最強!レベル1勇者パーティ

【都会の風】
シルフィーが宿屋で本を読んでいる。
彼女はこの町で小銭を稼いでいた。当然利用するのは自分のヒーリング能力。
その小銭を使ってせっせと本を読み始めている。
「何を読んでるの?」
「『近代魔法の傾向と対策 魔法抵抗大全』はこの前読破したでな。今は罠の本じゃ。」
「『冒険者向けトラップ全集』・・・か。凄いじゃない。」ケルトはちょっと本気になったシルフィーを頼もしく思う。
「あと飽きた場合に読もうと思ってな。これも読んでおる。」
「『自パーティのリスク分析』・・・・。ははは・・・それ・・・僕の仕事だったのにな・・・」
ちょっとだけ悔しいケルト。しかし、立て続けに失敗してるので仕方ない。
レベル9999のシルフィーが本気で読破すれば名軍師になれる。
「しかしわらわはケルトの第6感を信じておるぞ。」その全幅の信頼には感謝だ。
その2日後、お金を稼いでいるのがシルフィーのみというのはさすがに良くないと感じ、全員で冒険者ギルドへ向かう。
「えーっと・・・勇者ケルト:レベル1、魔術師ベル:レベル1、戦士ソラ:レベル3、
神官シルフィー・・・?・・・・レ・・・レベル9999!??」
ギルドの受付は完全にビビる。なんでこんなアンバランスな集団が生まれたのか想像できない。
そう言えば北の町のときにはシルフィーを表に出したことはなかった。
ギルドへ行く仕事は基本的にケルトだったし、自分達の正式メンバーとしてギルドへシルフィーを通知したのは初めてである。
「いや・・・こういうことならもう仕事は決まってるぜ。首都からの直々の依頼さ。海賊退治なんだが、この海賊が半端ねぇのよ。」
もはや他の仕事を当てる気がない感じである。
「海賊・・・?」ケルトは嫌な感じがした。嫌な感じとはそれ即ち断るパターンだ。
結局、即答にて依頼を却下、ベルからはさっそくの文句が出てきた。
「おいおい・・・またかよ。多分・・・多分さ、合ってんだと思うぜ。お前の第6感なんだからよ。
でもなぁ・・・アンデッドでもなく、魔法も使ってこず、スピードもねぇ。こんなのカモじゃねえのか?」
やっぱり何の説明も無く却下してしまうと、こういう文句が出る。
「オッホン!わらわが説明してしんぜよう。」すると2人に割ってはいるシルフィー。
「われらの主力はソラ。じゃがソラが泳げるとは限らない。」
「うん。泳げない。なんで皆が浮くのか分かんない。」ソラの超高密度の筋肉が重過ぎて浮かないのだそうな。
「やはりな・・・・それで海賊というからには船に乗るのじゃろう?
接近して相手の船に乗り込めばそりゃあ勝つじゃろう。
しかし自分の船が沈没したらどうなる?
強みを発揮せぬまま・・・まぁ死なずに済むことはあるやも知れぬが、とにかく勝てぬ。」
「すっごーーーーい!あったまいい!」目を輝かせて声を挙げるソラ。
「・・・そうだね。」サクっと説明してくれたシルフィーに感謝である。
そう、海もこのパーティの泣き所であった。


【海賊ライラ】
さて、話はケルト達から外れる。
とある海上での話である。
「ん・・・・?海軍?」子分からの報告を聞き、やや渋い表情の女性。
紫色の髪、瞳は赤く、背中からは翼が生えている。明らかに人間ではない。
女はセイレーンであった。
グラマラスな体型で身長も190センチある。こういうのを抜群のプロポーションというのだろう。
腰はくびれ、体にはしっかりと筋肉がつき、それを薄く脂肪が覆ってた。
もちろん体型がはっきり分かる服装だ。
薬ビンにつめる布の方が、布の量が多いのではないかと思えるくらいほぼ丸見えだった。
彼女は昔、歌を歌っていた。
セイレーンの伝説。
岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、難破させる。伝説ではこうだ。彼女もしばらくそれを実践していた。
何隻沈めたかは憶えてもいない。
そのうち、沈めた船の積荷の中から魔法の品々をコレクションするのが趣味となっていた。
今現在、着けているアイテムは5つの指輪。それぞれが強力なアイテムでとてつもなくパワーアップしていた。
この力を誇示したかった。いつしか彼女は海賊団を結成し、商船・軍船を襲って勝利してきた。

