義妹2

理子が帰って来て何日か経ったある日、俺は理子のタブーに触れてしまった。
その日は、何てことのない日だったのだが、たまたま偶然、風呂上がりに下着姿で体重計に乗っている理子と鉢合わせてしまったのだ。
ウチの風呂は構造上、脱衣所の中にバスルームがあるのでいきなり風呂を覗くなんていう漫画なんかにありがちな展開にはならないが、
ふいに風呂やシャワーをしている人間が居ると稀に着替えの最中にバッタリ、なんてこともないわけではなかった。
でもこれまでは、両親と俺だけだったのでそんなアクシデントがあっても笑い話で済んだし、
理子が引っ越す前はお互いが裸でも意識するかしないかの歳だったから大した問題にはならなかった。
だが、今は違う。下着姿とはいえ、年頃の義妹の着替えに成人近い男の俺が居合わせるのはどう考えても不味かった。
勿論、その後は俺の部屋での折檻が待っていた。
定番の悶絶ベアハッグ(←後に俺が命名)にアイアンクロー、片腕でのネックハンギングツリー等の
理子の有り余る筋力を用いた技の数々のオンパレードを喰らった。
威力も半端ではなく、未だに自分が五体満足なのが不思議なぐらいだ。
だが、そこで終わっていればまだ良かった。俺が余計なことを思い出して、聞いたりしなければ。
理子の乗った体重計が指し示していた数値、それは俺の体重を遥かに上回るものだったのだ。
確かに、理子は身長が170cm後半で、首から下はその爆乳バスト以外はすべて超ド級の筋肉に覆われている。
筋肉は重いから俺よりは重いんだろうな、程度に思っていたのだが・・・

「理子。お前が凄い身体なのは知ってたが、体重も凄かったんだな。」
やっと、摂関から解放された安堵感からか、不用意な一言を口走ってしまった。

「あれだと、相撲と・・・」
「お兄ちゃん、歯を食いしばって。」
え? という声が俺の口から出るよりも早く、

バチーーーーーンッッッ!!!!!

という凄まじい衝撃が俺の左頬を襲った。文字通りキリモミしながら、つまり、吹っ飛ばされつつ空中で回転しながらベッドに叩き付けられた。
俺は、理子の豪腕で力いっぱいビンタを喰らったのだ。無論、無事で済むわけもなく。

「あががが・・・・・っっっ」
何と、顎の骨が外れていた。歯が折れていないのは奇跡としか言いようがないが、
理子は平手一発で大の男をふっ飛ばし、尚且つ顎の骨を外してしまったのだ。
俺は、激痛はもとより顎の骨が外れている為、まともに声を発することができない。

「女の子の体重に触れるなんて・・・・・しばらくそのまま聞いてなさい。」
どうやら、俺は顎を外した激痛に耐えながら説教を聞かされるらしい・・・。

「男に腕力で勝ちたいって目的があったから、筋肉が付くこと自体は別に何とも思わないし、むしろ嬉しいぐらいだけど、
体重が増えるのは本意じゃないの。これでも身体には人一倍気を使ってるのよ?」
そういいながら、理子はパジャマ代わりの特注のスウェットの袖を捲ると、腕を曲げて力を込める。
すると、みるみるうちに力瘤が盛り上がる。相変わらず理子の上腕二頭筋は凄まじい。
普通の市販の服ではまともに袖を通せないと嘆くのもよくわかる。
「体質的におっぱいの脂肪は落ちにくいみたいだから何とか女の子らしさを失わずに済んでるのは幸いなんだけど。」
理子はバストも常人離れしている。カップサイズを聞いたことはないが、JとかKとか行くんじゃないんだろうか。
おそらく、理子がもし普通の一般女性の体型をしていたら逆にバストの大きさが不自然に見えていたかもしれない。
極限まで鍛えられた筋肉によって統制の取れたフォルムに、その爆乳は不思議とマッチしていた。
グラビアアイドルとは別の次元での美しさがある。
ギリシャ彫刻に代表されるような究極の肉体美を体現しているといっても過言ではないかもしれない。
しかし、だ。それを何で今更そんな日本人的な感覚で体重を気にするのだろうか。
海外の女性からすれば体重を気にし過ぎる日本人女性は異様に映るらしい。
男の俺からにしても「体型に見合った」体重ならそれはそれで良いと思うんだが・・・

