義妹

冬休み。今日、6年ぶりに義妹の理子が帰ってくる。
小学校が高学年になった頃、ウチの親が再婚した時に出来た同い年の義妹だ。
顔はかなり可愛いかった上に良く懐いて来たので、最初は嬉しかったのだが、
なかなかにふてぶてしい(生意気ともいう)性格をしていたので次第に邪険にするようになり、
いつしか軽くではあるが理子を苛めるようになっていた。
俺は、運動も勉強も人並み以上に出来たので腕力は勿論、勉強でも理子が俺に敵うことはなかった。
そう、今まではそうだった。

理子は、都内から少し離れた中高一貫の全寮制の共学の私立校を志望し、見事合格したのだ。
そこは文武両道を謳っているところで、スポーツも一流大学への進学率も都内では1,2を争うほどだ。

「高校を卒業したら帰ってくるから、待ってなさいよ。勉強でも腕力でもあっと言わせてやるから。」
「はは。やれるもんならやってみな。6年後、もし腕力で負けるようなら何でも言う事を聞いてやるよ。」
「その約束、忘れないでよ。」

そういや、そんな捨て台詞を吐いてたっけ。
あれから、俺は勉強もスポーツもそれなりに頑張った。大学推薦は学力で取ったが、
中高6年間続けたラグビーのお陰で体力も人並み以上を保っている。
まあ、帰ってきたらラガーマンと一般女性の腕力の違いを見せ付けてやろう、そう思った矢先。

ピンポーン。

インターホンが鳴った。両親は今、海外旅行に行っている。
理子も推薦で大学を決めたらしく、受験生から解放され安心した両親は久々の夫婦水入らずのアバンチュールというわけだ。
宅配便が来る予定もない。つまり、理子が帰ってきたのだ。

「帰ってきたか。」

6年前の約束を思い出してよかったかもしれない。それをネタにまた苛めてやれるからだ。
だが、その考えが甘いことに気付くのはもうすぐだった。

ガチャガチャ・・・バキッ

ん?何の音だ?
慌てて2階の自室から玄関に降りてみると、そこに6年前とは比べ物にならないほどの美人が立っていた。
微かに面影があるので、それが理子だとはわかったが、可愛い系だと思っていた義妹は、美しく変貌していた。
スタイルも、コートを着込んでいて体型はわかりにくいが、バストの大きさだけはコートの上からでもわかった。
コートの上からわかるぐらいだから相当のカップ数なんだろう。
ただ、ガタイがやけに良い気がしたが、それもコート+厚着のせいだろうとその時は大して気にならなかった。
しかし、だ。理子は寮に入っていたので、この家の鍵は持たされていない。
母親が専業主婦なので、家を空けることはまずなかったし、理子が卒業までは帰省するつもりはないから鍵は要らない、と入寮時に行ったからだ。

「6年ぶりだな、おかえり。」
「ただいま」

理子は嬉しそうにそう言った。

「帰ってきて早速で悪いんだが・・・お前、鍵持ってなかったよな?どうやって開けたんだ。鍵は、掛かってたはずなんだが・・・」
「そうよ〜、可愛い義妹が久々に帰ってくるってのに鍵掛けてるなんて酷いよ〜。」
「悪い、悪い。最近は物騒だからな。お前が帰る時は連絡ぐらいあると思ったし。っていうかどうやって入った?」

「えっ〜と、ちょっと力入れたら壊れちゃったみたい・・・えへ」
理子はバツの悪そうな微笑を浮かべる。
「えへ、じゃねーだろ。力入れたら壊れたって・・・錆びてたのか・・・?」
「まあ、いいじゃない。後で、直せば。それよりも・・・・・」
? 理子が妖しく笑った気がした。

「あの約束、覚えてる?」
「早速だな。ああ、覚えてるよ。」
さっき思い出したんだけどな。
理子が、靴を脱いで玄関に上がる。何か、微妙な違和感を俺は感じた。
その違和感の正体はすぐに判明した。理子の方が俺よりも頭半分ほど背が高いのだ。
俺は、平均よりは低いものの、身長は170cm少しある。つまり、理子は180cm近いということになる。