「ライラキャプテン、このままじゃヤバイですぜ。」
ライラと呼ばれたセイレーンはツカツカと子分に近寄り・・・
「逃げられんのか?無理だろ?ヤバかろうが楽勝だろうが、やるしかないんだよ。」
膝を曲げて子分の目線に合わせる。ギロっとした目は猛禽類を連想させる。
ソラが「カワイイ方向の美人」だとすればライラは「毒を持つ美人」である。
ツーっと汗がしたたる。一瞬弱気な発言を咎められて、殺されるかと思ったのだ。
「ちょいと暴れすぎたか。でもな、この船が沈むとき最後に降りんのはアタイだ。」
「オカシラ・・・」「キャプテン・・・」「ライラ姐御」船員が落ち着きを取り戻す。
そうだ、この人なら何とかしてくれる。異種族でありながらそんな信頼さえ勝ち得ていた。
「まぁやってやるさ。アタイに任せときな。ライラ軍船壊滅隊、出る!」
海賊船の甲板に出ると翼を羽ばたかせ、ホバリングする。
「1000・・・・多いねぇ。たった一隻の海賊船に?」
ベルンダ王国の全軍船が結成しているようだった。

「大将!『赤城』が撃沈されました!」
「大将!『葛城』、『レキシントン』、『エンタープライズ』それぞれ大破!」
「大・・・・」
「うるさいわ!」海軍大将は焦っていた。
いきなり攻撃を受けているのである。こちらの砲撃の射程範囲外から弾丸が飛んでくる。
海賊船一隻に総攻撃とは大げさだと思っていたが、想像をはるかに超える攻撃力だ。
「と・・・突撃!突撃ーーーー!!!」
大将は全軍突撃を命じる。弾の数より多い船で挑めば必ず勝てるのだ。
単純だが人海戦術の理論は正しい。
一方ライラの方も焦りが見える。300隻は沈めた。だが残りの700隻はドンドン距離を詰めてくるのだ。
「怯まないね・・・・喰らえ!フェザーブレッド!!」
ライラの翼から無数の羽が飛んでいく。
普通のセイレーンの羽は生身の人間くらいは倒すことができる程度。
・・・なのだが「飛び道具威力1000倍の指輪」をつけているため、軍船すら一撃で沈める。
しかも「器用さ1000倍の指輪」までつけており、命中率も100%。1発で2隻沈める場合すらある。
そんななか、ついに100隻程の接近を許す。自分の船に無数の海兵が乗り込んでくる。
「喰らえ!」それでもあきらめず、ライラは戦い続ける。
長い足から伸びる蹴り。この蹴りの威力が常識外れの切れ味だった。
体型からは想像できない威力の源は「脚力1000倍の指輪」。
鍛え上げた自慢の足技はこれまでも強敵を何人も葬り去っていた。
あっという間に首を狩られ、胴体に風穴を開けられる海兵達。
しかし・・・ついにライラが1人になる時がやってきた。数の暴力である。
いくらライラが怪物でも子分達は皆討ち取られていた。
そして雲行きがあやしい。一雨振りそうである。
ライラは羽根が濡れるとフェザーブレッドは使えなくなるという弱点をかかえていた。
「フン・・・これまでか。だがな、カワイイ子分の無念、いつか晴らさせてもらうよ!!」
約束通り最後の退艦となった。子分は見捨てなかった・・・が、救えなかった。
空高く舞い上がるライラ。「素早さ1000倍の指輪」を持つ女は一瞬にして飛び去っていった。

「な・・・・900隻・・・沈められただと!?」
報告を聞いた国王はショックを隠しきれなかった。それも相手の船長を逃しているのである。
「しかし、奴は紫髪、赤い瞳で目立ちます。いつか必ず捕らえられるはずです!」
「全ての町へ通達せよ。紫髪、赤い瞳を持つものは即刻逮捕!」

【ライラの強襲】
ケルト達はまた移動していた。今度は海岸沿いの町の中を4人で歩いていた。
「それ・・・ちょっと変だぜ?」ベルがソラに意見する。
「え〜〜〜〜〜オシャレだと思うんだけど・・・」とソラ。
ソラは「眼の色と髪の毛の色が変わるだけ」の変化の指輪で、髪の毛を紫に、瞳を赤い色にしていた。
いつぞやのゴブリン退治の時のボーナスの品。
「目立つんだよ。ただでさえデカくて、スッポンポンなのに。」
「よく見てよ〜服はちゃんと着てるもん!」
そんな他愛もない会話をしながら町を散策する。

