最強!レベル1勇者パーティ

【楽して稼げ】
「おもしろーい!」
腕相撲事件の翌日である。ソラが鏡を見てはしゃいでいる。
ゴブリン退治は成功報酬のお金のほか、もう一つのボーナスがあった。
それは魔法の指輪。
「眼の色と髪の毛の色が変わるだけ」という非常に役にたたなそうなものである。
ミッション達成の時間が極端に短かった場合、
在庫整理も兼ねてこのようなボーナスがギルドから支払われる事があるのだが、
いかんせん「ゴブリン退治」という初心者ミッションのためその報酬も大した物ではない。
だが、魔法に馴染んでいないソラからすると面白いことこの上ないオモチャであり、
髪の色を金髪にしたり、赤くしたり、無意味にイメージチェンジを繰り返している。
はしゃぐソラを他所に、ケルトは次の仕事の選別に取り掛かっていた。
見ての通りソラは魔法に対する耐性はなさそうである。
という事は極力魔術師が相手のミッションは避けたい。
ケルト一行の生命線はソラであり、ソラの力がうまく発揮されるものを選べば楽勝でミッション達成。
まぐれでも良いからソラの力を借りずに敵をうまく倒せれば自分やベルのレベルも上がる。
「さて・・・どれにしようかな?」
じっくり考えた末、出た結論は「アンデッド退治」。
ゾンビやスケルトンが町外れの墓場に出没するらしい。
「ゾンビって事はよ、ネクロマンサーが背後にいるぜ。
ゾンビなんて自然発生しねぇしな。ソラが対応できるかが心配だな。」ベルが尤もなことを言う。
ソラとの腕相撲で自尊心を完膚なきまでに打ちのめされ、一晩しょげていたが、
逆に負け過ぎた事で吹っ切れたのか、ソラの事を第一に考えるようになったらしい。
できればオーク、オーガー、ゴブリンあたりの力任せな相手を選びたかったのだが、
そうそう都合よく仕事があるものでもないのである。

【苦手なものは苦手】
さらに装備品・・・とは言ってもソラのビキニだけだが・・・を新調し、夜に備える。
「ねむくなーい。なんで夜なの?ぞんびってなに?」
「良いから黙って寝ろ!今度の相手はなぁ、夜にしか出てこねえんだ。」ベルは説明がめんどくさかったのか適当である。

そして夜になった。静寂が包み込む漆黒の夜空である。
ベルの持つたいまつが辺りを照らしている。
この町の冒険者ギルドは非常に優秀であった。
まさに指定した時刻、場所であっさりと地面が盛り上がり始める
「来そうだね・・・よーし、ソラ。今から怪物が地面から出てくるから思う存分粉砕して良いよ。」ソラへゴーサインを出すケルト。
すると出てくるゾンビ・スケルトンの群れ。ゾンビの腐りかけた肉がたまに崩れ落ちる。
「キ・・・・・キャーーーーーー!!!」
突然の悲鳴。その悲鳴の主はソラだった。
「き・・・気持ち悪いーーーー!」
無表情な殺戮モードから一気に恐怖モード?へと変わってしまうソラ。
美人の顔が台無しなくらい崩れてしまっている。
「え・・・・えっと?・・・ソラ・・・ほら、戦わないと。」焦るケルト。
同時に頭をかかえるベル。ああ・・・あの時ゾンビの何たるかを説明しておけば・・・。
「無理〜〜〜〜〜!!」
そう言うと、らしくなく後ずさり、そして逃走である。
「えー・・・・じゃ・・・・そ・・・そゆことで退却!!」主力のソラがこれでは勝負にならない。
少しでも自分たちが戦えればソラの苦手分野でもミッションができるのに・・・
情けなさに腹を立てながらの退却劇となった。
ふとケルトは思う。このパーティはアンデッドに対抗しうるもの、すなわち神官がいない・・・と。