「今、そんだけ筋肉付いてるんだがら重くて当たり前だろ? とか思ったでしょ?」
理子はにこやかにそう言ったが、明らかに笑顔が引きつっている。
「女の子はね、体重を気にするものなの。
そりゃ、私は上背もあるから普通の女の子並の体重を維持するなんて無理なのは百の承知だけど・・・」
そう。ぶっちゃけると、理子の体重は明らかに100kgを超えていた。帰って来た日にベッドが軋んだのも頷ける。
理子は、小兵であれば相撲取りよりも重いかもしれないのだ。

「もしかして、お兄ちゃん。私を女として見てないんじゃない?」
普通、人には怒る沸点が二段階あると俺は思う。普通に怒るのと、逆鱗に触れる、という奴だ。
「それを可愛い義妹に向かって『相撲取り』だなんて・・・・・」
理子はワナワナと怒りに震えている。どうやら、今は後者の怒り方のようだ・・・。

「お兄ちゃん。私が何で今まで締め技や固め技しか使わなかったかわかる?」
理子は俺を苛める時、ベアハッグ等の純粋な力技しか使っていなかった。そう、打撃は一切使っていない。
「それはね。私、殴ったり蹴ったりだと手加減が出来ないの。締め技とかと違って力加減がわかんないっていうか・・・。
前に、学校の女子更衣室に忍び込んだ下着泥棒が居て、頭に来たから思い切り殴ったら歯がほとんど折れた上に顔面を複雑骨折して・・・
あれ、顎を粉砕骨折だったかな? まあ、どっちにしろソイツは今でも入院してるわ。」
理子は、いわゆる打撃に必要な背筋(ヒッティングマッスル)も例に漏れず極限まで鍛え上げられている。
まともに殴られればひとたまりもないだろう。
「お兄ちゃんに打撃を使わないっていうのは、手加減してあげようっていうせめてもの愛情表現だったのに・・・」
つまり、ビンタでもまだ手加減されていたというところだろうか。
確かに、片腕で大の男を軽々と持ち上げるどころか、ビンタ一発で宙を舞わせるほどである。
それこそ、殴って人が殺せそうだ。

「取り敢えず、殴ってもまともに叫び声を聞けないのも癪だから、顎の骨は元に戻してあげる。」
そういうと、理子は両手で俺の頭と顎を固定すると一気に力を込めた。

ガコッッ!!

「ぐあぁっっ!!!」
またしても下顎に激痛が走る。気が付くと、顎は元通りになっていた。
「整体とか人体に関することは色々勉強したのよね〜。だから、このくらいワケないの。勿論、格闘技も・・・」
お得意の妖艶な笑み。理子はおもむろに俺の右肩を左手で掴む。
俺も慌てて逃げようとするが、万力のような握力の前では逃げられるはずもない。
突然、フッという呼吸音が聞こえたかと思うと、

ドゴォォォォッッッ!!!!!

どてっ腹に胴体ごと大砲か何かで撃ち抜かれたような強烈な衝撃が走る。
そのあまりにも強い衝撃のせいでそのまま、掴まれた右肩を支点にして30cmほど身体ごと宙に浮いた。
今まで味わったことのないような激痛と奇妙な浮遊感の中で、初めて自分が今、殴られたということに気付いた。
振り子のように地面に着地すると、そのまま堪らず床に膝を付く。そして、急激な嘔吐感。

うごぉぉぉぉぉぉっっ!!

何と、床に一気に胃の中の物を全てぶちまけてしまった。胃液まで吐いたところでようやく嘔吐が止まる。

「やだ〜。軽〜くフックをお見舞いしただけなのに〜。もう、汚いんだから、お兄ちゃんは・・・くすくす。
まあ、こうなる可能性も考えて、苛めるときはいつもお兄ちゃんの部屋使ってるんだけどね〜。私の部屋を汚されたくないしぃ。」
少しは気が晴れたのか、いつもの嘲笑に戻っている。
しかし、内臓が破裂するか、胴体を貫かれそうなほどのパンチが、「軽く」だって・・・・・?
しかも、パンチそのものも全く見えなかった。今までラグビーの試合で喰らったどのタックルよりも強烈なフックだった。
不意をつかれたとはいえ、踏ん張ることすら出来なかったのだ。
多分、今のフックも充分に加減されていたのだろうが、
理子に本気で殴られればそれこそ、本当に命に関わるということが身に染みてわかった。

「これに懲りたらもう、余計なことは言わないことね。
私も、帰って来て早々、お兄ちゃんを壊しちゃったらこれからの大学4年間を楽しめなくなるし。」
そういって、またしても意識が遠のく俺を尻目に理子は部屋を出て行った。
まさか、死ぬほどの思いをして理子のタブーを学ぶことになろうとは・・・・・




つづく?





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