最初に断った海賊退治の仕事1件。東の街ではたったそれだけだったのだ。
「な・・・なんでだろう・・・?あれだけの都会であの仕事量はないはずなんだけど・・・」首をかしげるケルト。
「それはじゃな、ギルドというものが相互互助会のようなものだからじゃな。
弱いものを育てるため、お手ごろな仕事は全て弱きものにいってしまうのじゃ。」
「おいおい・・・でもよ、今まではチャンとお手ごろな仕事が来たぜ?」シルフィーの説明に反論するベル。
「当たり前じゃ。そなたとケルトはレベル1、ソラはレベル3。平均でレベル1.6ではないか。
ところが今は平均レベル約2500。簡単な仕事なぞ来るわけが無いわ。」
「え・・・そ・・・それじゃ・・・」驚くケルト。
「そう。わらわのせいじゃ!ハッハッハ!」
「ハッハッハ・・・じゃねーよ!無駄にレベル上げやがって!」ベルが毒づく。
「なんじゃ?この前もソラに腹上死させられたそなたを生き返らせたのは誰だと思っておる?」
「ぐ・・・」全く言い返せない。
しかし・・・シルフィーが希望が見える説明を続ける。
「まぁ他に仕事を振る相手が居なければ手ごろなものも来る。
東の町のような大都会より、冒険者が手薄なここに来たのは正解じゃ。」本当にシルフィーは物知りになった。
相変わらずケルトは「第6感」で海岸沿いの町に来たのだが、確かにそう言われると正解のようだ。
そこへ・・・・
町の警備兵がやってくる。最初はどこかの捕り物と思っていたが・・・囲まれている!
「いたぞ!紫髪、赤い瞳だ!」
「逮捕しろ!」口々に叫ぶ。
まずい・・・・もしや正規兵の大量殺戮がバレたか?
それとも北の外れ町のギルドのメンバー2人の殺人か?
思い当たる悪事はある。とても正義の勇者一行とは思えない・・・。
ただ・・・ケルトは珍しく『理』で誤解を見抜く。罪を犯した時点ではソラは黒髪、黒い瞳だったから、
今の派手な姿を見て逮捕ということは誤解のはず。
「ソラ・・・手を出さないでね。」誤解ならばさすがに町の善良な市民を殺すわけにはいかない。
「うん。分かった。」
警備兵が逮捕にかかる。が・・・鎖で後ろ手を縛っても、
「ちょっと鼻が痒い・・・・」言うなりブチっと鎖を引き千切って鼻を掻く。
「おのれ!抵抗するか!!」
「しないよぉ・・・だってケルトがダメって言うんだもん。」
素手の殴打、警棒、ついには剣と・・・どう考えても「生死不問」扱いの逮捕。
ソラは涼しい顔でそれらを黙って受ける。
極めて残虐、時には戦闘好きの面も見せるソラだが、ケルトの言うことは聞く。
「殺すのダメ」とハッキリ言われているのだから、どんなに攻撃されても我慢する。
ましてや、こんなヨワッチイ攻撃ならくすぐったくもならない。
「くっそー誰か大砲を持って・・・・ぐは!!」警備兵が突然倒れる。胸を何かが貫いていた。
何の前触れも無くすさまじい弾丸の嵐がやってきた。
「ぜ・・・全員ソラの影へ!」
3人はソラを盾にする。ソラは3人を覆うようにして庇う。
すさまじい弾丸の嵐はケルトを囲った警備兵たちはもちろんのこと、町をあっという間に壊滅へと導いた。
弾丸の撃ってきた方向を見ると、半鳥人が宙に浮いていた。
ライラは空腹だった。エサがなくなった熊が人里へ出没する構図に良く似ている。
憎たらしい王国の住民を殺し、ついでに食料も奪える。一石二鳥だ。
ところが・・・このフェザーブレッドを被弾しながら倒れない者がいる。しかも何故か自分と髪の色が同じだ。
「フン・・・面白いじゃないか!」久々に歯ごたえのありそうな奴がいる。

【超人対決、ソラvsライラ】
ソラは驚いていた。一瞬。一瞬で目の前に女が現れたのだ。
「は・・・はっやーい!・・・・さっきまであんな遠くにいたのに・・・」ソラはこの時点でかなりの不利を悟る。
カマイタチ戦を思い出したのだ。しかも今度の相手は空まで飛んでくる。
「タイマン!ここはタイマン勝負じゃ!」そこへシルフィーが叫ぶ。
「ん・・・・?なんだお前。」
「わらわはレベル9999の神官シルフィーじゃ。そなたを相当の手練れと見受けた。
わらわ達のソラも歴戦のツワモノ。せっかくの戦いじゃ。邪魔されたくなかろう?」
うまい。ケルトはシルフィーの言いくるめに正直感心した。さっきの弾丸の流れ弾が当たってしまえば自分達は即死。
特に最初にシルフィーに当たれば終わりなのだ。
さりげなく自身のレベルもさらけ出し、さも邪魔しようと思えば邪魔できそうなハッタリまで使っている。
「じゃあ、あの広場で決着をつけてやる。タイマン張ろうじゃないか。」ライラがクイっと親指を向ける。
「ケルト・・・どうする?」珍しく緊張の走った顔のソラ。
恐らく出会った中では最強。苦杯を舐めさせられた敵は今までも居たが、町を簡単に壊滅させる者は初めてである。
「倒すしかない。全力で行くんだ。」
「うん。」キリっと表情を引き締め、瞳に殺気がこもる。

