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ファイル07.デス:ストラグル 

世界中で大流行している賭博のための非合法デスマッチ『デス:ストラグル』。
この舞台で活躍する日本人格闘家「鈴木藤次郎」は、
絶対世界王者として君臨する美女「ナターシャ=スルツコワ」との対戦を心待ちにしていた。
しかしそこに突然、ひとりのワイルドな女刑事が乗り込んでくる……。

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『デス:ストラグル』とは賭博のための非合法デスマッチ。
試合の模様はネットで配信され、1試合あたり1000億単位の金が動く。

このシステムを作り上げた『デス:ユニオン』と呼ばれる闇の組織は、
表の権力者とも密接に繋がり、世界中で絶対的な力を誇っていた。

東京都内のとある地下格闘場。
地味なリングと古ぼけたソファが置いてあるだけの狭い空間で、
今日の『デス:ストラグル』が開催されていた。

デス:ユニオンの日本第8支部が主催しているこの試合。
リングに立っているのは日本最強とも言われる格闘家、鈴木藤次郎だった。
身長2メートルを超える日本人離れした逞しい体が光り輝いている。

今日の対戦相手はボクシングの現役クルーザー級チャンピオンというメキシコ人と
テコンドー元世界王者という韓国人の2人。
賭けを成立させるために、2人対1人のハンディキャップマッチとなっていた。

「カーーン!」
試合開始早々容赦なく攻め込む2人。
ボクシング世界チャンピオンのパンチ。
テコンドー元世界王者のキックが次々と藤次郎を襲う。

しかし彼らの攻撃はまったく当たらない。
アンタッチャブルステップ。
藤次郎の得意技のひとつ。
狭いリング上で華麗なダンスを踊っているかのように、彼は相手の攻撃を躱し続けた。
そして藤次郎のパンチが唸りをあげる。

「ボコッ!!!」
ボクサーのこめかみにパンチが直撃した。
豪快な左フック。
悪魔のブーメランフックと呼ばれる藤次郎の得意技。
見えない位置から突然襲い掛かってくるパンチは、プロボクサーと言えども躱すことができない。

さらに藤次郎はパンチの勢いそのままに回転し、テコンドー王者に後ろ回し蹴りを放つ。

「グフォッ!!」
蹴りは側頭部に直撃した。
固い踵の部分が、男の頭蓋骨にめり込むのが分かった。

ボクシングチャンピオンとテコンドー王者は2人揃ってゆっくりとマットに倒れていく。
息の根を止める必要もない手応え。
彼ら2人はこのまま苦しみながら人生を終えていく。

試合時間は24秒。
レフリーが藤次郎の勝利を告げた。

俺は自称『藤次郎のライバル』。
今はトレーニングパートナーとして行動を共にしている。
いつの日か藤次郎より強くなるのが人生の目標でもある。

「なかなか調子良いじゃねえか…」
俺はリング下で藤次郎を出迎えた。

「ありがとよっ。」
藤次郎は軽い言葉で返してくれた。

「いよいよ次だな、ナターシャ戦…。」
「あぁ…。いよいよだ…。」

俺たちが心待ちにしている来月の試合。
それは『デス:ストラグル』世界ランキング1位、ナターシャ=スルツコワとの対戦。
世界中の格闘ファンが、藤次郎の余命はあと1カ月だと思っている。

ナターシャはロシア出身の美人格闘家。
彼女を知る50%の人間が、彼女のことを世界一の美女だと言う。
そして彼女の戦いを見た99%の人間が、彼女のことを世界最強の格闘家だと言う。

圧倒的な強さと美しさを兼ね備えた女性。
神の作った最高傑作と言われている女こそが、このナターシャ=スルツコワなのだ。

彼女と戦う男は『生贄』と呼ばれる。
もちろん生き残った者など1人もいない。
それどころか、まともに勝負させてもらえた者さえいない。
彼女の実力はいまのところ他の追随を全く許していない。

日本最強の格闘家と言われる藤次郎にとっても、ナターシャ戦は大きな挑戦である。
それでも彼は、命を掛けてこの強敵に挑戦することを決意した。
俺も全力を尽くして、彼の挑戦をサポートしていくつもりだ。


そんなことに思いを馳せている中、事件は突然起こった。

「ズギューーン!」
狭い空間にいきなりの銃声が鳴り響く。
その場にいた全員が思わず身を屈めた。

「動くな!」
ちょっと低めの鋭い声が銃声の後に続く。

部屋の入り口には1人の女が立っていた。
190センチ近い長身でモデルのような抜群のスタイル。
そのワイルドな迫力を感じて、部屋にいた全員が動きを止めた。

女は右手に握ったピストルを見せつけながら、堂々と部屋の中へと進んでくる。
左手には缶コーヒー。
膝下の黒いハイヒールブーツが歩くたびにコツコツと音を立てる。

女は部屋の中央まで進むと誰もいないリングへと上がった。
黒皮のロングコートの下は、短めのショートパンツにブラジャー1枚という大胆な格好。
褐色に日焼けした肌に、黒いブラジャーがよく似合っている。

