世界一幸せな男・21世紀の男女関係2
序章:ある昼下がりの紅茶

僕は世界一の幸せ者だ。なんたって世界最高級の美女がふたりもそばにいるのだから。
そんな僕の日常はこんな感じだ。
……………………………………………………

「剛、紅茶飲む?」
ある晴れた日曜日の昼下がり、まったりと妻がそう尋ねる。
「つよし、こうちゃ、のむ?」
そう妻の口調を真似て言うのは、4歳になったばかりの娘だ。プールで泳ぐのが好きな娘は真っ黒に日焼けしている。
「うん、ダージリンがいいな」
オレがそう応えると、妻はまもなく紅茶を入れてキッチンから出てきた。オレはリビングでスポーツ新聞を読んでいた。
いま家族3人はスポーツジムから帰ってきたところだ。妻は娘と日曜日の親子水泳教室に参加し、オレは今日はマシンをやってきた。
「この子、やっぱり水泳の才能があると思うわ」
妻は満足そうにニコニコしている。オレは「そうか」とややこわばった顔で答えた。
「娘の成長が嬉しくないの?」
「い、いや嬉しいよ、もちろん」
そういってオレは寄ってきた娘の頭を撫でてやる。娘は褒められたことを嬉しそうにオレの足元にゴロリと寝転がったかと思うと、あざやかにでんぐり返りした。
「そんなことしたら、パパが紅茶こぼしちゃうでしょ。ほら、プールで泳いできたんだから、そろそろお昼寝しなさい」
妻がそういうと、娘は自分の部屋に戻っていった。

オレがゆっくりとマグカップの紅茶を飲み干すと、それを見計らったように妻がつぶやく。
「ねえ、いま疲れてる?」
オレは正直、疲れきっていたので、まだスポーツ新聞を読んでいるふりをした。するとその新聞を奪って放り投げた妻は、黙って寝室のほうに歩いて行った。
妻がこうしたときはおとなしく従ったほうがいい。以前に無視して、ひどく機嫌を損ねられたことがある。そうすると後が大変なのだ。
それにしても、なんというスタミナなんだ。妻はいましがた、スイミングスクールで娘と一緒にたっぷりと泳いできたばかりなのに…。4キロも泳いできたと言ってたのに…。
そう思いながら、ゆっくりと薄暗い奥のベッドルームに行くと、ベッドのうえから、
「早く!」
とせかす妻の腕が伸びてきて、グイッと強い力でオレを引っ張る。
オレを軽く引き寄せられる妻の腕力。オレは引っ張られるままに、ダブルベッドの妻の隣に横たわらされた。
そして妻が上にのしかかってくる。
モデルのような長身の妻のスラリと長く、引き締まった魅惑的な脚が、オレの身体にまとわりつきはじめた………。

オレはこうして何の変哲もない普通の夫婦生活を送っている。年下の妻のほうがケタ違いに多い年収がある以外は。
だがこれはオレと妻の話ではない。じつはオレと4歳年下の妹の話なのだ……。


第一章 妹、恵の誕生

オレには4歳下の妹がいる。
妹は、1986年生まれ。今は23歳。
まずは兄妹の命名の由来を書こうと思う。
オレ、剛(つよし)。親は強くて逞しい男になるようにとの願いを込めて、この名をつけたようだ。
妹は、父親は最初、佳代子(かよこ=男性をたて、かよわいながらも可憐で愛される女性になるように)という名前がつけたかったらしい。
ところが妹は双子だったが、一緒に生まれた兄は死産だった。
妹はかろうじて助かったことから、母が、この名前に反対し、恵(この世のあらゆる恩恵を受けて健やかに育つように)という名をつけたということだった。
オレはそのときを覚えているので、小さい頃はこのちょっとかわいそうな境遇で生まれてきた妹=恵を溺愛した。
恵は喘息がちで、うちは両親とも働いていたから、小学校低学年のころはオレが良く面倒を見た。
オレは小学校の頃は勉強が出来て、クラスの人望もあり、運動もまあまあの優等生だった。
自分のことばかりでなく、家族のことを見回す余裕もあった。
そんな恵もやがて小学校に入学。妹は近所でも有名な美少女だった。
勉強はそれほどではなかったが、算数だけは得意だった。算数はオレが勉強のコツを教えてやったから、学校の授業は簡単だといっていた。
また恵は球技が得意で運動神経はいいようだったが、あいかわらず夜になると喘息が出てしまうのであまりはげしい運動は好まなかった。
それでもドッジボールなどでは、上手にボールをキャッチして強い球を投げるので、そんなに動かなくとも勝ってしまい、よく男子を泣かすほどお転婆だったようだが、兄妹でけんかをしても4歳も下なので、オレはいつも、じゃれ合う程度にあしらっていた。


(つづく)





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