【策士ケルト】
痛恨の失敗であった。
上がりかけてた名声は一気に地に落ちる。一発屋で終わらないためには2回目の仕事が最も重要なのだ。
それを分かっていて、しかも仕事を吟味しての失敗。
敗因は相手の情報をキッチリ我らが主力に伝えていなかったことだ。
「ご・・・ごめんなさい」
巨体を折り曲げて小さくなっているソラ。
「良いよ。人間苦手なものもあるって。」慰めるケルト。
「そうそう、逆に俺は安心したぜ。完全無欠の方が気味悪い。」こちらは偽らざる本音のベル。
真にささやかではあるが、彼女に勝てるものができたのが嬉しかった。
翌日、失敗をギルドに伝えると早くもギルドは単品の依頼をしなくなった。
単品とはパーティに対する仕事であり、
ケルト達は信用を失ったので何人かでやる人手が必要な仕事が来たのである。
「何々・・・新興宗教の教会襲撃。定員100名・・・か。妖しげな思想をまく集団の根絶。相手は25人程度。」
「しゃーねぇな。でもよ、戦争的なのは得意なはずだぜ。」ベルの意見は尤もだ。
これはソラ向きである。何しろ相手は人間なのだ。
「・・・・辞めときます。今回は。」しばしの沈黙の末、断るケルト。
「そうかい。じゃあまた何かあったら頼むわ。」
宿に戻るとソラが出迎える。
「次の仕事決まった?」
「ああ・・・決まったよ。」
その答えに驚くベル。
「おい!さっきケルトは断ってたじゃねぇか。」
「僕の第6感が告げてるのさ。現場に行けって。」
いくつか、このパーティには欠点がある。
ソラにも欠点がある以上、新しい仲間はどうしても必要だと思っていた。
ケルトの全く根拠のない第6感によると何かが起きると告げていた。

【悪のパーティ?】
現場は森だった。
募集の情報自体は見ているので、いつ・どこで襲撃が起きるかは知っていた。
その現場に勇者一行はいる。
100人で隠れ家的な教会を襲うギルドのメンバー。
相手も確かに20人ちょっとといったところ。
新興宗教側の僧兵達はどんどん討ち取られていく。多少の損害を出しつつもギルド軍の圧勝である。
しかし・・・・
「おい・・・ケルト、変じゃねえか?」ベルが疑問を口にする。
「ホントだ。確かにやられた僧兵を数えると・・・30人??」倒れた人数が全体の人数20人を上回っているのだ。
絶対におかしい。
「また1人・・・また1人・・・・あれ?あいつさっき死んだよな?」
戦いは超長期戦となる。僧兵達が死にきらないからである。いや・・・確かに死んでいるのに生き返っている。
ソラはただただあんぐりと口をあけて戦局を眺めている。この不思議な光景を。
「ベル・・・・ギルド側が30人を切ったよ。」
「ああ・・・・でも僧兵の総人数も減ってないか?」
ベルの指摘通り、序盤は「派手に生き返っていた」のだが、終盤に入り生き返る人数が明らかに減っていた。
それを見切るとケルトはメンバーへ出撃を指示する。一気に教会へと走りだす。
「なんだなんだ?どうする気だ?」良からぬ事を考えてそうなのがベルには感覚で分かった。
とうとう僧兵達は全滅。ギルド側の損害も大きく、2人を残すだけである。
その2人は教会の中へ。教会の中には小柄な少女が1人いた。
「無・・・無念じゃ。わらわがこのようなところで貴様らのような下郎にやられるとは。」
「フン・・・・悪く思うなよ。」少女に対して剣を振り上げるギルドの男。少女は覚悟を決めて目を見開く。
すると・・・・次の瞬間ギルドの男の頭が吹き飛んでいた。
横に並んでいたもう一人のギルドの男は何が起きたのか分からなかった。
しかし次に見たものは彼にとってのこの世の最後の映像。恐ろしく太い脚である。
「・・・」
声を挙げる間もなく、もう1人も膝蹴りで顔面を粉砕されていた。即死である。
「いやあ・・・可憐な少女を殺そうとする悪い人たちはやっつけましたよ。」ケルトは大仰に言ってみせる。
ソラは無表情のまま、ギルドのメンバーを葬っていた。
ソラの正義とはケルトの命令に従うことであった。
「ぬ・・・そなたらは?・・・というか・・・・」少女は両膝をつく。
「腹が減っては戦ができぬ・・・・」
パタッと倒れる少女。このパターンはソラと同じであった。

