とある昼休み、智恵理はいつものメンバーと雑談を楽しんでいた。ファッションからアイドル、また年頃の女の子が気になる性の話しまで
様々なトピックで盛り上がる。

そんな中桃子が会話に割って入ってきた「智恵理ちゃん!私最近かなりパワーアップしたんだよ。ちょっと力比べしようよ」
無邪気な桃子は他意はなく自分の力が最強の智恵理に通じるか試したかったのだ。

確かに最近の桃子は智恵理に負けず進化が続いている。ジムでのハードなトレーニングに加えプロのアドバイスによる食事管理、
桃子のジムでは彼女に力比べの類いでかなう者はいなくなっていた。
外見も身長と豊満な胸以外は智恵理に劣らずの太さと筋密度である。
先日のプールではグラマラスな女子陣や鋼の腹筋の水谷に目線がいっていた男子を一時的に釘付けにしたのは桃子であった。
グラマラスな女子達と違い巨体な胸筋が形作るスクール水着の膨らみが凄かったのだ。
そして逆三角形の背中と割れた腹筋もこれぞと言わなんばかりに存在感がある。
背筋なんて水着に収まりきれずにハミ出してるほどである。
そんな桃子との勝負を智恵理が逃がすはずがない。パワーの頂点は自分だと認知させる良い機会である。
しかし、ふと智恵理は面白い企画を閃き桃子に提案した
「じゃ勝負してもいいけどその前に私この前高校のアメフト部の助っ人でケガしてさ、今週は柔道部の助っ人あったんだけど厳しいから桃子ちゃん代わりに助っ人してきてよ。
姉を通して話しはしとくからさ。」とケガなどしてない智恵理は嘘をつきだす。
しかし一方の桃子は「やりたい、やりたい!私頑張って優勝してくるからね」と微塵も疑わない。
この無邪気さこそが桃子の長所なのだ。

そして放課後、桃子は智恵理と共に道場へ
道場にはデカくて強面の部員が沢山いる。しかし智恵理を見るやいなや「智恵理様が来たぞ!」
「モタモタするな整列だ!」と慌てだした。
実は比較的フレンドリーにしていたアメフト部と違い最初に舐めた態度を智恵理にとったので智恵理に地獄をみせられていたのだ。
「助っ人する予定だったけどケガしたから助っ人の助っ人を連れてきたわ。クラスメイトの桃子ちゃんよ。挨拶しなさい!」
智恵理がそう言った瞬間1人の部員が「冗談でしょ!智恵理様と違って身長も低いこんな子助っ人にならないっすよ」
確かに桃子の身長は170センチ、柔道部員は平均180センチはあるから確かに小さい。
すると智恵理は「あんた前に出なさい!そう思うなら桃子ちゃんと勝負しなさい。」と言い
桃子には「最初に力を示したらあとは楽だからあいつには一切加減しないで叩き潰してね」
無邪気な桃子は笑顔で「うん!頑張る」と答えた
といっても桃子はド素人。どんな技をするのか見ものである。
始め!!!
試合が始まる

桃子は智恵理の助言通り全力で叩き潰しにかかることにした。
組み合った瞬間相手の手を弾き帯の辺りの道着を片手で掴んだ瞬間

グワー!!

なんと片腕で相手を持ち上げてしまった。しかも相手は重量級である。
「私力持ちなんだよ」と笑顔の桃子「ちなみにお兄さんはベンチ何キロ挙げるの?」持ち上げられてる部員に笑顔で問いかける。
部員はわざと答えなかった。すると「ねー何キロ・あ・げ・る・の?」と片腕で持ち上げてた相手を激しく揺さぶり出す。
恐怖で震え上がる部員達。そして軽口をたたいたことを激しく後悔する部員。そして腕力も驚くが激しく揺さぶりながらも掴んでる部分は一ミリもブレない。
脅威の握力である
声を震わせながら「95キロだ……いや95キロです」とどうにか答える部員
そうすりと桃子は笑顔で「お兄さん私の半分も上がらないじゃん。ひ弱だね」と言い
そっと降ろしてやった。そのあと桃子はおもむろに道着を脱ぎ出し下着姿になった
部員達は桃子の肉体に驚愕する。こんな子にかなうはずがない。みんなが心底感じた。

