彼女は恵まれた体格を生かして連戦連勝を重ねている空手少女。
小学3年生のころから3年連続してジュニアの世界チャンピオンに輝いている。
男の子をなぎ倒しての3連覇だけに、業界では知らない人がいないほどの有名選手だそうだ。

そんな彼女が先日、突然空手界から引退し、プロの女子格闘家としてデビューすることを発表した。

今日の仕事は、彼女が格闘家デビューへ向けて寝技の特訓を受けているという柔術道場にお邪魔し、
道場の先生を交えて今の心境を聞き出すというものだ。

格闘技なんて全然興味はないが、まぁ何とかなるだろう。

俺は街角の雑居ビルに居を構える柔術道場にたどり着いた。
ドアを開けるとむさ苦しい汗の蒸気が漂っていた。

「新日本出版の山川と申します。」
「お待ちしておりました。おーい、茜〜」
「はーい。」

奥から現れた1人の少女。

スポーツブラにスポーツパンツという露出度の高い格好。
トレーニングの最中だったのか、全身からは玉のような汗が流れ落ちている。
彼女はタオルでその汗を拭いながら、笑顔を見せて挨拶してきた。

「始めまして、太田茜です。」
「新日本出版の山川です。よろしくお願いします。」

暖かくて柔らかい少女の手と握手をしながら、俺は心の底から驚いていた。
『ホントにこれが小学生かよ……』

171センチの俺より少しだけ背が高い。
そして決して筋肉質ではないが、少しだけ太めでムチムチした体つきをしている。
女子は男子より成長が早いと言われるが、確かに彼女に勝てる小学生など世界中どこにもいないだろう。

若さを感じさせるピチピチして張りのある肌。
小学生とは思えない胸の張りも際立っている。

顔は童顔で笑顔がとてもキュート。
とても格闘家とは思えないその可愛らしさが、唯一小学生らしい部分だろうか。

しばらくして柔術道場の師範、柳賢治先生がやってきた。
企画書には、かつて無敵を誇った寝技の達人だと書いてあった。

畳に腰を下ろしてレコーダーのスイッチを入れる。
俺は基本的なことから質問を始めた。


俺「まずは先月の世界大会3連覇、おめでとうございました。」

茜「ありがとうございます(笑)」

俺「1回戦から決勝戦まで、相手はすべて男の子だった訳ですが、
  男の子に勝った時っていうのはどんな気持ちになるんですか?」

茜「いや…、別に普通です…。自分では男の子とか女の子とか、あまり意識していないので…。
  だけど小さい男の子が相手だと、よく怪我をさせちゃうんであまり好きではないです。」

俺「そうですか…。それで大会後にはプロの格闘家になることを発表された訳ですけど、
  プロの格闘家を目指そうと思ったきっかけは何ですか?」

茜「3連覇できて空手にはもう満足したので、今度はプロでやっていこうと思いました。」

俺「空手を辞めるのは寂しくなかったですか?」

茜「そういうのはないです。空手を辞めると言っても大会に出ないだけなので。
  練習もするし、空手家の代表として格闘家になるつもりなので。」

俺「この柔術道場に通い始めたきっかけは?」

茜「館長の紹介です。格闘家になるなら寝技を勉強しろと言われて。
  たまたま柳師範が、館長のお知り合いだったんです。」

俺「柳師範は茜さんを受け入れるのに抵抗感はなかったですか?」

柳「最初はありましたね。うちの道場は女の子が初めてだったんですよ。
  どうやって指導したらいいのかと、来る前は随分悩みました。」

俺「彼女が来てからはどうでしたか?」

柳「最初に会ったときに、これなら心配ないと確信しましたね。」

俺「それはどうしてですか?」

柳「体が完璧に仕上がっていましたからね(笑)
  小学生の女の子とは言っても、さすがに空手のチャンピオンだと感心しました。」

俺「練習の方法は何か工夫されましたか?」

柳「練習に来た初日に、まずはやってみろということで男の子と対戦させたんですよ。
  たまたま練習に来ていた男子高校生に相手をさせました。」

俺「それで?」

柳「そしたら開始30秒でその男子高校生を絞め落としましてね。泡を吹いての失神KOですよ。
  寝技は初めてだって言うのに、本当にびっくりしました。
  その高校生もアマチュアの大会で優勝したりする強い選手ですし、体も随分大きいんですがね。
  この娘は産まれながらの天才なんですよ…。格闘のセンスが計り知れない。
  とにかく練習の初日から、コイツは只者じゃないと驚きましたね。」