部屋にいた12人の男たちをひと通り見下ろすと女は缶コーヒーを一気に飲み干した。
飲み終えると同時に空き缶がペシャリと潰れる。
右手にはしっかりとピストルが握られたまま。
その動きにはまったくスキが見られない。

「警視庁特殊捜査一課、長野琴美。賭博法違反の現行犯で全員逮捕する。」
潰れた空き缶が握られた左手で、彼女は上下逆さまの警察手帳を呈示した。

長野琴美。
裏の世界では知らない人のいない警視庁の敏腕女刑事。
拳銃を手にしているとは言え、こんな所に女1人で乗り込んでくるなんて流石に度胸が据わっている。

女とは思えない逞しい肉体を持つ彼女。
スレンダーな体型だが、ひとつひとつの筋肉はしっかりと隆起している。
腹筋の割れ方は芸術のレベルと言って良いだろう。
流石はこれまで数多くの暴力団組織を壊滅に追い込んできたと言われる武闘派女刑事だ。

琴美は右手にピストルを握ったまま、男たちを拘束し始めた。
専用のロープを使って、ひとりひとりをリングの支柱に固定していく。

そのスキを狙ってひとりの男が脱出を試みた。
琴美が視線を外した瞬間を見計らって、こっそりと出口へ向かう。

しかし、
「ズギューーーン!」
「ぐあっああああああーーーーーっ!!」
男の右足が飛んだ。
足首から下は原型を留めていない。
琴美は拘束作業を続けながら、右手に握った銃の引き金を引いていた。

「動くなと言っただろ?」
視線を動かすことなく背後の男を狙い撃った琴美。
さすがに警視庁NO1と言われる凄腕だ。
男たちは彼女に刃向かうことを諦めた。

2分ほど掛かって10人の男を支柱に拘束した彼女。
残るは俺と藤次郎の2人だけになった。

「まったく人数が多いから疲れるぜ…。」
彼女はそんな愚痴を溢しながら藤次郎の手首にロープを巻き始めた。

2メートルを超える大柄な藤次郎の拘束に苦労する琴美。
彼女はなんと右手に握られていたピストルを床に置き、両手でロープを縛り始めた。

彼女が見せた初めての油断。

藤十郎が目線で合図を送る。
俺は何気なく2人に近付くと一気に距離を詰めて彼女のピストルを蹴り飛ばした。

「カシャーーーン!!」
彼女のピストルがリングの下へと飛んでいく。
その隙に藤十郎が縛りかけのロープを振りほどいて自由になった。

形勢逆転。

ピストルを失った彼女の前には、日本最強の格闘家、鈴木藤次郎が立ちはだかった。
女としては大柄な彼女だが、藤次郎の体は比べものにならないくらい逞しい。
さらに背後には俺も控えている。逃げることすら不可能。
もはや彼女の命運は尽きていた。

それでも落ち着き払った様子の琴美。
まったく焦った素振りを見せない。
頭を掻きながら愚痴をこぼしている。

「まったく…俺に手間を掛けさせやがって…。」
恐らく彼女は藤次郎の強さを知らないのだろう。

そんな彼女を悠然と見下している藤次郎。
彼は琴美を殺すことを決めた。
警官はもちろん、格闘家以外を殺すのはこれが初めて。
女を殺すのも初めてだが、生きたまま返せば当然指名手配される。
今後のことを考えれば、ここで殺すしか他に道はない。

『殴り殺すか、蹴り殺すか…。女だから押し潰すのも良いかもしれん…。』

しばらく迷った後、藤次郎は殴り殺すことに決めた。
とにかくそれが手っとり速いと思ったのだ。


素早く踏み込んで得意の左フックを放つ。
プロボクサーにも躱されたことのない鋭いパンチ、別名悪魔のブーメランフック。
女などこの一撃で頭をふき飛ばされるだろうと誰もが思っていた。

しかし彼の得意技は、虚しくも空を切る。
彼の左手は、琴美の残したわずか数本の髪の毛に触れただけだった。

そして次の瞬間藤次郎の脳が揺れる。

「ゴコッ!!」
固いもの同士がぶつかる凄まじい音。
藤次郎の得意技を躱した琴美が、カウンターの頭突きを放ったのだ。
彼女の額は的確に藤次郎の顔面を捉えていた。

前歯の何本かが折れ、鼻血が吹き出る藤次郎。
これまでもらってきたどんなパンチよりもその衝撃は大きかった。
型破りの頭突き攻撃には、得意のアンタッチャブルディフェンスも全く通用しない。