「取り敢えず、お兄ちゃんの部屋に行こうよ。」
二人揃って、俺の自室に向かう。

「しかし、お前、背が伸びたんだな。」
「まあね〜。本当に驚くのはこれからだけど・・・くすくす」
「よっぽど自信付けて来たみたいだな。ま、俺だって鍛えてたんだ。男と女の違いを見せ付けてやるよ。」
だが、理子はそれには答えず、ただ妖しく笑うだけだった。

俺の自室。6畳で机、本棚、ベッドのあるごく普通の部屋だ。俺は椅子に座り、理子はベッドに座った。

ギギィッ・・・

理子が座った途端、ベッドが大きな音を立てて軋んだ。70kg近い俺が座ってもそう簡単には軋まない頑丈なベッドなはずなんだが・・・

「理子。お前、もしかして太ったか?」
後から思えば、立場的に上だと思っているからこそ言えるセリフだ。
「ふふ、どうだろうね。体重は間違いなく増えたよ。」
理子は、妙な言い回しをした。
「いや、だから、それは太ったっていうんじゃないのか?」
そういえば、理子は分厚いコートを来たまま脱いでいない。確かに外は肌寒かったが・・・

「理子。そろそろ、コート脱げ。見てて暑苦しい。」
(そろそろ良いかな・・・勿体つけても仕方ないしぃ・・・)

「うん、わかった。」
理子は、おもむろにコートを脱ぐ。下には、何と分厚いスウェットを着込んでいた。

「お前、幾らコートを着てたとはいえ、そんな格好で帰ってきたのか?」
「良いじゃなーい。どうせ、真っ直ぐ帰ってくるつもりだったんだし。」
「しかも、スウェットの下に厚着してくるなんて・・・。それってファッションとしてどうなんだ?」
「え〜? この下は、スポーツブラとスポーツタイプのショーツだけだよ?」

え?どういうことだ?
最初は、コートの下に着込んでいるから俺よりガタイが良いんだと思った。
下に着込んでいたスウェットはかなり大きいサイズらしいが、ブカブカというわけではなく、
肩や上腕、太腿や胸の部分はピッタリとフィットしている。いや、パツパツに張っているといった方が正しいかもしれない。

「やっぱ、お前太っただろ?」
「お兄ちゃん、いい加減にしないと怒るよ。太ってないってば。」
太ってないっていうのなら、そのパツパツ感は何なんだ・・・?

「私の、6年間で磨き上げた爆裂ボディは後で思う存分見せてあげるから。
それより、今は勝負しようよ。完膚なきまでに叩きのめしたいから勝負方法はお兄ちゃんが決めて良いよ、くすっ」
またさっきの妖しい笑みだ。
「言ってくれるな? 俺も、鍛えてきたからな。たかだが、6年程度でお前と俺のヒエラルキーが覆らないことを教えてやる。」

さて、勝負方法はどうしたものか。後腐れがないよう単純な方が良いが・・・

「・・・そうだな。定番の腕相撲はどうだ?」
「え〜、そんなのすぐに勝負付いちゃうよ〜」
「何だ? 言いだしっぺはお前なのに自信ないんだな。」
「ち・が・う・よ。私が簡単に勝っちゃうから詰まんないって言ってるの。」
ちょっとカチンときた。

「良いだろう。腕力の違いを見せ付けてやる。」
理子の腕を多少、痛めつけることになるかもしれないが、本気でやらせてもらう。
まあ、男を舐めた罰だ、なんてその時は本気でそう思っていた。まさか、それが大いなる思い違いなんて思いもよらなかった。



丁度、台になるような小さなテーブルを用意する。俺も理子もそこに肘を置いて、手を合わせる。
見掛けによらず、理子の手は硬い。そんな俺の様子を見てか、理子は笑っている。

