最強!レベル1勇者パーティ

【拠点移動の道中で】
テントの中で1人考えるケルト。
なぜテントかというと、場所を変えるために移動中だからである。夜は更けていた。
もうあの街では成功するミッションがなさそうだ。
また失敗した。普通に考えれば最強のメンバーなのである。
これで失敗するのはおかしい。でも現にちょっとした思考の取りこぼしから、やられている。
頭を抱えるケルトを余所に、他の3人は呑気なものだ。
失敗の日から一週間も経つと、いつの間にかシルフィーまでもが色魔になっており、すっかり敗戦など忘れてイチャツキ始めている。
「ホホホ・・・おぬしもなかなかの好きモノよのう。」
「ハハハ、魔術師学校時代は4つ股くらいかけて、全員相手したもんさ。」
「その絶倫、ソラに試してみてはどうかの?」
「お・・・良いね〜。今度こそ負けねぇよ。ってかシルフィーアシストしてくんねぇか?」
「なーに、ベル・・・・・ってちょっと・・・あ・・・・あ〜〜〜〜〜〜」
テントの外ではまさに本能の赴くまま乱交騒ぎになっている。
「あれ〜〜〜〜〜?ベルが動かなくなってるよ〜??」
「動きが激しすぎるのじゃ。腰が砕けて死んでおるわ。精を補充してもこれではいかんぞ。」
・・・・。
何を考えてるんだろう、皆は。
「ちょっと皆!」テントから出て行くが、これこそ飛んで火に入る夏の虫。
「ケルト〜・・・『えっち』しよ!」
タダでさえ良い血色が一段とよく見えるソラ。艶々の肉体のちょっと向こう側には若干体が破損したベル。
それをあっさり復活させるシルフィー。
「おいでおいで〜・・・」本能モードのソラは強引だ。ケルトの貧弱な力では抵抗のしようもない。
しかも、興奮してるのか人の話を聞かない。
「ホラホラ、考えてばっかりいると体に良くないよっ」
死ぬ『ほど』気持ち良いではなく、本当に死ぬセックス。
極太の足に挟まれ、胸に顔をうずめながら、一つになり・・・思考が鈍くなっていく。
勇者学校の教えを受けたケルトと、他のメンバーは志が違っている。
僕はいつか頂点を・・・そう崇高な思いを巡らせながら力尽きた。男の本能には勝てなかった。

【当然の報い】
すっかり変態パーティへと堕ちた事に違和感を覚えるケルト。
出会った頃はソラに欲情しまくっていた気がする。
抱きたいがその強さゆえ届かぬ夢だった。が・・・夢に届いてしまった。というかソラの方から近づいた。
だが、いざ一線を越え、ヤりまくりの毎日が実現すると首を傾げ始める。実に贅沢なものだ。
勇者学校卒業時、「世界を救う勇者」になると誓ったのではなかったか?
シルフィー加入が良くなかったのか?
否。事実アンデッドを瞬殺でき、強力なヒーリングで全滅する確率が下がったのだ。
前進はしている・・・はずだ。
そう考えていると前方に人影が見える。只今、勇者一行は別の町を目指して移動中。
「あれは・・・ダークエルフ!」ベルが言う。
「だーくえるふ?敵なの?」素っ頓狂な声をあげるソラ。
「まぁそうかもな。」ベルが応える。
「ふーん・・・細くてよわそー。」敵と聞いてニコっとするソラ。ケルトのゴーサインが待ち遠しい。
彼女の頭の中にはどうバラバラにしてやろうかという物騒な考えが回っていた。
「本当に敵かどうかはまだ分からぬぞ。」シルフィーが言う。
確かに向こうも様子を伺っているように見える。
だが・・・全てが甘かった。ケルトは攻撃指令を出すべきだった。
一行を包む霧というか雲のようなもの。
「ヤバイ!抵抗だ!抵抗しろーー!」ベルが叫ぶ。
相手は様子を見ていたのではなかった。魔法を唱えていたのである。
この魔法はスリープクラウド。眠りを誘発する初歩的な魔法であった。
抵抗しろと言ったベルからいきなり倒れる。ちょっと早すぎないか?
ついでソラが余計な事を考えていたからか、それとも予想通りの対魔法の弱さか、どちらかは分からないが眠ってしまう。
さらに意外な事にシルフィーまでもが眠ってしまった。
ずっと外敵のいない教会にいて、魔法抵抗の術を知らなかったのだ。
最後に残ったのはケルト、1人必死の抵抗を試みる。
その間にもダークエルフとの距離は詰まる。
フラフラのケルトを差し置き、ダークエルフは槍をソラに対して構える。あの筋肉を見て最も強敵だと思ったのだろう。
ソラか・・・・良かった、シルフィーじゃなくて。ソラの肉体なら大丈夫・・・
ブス!!
次の瞬間信じられないものを見た。今までどんな攻撃をも跳ね返してきた肉体に槍が深々と突き刺さる!