膝の力が抜け、腰から落ちそうになった藤次郎。
しかし琴美は髪の毛をつかんで無理やり引っ張り上げ、彼が倒れることを許さない。
激しい頭突きを繰り出した後と言うのに、彼女の表情はクールそのものだった。

「坊や、1発でもう終わりかい?男の癖に情けないねぇ。」

あの藤次郎が威圧されている。
ボクサー、空手家、ムエタイ選手、中国武術家・・・。
どんな格闘家が相手でも、彼はノーダメージで相手を葬ってきた。
そんな最強の彼が、1人の女刑事を相手に鼻血を垂れ流し、今にも意識を失いそうにしている。
俺はあまりの驚きに声を失っていた。

「ちっくしょう…」
気を取り直した藤次郎が再び琴美に襲い掛かる。
大きな体を生かしてパワフルな拳をブンブン振り回す。

しかし当たらない。
藤次郎の拳は風を切るばかり。
琴美はつまらなそうな表情を浮かべたまま楽々と彼の攻撃を躱し続けた。

「ボコッ!」
鈍い音と共に藤次郎の動きが止まる。
彼の顔面からは、大量の冷や汗が一気に吹き出た。
琴美のセクシーで色気のある右膝が、彼の股間に突き刺さったのだ。

強烈な膝金蹴り。
藤次郎の体からは完全に力が抜けた。口からは微量の泡が吹き出ている。
しかし琴美は彼の喉を掴んで無理やり立たせた。

「俺に手間を掛けさせるなと言ってるだろ?
 チンピラの分際で、刑事様に刃向かうんじゃないよ。」

琴美はドスの聞いた艶やかな声で彼を脅す。
まるで街中の不良少年を脅すような手慣れた様子。
彼女には相手が日本最強の格闘家であることなど全く関係ないようだ。

もはやハッキリした。
この長野琴美というこの女刑事はとてつもなく強い。
俺が長年憧れて続けてきた藤次郎など、彼女の足元にも及ばない。

琴美が手を離すと、藤次郎の体はゆっくりと床に倒れていった。
口から吹き出る泡はまだまだ増え続けている。

「はい、オシマイ…」
頭突きと金蹴りで軽々と藤次郎を葬った琴美は、横たわる彼の体にそう声を掛けた。

そして彼女のターゲットは俺へと移る。
美女のような、野獣のような彼女が俺に近付いてきた。

『藤次郎でも全く歯が立たない相手に俺が勝てる訳がない!』
俺は心の底から震え上がった。
無駄な抵抗などまったく考えなかった。

琴美は俺の目の前で立ち止まる。
これまで藤次郎が相手だっただけに彼女の大きさを感じることはなかったが、
ハイヒールブーツを履いている彼女の身長は2メートル近い。

琴美はそのスレンダーで筋肉質な体を俺に近づけて、悠然と上から見下ろしている。
間近で見ると彼女の顔はこれまでに会ったどんな女よりも美しかった。

「結構ハンサムじゃねえか…。俺の好みだぜ。」
琴美はそう言うと、俺の体をギュッと引き寄せた。
そして強引に唇を重ね合わせる。

細身ながら逞しい彼女に抱きしめられた俺は、彼女の為すがまま抵抗できなかった。
彼女の舌が俺の舌に絡みつく。
彼女の唾液にはかすかにコーヒーの香りが残っていた。

こんなにも強く、そして美しい琴美に唇を奪われて俺の頭は真っ白になった。
そんな俺のことを力強く抱きしめてくれる彼女。
何とも頼もしく、頼り甲斐があるその逞しい肉体。
それでいて女性らしい甘い香りがする彼女に、俺の股間は敏感に反応した。

キスはますます深くなる。
彼女の舌は喉の奥にまで伸びてきた。
すごい吸引力で俺の唾液を吸い込み、替わりに自らの唾液を大量に送り込んでくる。
俺はコーヒーの香りのする彼女の唾液を必死に飲み続けた。

そして彼女の右手が俺の股間に伸びていく。
最高にかっこいい女の誘惑に、俺のアソコは爆発寸前だった。


「動くな!」
突然背後で声がした。
失神したはずの藤次郎が、リング下から拾ってきたピストルをこちらに向けている。

藤次郎の声に気付いた琴美は名残惜しそうにキスをやめた。
彼女は俺の唇にべっとりと纏わり付いた自らの唾液を舌でペロッと舐め回す。
そしてゆっくりと振り返り、拳銃を構える藤次郎を睨み付ける。
その目は怒った野獣の目をしていた。