「驚くのはこれからなんだから。さ、いつでも始めて良いよ。」
腕を曲げた状態で向かい合って気付いたが、理子の腕はスウェット越しとはいえ、かなり太い。
前腕はともかく、上腕は俺の2倍以上ある。
組んだ手の硬さといい、腕の太さの差といい、嫌な予感がしたが、どうせブヨブヨの脂肪だろうとタカを括ってここは勝負に集中する。

「行くぞっ!」
ぐっ・・・
っと油断せず一気に決めようと力を込める。

が、理子の腕は微動だにしない。
どういうことだ?
いったん力を抜き、再度、今度は渾身の力を込める。
・・・が、それでも一向に理子の腕が動く気配はない。

「んふふ〜〜♪」
理子は、余裕なのか鼻歌を唄っている。
ぐっ! このっっ!!
どれだけ、力を込めても理子の腕は巨大な岩のように動く気配がない。

「お兄ちゃん、気付いてる?」

「私の肘、見てみなよ。力は入れたままで良いから。」
そういわれて、力を抜かずに理子の肘を見る。
!!
唖然とした。何と、理子はテーブルに肘をつけていなかったのだ。テーブルを支点として使っていない、いわゆる空気椅子状態。
腕相撲は、肘を支点、手を作用点とするテコの原理を利用したスポーツだ。
しかし、理子の腕が全く動いていなかったのは間違いない。
つまり、理子は俺の渾身の力を純粋な腕の筋力のみで押さえ込んでいたことになる。正直、ゾッとした。
肘を宙空に置いた状態で微動だにせずに相手の腕力を押さえ込むなんて、どれほどの筋力があれば可能なのか想像も付かない。

「もう、気が済んだ?」
冷や汗と脂汗にまみれた俺に理子はそう言い放った。
「勝負に勝った暁には、まずこのスウェットを弁償してもらおうかな。」
意味不明なセリフをいう理子だったが、その腕に力が篭るのだけはわかった。
なぜなら、上腕が更に太くなり、スウェットの袖をパンパンに張らせていたからだ。

ビリビリッ

という音と共にスウェットの上腕の生地が裂け始めたかと思うと、今度は組んだ手にも万力のような力が込められる。
勝負が決まるのは一瞬だった。

「ぐぁぁっっっ!!!」
相変わらず、肘は微動だにさせずに上腕が倒されると、俺はたまらず身体ごと豪快に倒される。
・・・というより、吹っ飛ばされたという方が正しいかもしれない。

「力に逆らわずに、身体ごと飛ばされたのは正解かもしれないよ?下手すると、手首か上腕骨が折れてたかもしんないから。」
理子は平然とそう言い放った。

「これでも手加減したんだからね。高校じゃ、勝負を挑んでくる体育会系の男子部相手には本気でやってたけど。」
更に理子は、大会前の運動部の腕の骨を折った時はさすがに怒られたけどね、とそう付け加えた。

「なっ・・・・・」
言葉にならない。おそらく、本当のことだろう。
破れたスウェットから覗く丸々と盛り上がった上腕二頭筋を見れば容易に想像が付く。
そう。俺が脂肪と思っていたものは全て、筋肉だったのだ。

「あ〜あ。また、スウェットの袖破いちゃった。このサイズは特注だから結構高いのよね。
まあ、パンプアップした状態で力瘤を限界まで盛り上げると破けちゃうから仕方ないんだけど。」
そういうと、おもむろにスウェットを脱ぎ始める。スウェットの下の肉体は想像以上だった。
適度に脂肪を纏った鍛え抜かれた鋼の筋肉美といったところだろうか。
肩や首の筋肉は勿論、上腕は伸ばしたままでもハンドボール大の大きな力瘤が盛り上がっている。
それでいて、腰には無駄な筋肉は付かず、くびれているものの、腹筋は堀が深く見事に6つに分かれている。
また、恐らく俺の胴より太いであろう太腿も、しなやかさを失っていない。
更に特筆すべきは、その豊満なバストだろうか。鍛えられた大胸筋を下地をした爆乳はツンと形良く上向きに張っている。
巨大な広背筋と腰の細さに強調された逆三角形のシルエットは、ただただ見る者を圧倒させた。