茜「あのときはまだ寝技を知らなくって、タップしてるのに絞め落としちゃったんですよ(笑)」

俺「そうですか(汗)…、初めての寝技で男子高校生相手に失神KO勝ちとは凄い素質ですね……。
  で、それから約1ヶ月余り経つ訳ですが、最近はどうですか?」

茜「もう随分慣れました。」

柳「最近はホントに強いですよ。うちの道場の男子選手では、もう手も足も出ませんからね。」

茜「それは大袈裟(笑)」

俺「そっ…、そんなに強いんですか?」

茜「試してみます?(笑)」

俺「遠慮しときます(冷汗)」

皆「ハッハッハッハッハッ(笑)」

柳「イヤ、実際になかなか信じてもらえないとは思うんですが、
  小学生の女の子なのに、男子のプロ選手をいとも簡単に捻じ伏せますからね…。」

茜「そんな止めて下さいよ。お嫁にいけなくなっちゃう。」

柳「でも元々は打撃のプロフェッショナルで、寝技もこのレベルですからね。
  まだ小学生の女の子ですけど、男子の大きな大会に出したいなって思うことはよくありますよ。」

俺「(ゴクリッ……)となると、茜さん自身も将来男子の大会に出ることも考えているんですか?」

茜「いや、それはないです。やっぱり男の人とは腕力が全然違うんで。
  練習では良くても、試合でパンチを当てられたら大怪我しちゃうからすごく怖いです。」

俺「そうですか…。なんかファンとしては実際に見てみたい気もするんですけど…。」

茜「止めて下さいよ…。おだてられると本気になっちゃうタイプなんで(笑)」

ほんの30分程度のインタビューだったが、その内容はとても衝撃的だった。

男は女より強いと言う常識。
彼女はこの常識を覆す存在になり得ると思った。
世の中に与えるインパクトとしては、政治以上に大きいのかもしれない。
俺は彼女に密着し、事あるごとに取材を重ねていく決心を固めた。


そして半年後。
6年生になり、急激に色っぽくなった茜が満員のリングに立っていた。
対するミドル級男子世界チャンピオン、ブラジル人のホセ=パレイラは焦っている。

『この俺がこんな小娘に負けるというのか…。』

少女が相手だろうが、いつものように抜群のパワーと身体能力を活かして叩きのめすつもりだった。
しかし試合開始直後の突進を躱され、太腿に強烈なローキックを食らってしまった。
空手少女が見せた渾身の一撃。
この蹴り1発でホセの出足は完全に鈍ってしまった。

それでも何とか打撃を当てようとするホセ。
しかし茜はそれを冷静に躱し、次々とカウンターを当てていく。
試合は序盤から一方的なペースとなった。

彼女の放つ変幻自在の蹴り技がホセを襲う。
彼もフットワークを使って必死に逃げようとするが、茜は冷静にロープ際へと追い詰めていく。

最初のダウンは首相撲からの膝蹴りだった。
強烈な膝を鳩尾に突き刺されたホセは、胃液を戻しながらリング上にうずくまった。
それでもなんとかカウント8で立ち上がったホセだが、茜の蹴りは再び容赦なく襲ってくる。

そしてすぐさま二度目のダウン。
空手家特有の重くて固い蹴りを太腿に受けたホセは、痛みに耐え切れず膝から崩れて倒れてしまった。
ローキックを受け続けた太腿は赤く腫れあがっており、もはや立ち上がるのも困難な状態。