【聖女シルフィー】
「で・・・・にゃぜしょなたらは・・・うん・・・はらはをたふけ・・・」
「良いからまずは黙って食え。」ベルの召喚したご馳走をほうばりながら喋る少女。
教会からはいち早く逃げた。完全な裏切りのため、ギルドに知られては一大事である。
森のさらに奥でのキャンプ。
用意周到なケルトはこの場所を事前に見つけて、そこから教会へと向かっていたのである。
「ふぅ・・・まずは礼を言う。わらわの名はシルフィー。教会の中心に祭り上げられた者じゃ。」
そこから話を始める。
シルフィーは類稀なヒーリングの使い手であった。
そこからその能力を利用する者が現れ、新興宗教を起こし、取り巻き達が妙な思想を撒き散らしていた。
ご利益と称してヒーリングを施し、シルフィーは聖女と崇められる。
教会側はやがて危険な方向へ傾倒し、シルフィーの思いとは全く関係なく、街の乗っ取りなどの計画を聞かされる。
彼女は戦闘能力がないため、もはや僧兵達の暴走を止めることはできなかった。
そしてさっきのギルドからの討伐隊である。彼女のヒーリング能力は凄まじく、
「死んでも5分以内なら生き返らせられる」という域まで達していた。
しかし長期戦になるに従って、飲まず食わずで神聖魔法を使い続けたシルフィーは力尽き、僧兵達は全滅したのである。
「良かったよ。君が悪い人じゃなくて。僕はそれを感じていたんだ。」ニッコリと笑うケルト。
「何が言いたい?わらわにどうしろと言うのじゃ?」
「奴隷が欲しければ、金を積むか、命の恩人になれば良い。
一人前例がいるんだが・・・」ケルトが何を考えていたかようやく悟ったベルが言う。
あの依頼を断ったときから、こうなることを予期していたのだ。
「よかろう。奴隷と言うのは納得いかぬがわらわが加わるからには、誰も死なせはせん。」
「だいじょーぶだよー。皆優しいし、無茶言わないよ。」ウィンクしてみせるソラ。
「そうそう。僕らは仲間だよ。」ケルトが続ける。
こうして勇者一行に聖女シルフィーが仲間になった。

【リベンジ戦】
神官シルフィー
性別:女性
レベル:9999
力:2
素早さ:3
器用さ:6
耐久力:3
魔法力:34985765(約3500万)
知恵:234
特殊:アンデッド消滅
   完全ヒーリング

「レ・・・・レベル9999!?」驚きを隠せないケルト。
彼の第6感は腕の良い神官が見つかるという「何か」を感じていたのだが、
ここまでの大物とは思わなかったのである。
「ああ・・・桁は4桁までじゃ。本来ならもっといってるじゃろうな。」
「シルフィーちゃんすっごーい!」素直さがウリのソラはその評判通り素直に感心する。
「神官は特殊でな。普通は相手を倒すと経験値がたまるところなのじゃが、
わらわは相手を助けることによって経験値を詰んでおる。」
聖女と呼ばれ、散々教会で人を癒してきたシルフィーはあっという間にレベルが上がったと言う。
「じゃが、戦闘は勘弁してくれ。何も鍛えてない故にな。」
ともかくケルトの想像をはるかに越え、このパーティは強化された。
〜「ついでに先ほどの戦闘で小さい怪我を負ったベルだが、治す者がいない・・・と。」〜
〜「ふとケルトは思う。このパーティはアンデッドに対抗しうるもの、すなわち神官がいない・・・と。」〜
この2つは確実にクリアしていた。

「あのよー、ついこないだのミッションだけど。」話を切り出すベル。
「どっかの悪い子がギルドメンバーをやっちゃっただろ?
ギルドって人減ってんだよね。そんでさ、アンデッドの件。未解決なんだよな。」
それを聞くと青ざめるソラ。
「なんじゃ?アンデッドか。そんなものわらわに任せておけ。」
シルフィーが自信満々に言う。