そして桃子は「まだやる?」と笑顔で問いかける
「めっそうもございません」部員達はすでに調教が完了していた


自らを実力で認めさせた桃子は大会前の何回かの練習で更に部員の忠誠心を高めていた。
別に難しいことではない。単にウエイト時に部員が挙げるのは到底無理な重量を使ってカールしたりベンチプレスしたりスクワットしたりデッドリフトすればいい。
部室にあるジャンプやマガジンやタウンページを目の前で破いたらいい。着替えの時更衣室で自らの神々しい肉体をさらけ出せばよい。
智恵理と違い恐怖政治を意識したわけではなくクラスでやるパフォーマンスを楽しむ桃子の独特の無邪気さが完全に裏目に出たのである。
だが楽しみながら相手の忠誠心を高め服従させるのだからある意味才能である。
桃子は桃子で部員が怖がっているとは知らずもう仲良しの友達と思っていた。
そして試合当日。

会場でアップしていたチームの中に桃子もいた。ウキウキして寝られなかったようだ。
団体戦では大将になり個人戦も出場する。まずは個人戦なのだが他の高校に国際大会レベルが何人かいて優勝はその誰かになるだろうと予想されていた。
無差別級に出場するので相手は超がつく重量級達である。もちろん彼らは重いし強い。
しかし桃子の筋力にかなうのかは疑問であった。

そして最初の相手は運の悪いことに優勝候補。身長183に体重が115。幼い頃から柔道しかしらない柔道エリートである。
高校生で相手になる人間は少なく大学生と練習する方が多いような選手である。
しかしこのタイプに多い欠点はモラルの欠如である。自分が強いしその世界ではチヤホヤされるので謙虚さも無くなり傲慢になる。
いつもはそれでも問題無いのだが今回はそのモラルの欠如で彼は地獄を見る。
試合前彼は桃子にわざと挑発しに来ていた。
「お前みたいなの助っ人で使って個人戦やるなんて人材不足なんだな。レベル低いしゴミだもんな」
桃子は普段無邪気だが知人を馬鹿にされるのは人一倍嫌いだった。
今回の発言は桃子を怒らせるのには充分過ぎた。
「お兄さん試合までまだ時間あるしちょっと表に出ようよ」
それだけ言うと桃子は外に歩き出した

ひと気の無い会場の裏で桃子は「お兄さん強いんでしょ?じゃちょっと握手しようよ」と言い右手を差し出す。
相手はよく状況が理解できなかったがとりあえず右手を差し出す。
ガシ!握手した瞬間「う…うう!」桃子の怪力に握り潰されそうになりうめき声をあげる

必死に握り返すがまるで通用しない。
「お兄さん弱いね。こんなひ弱なくせに私や私の友達を馬鹿にしたの?……殺すよ?」
桃子が初めて殺意を顕にする。
クラスメイトでさえ見たことない無邪気で温厚な桃子の怒りである。そして普段からキレやすいタイプより全く怒らないタイプが怒ると怖いのは世の中の定石である。
メキメキ!メキメキ!力を込め握ると相手は地面に膝をついて苦しみだした。そして恥は承知で握られてない片手も使い
握り返し反撃を試みる……が、「お兄さん両手使ってもかまわないけど逃がさないよ。試合あるから骨折はしないようにするけど」
両手を使っても全く状況は変わらない。
桃子は「お兄さん柔道の世界では少し有名かもしれないけど他の世界では無名なんだよ。現に私はお兄さんより身長低いし体重も軽いし技も無いけど
純粋な力だけで倒せるし。もちろん柔道だけでなく喧嘩でも。ちなみに私のクラスメイトにはお兄さん程度なら片腕でやれる子いるよ。」
と言った次の瞬間握ってない方の腕で相手の道着をテキトーに掴むと持ち上げ宙に浮かし振り回し出した。
「もちろん私もお兄さん程度なら片腕でいくよ。もっとも試合では全力でいくけどね」
と戦意を失った相手の戦意をさらに刈り取る
地面に降ろすと「試合が楽しみだね」とだけ言い会場に戻っていった。
男は後悔と共に初めて自分の弱さを痛感した。

試合では必死の抵抗も虚しく桃子の怪力の前に倒され絞め技で勝負がついた。もちろん倒したのも絞めたのも技より筋力によるものが
大きいのは言うまでもない。

そしてあっさり優勝してしまった


おわり





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