「何て身体してるんだ・・・いつの間に・・・」
俺はただ、目の前の義妹の変貌振りに唖然とするばかりだ。
「伊達に、日本で有数のトレーニング機材の整った学校選んでないからね〜」
「な・・・お前、そんな理由であの学校を選んだのか?」
「そうよ。学力はともかく、筋力でお兄ちゃんに勝つにはそれなりの環境で鍛えないとね。」
理子の身体のどこをどう見ても、俺程度の筋力で勝てるはずはなかった。最初から勝負は決まっていたのだ。

「女の子でも鍛えればお兄ちゃん程度に勝つぐらい何でも無いんだから、ふふっ」
理子は誇らしげに笑った。

「さぁ〜って。どうしてあげようかな〜?」
嘲笑が妖しい笑みに変わる。

「小さい頃は散々苛められたけど、これで立場逆転ね。」
「ぐっ・・・・・」
「あら? 不満そうね? 勝てると思うならいくらでも掛かってきて良いのよ?」

確かに、ここで負けを認めてしまえば今後、どんな目に合わされるかわかったもんじゃない。
こうなったら多少卑怯かもしれないが、力尽くで・・・!

「このっ・・・!!」
そう叫ぶや否や、ラグビーで鍛えた低いタックルを理子に仕掛ける。
テイクダウンさせてマウントさえ取れば何とかなると思ったからだ。

「くっ・・・・・」
理子の細い腰を見てそこが弱点だと思い、攻めたてたが考えが甘かったようだ。

「あれ? お兄ちゃん、それタックルのつもり?」
理子は、ラガーマンの渾身のタックルを平然と受け止めた。
・・・というよりただ立っていた、という方が表現としては正しいだろう。

「確かに、広背筋や太腿に比べれば私の腰は細く見えるかもしれないけど、それでもお兄ちゃんよりはウェストあると思うよ?
それに、私の身体はどこをとっても半端な鍛え方はしてないの。」
理子の言うとおり、組み付いた腰はまるで岩のように硬かった。腹筋の隆起も凄い。すると、理子は軽く腰を俺の方に振った。

「うぉ・・・っとっと・・・」
何と、俺はそれだけで振りほどかれる。先述の通り、70kgある俺を理子は腰の筋力だけで振り解いたのだ。
そして、尻餅をついている俺に理子が近づくと、その極太の豪腕を俺の方に伸ばして来る。
スウェットを脱いでいるから気付いたが、理子の前腕も手首の方が細いだけで、肘にかけて急激に太くなっている。
おそらく握力も半端ではないのだろう。理子は右手で俺の頭を抑えた。また、力は込められてないようだ。

「これ、昔、お兄ちゃんがよく私にやってくれたよね? こうやって頭を押さえつけて、座った状態から立ってみろって。
勿論、そのままじゃ人体の構造的に立てないから腕とかも使っていいとは言ってたけど・・・」

くそ、いいようにやられてたまるか!
俺はまず、理子の手を振りほどこうとする。が、動かない。逆に、万力のような力が頭に込められる。

ぐああああ・・・っ!
強靭な力で頭が締め付けられる。すると、何と理子は俺の頭を掴んだまま俺の頭ごと腕を持ち上げた。
何なく、俺は持ち上げられ、20cmぐらい浮かされた状態になる。



「ホント、お兄ちゃんって軽いのね〜、ふふふ」
70kgの俺を片手で軽々と持ち上げ、しかも平然としている。
俺も何とかその掴んだ右手を振りほどこうと両手で理子の前腕を掴むが、ビクともしない。

「はいはい。もう無駄な抵抗はしないの。お兄ちゃん程度の力じゃ、私の片腕の筋力にも敵わないってまだかんないの?
もうっ、それっ!」
理子は、ベッドの方に向くとそのまま俺をベッドへ投げつけた。

「うっ・・・・・」
弾力のあるベッドにも関わらず、理子の投げつけた力が強いため、俺の身体にはかなりの衝撃があった。

「さぁ〜、もう私に敵わないのはわかったでしょ?」
ふふふ、と理子が嘲笑する。

「私にはね、学内で最重量のベンチプレス用のバーベルでさえ片腕を鍛える程度にしか役に立たないの。
握力だって200kgはあるし。わかる? 本気でお兄ちゃんの頭を潰そうと思えば、いつでも出来たの。
まあ、この歳で殺人犯にはなりたくないからそんなことはしないけど・・・」
何か、妙なところで子供っぽいな・・・。だが、筋力に関しては常軌を逸しているのは確かだ。
重量挙げなら軽く世界チャンピオンになれるんじゃないのか?

