続・やきもちアマゾネス その1 

 菅生さんの太腿で気を失った僕は、様子を見に来た友達に助けられつつ、経過報告をしました。

 「・・・間違いない。菅生は絶対お前に気がある。」
 そう断言する友達。さっきの菅生さんの表情を見た僕には、もう反論する気は失せていました。
しかし、まだ僕にはどうして良いか判りませんでした。

 「でも、急に告白したって、本気にしてもらえないんじゃないかな・・?」
 「・・・それは言えてるな・・・」
 僕の反論に、しばし考え込む友達。しかし、しばらくすると何か思い付いたらしく、目を閉じて集中します。

 「・・・これならどうかな?・・・」
 そして、友達はひそひそ声で、作戦を教えてくれました・・・


 それから三日後 

 今日は金曜日。友達の作戦を聞いてからの3日間、僕は意識して女子とかかわらないように注意し、
同時に折を見て菅生さんの反応を観察するようにしました。
 最初のうちはこの変化に気が付かなかった菅生さんも、2日目の昨日になると明らかに僕に注意を払うようになっていました。
何しろ1日中ずっと僕を視界に収めていて、僕と目が合うと彼女の方が目を逸らすようにさえなりました。
明らかにいつもの菅生さんと違う様子でした。

 もう一つ意外だったのは、菅生さんをよく観察すると、確かに友達が言うように彼女は中々の美人だったことです。
アイドルというよりは美人アスリートの健康美ですが、友達が言うように平均よりかなり上は行くと僕も思いました。
昨日は目が合ってしまったので、それを理由にまた締め上げられるかと思ったけれども、なぜか無事に帰宅できました。

 今日も授業中、何度か菅生さんと目が合いましたが、今日は友達のアドバイスを思い出して無理やり笑顔にしてみたところ、
菅生さんは慌ててそっぽを向いてしまいました。
 (・・・怒らせちゃったかな?・・・)
 心の中で震えながらも、怖がらずに菅生さんの事を笑顔で見つめるように頑張りました。

 そしてその日の放課後、自宅が少し離れている僕は自転車置き場に行くと、3日ぶりに菅生さんが待っていました。
僕が自転車通学なので、菅生さんはいつもここで僕を待ち伏せて、人気の無い場所に連れ出して痛めつけるのです。
 (・・・これも失敗だったのか・・・)
 絶望感と戦いながら、僕は最後の勇気を振り絞ってゆっくりと近づく菅生さんを笑顔で見上げ、
声が震えないよう気をつけて口を開きました。
 「菅生さん、こんにちわ」

 ここで予想外の事が起こりました。僕の目の前まで来ていた菅生さんの動きがピタリと止まったのです。
身長が160cmにも満たない僕の目は、菅生さんの大きな胸の辺りの高さになります。
ウェアを通してでも、菅生さんの胸が大胸筋と乳房の二段構造になっているのが判りました。
 と次の瞬間、僕の身体がフワリと浮く感触とともに、菅生さんの顔が目の前に現れました。
3日前の時と同じく、顔をやや赤らめていました。
 『あんた、何のつもりなのよ?昨日から私のことジロジロ見てて・・・』

 ついに、菅生さんからいつもと違う反応を引き出せました。でも、ここで焦ってはおしまいです。
友達の作戦を必死で思い出しながら、僕は答えました。
 「・・・あれから、ずっと菅生さんの言ったとおり考えてみたんです。」

 さすがに僕の顔も声も少しひきつってしまいましたが、菅生さんは気づかずに、
 『・・・で、そのチビ頭で何を考えたの?』
 と聞いてきました。

 「・・・どうして菅生さんが僕の事をそんなに気になるのか・・・です。」
 少し落ち着きを取り戻した僕は、ようやく平常に近い声と表情に戻りました。

 『・・・そ・・それで?』
 かえって菅生さんの声が少し上ずって来ました。いよいよ運命の瞬間です。
僕はこの3日間考え続けた答えを、菅生さんに告げました。それは・・・

 「それで・・・考えているうちに、今度は菅生さんの事が気になるようになってしまいました。
  怖いという気持ちよりも先に、なぜだろうという気持ちが大きくなってしまい、
  いつも菅生さんの事を見るようになりました。」
 菅生さんに軽々と持ち上げられたまま、僕はじっと反応を待ちました。

 『・・・・・・・・』
 「・・・・・・・・」
 しばし無言で僕の事を見つめていた菅生さんが、次の瞬間はっと我に帰りました。
僕の背中と腰に彼女の太い腕が回り、あっという間にベアハッグの体勢を決められました。
思わず目を閉じる僕。でも恐れていた締め付けがやって来ません。

 恐る恐る目を開けると、菅生さんが意地悪そうな笑みを浮かべていました。
 
 「あら、怖いより先になぜだろうという気持ちになったんじゃなかったの?」
 いつもの僕の反応に戻ったせいか、菅生さんは余裕を取り戻していました。
このままではまたいつものように痛めつけられるか、
それとも今日こそは本当にペチャンコに押し潰されてグチャグチャにされてしまうかも知れません。
頭の中が真っ白になった僕は、うわごとのように何かを口走った事しか覚えていません。
 「**@#&$%#・・・」
 (・・・お母さん、先立つ不孝をお許しください・・・)

 ところが、いつまでたっても僕の身体は無事でした。
もちろん、僕の太腿より太い菅生さんの豪腕に抱かれた僕は身動き一つできませんでしたが、
その強大な筋肉の柱は、いつものように僕を押し潰しもしませんでした。

 真っ白だった視界が晴れ、僕の目の焦点が合うと、そこには顔を赤らめた菅生さんが、僕のことを見つめていました。
 『・・・当に、私の・・・が・・好きなの?』

 (・・・ど、どうしよう・・・自分が何て言ったか、覚えてない!)
 一瞬パニックになりかけた僕でしたが、半ば反射的に強くうなづきました。

 すると、菅生さんは、これまで僕が見たことも無いような笑顔を浮かべると、
 『嬉しい!今までそんな事を言ってくれた人、誰もいなかったわ。
  みんな私の筋肉を気味悪がっていたのに・・・ありがとう!』と言うと、
思わず僕を抱く腕に力を込めてしまった・・・

 ギュウウウゥゥゥ・・・メリメリッ・・・
 「はぎゃわわあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 今度は映像が流れる間もなく、僕の意識が途切れてしまいました。


数時間後・・・

 ・・・気が付くと、僕は自宅の近所の公園のベンチに寝かされていました。
ベンチのとなりには、僕の自転車がきちんと立ててありました。
 さっき起きた事は夢だったのかと思いましたが、起き上がった時の胸の痛みは明らかに菅生さんのベアハッグによるものでした。
自転車に乗ろうとすると、ズボンのポケットに何かが入っている感触がしました。
ポケットをまさぐると、それはノートの1ページをきれいに破り取ったメモでした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 さっきは、力が入りすぎてごめんね。お詫びに、君の家の近くまで運んであげたから。
 君が、私の筋肉が好きになったなんて、いまだに信じられないけれど、
 これで君に嫌われる心配なく思いっきり体を鍛えられると思うと、凄く嬉しいわ。
 明日から合宿で、週末は会えないけれど、月曜の朝はこの公園まで迎えに来てあげるから、
 7時にここのベンチで待っててね。
                            菅生 栞

                  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 (こ、事もあろうに、菅生さんの「筋肉」が大好きと口走ったとは・・・)

 自分でも想像の外だった事態に、僕は腰を抜かしてしばらくそこから動けませんでした。


つづく





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