続・やきもちアマゾネス その2

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 さっきは、力が入りすぎてごめんね。お詫びに、君の家の近くまで運んであげたから。
 君が、私の筋肉が好きになったなんて、いまだに信じられないけれど、
 これで君に嫌われる心配なく思いっきり体を鍛えられると思うと、凄く嬉しいわ。
 明日から合宿で、週末は会えないけれど、月曜の朝はこの公園まで迎えに来てあげるから、
 7時にここのベンチで待っててね。
                            菅生 栞

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 月曜日の6時50分、僕はいつもより30分以上早く家を出ました。
5月半ばとは言え、まだ東北の朝はさわやかというには少し寒い日もありますが、
幸運にも今日は五月晴れで、文字通りさわやかな陽気です。
5分も歩かずに新興住宅地の端にある待ち合わせ場所の公園に着きました。
僕の家は住宅地から少し離れた古くからの集落にあります。高校までは5キロ弱、貧弱な僕の足でも
自転車で15分で行ける距離なのに、なぜか1時間以上前に迎えに来てくれる菅生さんの意図は、果たして何なのでしょうか・・・

 『・・ちゃんと時間通りに来たね。えらいえらい。』
 振り向くと、菅生さんが見たことも無い形の自転車に乗って、公園の入口に来ていました。
自転車は、菅生さんの怪力にも負けなさそうな頑丈な造りなのに流線型を意識したデザインで、
何よりも目を引くのは荷台の代わりに置かれているシートで、
まるで飛行機のシートの上半分だけをそのまま持って来たようなそのシートには、
飛行機と同じようなシートベルトまで付いていました。
 『・・・これから朝連なんだから、いつまでも見とれてないで早く乗って』
 という声と共に菅生さんは自転車を降りてあっという間に僕の両脇に手を差し入れると軽々と持ち上げ、
唖然としている僕を手際よくシートに座らせてシートベルトを締めてくれました。
 「・・まるで、測ったようにぴったりだ!」
 シートのすわり心地の良さに思わず声を上げてしまう僕。
すると、菅生さんはなぜか動きを止めて僕のほうを向くと、顔をやや赤らめて
 『べ・・・別に、君の寸法に合わせて特注した訳じゃ無いからね!』
 と言うと、自分のシートにサッと跨り、いきなり漕ぎ出し始めました。

 「わわっ」
 シートベルトのおかげで転げ落ちたりはしませんでしたが、菅生さんが力任せにこぎ始めると、
その加速で僕の背中は圧倒的な力でシートに押し付けられ、僕は両手でシートのアームレストをつかむと、
慎重に足がかりを探し、片足ずつフットレストに載せました。走り始めて1分程経つと、自転車は減速し、
やがて停止しました。国道に入る交差点にさしかかったのです。

 自転車が止まると、菅生さんが振り向き、
 『これから飛ばすから、しっかりつかまって』
 というと、車の流れの切れ目を見計らって、国道に入って加速を初めました。
さっきよりもさらに強い加速に、思わず目を閉じてしまいましたが、やがて加速がおさまり、
安定した動きになったので前を見ると、菅生さんは前かがみになって漕いでいて、
僕の目では巨大な太腿と尻の筋肉が目まぐるしく躍動しながら上下しています。
片方の脚だけで僕の全身より重そうなのに、それが目の前で2本動いている迫力は凄いものです。
あの間に頭を挟まれていた事を思い出し、これまで菅生さんがどれだけ力を加減していたか、改めて納得できました。

 ようやく菅生さんの脚から目を離すと、シートの目の前に液晶画面があり、現在の時刻と自転車の速度が表示されていました。

 07:02 55km/h

 僕とシートというお荷物を載せていても、菅生さんにとってはこれくらい楽勝のようです。

 ここでやっと周囲の風景に目をやると、国道を高校とは逆方向に走っている事がわかりました。
僕は、練習の邪魔になって気分を悪くされるとまずいと思い、黙々と漕いでいる菅生さんに話しかける勇気はありませんでした。

 数分後、市街地の外れにさしかかり、もうすぐ農村地帯になるところで、それまで黙々と漕いでいた菅生さんが、
 『じゃ、行くわよ』
 と言うと再び加速を始めました。加速が終わった時、僕の耳にはゴーゴーという風のうなりしか入らなくなり、速度計に目を落とすと