「うぉーーーーーっつ!!」
「いいぞーーーアカネーーー!!!」
幼い少女の奮闘に観客は興奮のるつぼと化している。

打撃戦では茜の方が上。
しかも全く相手にならないほどレベルが違う。
これはホセ自身も認めざるを得ない事実だった。

『ちくしょう……。流石はカラテガール。いい蹴りを持ってやがる…。』

痛みをこらえて立ち上がるホセ。
茜は集中を切らすことなく、彼の立ち上がる姿を見つめていた。
その瞳は一切澱みのない純粋なものだった。

「ファイト!」試合再開。

ホセはパワフルなブーメランフックを放ちながら突進。
イチかバチかの捨て身のタックルで茜の胸に飛び込んだ。

そのままカウンターの膝蹴りで相手をKOすることもできた茜。
しかし彼女はあえて彼のタックルを受けることにした。

身長はほぼ互角の2人。
ホセの筋肉質な体と、張りのある茜の体とがリング上で縺れ合う。

『もらった!!』
もともとブラジリアン柔術の選手だったというホセ。
彼は寝技に持ち込めれば、空手少女など簡単に倒せると思っていた。

しかし柳師範のもとでしっかりと柔術トレーニングを積んでいた茜は、そう易々と組み伏せられない。
逆に少女ならではの柔軟性を武器に、ホセの動きをうまくコントロールしていく。

『こいつっ…寝技もうまい!!!!』

ホセが気付いた時にはもう遅かった。
彼はリングの中央で仰向けに寝かされ、腹の上には茜がズッシリと座り込んでいた。

マウントポジション。
ただの客寄せ空手少女と思っていた相手に、屈辱的な体勢を取らされたチャンピオン。
12歳の弾力あるお尻が、ホセの体を押さえつけていた。

ホセは体をくねらせて必死に脱出を試みる。
しかしホセの体に座り込む茜のバランスは全く崩れなかった。
小学生の女の子とは思えないヒップの安定感。
腹で感じる彼女の重さが、もはや脱出不可能であることを直感的に教えてくれた。

茜はホセのもがき苦しむ様子を見下ろしたまま全く動かない。
その様子は、まるで野ウサギを捕獲したライオンのように、完璧に落ち着き払っていた。
彼女のその冷静さが、ホセに与える恐怖を何倍にも増幅させた。

やがてホセの呼吸が荒くなり、その動きが完全に止まった。
茜はここでようやく拳を握る。

『まずい!!』
ホセが必死になってガードを固めた。
しかし茜は容赦なく拳を振り下ろす。

「ボコッ、ボコッ、ボコッ!」
空手で鍛えた固い拳が次から次へと襲い掛かる。
まともに食らえば一発で失神してしまう重いパンチ。
茜は敢えてガードの上からパンチを叩きこむことで、自分の強さをホセの体に教えこんだ。

『どう、私の方がずっと強いでしょう?』
『まったく相手にならないじゃない。』

茜は1発1発のパンチでホセにそう語りかけているようだった。
女が男に勝つ場合、徹底的に痛めつけておかないと試合後に変なことを言い出す輩が多いのだ。
幼い頃から男の子に勝ち続けてきた茜には、そのことが身にしみてよく分かっていた。

もはや勝負は決している。
どちらが強いのか、それは観客の目にも明らかだった。
史上最強とうたわれる空手少女の実力は、並の格闘チャンピオンでは太刀打ちできないレベルだった。


ガード上からの衝撃で、ホセの顔面が腫れあがる。
鼻と口からは出血が見られ、彼の両眼も虚ろになってきた。
ここまで痛めつければホセも完敗を認めるしかないだろう。

もはやKO寸前。
しかしここで、茜は突然パンチを止めた。

『この試合は寝技で仕留める。』
茜は最初からそう心に決めていたのだ。

弱ったホセの両手を押さえつけて固定する。
その上で重心を前にズラし、チャンピオン胸元あたりにどっしりと座り込む。
意識が朦朧としているホセの眼前には、茜の恥骨あたりが迫っていた。

