ピンポ〜ン
有紀の部屋、休日のくつろいだ時間を壊す無粋なチャイムが響き渡る。
…誰だろう?と思いつつも玄関にたどり着きのぞき穴を覗き込む。
「・・・???・・・」
指等で穴をふさいでるわけではないが視界がふさがれるようによく見えない。
不審がりながらも防犯チェーンをかけたままドアを開ける。
ドアの隙間、巨大な人影…顔を確認するには首を思い切りそらさなければいけなかった。
「や〜っぱりあんたの家だったんだ。」
人影の正体、それはアマゾネス小学生「相沢智恵理」だった…!!!
「ヒィッ」人気の無い暗闇で不審者に遭遇したような短い悲鳴を上げドアを必死に閉じようとした。
有紀は全体重をかけて両手で引っ張っていたが片手でドアノブを掴む智恵理を振りほどく事は不可能だった。
ズルッ…、ズドン
汗でドアノブから手が滑り尻餅をつく有紀。
「ちょっと、何やってんのヨ〜」
ドアの隙間から智恵理が焦れたように覗き込む。
次の瞬間、ギィーーー、ブチィーーーン
防犯チェーンが限界まで伸ばされたと思うと何と引きちぎられてしまった。

「ゴツン」
ドア枠に頭をぶつけたので少し頭を下げて無遠慮に智恵理が入ってくる。
肩幅もあるため智恵理一人で玄関を塞いでしまったかのようだ。
「入るよ」右足で左の靴のかかとを踏み左の靴を脱ぎ左片脚立ちになり、
右足を後ろに曲げ右手で靴を抜き取って無造作に玄関に放り投げる。
尻餅をついたままほとんど腰を抜かしたようになっていた有紀。
何とか正気を取り戻し、開けっ放しになっていた玄関ドアを閉めにいく。
チェーンを無残に引きちぎるパワー、
自分が背伸びしても届かないドア枠にぶつかるほどの長身。
あまりに規格外の智恵理に自宅に侵入されることになった有紀は不安を隠せない。

無造作に脱ぎ捨てられた靴をかいがいしくそろえる有紀。
そのあまりに巨大な靴の横に並ぶ自分が靴は(値段は高くても)みすぼらしく惨めに見えた。
「ちょっと〜」台所からイラついたような智恵理の声がする。
「すみません…」なんで謝らなければ判らないがそういって有紀が現れた。
「冷蔵庫の中、これだけ…?」
【他人の家に侵入してなんて言い草だ…!!!】と思った有紀だが出てきた言葉は
「何か買ってきましょうか…」だった。
「…なんか悪いなぁ、でもせっかくだから…」
悪いと言っておきながら注文は全く遠慮の無いものだった…。
そのあまりの量に有紀は「一人でこれだけ食べるんですか?」と思わず口にしてしまった。
「…あたし一人じゃ不満?亜由美ちゃんでも呼ぼうか?」
智恵理の言葉に有紀は首がもげるほど横に振った。

自己嫌悪の重い気分で玄関に行き靴を履くと横に並ぶ巨大な靴を見る。
何も考えずに靴を履いたまま智恵理の靴に足を入れてみる。
靴を履いてるにもかかわらず智恵理の靴はブカブカだった。
さらに重い気分になる有紀だった。
気を取り直し出かけようとする有紀だったが
外に出てドアを閉める時に又、愕然としてしまう。
ドアノブが智恵理の握力により変形していたのである。
智恵理の手の形に潰されたそれに手を重ねるとそのサイズがよくわかる。
惨めな気分で立ちすくむ有紀を
「まだいるの?」
ドアが震えるほどの智恵理の怒号に脱兎のごとく駆け出す有紀だった。


おわり





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