最強!レベル1勇者パーティ

【まえがき】
ファンタジーRPGを体現したような、ベルンダ王国を舞台とした物語である。

勇者ケルト
性別:男性
レベル:1
力:3
素早さ:2
器用さ:2
耐久力:4
魔法力:4
知恵:5
特殊:意思疎通、第六感

魔術師ベル
性別:男性
レベル:1
力:18
素早さ:1
器用さ:3
耐久力:14
魔法力:20
知恵:4
特殊:食事召喚

勇者学校。それは剣と魔法の両方をマスターするエリート学校である。
その卒業生ケルトは最下位の成績で卒業した。
皆、ケルトには見向きもしない。唯一幼馴染だったベルが仲間になっているだけだ。
ケルトの虎の子の魔法は「意思疎通」。
モンスターだろうが、未知の生物だろうが会話が可能である。
同期の卒業生はファイアーボールやらサンダーボルトやら派手な魔法、
そして傷を癒すヒーリングなど「使える魔法」をたくさん憶えている。
ケルトの剣技も身長160センチそこそこの貧弱な体から繰り出すレイピアは殺傷力皆無。
一方相棒のベルは身長180センチで筋骨隆々。とても魔術師には見えない。
魔術の真髄は「無から有を生み出すこと」。
彼もまたステーキやらサラダやらを生み出す「食事召喚」の魔法を一つ覚えているだけだ。
魔術師学校で体育以外はまるでダメという成績で、結局ダメ同士が旅をすることになった。

【出会い】
「あーあー、僕たち全然レベルがあがんないね。」愚痴をこぼすケルト。
「しゃーねーだろ、唯一成功したミッションが『手紙を渡す』だけなんだから。」
そう、彼らは満足いく仕事が全くできていなかった。
ゴブリンの討伐にも挑戦した。しかし、勇者ケルトの「第六感」が敗北を予感させたため敵前逃亡。
勇敢ではないが恐らく正解であっただろう。ケルトの第六感の的中率は99%というくらいだ。
ともかく仕事のできない彼らはお金がない。装備品もろくになければ、泊まる宿もないのだ。
ただし、ベルが食事を召喚できるので、ただ食べて生きていくことだけは可能である。
このままレベル1のまま一生を終えるのか。そんな事を考えながら街道を進む。

すると・・・
黒い物体が大量に散らばっている光景が遠くに見えてきた。
「なんだ、ありゃ?」
「行ってみようよ。僕の勘だと・・・良い事が起きるよ」
だんだん近づいていくと、それは黒い鎧を着た人間たちであった。
ベルンダ王国の正規兵たちである。だが、全員横になっている。
そして近づくにつけ、恐ろしいことが分かってしまう。
「うわっ!?」戦慄を覚えるベル。
「し・・・死んでる・・・」
ケルトたちが見たもの、それは人間の形をしているとは思えない死体の数々だった。
頭のないもの、腕のないもの。ほとんどの死体は鎧がベコベコに凹んでいる。
仮にも正規兵の鎧だ。そう簡単には潰れない。
「何が良い予感だ。こんな凄い殺され方されるってことはおっそろしい怪物・・・」
ベルが言い終わる前に、その物体に気付いてしまう。
巨大な人っぽい者がしゃがんでいる。うつむいているので顔も見えない。
しかも全裸である。

【大正解】
「お・・・・おい、あれはオーガーじゃないか?」大量の死体発見の直後に巨人っぽい者を発見し焦るベル。
「いや、違うよ。」ケルトも声が震えている。
そして巨大な者が顔を上げる。
「お・・・女!?」
じっとこちらを見る顔はまさしく女。しかもとびきりの美女。
全裸とくればまさにラッキーと言えるが、一つ普通と違うのはその肉体だ。
腕も足も筋肉がはちきれんばかりに盛り上がっている。
腕はスイカを埋め込んだような上腕2頭筋を筆頭にゴツゴツと隆起している。
足もケルトの胴回りよりはるかに太い。
そして女は立ち上がる。ケルトの1.5倍・・・240センチはある。
その体は不思議な光沢を放っており、オイルがまとわりついているようだ。
褐色の肌がキラキラ光っている。
「こ・・・・殺されてたまるか!」
ベルは大剣を抜こうとする。この男は魔術師のくせに、そして不器用なくせに大剣を使う。
「待った!」それを慌てて制すケルト。
「君・・・どうしたの?」唯一の得意分野、意思の疎通で確かめる。
すると女はびっくりしたような表情を浮かべる。
「は・・・話ができるの?」
「うん。」とにかく警戒させないようにニッコリと笑ってみる。
全裸の筋肉女だけに目のやり場に困りながら・・・
「お・・・おなかすいちゃった」
これだけの威圧感のある体でありながら、再びヘナヘナと座り込む。

