最強!レベル1勇者パーティ

【初心へ返る】
北の外れ町へ向かう途中の道中宿にて。
鏡を見ている。ライラの紫髪は金髪に、赤い瞳は青くなっていた。
「ん・・・・?アタイもなかなか良い女じゃないか。」
「気に入った?」リーダーケルトが聞く。この男が渡したのは変化の指輪。ソラは元の黒髪、黒い瞳に戻っている。
「まぁね。これで町を歩いてもうるさいゴミ共がやってこないだろ。」
やはりこの前ソラが町で捕まりかけたのはライラのせいだったのだ。
海軍相手に暴れ回り、海岸沿いの町を壊滅させた海賊ライラは死んだ。
こうしてライラは生まれ変わり、「レベル1勇者パーティのスナイパー」として生きることになった。

〜「ふとケルトは思う。このパーティは飛び道具を扱えるものがいない・・・と。」〜
〜「ふとケルトは思う。このパーティは絶対的なスピードを持つものがいない・・・と。」〜

やった。ケルトは充足感に満ち溢れていた。
ついに飛び道具を使い、絶対的なスピードも兼ね揃えた仲間が入ったのである。ついでに美人でスタイルバツグンで半裸だ。
まさに良い感じ。ただ・・・
「ところでお前が偉そうなのは何なんだ?ヨワッチイ癖に。」
ゲシっと頭を踏みつけられるケルト。ライラはドSなのか?
「いや・・・あの、確かに僕は役に立たないかも知れ・・・ぎゃーーー!!」
「おーおー、良い声で鳴くじゃん。」ムチムチの足でボディシザースを仕掛けられるケルト。
とにかく言うことを聞きそうに無いのだけが玉にキズだ。
「なんじゃ?新しいプレイか?」そこへシルフィーがやってくる。
「あー!!・・・・苛めたらだめーー!」さらにはソラ。これで助かった・・・。
「そんでよぉ・・・これからどうすんだ?」ベルが切り出す。
「なんだレベル1野郎。」
「うるせえ、メシ抜きにすっぞ!」
一波乱はありそうだが、メンバーはこんな5人となった。
北の外れ町へ戻ろうとしたのは、
「ライラの事を知るものがいない」かつ「冒険者が少なく手ごろな仕事がありそう」だからである。

【目指せ100%のリベンジ率】
「あの仕事・・・まだあるかな?」
以下、ソラと出会ってからの出来事である。
・オーガーとの遭遇→圧勝。
・ゴブリン退治→圧勝。
・アンデッド退治→失敗。
・教会制圧→辞退の後、教会側へ。どちらとも言えない。
・アンデッド退治(2回目)→圧勝。
・カマイタチ退治→失敗。
・ダークエルフとの遭遇→引き分けだが限りなく敗退に近い。
・海賊退治→辞退。
・ライラの強襲→勝利。
「忘れ物があるんだよね。」つぶやくケルト。
「なんじゃ?意外にお主は執念深いのう・・・・。カマイタチじゃろ?」ズバリ言い当てるシルフィー。やはり非常に聡明な少女である。
「ホントはダークエルフもだけどな。
ただ・・・あいつは依頼じゃなくて偶然だし、
もう同じのはナカナカ見つけらんねぇだろ。」ベルも続けてダークエルフにも言及する。
あのソラが倒されたのが強烈なインパクトであった。
「とにかく、最初はカマイタチだよ。」ケルトはそう言いながらライラの方を見る。
「ん・・・?なんかアタイの顔についてんのか?」ライラはあまり事情を飲み込めていなかった。
「いや・・・でも今回の鍵を握るのは・・・君だよ。」
「な・・・なーにが『君だよ』だ!馴れ馴れしい!」ちょっと顔を赤らめつつ・・・
「グハッ・・・」ライラが膝蹴りをケルトにお見舞い。あどけなさの残る少年の真面目な顔にドキッとした自分にも腹が立つ。
「乱暴だめー!」それをソラがたしなめる。
「とりあえずよ、行って来てくれよ。俺らは宿で待ってるからよ。」そうベルが言い、4人が宿屋の方向へ。
ケルト達は学習している。この北の町ではケルト1人でギルドへ向かうのだ。
またシルフィーを連れて行った日には平均レベルが上がって、都合の良い仕事が来なくなる。

「なんだ・・・しばらく見なかったなぁ。」とギルドに入るや否や、担当者が迎えてくれる。
「あの・・・カマイタチの件・・・」
「ああ、あれね。まだいるよ。この前お願いした冒険者達は全滅したみたいだ。」
ちょっとだけ気分が救われる。そんなに易しい相手ではなかったということだ。
「思ったより強敵でな。最初は俺も魔術師がいるパーティなら楽勝だと思ってたんだけど、
あいつらのスピードは半端ねぇ。
全滅したやつらのパーティは魔術師の首を速攻で切られたんじゃねぇのか?
・・・そんであんた等またやるのかい?」
「ええ・・・。今度こそ任せてください。」

