邪威暗版Y小外伝


うっうっぅぅぅ・・・
真っ暗になった練習場、いったいどれくらいの時間がたったのだろう・・・?
そんな中、五人の中で最初に覚醒できたのは一番ダメージの少ない有紀だった。
あの日(5年3組物語 第10話 学級新聞)以来、時々、勝手に押しかけては好き放題をして行く智恵理であった。
そんな智恵理にボロ雑巾にされ、あげくに失神させられたプロレス研究会の五名であった。
そんな仲間を全身バキバキの有紀だったが何とか起こして回った。
智恵理が練習場に現れたのは午後4時過ぎ、記憶があるのは30分から一時間、今は午前を回っていた。
有紀がぽつり「殺される・・・」聞こえるか聞こえないかの声だったがみんな身に沁みていた。
なにしろ、「井上亜由美」の「レイプ」と違い「智恵理」の場合は「手加減」がでたらめである。
それだけに智恵理の機嫌を損ねたら我らプロレス研究会など砂浜の落書きのごとく消されてしまう・・・
「ほかの相手を用意できたら・・・」誰からでもなくそのような意見が出た。
しかし、智恵理と同等かそれ以上の実力を備えている人物で彼らの面識のあるのは井上亜由美、そしてギガンティック・ミキこと「楠野美樹」ぐらいであろう。
だが、両名とも協力を受け入れてくれるかと言えば、難しそうである・・・
・・・・・・・・・!!!!!
そこで、弱者ならではのセコク、卑怯な手を考え付いてしまった!

その手とは・・・・レインボー・ミカのごとく男子プロレス団体に殴りこませることである。

数日、細かい調整をしながらその案を煮詰めて行き、そして・・・・
「おっはよ〜、今日も稽古つけたげるね」のんきに智恵理がやって来た。
主将の毅を一斉に、すがる様に見つめる団員たち。
そんな様子を感じ取り毅の数十センチ前まで歩み寄り、上から覗き込むように毅に「何?」と一言問いかける。
その状況に毅は、後ろにドスンと倒れこむ。股間にはアンモニア臭を放つシミが・・・
そんな毅を道路に吐かれたゲロの様一瞥をくれ有紀の元にやって来る。
有紀はビビリながらも、自分たちの相談した状況を智恵理に伝える。
自分たちでは5人集まろうと、智恵理の相手にはならないこと、
レインボー・ミカの様に正体を隠してなら男子の団体と戦えること、
万一のことがあってもうまく逃げる方法のこと・・・

そして智恵理の返事は有紀の全身の骨格を軋ませながらのDキッスだった!


ノリノリの智恵理は早速、(無理やりに)次の日に実行に移させたのだった。
マスクやコスチュームは時間や予算の関係で用意できなかったため、
ギャル・メイクと某ミッション系スクール風の制服を用意した。
多少、幼さは残るものの誰も小学生とは思わないだろうから、目的は果たせている。
そしてもう一人、同じ制服を着せられ、智恵理にメイクをされているのは・・・
智恵理に女装させられ玩具と化した有紀だった。
そして主将の毅の運転で、ある寺の合宿場にやってきた。
リングは無くたたみ張りであった。
そこには十数人の屈強な男達がいた。

毅は男達に目で合図をした。
この計画の真の目的は調子に乗っている智恵理にお仕置きを与えることだったのだ!
そのためにプロレス以外にも格闘技をやっている知り合いをかき集めたのである。
大の男達がたった一人の女子小学生を痛めつけるために・・・
しかし、当の智恵理はビビるどころか、上機嫌で男達の方に歩いていく。
そんな智恵理を背後からいきなり男二人が掴み掛かる。
それが合図であるかのように正面からも男が三人飛び掛ってきた。

