最強!レベル1勇者パーティ

【初戦】
出会って1ヶ月が経った。
ケルトが丹念に教えた甲斐もあり、すっかり3人の中で日常会話は問題なくなっていた。
「いつもありがとう!」
「おおよ。俺らの間じゃ初の仲間だからな。」
ベルの食事に舌鼓を打つソラ。最初こそ緊張感があったが、今ではすっかり仲良しになる。
全く相手にされなかったケルトとベルだけに、得体が知れないとは言え、ソラの加入は喜ばしい事でもあった。
正規兵の大量殺人犯であることは間違いないが、正当防衛とも言える気がするので、2人は深く考えないことにした。
とにかく顔は美人。目の保養にも十分。
さらには羞恥心が少なめなのか、そもそもそう言う他の星から来たのかずっと半裸でいる。
戦闘能力は計り知れないところがあるが、性格は素直で明るく一緒に居て気持ちの良い美女である。

「来た!!」平和の時間はいつも突然乱される。見張りだったケルトの声がする。
1ヶ月間、奇跡的に何者にも遭遇せずやってきたが、ついに怪物と遭遇してしまったのだ。
ケルトは2人の元へ。そしてやってくる怪物を迎え撃つ。
醜い巨大な食人鬼。オーガーだ。
「くそっ!ついてねぇな。勝てるのか・・・俺達。」
「僕とベルだけならエサになるしかないんだけど・・・・ソラ、あいつらやっつけられる?」
一応、2人はソラを庇うように前に立っていたが、迫り来るオーガーの迫力に膝が笑っていた。
「コテンパンにして良いの?」
さっきまで無邪気に可愛らしい笑顔で食事をしていたソラは、急に無表情になる。
黒い綺麗な瞳に殺気が立ったようにすら見える。
「うん・・・頼むよ。僕達が食べられちゃうんだ。」
黙ってスッと前に出るソラ。オーガーは3mあって上背はソラを上回るが、手足の筋量はソラがかなり勝っているように見えた。

オーガーの手持ちの武器は石の棍棒・・・というより、何の細工もしていない棍棒の形の石だ。
「ヒヒヒ・・・肉付きの良い女だ」・・・ケルトにはオーガーの話す言葉さえ伝わってくる。
「死ね!」
オーガーがソラに棍棒を振りかざす!フルスイングだ!
「な・・・・!!??」
普通の人間ならば受けた途端に絶命確定の攻撃をソラはあっさりと受け止めたのである。
ビシビシ・・・パラパラ・・・
そして脅威の握力で石の棍棒を握りつぶし、さらには棍棒を手にしていた右腕をさっと掴み、あり得ない方向に折り曲げてしまった。
「ぎゃあああああ!!!」
どう考えても骨が木っ端微塵になっている。何の抵抗も感じさせずにソラはオーガーの太い腕を折ってしまった。
「ワタシの相手をするにはトレーニングが足りないよ。」
口元がわずかに緩み、並びの良い白い歯を見せる余裕綽々のソラ。
そこへ一瞬のことで動けなかった、腕を折られてない方のオーガーが我に返り、ソラへ突進する。
ソラは全く動じることなく、存分に筋肉が隆起して血管の浮き上がる足を繰り出す。
ローキック。ソラの一撃はまさにオーガーの両足を「刈り取った」。
比喩ではなく、襲い掛かったオーガーの膝から下が突然なくなってしまったのである。
地べたにはいつくばるしかなくなったオーガー。
そんなオーガー「B」は放っておき、「A」へスタスタと向かうソラ。
ボゴォ!
軽くボディを抉るパンチ。驚くべきことにソラは手加減しているようだ。
ドゴ!ボグ!
「まずは全般的に叩きます。」
淡々と殴る殴る。その一撃一撃も強烈で、内臓を確実に破壊し、肋骨も粉砕していく。
この時点ですでに致命傷に近い。
連打を辞めると倒れこむオーガー。
そこへ・・・足を取り絡ませる。4の字固めだ。
「逃げられないように粉々にするねっ」
一瞬だけソラの足の筋肉が膨らんだように見え、宣言通りに「A」の足の骨は粉々になった。