【まとめてお得?】
数日後、かの場所に着く。
カマイタチのいる洞窟だ。
「って事でソラ、ライラ・・・お願いね。」
「ま・・・アタイはどうでも良いからさ。適当に捕まえてパスしてやんよ。アトは好きにしな。」
ソラには劣るが筋肉盛り上がる腕を組み、自信満々に言うライラ。
「ワタシ、頑張る。今度こそ粉砕するモン!」
レベル1勇者パーティの誇るツートップが洞窟に入る。カマイタチの死期は迫っていた・・・
「ライラ引渡し隊、出る!」ちなみにこの出撃宣言はライラの癖である。

カマイタチ3匹は2人に襲い掛かる。
ソラは避けようともせず攻撃をまともに受けるが、
シルフィー曰く「本で読んだミスリルの100倍は硬そうじゃな」という筋肉で簡単にはじき返す。
ライラはカマイタチの素早い攻撃をそれ以上の素早さでかわしていた。
「ん・・・?・・・・こりゃソラ1人じゃダメなわけだ。」
ライラは余裕でかわしてはいるものの、確かに今まで戦ってきた中でも最速の相手だ。
我が永遠のライバル?ソラの苦戦も頷けた。
「でしょ?捕まえてくれる。」
「あいよっ」
決して弱くはないカマイタチだが、ライラのムキムキの足に捕らえられ、ソラが受け取っていく。
戦闘開始からたったの1分。
1匹はヘッドロックの要領で捕まえられ、1匹はソラの広大な胸の中へ入れられる、そして最後の1匹は太股の中へ。
「はぁ・・・・幸せ。」
こう考えるとソラも極度の負けず嫌いなのかも知れない。苦戦した相手を屈服させたことに恍惚となっている。
「ん・・・?なんだよ。早く殺っちまいなよ。」
「みんなも連れてきて。」うっとりとしながらライラへお願いする。

・・・メキメキッ・・・
「早く殺してくれ〜」
「く・・・くるしい・・・」
「顎の骨が・・・折れたー!」
3匹の声がケルトにだけ伝わる。
ソラはじっくりと手加減しながら締め付けていた。
「ねー・・・何て言ってるの?」とソラ。うっとりとして目がウルウルしている。
それを逐一実況中継するケルト。痛快なほどソラが残忍モードで密かに興奮を覚える。
「ソラ、アンタとは気が合いそうだねぇ。」ドSのライラもニヤニヤ笑っている。
「そ・・・そこまでしなくても・・・」この中ではもはや最も常識人となっているベル。かれこれ15分はこの体勢だ。
カマイタチ達は致命傷にギリギリならない程度の壊れ加減だ。
ぐったりとして動かなくなっているのだが、ソラが力を加えるとわずかに動き、悲鳴を上げる。
ただ、彼らも限界であり、そろそろソラ的にもつまらなくなってきた。
「じゃあ・・・フィニッシュ!」
・・・バキッ・・・ボキンッ・・・どんどん筋肉が膨張していく。
「ただのお肉になっちゃえ。」
・・・ボギボギボキ・・・バキ・・・グジャッ・・・
あれだけの苦戦がウソのようだった。カマイタチ3匹は仲良くあの世行きとなった。
「き・・・気持ち良い・・・・イっちゃいそう・・・。」ソラの目がトローンとなっている。
ついでにソラのレベルも上がっていた。