ソラとライラの一騎打ちが始まる。空中で右へ左へワープしたかのような素早さで翻弄しフェザーブレッドを放つ。
受けるソラは弾丸を目にだけは入れないようにガードを上げていた。
実に正確に狙ってくる。狭いガードの隙間から『変化球』的な動きで目を狙ってきた。
この精度ならば1キロ先のリンゴでも易々命中させてくるだろう。
ビキニは吹っ飛び全裸にされる。だが、ダメージとしてはたくましい腕が羽根を跳ね返し、先ほどと同じく効いていない。
「ち・・・・直接やるしかなさそうだね。」ライラもこの鉄筋女を攻めあぐねていた。
いや・・・鉄どころではないかも知れない。だが・・・今まで自分の蹴りを受けて無事だった奴はいない。
いかに凄まじい肉体を持っていようと脳を揺らしさえすればいける。顎に当てれば・・・
いつしか「顎に当てれば勝てる」という錯覚に陥っていた。
仮説を立てる・・・それは確かに重要なことだが、仮説は仮説である。
一番下にある理論が仮説の場合、それが崩れれば大失敗に終わる。
「行くぜ!」ライラのスピードを持ってすれば、ソラの背後を取ることなど造作もなかった。
クルッとソラが振り向いた刹那、ライラ渾身のハイキックがソラの顎を捕らえる
が・・・蹴り足を掴まれてしまう。効いていないのか!?奴の太い首のせいか!?
「・・・・ごめんね。命令だから。でも痛いのは一瞬だけ。」ソラが冷たく言い放つ。
足を引き寄せられ、胴体をがっちり捕らえられる。

【最強の狙撃手】
青い空が見える。芝の匂い。小鳥のさえずり。
柔らかい風が吹く。ライラは大の字で横になりボーっとしていた。戦っていた広場とは場所が違う。
「アタイが天国?・・・・まさかね・・・・」
両腕と胴体の骨全てが砕け散って内臓が潰された・・・・最後はそんな感じだった気がした。
でもなんだろう、安らかな気持ちだった。
最後は負けたが満足のいく強敵と戦えた。自分の持てる最高の技が当たっても受けきられたのだから、あいつになら殺されても仕方ない。
自分が手塩にかけた海賊は壊滅。もうどうでも良い。自分もこうして後を追った。

「大丈夫?」
と・・・ライラの視界に突然入ってくる褐色肌の女の顔。
「お・・・・おわ!!??」
驚いて跳ね起きる。そこには自分を粉砕した女が居た。
「さっきは痛かった?」
「お・・・お前も死んだのか?」ワケの分からないことを聞くライラ。
「君は生きてるよ。」とそこへ小さい小男が話しかけてきた。
「ま・・・メシでも食えや。」とさらにゴツイ男が肉を差し出してきた。

「なんかもう・・・良いやどうでも。」
それが説明を受けた感想だった。
あの広場で確かに自分は死んだ。だが、この場所に連れてこられあっさり生き返らせたのである。
そして「仲間になれ」との事だった。
装備品は剥ぎ取られることも無く、彼らと戦う前のときのままだ。
ライラは思う。子分もいない。この連中についていけば、食うのに困らず生きてはいける。
さらにはまだまだ戦いは続くのだそうな。つまりライラの力を誇示したい欲求は満たされる。
「アタイはライラ・・・。セイレーンのスナイパー。」

スナイパーライラ
性別:女性(セイレーン)
レベル:178
力:78(装備品により、脚力のみ78000)
素早さ:65000(装備品により)
器用さ:53000(装備品により)
耐久力:67
魔法力:55000(装備品により。魔法抵抗のみ)
知恵:24
特殊:脚力1000倍の指輪
   素早さ1000倍の指輪
   器用さ1000倍の指輪
   魔法抵抗力1000倍の指輪
   飛び道具威力1000倍の指輪
   フェザーブレッド
   魅惑の歌
   アイテム鑑定


 つづく





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