「今、もしかして重量挙げなら楽勝で世界一だな、とか思った?」
「なっ・・・鋭いな。」
見透かされている。
「そういうわかり易い性格は相変わらずね〜。お兄ちゃんが私を苛めてた理由を教えてあげよっか?」

「私のこと、実は好きだったでしょ?」
「はぁ?」
何を言っている。・・・と完全に否定し切れない自分が居る。
確かに、物心付くころに出来た義妹。最初に意識した異性かもしれない。

「まあ、恋愛感情まで行ってないのもわかってるよ、お兄ちゃん。私も同じだから。」
「え?」
「私もお兄ちゃんのことが好きだって言ってんの。だから、どうしてもお兄ちゃんに勝ちたかった。
いつしか、それは男全般を力で捻じ伏せたいって気持ちに変わっていったけど。」
エラい飛躍しようだな、それは。

「で、そこで約束の話。まさか、まだ私に敵うなんて思ってないよね?」
・・・ぐっ・・・・・
決して貧弱ではないラガーマンの俺の身体が貧相に見えるぐらい極限まで鍛えられた理子の筋肉美。
全身を鋼の筋肉で覆われつつも腰のくびれもあって女性らしさも失っていない完成されたフォルム。
俺が敵う要素は残念ながら見付からない。

「ふふふ、そんなに緊張しない〜。別に取って食おうってわけじゃないんだから。」
また、あの「妖しい笑み」だ。妖艶と言った方が正しいか。

「お兄ちゃんには、これからずっと私のストレスの捌け口になって欲しいの。」
「ストレス?」
「身に染みてわかったと思うけど、私って自分でいうのもなんだけど結構半端じゃない筋力なのよね。
物に当たれば、簡単に壊れるし。ドアノブ見たでしょ? 鍵を壊したのも一度じゃ二度じゃないのよね。
適度にガス抜きしないと、周りの物をどんどん壊しちゃって・・・」
「じゃあ、やっぱりドアの鍵は理子が・・・・・」
ドアノブを捻っただけで鍵を壊すとは・・・。腕相撲の時、よく手を握り潰されなかったな・・・。

「だから、普段からなかなか全力を出せないわけ。
勿論、全力を出せばお兄ちゃんが壊れちゃうだろうからそんなことはしないけど、骨の一本や二本は覚悟しててね♪ ってこと。
例えば、こんな風に・・・」
そういって、ベッドに座ったままの俺の背中に理子の豪腕が回される。そしてそのまま、理子が立ち上がる。
理子の方が背が高いこともあり、俺の足が宙に浮く。抱き締められた、というよりはベアハッグといった感じだ。
最初は、理子の豊満な爆乳が押し付けられて役得か?と思ったが、
徐々に理子の両腕に力が込められるとそんなことを考えている余裕はすぐに無くなる。

・・・ぐぐぐ

「ぐぁぁぁぁぁ・・・っっっ!!!」
信じられない力で締め付けられる。
今気付いたが、さっきまで怪力ぶりでさえ、どうやら理子にとっては筋力をセーブしていたようだ。
腕や、アバラ、背骨が軋む。

「ん〜〜、一度、本気に近い力で人を抱き締めてみたかったんだよね〜。」
理子は呑気にそんなことを言っている。が、抱き締められた方は堪ったもんじゃない。

「や、やめ・・・ぅがぁぁぁっぁっっ!!!」
意識が怪しくなってくる。あまりの激痛に気を失いそうだ。
柔道の絞め技ならともかく、まさか、ただ抱き締められた痛みで「落ちる」日が来ようとは・・・