「へへっ…。その色っぽい体に風穴をぶち空けてやる!!死ね!!」
藤次郎は狂ったような笑みを浮かべながら引き金を引いた。

しかし、「カシャッ、カシャッ…」
引き金が固くて動かない。。
焦って手元が震える。冷や汗が湧き出る。
その間にも、野獣のような眼をした琴美が指を鳴らしながら1歩1歩近付いてくる。

やがて琴美は藤次郎の目前にまで迫ってきた。
彼女はゆっくりとした手つきで藤次郎から拳銃を奪い返す。
彼女のワイルドな肉体を前に、藤次郎は恐怖のあまり全く抵抗することが出来なかった。
万事休す。

「俺のマグナムは特別仕様。坊やの力じゃ引き金は引けないぜ。残念だな。
 俺様の楽しみを邪魔したツケを払ってもらおうじゃねぇか!」

こうして一方的な虐待が始まった。
琴美はまず、ハイヒールブーツのかかとの部分で、彼の右足を思い切り踏んづけた。

「うぎゃあああああああああああああーーーっ!!」

この世のものとは思えない絶叫がこだまする。
藤次郎の右足の骨が何本か砕け散った。
地味ではあるが、こういう攻撃こそ最高の痛みを伴う。

苦痛の表情を浮かべ、やや前屈みになる藤次郎。
するとその顔面に、今度はブーツのつま先が唸りを上げて迫ってきた。

「ぐぼっ!!」
鈍い音を響かせながら、琴美のブーツが藤次郎の顔に突き刺さった。
鼻骨と頬骨が陥没し、異常なほどの出血が湧き出てきた。

この女、心底恐ろしい。
普通人の心を持った人間なら、どんなに残酷な格闘家であれ顔面攻撃には若干の躊躇が伴う。
しかしこの琴美は例外だ。
暴力というものに対するリミッターが全く働いていない。

意識が朦朧として、藤次郎は仰向けになって倒れていく。
鼻と口からの出血が、即座に血溜まりを作った。
しかし琴美の虐待はまだ終わる気配を見せない。

左脚ヒールで彼の右手首を踏みつけると、まるでサッカーでもするように右脚で彼の肘を蹴り壊す。
梃子の力が働いて、藤次郎の右肘は完全に逆方向を向いた。
さらに今度は勢い良く膝を突き立てて、彼の太腿骨をへし折る琴美。

「ゴキゴキゴキーーーッ!!!」
「うぎゃああああああああああああああああああああああーーっ!!」

彼女の技は、決して華麗な技ではない。
脚で踏みつけたり、押し潰したりするだけの乱暴な技。
これは格闘技の経験がない彼女が、実戦で学んできたもの。
両親のいない彼女、孤児院で姉に教わった喧嘩がそのルーツだった。

圧倒的な身体能力を見せつけ、容赦なく藤次郎を痛めつける琴美。
ほんのわずかな時間で、藤次郎の両手両足は完全に破壊された。
まともに動く関節は、もうほとんど残っていない。

それでも琴美は涼しい顔をしている。
日本最強の格闘家を倒しておきながら、子供を相手にしたのと変らない雰囲気を漂わせている。
彼女は血だらけになった藤次郎の顔面をブーツで踏みつけると、ようやく攻撃の手を緩めた。

「これで少しは大人しくなっただろう?詳しいことは刑務所でゆっくり聞いてやる。」

日本最強の格闘家が無残な姿を晒している。
俺が人生を掛け、いつの日か倒してやろうと思っていた男だった。
どんな格闘家が相手でも、華麗に叩き潰してきた男だった。
来月には、長年の夢を実現するためナターシャに挑戦する予定だった。

そんな特別な男の人生を、この女刑事はいとも簡単に壊してしまった。
デス:ユニオンの日本第8支部も今日でほぼ壊滅だ。

ロングコートの襟を正し、ブーツに付いた血を藤次郎の体に押し付けて擦り取る。
そして彼女は再び視線を俺に向けた。
獲物を目の前にして舌なめずりする野獣の目をしていた。

「新日本ホテルの特別スイートを予約してある。今夜はゆっくり楽しもうぜ。」
こうして俺はホテルに連れ込まれた。
もう何度イカされ、何度気を失ったことだろう。

ヤツの行為はとにかく乱暴過ぎる。
そのあり余った体力を俺にぶつけてくる。
何度も犯されたケツの穴からは出血が止まらない。
それでもとっびきりセクシーな彼女に、俺の体はどうしても反応してしまう。ちくしょーーっ!

もう日が昇り朝になり掛けているが、彼女にとってはまだまだ前戯。
俺はこのまま殺されるのかもしれない。

つづく





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