【ソラ、誕生】

戦士ソラ
性別:女性
レベル:1
力:7846235948726345(約7800兆)
素早さ:2
器用さ:1
耐久力:4531289457259(約4兆)
魔法力:0
知恵:1
特殊:オイル風コーティング

「まったく・・・良く食べるぜ。こりゃ召喚するかいがあるってもんよ。」
ベルは何回目かのステーキの召喚を行っていた。
最初こそ、警戒していた女であったが、話が通じる相手という事もあり、ベルの召喚した肉を口に運ぶ。
そのあとは速かった。次から次へと食べ物を運び、今に至る。
どのくらい食べたのであろうか?
ふうっと息を落ち着かせると、ケルト相手に土下座をしはじめた。
「ありがとう!ワタシ、おなかすいて死んじゃうかと思った!この恩絶対忘れない。そしてワタシを連れてって!」
目に涙を浮かべてのこの台詞。よっぽどひもじかったのだろう。
「まず・・・君の名前は?」
「分からない。」
「どっからきたの?」
するとスッと上を指差し、天空を指差した。
「おい、こいつ何て言ってんだ?」2人のやりとりは分からないベル。
「空から来たんだって。」通訳するケルト。
「じゃあよ・・・名前は「ソラ」で良いんじゃないか?どーせ分かんないんだろ?それと素っ裸じゃこっちが恥ずかしいぜ」
そう言いながら正規兵の遺体から布を調達しはじめるベル。

「ワタシの・・・ワタシの名前はソラ。」

【想像の通り】
「と・・・とにかくココを離れよう。」
ケルトはこの場を離れた方が良いと思ったのである。
想像したくないが、恐らく的中するであろう予想。
つまり、目の前に広がる100を超える死体とソラの関係だ。

急いでその場を離れ、半日をかけて移動する。
今日は街道から少し離れてテントを張る。
「ソラは大きいけど、僕らのテントも大きいでしょ?
ハハハ・・・僕ら2人しかいないけどさ、いつかきっと仲間が増えると思って大きいのにしたんだ。」
ケルトの言うとおり、6人用のテント。これならソラの巨体も入る。
「その・・・さ。聞いても良いかな?あの・・・黒い鎧の人たちのこと。」ついに本題に切り出す。
「ワタシ、空から落ちてきたの。体もぶつけて痛かった。服も多分着てたと思うんだけど・・・燃えちゃった。」
とてもウソをついているような目ではない。
「あとは全然憶えてないの。ここがどこかも分からない。どっちに行ったら良いかも。そうしたら、黒い人たちが来たの。」
まさにココまではケルトの予想通りだ。最悪のタイミングで軍隊に遭遇したのだろう。
「あの人たち、いきなり襲ってきたの。」
そりゃこの体格。ケルトたちもオーガーと見間違えた程である。
「軽く払ったつもりだったんだけど・・・頭が無くなってた。脆いね。」
ココから先も、お話的には何の捻りもなかった。
一人殺された軍隊は「本気で潰しに」かかり、そして「潰された」。
正規軍の誇りを持ち、誰一人逃げることなくソラに立ち向かい、その豪腕で殺されたそうだ。
やはりあの場を立ち去って正解だった。
兵士は全員死んだようだが、大量殺戮の惨劇を見たものが他にいたかも知れない
こりゃ当分街には入れないな・・・でも今までもそうだったし、仕方ないか。
そう、仕方ない。仮にソラを捕まえて町の軍隊に引き渡そうとしたところで、
まず引き渡せないか、もしくはその町の軍隊が全滅する。
ケルトには仲間にする以外の選択肢はなく、しばしの間の放浪も仕方のないことだった。
とにかくほとぼりが冷めるまで半年といったところか。
「でも、ケルト達は襲ってこなかった。しかもご馳走してくれた。ワタシ、ケルトの言うこと何でも聞くね!」
一通り正規兵との戦いを説明した後、笑顔でケルトに忠誠を誓うソラなのであった。


 つづく





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