「あれ? 目がトロンとしてるけど、もう限界? 情けないの〜」
理子が嘲笑しながら、俺は限界寸前で解放された。

「まあ、これからいつでも苛められるから今回はこの辺で勘弁してあげる。
それから言っとくけど私、”S”だから。告白したからって舐めてると本気でシメるよ。」
何だか恐ろしいことを言っている。恐らく理子の全開の筋力の前には、誰一人として五体満足では居られないだろう。
大袈裟ではなくそう思える。しかし、このまま言われ放題なのも何だか癪だ。

「理子。残念だがな、俺は春から大学の近くのマンションで念願の独り暮らしを始めるんだ。
お前と会う機会は早々ないはずだぜ?」
意識朦朧としながらも、最後の力を振り絞って強がってみる。すると、理子はまたしても妖艶な笑みを浮かべた。

「あれ? お兄ちゃん、私の受けた大学聞いてない? 何と〜、お兄ちゃんと同じ大学で〜っす。」
「なっ・・・・・」
「学力でもお兄ちゃんには負けてないんだよ〜。腕力では、果てしない差が付いちゃったけど・・・くすくす。」
明らかに逆転してしまったヒエラルキー。嘲笑も甘んじて受けるしかない。

「しかも、お兄ちゃん。パパが取ってくれたマンション、2LDKだって知ってた?」
「2LDKだって!?」
確かに、マンションは大学に近ければどこでも良い、と親父に任せっきりだったが・・・まさか・・・。

「その、まさかよ〜。お兄ちゃん一人の為に2LDKのマンションなんてパパが奮発してくれるワケないでしょ。
わ・た・しと一緒に住むのよ。大学の4年間。」
またしても、妖艶な笑み。どうやら理子はこの笑い方が好きなようだ。”S”だと言っていたが、あながち間違いではないようだ。

「春になれば逃げられると思った〜? お兄ちゃんみたいな良いオモチャ、逃がすわけないでしょ〜。
ウチの高校の運動部と比べても、そこそこ身体は頑丈みたいだし。
お兄ちゃんに苛められてたのは小学校高学年の間だけだったけど、倍返しでしっかりと苛め返してあげるから。」

・・・・・・・・・。もう、言葉が出ない。

「これから少なくとも4年間、覚悟しててね。
ああ、そうそう。お兄ちゃんも新生活で友達付き合いもあるだろうから週末は良いけど、平日の無断外泊は許さないから。
もし破ったらキツ〜イお仕置きが待ってるからね。夜は私のストレス解消に付き合いなさい、良いわね?」
いつの間にか、理子が命令口調になっている。
確かに、同い年だが生まれは俺の方が早い為、今まで俺が「兄」として振舞ってきたが、これからはそれすら許されないらしい。

「・・・返事がないわね。まだ、今の立場を理解してないのかしら・・・」
そういうと、理子は俺の背中に両腕を回す。
天国のような爆乳の弾力感と、締め付けてくる豪腕の地獄の苦しみが同居したベアハッグが再開される。
「ぐぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「お兄ちゃん、返事は?」
悶絶しそうなので、とてもじゃないがこんな状態で声なんて出ない。しかし、理子が許してくれそうな気配はない。
「見せしめにアバラの一、二本は覚悟しなさい?」
更に力が込められる。
「わ・・・わかり・・・・・ま・・・・・・・・・」
これ以上は声にならなかった。あまりの激痛に脳がブレーカーを落としたからだ。

「あれ? 気を失っちゃった? ホントに情けないんだから。」
理子はやれやれ、というように俺をベッドに解放した。

「ベッドの上で痛めつければ、何かあってもそのまま寝かせられるから便利よね〜。
まあ、あれだけ痛めつけられても泣き言を言わなかったのはさすがお兄ちゃんね。
やっぱり、ウチの高校の男子どもよりは骨がありそうだし、これからの華の大学生活が楽しみ〜♪」

俺は微かに残る意識下でそんな理子のセリフを聞きながら、これからの先行き不安な大学生活に絶望した。




つづく





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