一瞬だった。
自分達とは違い、面識も薄いはずである寄せ集めのメンバーだが連携が出来ている!!
智恵理を仰向けに転ばせたうえに、両手、両足一人ずつ押さえつけ、
とどめとばかりに最後の一人がマウントポジションをとっている。
まさに、その様子は訓練された獣達の狩りのようだった。
追い詰められた獲物の運命は捕食者達の欲望を満たすだけの存在・・・・・
ここに来て初めて毅は事の重大さを認識した。
いかに恵まれた体格を持ち大人顔負けの怪力を持つとはいえ、智恵理は小学生である。
騙して連れ込んだ場所で十数人の男達の嬲り者にされるなど・・・
その首謀者は誰でもない、自分達である!
説得など聞く連中ではないこともよく知っている。
事が明るみに出れば、自分は只では済まないであろう。
この場に及び智恵理の身ではなく、
自身の今後を気にする事に嫌悪感を覚えつつ顔をそむける毅だった。
・・・うっ、!!
目をそむけた先にはイジクリ回されている有紀の姿が・・・!!
女装した有紀は女子高生、いやU-15(十五歳以下のアイドル達)以上に可愛いだろう。
だが、男達は有紀が我がプロレス部のメンバーであることを知っているはず!(対戦経験があるから)
ゾクリ!とした視線を感じて周りを見回すと自分すら好色そうな目で見られていることに気が付いた。
・・・コイツラなんでもありか!?・・・、ぅぅぅ本物の獣だ!!!!
仕組んだ自分を呪いつつ、この先の自分の運命に涙が溢れそうになった。

当の智恵理は男の「レイプ」はこんなもんか…亜由美ちゃんの「レイプ」なら…
4人に四肢を押さえ込まれ、馬乗りの男は容赦なく顔面にパンチを叩き込まれながら、
智恵理はさめたものだった。
『スポッ!!』
全体重と力をこめて右足を押さえ込む男から足を抜き取った。
ブカブカの長靴から足を抜き取るかのように…
次の瞬間、呆気に取られる男の顔を覆いつくす様な智恵理の足の裏がプリントされる。
智恵理の足の裏の形に顔面を『整地』された男は数メートル先に吹き飛ばされる。
状況を理解する前に左足に取り付いていた男の体が浮き上がる。
声を上げる暇も無く180度ハイキックで智恵理の頭上に叩き付けられる。
グシャ!の音の次に振り上げた『豪脚』は左腕を抑えていた男を襲う!!!
避ける間もなく左腕の男は智恵理の足に『潰され』てしまった。
ココまで5秒もたっていない!!!
しかし、右腕を押さえていた男も只者ではなかった!!!
この瞬間とも言える時間に押さえていた腕を関節技「腕十字」に変えていた。
それはフルロック…、完全に決まっていた!!!

格闘技の世界の常識、「完全に決まった関節技は力では返せない」が今、覆された。
「よっ」と簡単な掛け声の後、右腕を強引に振りほどいた。
振りほどかなければ、男の手足は体から引きちぎられたであろう。
「ふん!!!」そのまま腕を裏拳で振り下ろす!!!
「プギャ!!!」変なうめき声とともに右腕の男は失神してしまう。
「……ぅぁぁぁぁ…ぁっ」馬乗りの男は聞き取れない様な声で呻く。
一瞬のうちに仲間4人が完全な戦闘不能状態である。
『ニィ!!』と智恵理は笑いかけ男の襟首をつかみそのまま立ち上がり、吊り上げる。
「あんた、何発殴ったか覚えてる?」足をバタつかせ必死に逃げようとする男に問いかける。
怯えた目が智恵理と合った瞬間に「いっぱ〜っつ!!!!」
強烈な智恵理の張り手が襲う!!!
凄まじい一撃だが襟首をつかむ智恵理の手からは逃げれない。
奥歯が軋み、口の中を切っている。
「にぃは〜っつ!!!」
先ほど通り過ぎた平手が戻ってくる!!!
二発目はあごの骨と奥歯をへし折ったしまう。
「さんぱ〜っつ!!!」
反対側もあごの骨は砕かれ、奥歯は抜け落ちた。
男は自分が何発殴ったか覚えていない。
覚えていたとしても同じだけ殴られる間に無事ですむわけない。
ニコリ微笑む智恵理が「私も覚えてないけどね…」
男が聞いた最後の言葉だった。
そして、意識を取り戻したのは病院のベットの上だった。


つづく





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