 07:03 77km/h

 という信じられない数字が飛び込んできました。
菅生さんの巨体が風除けになっているお陰で、僕にはあまり風が当たりませんが、
それでもシートから体を起こす事はできませんでした。

 シートに文字通り釘付けになったまま15分ほどすると、自転車は速度を落とし、国道から外れました。
標識を見て、空港へ向かっている事が判りました。
空港の手前で再び曲がり、空港の外周の直線道路に入ったところで、自転車は止まり、菅生さんが再び振り向きました。
道路は2km以上直線になっていて、車どころか人の気配すらありません。
 『これからが朝錬の本番よ。速度計をしっかり見ててね』
 そう言うと菅生さんは再び前屈みになり、両脚にぐっと力を込めました。
それまでも人間離れした太さを誇っていた大腿がさらに一回り大きくなったと見えた次の瞬間、
先ほどとは比較にならない急加速が僕をシートに押し付けました。
みるみるうちに速度計の数字が上がっていき、あっという間に70kmを超え、さらに速度が上がって行きました。

 75・・・80・・・85・・・90・・・95・・・98・・・100!

 僕は自分の目が信じられませんでした。人力で時速100キロという数字が実現できるなんて、
自分で体験してなければ絶対に有り得ないと言い切っていたでしょう。
しかも菅生さんはその速度をその後1分近くキープし続けたのです。
やがて自転車は急激に減速して止まり、私の身体は今度はシートベルトに押し付けられました。
自転車が止まった時、それは直線道路の反対側、出発点から2500m以上離れた地点にいました。

 『な・・何キロだった?』
 さすがの菅生さんも少し息が上がっているようです。
 「ひゃ・・百キロちょうどでした」
 それを聞いてしばらく考え込んだ菅生さん。
 『シート込みで50キロ重くなったし、空気抵抗も増えてるから、
  スピードダウンは想定してたけど、5キロダウンならまあまあかな。来月には元の
  スピードに戻れるよう鍛えなくちゃ』
 「ら・・来月って・・・これからずっと・・」
 『もちろん、毎日迎えに行くわよ。自転車通学だったんだから、合羽も持ってるでしょ?
  もっとも、雨の日は危ないからスピードコースじゃなくて坂道コースにするけど・・・
  あ、そろそろ次のダッシュの時間よ』
 というと菅生さんは自転車をUターンさせ、再び猛ダッシュを開始しました。

 目が回るような猛スピードに気を失いそうになりながら、必死で速度計を見続けていると、
速度計の数字が100と101の間を行き来するようになりました。あっという間に反対側にたどり着いて停車すると、また
 『こ・・今度は何キロだった?』と聞く菅生さん。
 「ひゃ・・・100キロと101キロの間を行き来してました」
 『そう・・じゃ、今日はあと1往復してから学校に向かうから、
  気絶しないでしっかり速度計見ててね。最後まで頑張ったら、ご褒美あげるから』
 というと再び2.5キロダッシュを開始する菅生さん。

 結局、3回目は101キロを安定して出した菅生さんでしたが、4回目は流石に少し疲れてきたのか99キロ止まりでした。
でも時速100キロ以上で5分は軽く走れる訳ですから、原付じゃ逃げ切れる訳がありません。
 『はぁ・・はぁ・・スピードが落ちた分、インターバルが取れないから、
  久しぶりにきつい運動になったわ。細谷君のお陰ね』
 2往復目を終えた菅生さんは、そのままゆっくりと漕ぎ続けましたが、
国道に向かわずに、人気のない林の中の道に入って行き、後ろを振り返って僕に話しかけてきました。
 『この道はあと10分程度林の中よ。これからクールダウンだからゆっくりと走るから、
  シートベルト外して、好きなだけ私の筋肉を触っていいからね。
  これが気絶しなかったご褒美よ』
 と言うと、わざと30キロ程度のスローペースで自転車を漕ぎ続けました。