【宝の山?】
レベルアップおめでとうの歌もそこそこに、一行はカマイタチの部屋を物色する。
「宝物庫もどきがあったぜ。」ベルが見つける。
「どれ・・・わらわには良く分からぬが、外から見たところ罠はなさそうじゃのう。」近くにいたシルフィーも寄ってくる。
「あいつらさ、自分たちがやられることなんて絶対考えてないって。自分の部屋だから罠なんてねぇよ。」
「ま、いつも思い込みでやられる事が多いからの。わらわはソラを呼んでくる。」
ソラ以外全員退避のもと、鍵のかかった金庫をソラが力任せに開けにかかる。
背筋が般若の顔のようにくっきりと浮き上がる。ギギギっと音を立て、強引に開けてしまう。
彼女の剛力にかかれば鍵というものはこの世に存在しないと言えた。
ベルの予想通り、今回は爆発しなかった。
「結構怖かったんだからね。」いつぞやの爆発宝箱の記憶が蘇ったのか、割とドキドキしていたとソラ。
「どれどれ・・・所詮は2流か?まずは永久ランタン。火じゃなくて、魔法の明かり。ずっと明るいってシロモノさ。」
商船を座礁させ、宝を山のように見てきたライラはアイテム鑑定も得意なのだ。
「凄い・・・ライラは詳しいね。」ケルトが感心する。
パッシーン!
「いたた・・・・なんでぶつんだよ・・・」褒めたのになぜ平手打ちを喰らうんだろう・・・
ライラはちょっと下を向いて赤くなっていた。そしてふうっと息を吐くと、鑑定を続ける。
「香水・・・ゾンビの香り。クズだね。使う奴いるのか?
断熱クリーム・・・こりゃ家の壁に塗ると火事に強くなったり、冬あったかいってやつさ。貴族が自分の家に塗ってる贅沢品の類。
マジックスポンジ・・・汚れが落ちるスポンジ。体やら武器やらを綺麗にできるってやつ。日用雑貨だね。
光の数珠玉。こいつは夜に家の玄関に飾るとやたらピカピカ光って、綺麗っていうタダそんだけのもの。」
そして逞しい肩をすくめて見せる。
「捨てるか?」
「いやいや・・・何かに役に立つかも知れんじゃろ?
わらわが預かっておく。モノは大事にするものじゃ。」と久々に教会で言いそうなことを言うシルフィー。
「物好きだねぇ・・・。」苦笑いしながら、なおもライラは漁っていく。
四つん這いになって探していると、張りの良いヒップが丸見えだ。
ソラの筋肉で隆起したヒップとはまた違い、思わず見とれてしまう。
ちょっと欲情したケルトをよそに、宝物庫の隅に指輪を見つける。
「ん・・・?こん中じゃあこいつが値打ちモンだね。」ついに価値のありそうなものを見つける。
ちなみに「ん・・・?」がライラの口癖のようだ。
「これは・・・何?」ケルトが尋ねる。
「力が100倍になる指輪。」
「ライラの1000倍シリーズには見劣りすんなぁ・・・」ベルが素直な感想を述べる。
「当ったり前だ。1000倍のやつはこの世に2個もないんだよ。普通は10倍の指輪でも高く取引されるよ。」
「ライラちゃんのコレクションって凄いんだーー」素直に感心するソラ。
「ってことで、こんなもんかな?力が100倍の指輪はめっけモンだよ。」艶のあるちょっと厚めの色っぽい唇が緩む。
こう締めくくり、アイテム品評会は終わりを告げた。
個々の品質はともかく数だけは結構ある。こうして冒険の締めの醍醐味を初めて味わったケルト達であった。

【暴君増殖】
「誰がつけるかは知らないよ。そうそう、アタイはいらないから。」
アイテム品評会を終え、力が100倍になる指輪の持ち主を決めにかかる一行。
ドSで言うことは聞かない、加えて自己顕示欲が強いライラではあるが、いきなりの辞退。
物欲は意外に乏しい・・・というか今の状態で十分満足してるのだそうだ。
「やっぱり・・・シルフィーちゃんじゃない?」ソラが言う。
「くそ・・・俺も欲しかったのにな。」とマッチョマンのベル。
そりゃあベルからしたら喉から手が出るほど欲しいだろう。
自慢の力も、ソラの剛力の前にはカスみたいなものであるし、新たに現れたライラも相当なパワーを秘めている。
唯一の自分の拠り所もこの2人の前では全くの無力であった。それにちょっとでも近づきたかったのである。
「わらわはどっちでも良いぞ?」
「分かった。シルフィー着けて。」こういうときはリーダーの一言が効く。
ベルの心情も察したが、これは致し方ない。
何せシルフィーはこのパーティの生存率に大きく影響する人物。
シルフィーさえ生き残れば・・・という場面は多い。
本来ならば、耐久力あたりが上がってくれると嬉しいのだが、ともかくシルフィーを優先することに変わりは無い。
「ハッハッハ・・・いざ付けてみると良い物よのう。力が溢れておる。」結構気に入ってしまうシルフィーなのであった。
「指輪ははめた直後は加減が難しいからね。ちょっと体動かして練習しときな。
力の加減が分からないうちにパワーを出しすぎると腱や骨を痛めるからね。」指輪の先輩であるライラが助言する。
「なんじゃ・・・お主、意外に親切じゃのう?」
「殴るのはねぇ・・・・こうよ!」豪腕を振って見せ、ソラが教えにかかる。
広背筋が綺麗に盛り上がり、フックを打ってみせる。ソラは単純な剛力に加え、実は体の使い方も絶妙にうまかった。
軽く振っただけでビューっと拳圧が。さらには衝撃波のようなモノが出て、誰もいない方の壁にヒビが入る。
そうだ。この拳圧のみでゴブリン達は粉砕されていた。
ソラの破壊王ぶりには冷や汗が出るが、その横ではシルフィーがブンブンとパンチを振っている。
まだ「手打ち」の状態だが、優秀なトレーナーであるソラがいるので、実戦レベルまでは早いだろう。
「早く誰かを殴ってみたいものじゃ。」舌なめずりしながらポキポキと指を鳴らす。
なんだか物騒な人物が増えてしまった気がするが、ケルトは気にしないことにした。

戦士ソラ
性別:女性
レベル:3→16
力:12387456287345624(約1京)
素早さ:24
器用さ:18
耐久力:7348643073469(約7兆)
魔法力:2
知恵:7
特殊:オイル風コーティング

神官シルフィー
性別:女性
レベル:9999
力:200(装備品により)
素早さ:3
器用さ:6
耐久力:3
魔法力:34985765(約3500万)
知恵:234
特殊:アンデッド消滅
   完全ヒーリング
   力100倍の指輪


 つづく





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