【怒髪天をつく】
3日後である。失敗したあのミッション。「アンデッド退治」を再び受領する。
ギルドのマスターは信用が失墜したケルト達には頼みたくなかったのだが、
新興宗教の壊滅で相打ちになって、ギルドメンバーが極端に減ったため彼らに託すしかなかった。
夜、ソラは巨体を小さくしながら震えている。本当にアンデッドが苦手になったようだ。
「ほ・・・ホントに大丈夫だよね?シルフィーちゃん。」もうその質問は10回以上は聞いている。
そして定刻。地面が盛り上がり・・・・ソラの苦手なゾンビ、スケルトンの集団が現れる。
そこへ堂々と前に出る小柄な少女。
「フン・・・消え去れ下郎!!」
シルフィーの体が光を放ち。
「ぎゃああああ!!」断末魔の叫びがケルトにのみ伝わる。
その数200はあっただろうか?
ゾンビ、スケルトンの集団は一瞬にして塵になる。
その先に1人、人影がいる。あれが親玉だろうか?
「ねぇ・・・ワタシ、言うこと聞かなくて良い?」ソラが抑揚の無い声で聞いてくる。
「あ・・・な・・・なに?」ケルトが聞く。
「絶対許さない・・・」ケルトの聞いた質問すら無視して、その1人へと走っていく。
相手・・・ネクロマンサーは混乱していた。
自慢ではないが、そんじょそこらの神官では返り討ちにしてきた死人軍団である。
それが・・・一瞬にして全ていなくなったのである。
「そ・・・そんなバカな。」そしてその動揺、思考の硬直は命取り。
我に返るとすぐ近くまで巨大な筋肉女が迫っていた。
「よくも・・・よくもワタシをびびらせてくれたわね!!」ケルトはここまで怒ったソラを初めて見た。
相手は貧弱なネクロマンサー。もう死神は彼に微笑んでいた。
ネクロマンサーを捉えると、爆乳だか大胸筋だかの区別がつかない胸の肉に胴体を挟み込む。
この時点で彼はほぼ動けなくなっていた。
そして枯れ木のような両腕を盛り上がった筋肉で腋に挟み込み、最後にバタバタと暴れていた足を掴む。
「う・・・・うわ・・・や・・・やめて・・・」
「えい!!」そんな命乞いなど聞いちゃいない。
ソラが気合を入れるとネクロマンサーの足は握力で潰され、
両腕は筋肉の膨張で潰され、胴体も胸の挟みこみによって砂時計のように細くなる。
もう助からない。だが、怒りは全く収まっていなかった。
「とどめよ!」
今の技は相手の頭部だけは潰さない。もちろんわざとだ。
頭を鷲掴みにすると、ソラは6つに割れ、盛り上がった腹筋を見せる。
「すりおろしてあげる。」
ネクロマンサーの頭を腹筋にこすり付け、ガシガシと上下させる。
10往復するころには彼の頭は掴んでいた後頭部のみとなっていた。
だが、不幸なことにこれでもまだ済まされなかった。
「シルフィーちゃん!生き返らせて。」恐ろしいことを言う。
「なんじゃ・・・まだ殺し足りぬのか。」
都合10回ほど、ネクロマンサーを生き返らせては嬲り殺し、ようやく気がおさまったようである。

【勇者の災難】
「・・・。」
「・・・。」
壮絶な戦いが終わった。ケルト、ベルは声が出なかった。
ソラの虐殺は見慣れたはずだった。
だが、骨の折れる音、断末魔の悲鳴を同一人物から何回も聞かされるのは初めてだった。
最後もミンチにされたネクロマンサー。
最後の姿は単なる地面の染みであり、この世に骨・肉片一つも残さぬ殺され方であった。
「あー・・・スッキリした。」ニコーっといつもの屈託の無い笑顔を見せるソラ。
シルフィーとのコンビはまさに極悪であった・・・が、さらにこれ以上の極悪さも秘めていたのである。

帰り道、先頭を歩くのはリーダーのケルト。最後尾はベル。
それを挟むかのようにソラとシルフィーがお喋りをしながら歩く。
同性というのと、先の極悪コンビネーションで完全に親友となっていた。
「・・・でしょー?あの5回目ねぇ・・・よく考えたら左腕の骨が残ってたのよ。」
「それはわらわも憶えておる。いい加減ソラも飽きてきたのかと思っておったぞ。」
「まさかー、あれくらいじゃ許す気になれないよ。」
そんな、油断した会話の中で・・・
「あっ!!」
石に蹴躓いてしまった!その先にはケルト。
バキン、メキ、グシャ・・・
一瞬にして筋肉の鎧の下敷きになってしまったケルト。
「お・・・おい!!」駆け寄るベル。
勇者は・・・・死んだ。生きてる風な状態ではない。
「ちょ・・・ウソ・・・ウソでしょ?目を開けてケルトーーー!!」号泣しながらペチャンコになったケルトを揺さぶる。
「こ・・・これからだろ!俺達は・・・な・・・なんで・・・?」これまた目を真っ赤にするベル。
勝利の凱旋からいきなり葬式ムードの一行。
「やれやれ・・・何を騒いでおる。冷静になれ。わらわがおるではないか。」シルフィーが呆れている。
「う・・・??」
一瞬で目が醒めた。なんだか『死ぬほど痛かった気がした』のだが気のせいだろうか?
「ケ・・・ケルトーーーーー!!!」嬉しさのあまり力いっぱい抱きつくソラ。
メリメリ・・・グシャ!!
ケルトの体があるはずのスペースはあっという間に豪腕と強烈な大胸筋で埋められ、全身の骨が木っ端微塵になる。
勇者、本日2度目の死亡である。
「命がいくつあっても足らんとはまさにこのことじゃなっ♪」
笑いながら、蘇生を始めるシルフィーなのであった。


 つづく





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