ダークエルフの槍がソラの胸を捉えていた。大の字で寝ていたソラへ深々と。
貫通した槍の中間点にはソラの心臓が。致命傷である。
ソラの口から血が流れる。そもそもソラから血が流れるのを初めて見る。
戦況は最悪。ベルとシルフィーは寝ており、自分もフラフラ。
ぜ・・・全滅するのか!?たった一人のダークエルフに?
そんな考えが巡り背筋が寒くなる。
そして次に向かってきたのはケルト。起きているケルトが次に手強いと思ったのだろう。
ダークエルフの槍が迫る。避けなければ・・・しかし体が言うことを聞かない。
「でやああああ!!」
すると、ダークエルフの背後から突然人影があらわれ、大剣の一撃が襲う!
ダークエルフは殺気を感じたのかひねって回避するが、左腕に深手を負わされる。
叩き切ったのはベル。
「ヘヘヘ・・・寝たふりの術!」なるほど、他の人より早く倒れたのは演技だったからか?
ダークエルフは不利と悟ると脱兎のように逃げ去っていった。
「それより、ソラが・・・ソラが!!」
「シルフィー!起きろ起きろ起きろ〜!起きねえと股間に一発ぶちこむぞ!!」手荒にベルが叩き、ついでに卑猥な言葉を投げつける。
4分20秒。
ソラが絶命してからシルフィーがヒーリングするまでの時間である。
「ギリギリじゃったな。」
普通に寝ているのとは違う。魔法で寝かされるということはなかなか起きないという事だった。
叩くだけでは全く効果が無く、ベルの言葉に反応してようやく起き、間一髪間に合った。
危うくエースを失うところだったのだ。
「ワタシが殺された?」狐につままれたような表情のソラ。自分でも信じられない様子だ。
それにしても、魔法の槍か?
ミスリルを含むどんな金属よりも硬い印象のあるソラの体が易々と貫通されていた。
しかしそんな高級な槍にも見えなかった。
そう一通り考えると思い当たるフシが一つあった。
〜「うまくコントロールできるようだ」〜
あれだ!
ソラは筋肉をコントロールできるようになっていた。
ソラが蹴躓いてケルトを圧死させて以降、ソラは自分の体を戦闘以外では体を柔らかくしていた。
移動中にもしょっちゅう抱きついてきていた。
これは痴夢にふけった報いとも言えるのだろうか・・・?

【反省会】
「ごめんねぇ・・・ケルト。」しょげてる顔もカワイイ。いやそうじゃなく・・・
そもそも。そもそもである。ソラが油断してフワフワの体にしていたのが良くない。
「これからはエッチのとき以外はずっと硬くしてるね。」
蹴躓いたときも油断があったからである。それさえ無くせば良かった。ソラの色香に迷った自分も悪いが。
「あと・・・救援が遅いよ。」今度はベルに文句を言ってみるケルト。
「いやいや、俺は正面から攻撃当てる自信がなかったからよ。引きつけようと思ってさ。背後からやるにはあれしかなかった。」
まぁこれはしょうがない。むしろ今回に限って言えばベルがMVPである。
また、ベルもソラが死ぬなんて思ってもみなかったのだ。
「あんな下衆野郎の魔法にかかるとは・・・わらわとしたことが実に不覚じゃ。」
「コツさえ掴めば、シルフィーは絶対大丈夫だよ。」
「うむ。鍛錬しておこう。」
2連敗。しかも2敗目はダークエルフ1人である。
さすがに全員、もう一度気を引き締めなおす気になっていた。
前々回はカマイタチのスピード、前回は対魔法およびソラの油断。
スキマはたくさんある。
でもそれを埋めていけば強くなれるはず。
まだ仲間が必要・・・それを再認識したケルトなのであった。

とりあえず、ただただ獣のようにヤりまくる変態パーティは卒業し、北の外れの街から東の大きい街への移動が終わった。


 つづく





inserted by FC2 system