やがて彼女の柔らかい太腿が彼の首に巻きついてくる。
最後に自分の両足首をクロスさせて、完璧な太腿絞めが完成した。

「うぐっ、ぐっぐっ……」
茜の張りのある太腿がチャンピオンの首に食い込む。
同時に強烈な脚の力でホセの顔面下半分を自らの股間に押さえつける。
両手も押さえられており、もはや逃れるすべなど残されていなかった。

見方によってはかなりエッチに見えるこの体勢。
観客の中には思わず股間を膨らます者も少なくなかったが、12歳の茜にはそんなこと知る由もなかった。
彼女にとっては、ただホセを確実に仕留められる技を繰り出しただけなのだ。

『そんなバカな…。この俺様が12歳の少女に負けるはずなどない!!』
もがけばもがくほど、茜の太腿が深く食い込んでいく。
顔面を押さえつけられた彼女の股間が呼吸を奪う。
こんな状況に追い込まれても、ホセはまだ茜の強さが信じられなかった。

「あがっ…ががががっ……」
彼女が太腿に力を込めたことで、脳に流れる血流が一気に遮断された。
その直後少女らしい甘い香りが彼の脳天を刺激する。
初々しい新鮮な彼女の汗が、頬を伝って彼の顔面に落ちてくる。
弾力のある柔らかい太もも…。
ピチピチの肌…。
透き通った汗…。
意識が遠のく…。
あーーーーーーっ……。

普通の試合ならもうとっくにギブアップしている。
それでもチャンピオンとしての意地。
男としての意地。
そして大人としての意地が彼を踏ん張らせていた。

しかし茜は冷静だ。
ゆっくり、しかも着実に太腿の隙間を狭めていく。
そこに油断と遠慮は一切見られない。
彼女はチャンピオンの忍耐力が既に限界であることも見抜いていた。

「もうすぐ落ちるよ、オジさん!」

少女の声をかすかに聞いて、ホセの瞳には涙が浮かんだ。
涙の先にはまだ幼さの残る茜の姿があった。

彼は力なくタップすると同時にかすれた声を振り絞る。
「ギッ…ギバップ…」
「カンカンカンカンカーーーーーン!!」

チャンピオンはようやく彼女の甘い香りから解放された。
かろうじて意識はあるものの、全身は軽く痙攣していて力がまったく入らない。
茜は実力の一部を垣間見せるだけで軽がると王者を葬り去ってしまった。

「1R2分32秒、太腿絞めによるギブアップにより、新チャンピオン太田茜の誕生です!」
「ううぉーーーーーーーーっつ!!!!」

場内は割れんばかりの大歓声。

世界最強と思われていたミドル級チャンピオンが、わずか12歳の少女に敗れ去った。
しかも圧倒的な実力差を思い知らされ、軽く弄ばれての敗戦であった。

レフリーが茜の左手を握り、リングの中央で高々と掲げる。
小学生離れした大きな体がより一層大きく見えた。
露出度の高いスポーツスタイルの衣装が、若干の大人の色気をも醸し出していた。

今日始めて彼女の顔から笑みがこぼれる。
頬を流れる透き通った汗がキラリと輝く。
童顔でキュートな笑顔は、彼女がまだ小学生であることを思い出させた。

ダメージの大きなホセが、安静状態のまま担架に乗せられリングを後にする。
それを待ってディレクターから声が掛かった。
「さぁ出番だぞ!」

ここ1年彼女に密着取材を続けていた俺に与えられた仕事は、勝利者へのインタビューだった。
マイクを手に、まぶしいライトが輝くリング上へと足を進める。

「会場のみなさん、そして世界中のみなさん!
 女性より男性の方が強いという時代は今、終わりを迎えました。
 才能に恵まれた女性は、男性を凌駕するということが今ここに証明されました!
 勝利者インタビュー、見事新チャンピオンに輝きました、太田茜選手です!」

つづく





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