 (筋肉を触っていいって・・・あ、そうだった!・・筋肉が好きって言ってしまったんだっけ!?・・・)
 僕はシートベルトを外して、上半身を前に乗り出し、菅生さんの驚異的な下半身を観察しました。
 ダッシュをしたせいでパンプアップされたのか、行きよりふた回り大きくなった菅生さんの脚には、
筋繊維の束や血管がくっきりと浮き出ており、ゆっくりと漕ぐ度にモリッモリッと力強く動いていました。
 意を決して、僕は太股の裏側の大きな筋肉の束に左手を当ててみました。
うっすらと汗に覆われた菅生さんの肌は熱く火照っていて、筋肉の動きが伝わってきました。
今度は両手で太腿の一番太い辺りを挟んでみました。横幅が僕の肩幅とほぼ同じにふくれ上がった筋肉の柱は、
当然僕の胴回りよりはるかに太く、ゆっくりとペダルを漕ぐ度にモリッ、グリッ、とした感触が
両手に伝わって来ます。僕はゆっくりと腰をシートから浮かせ、脚の付け根に向かって両手を少しずつ上げて行きました。
すると、急に脚の動きが止まり、菅生さんが振り返りました。
 『言っとくけど、筋肉以外の所を触ったら、責任とってもらうからね』
 (筋肉以外って・・・どこ?)

 一瞬、意味が判らず考え込んだ僕ですが、ふと見上げると、目の前には菅生さんの股間があり、
僕の手は彼女の大事な部分から10センチ以内に近づいていました。
僕は慌てて両手を離し、今度はそれを両方のお尻の筋肉に当ててみました。
脚と違ってあまり上下には動かないので、筋肉の動きがよりはっきりと伝わってきますし、
シートから腰を浮かせた僕は、両手でお尻をしっかりとつかんで自分の上体を支えられるようになりました。
僕の頭より明らかに大きなお尻の筋肉は、僕の体重など意識せずとも支えられるでしょう。

 僕の動きを感じた菅生さんは、また前を向きましたが、次の瞬間

 キキキッ・・・ボスッ・・・ムギュウ・・・

 突然の急ブレーキに、前屈みになっていた僕の顔は菅生さんのお尻の谷間にめり込んでしまいました。
同時にシートから飛び出した僕の下半身は前方に投げ出され、
反射的に腰を浮かせた菅生さんのふくらはぎが僕の膝の辺りを強く
挟み込まなければ、そのまま自転車から落ちてしまったでしょう。
 僕の視界は真っ暗になり、鼻と口は菅生さんの股間を覆う生地に押し付けられて呼吸が満足にできなくなりました。
息を吸うと汗とは違う酸っぱい匂いで頭がクラクラしました。脱出しようと腕に力を入れた次の瞬間
 『ダ、ダメェェ』
 という声とともに顔面を物凄い力で挟みこまれた僕は、声をあげる間もなく悶絶してしまいました・・・

 ・・・気がつくと、僕は保健室に寝かされていました。時計を見ると8時20分、もうすぐ朝礼です。
ベッドの脇に僕の鞄があったので、僕はベッドから起き上がりました。
するとガラッと扉が開き、制服姿に着替えた菅生さんが入ってきました。
菅生さんは無言で僕を抱き上げると、片手で起用に上履きをはかせ、そのまま片手に僕を抱き上げ、
もう片方の手に僕の鞄を持って早足で歩きだしました。廊下や階段で無数の視線を浴びながら、
菅生さんは少し顔を赤らめつつも教室まで僕を抱きかかえて行きました。

 教室に入ると、それまでのざわめきが一瞬で静まり返ってしまいました。
クラス全員の視線が、菅生さんに抱き上げられた僕に集中しています。
菅生さんは、ゆっくりと僕の席まで歩き、鞄を机の上に、そして僕を椅子の上に優しく下ろしてくれました。

 『さっきは急ブレーキしてごめんね。いきなり猫が飛び出して来たの・・・』

 そういうと、ひそひそ声で
 『シートベルトしてないの判ってたから、とっさに挟んだんだけど、変な所
  に顔が当たったから、力が入っちゃって・・・』

 といって、赤ら顔で自席に戻っていきました。

 クラス全員の視線が僕に集中する前に、始業ベルが鳴り出しました。

 これで、全校中が僕と菅生さんが付き合いだしたと思い込む事は確実になって
しまいました。


つづく





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