「あと腕ね」
そう無慈悲に言うと、先ほど折っていない左腕をとり、テキパキと腕ひしぎ十字を極めてしまう。
「記憶ないんだけど・・・体が戦い方を覚えてるみたい。」
そう呟きながらぐっと足と背筋に力をいれ、オーガーの腕は逆方向にへし折られる。
最初の約束「コテンパンにしていい?」の意味を悟ったケルトは背筋が凍るのと同時にある種の興奮も覚える。
そんな気を取られるケルト、そして死刑を受刑中のオーガーの目からソラが消えた。
ベルだけはソラを把握していた。彼女はいつの間にかその場でジャンプしていたのである。
自分の身長の30倍は高々とあがったソラはそのまま自由落下し、オーガーの顔に向けてのヒップアタックを敢行した。
グシャ!
非常に硬そうな筋肉の塊のヒップ。
それをもの凄い高さから浴びたのでは堪らない。オーガーの頭部はただの地面のシミとなった。
「た・・・助けてくれ・・・」そう言う「オーガーB」の声が聞こえたケルト。
恐らく「やめ」と一言だけ言えばソラは辞めるだろう。
でも、ケルトは続きが見たくなった。我ながら変態である。
「やめ」がかかってないソラは淡々と次の処刑に取り掛かってしまう。
自分の体より大きいオーガーをあっさりと担ぎ上げ、アルゼンチンバックブリーカーの体勢に持っていく。
一瞬だけ上腕2頭筋が盛り上がったように見え、そしてバギっという背骨の折れる音。
真っ二つにならなかったのはやはり力加減をしているのだろうか。
続いてバックから両腕を取り、フルネルソンに捉えると肩・腕が簡単に破壊される。
「こ・・・こんな化け物にケンカ売らなきゃ・・・」ケルトにはオーガーBの後悔の言葉が聞こえる。
「ねーねー、ワタシの足逞しいでしょ?これに挟まれるとね・・・ペチャンコなの。」
背骨が折れ、膝から下はなく、肩も腕も壊されて瀕死のオーガーBは何の抵抗もできない。
フィニッシュには首4の字固め。足が太すぎるため、首ではなく頭蓋骨が割れ、脳漿を噴出しつつオーガーBも絶命した。
「やっつけたよ。ケルト」
全てが終わるとソラは爽やかに微笑んでいた。

【帰還、そしてまともな初仕事】
「・・・。」
「・・・。」
壮絶な戦いが終わった。2人とも声が出なかった。
ソラは素直な娘である。コテンパンのリクエストには完全に応えていた。
「えーっと・・・ちょっと汚れちゃったね」
そういうと全身をブルッと振るわせる。
するとオーガーの返り血やら肉片やらが体から綺麗に取れる。
ソラの体を覆っている油分には汚れをつかせない効果があるようだ。
「これくらいしか出来ないけど・・・役に立ったのかなぁ?」
「お・・・おう。凄すぎだろ。常識的に考えて。」それがベルの素直な感想。
あまりのパワーに愕然とする。それと同時に羨望と嫉妬も。
一方のケルトは恍惚となっている。ソラの美貌とその残虐な手口、そしてそんな怪獣が自分の言うことを聞いてくれる喜びに震えていた。

その後最初の予定の半年を無事にやり過ごした勇者一向はベルンダ王国の北の外れの街へ向かうのであった。
ここまで時が経てば、きっと正規兵惨殺事件の事など「モンスターの仕業」程度に落ち着いているはずだ。
道中も幸運なことに怪物には出会わない。会わないときには全く会わないモノである。
「すっげー皆見てるよ。」とベル。
街に着いたものの、巨体、凄まじいバルク、半裸と目立つ要素が満載である。
「そう?」見られても意に介さないソラ。
目立ったことで、街の見物の時間もなく、そしてこちらから頼んでもいないのに使者が来る。
「冒険者ギルドのモンです。勇者ケルトさんに魔術師のベルさん。そして・・・・あれ?」
「ああ・・・これから登録しますけど、戦士ソラです。」ケルトがソラを紹介すると、巨体を折り曲げ、ペコっとおじぎをする。
カワイイ・・・。自分の1.5倍も大きいがとにかく言うことを聞いてくれる。
ギルドの方へ向かうと黙ってトコトコついて来る。実にいとおしい。
さて、ギルドの登録もそこそこに早速仕事が入る。
王国から遠い、外れ町にはなかなか冒険者が現れず、仕事が溜まっているのだそうだ。
「あー・・・これこれ。ゴブリンがねぇ、最近増えちゃって戦闘が頻発しだしたんだよ。
この前も住人が殺された。
正規軍もなかなかやって来ないしね。退治頼むわ。」
その後も、冒険者ギルドのマスターが依頼内容の詳細を説明する。相手の場所、人数、装備など。
「分かりました。引き受けましょう。」
一通り説明を聞いた後、2つ返事で引き受ける。絶対に成功する。ソラが居れば・・・そうケルトは確信した。


 つづく





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