最強!レベル1勇者パーティ

【王道の酒場】
「「「「「かんぱーい!」」」」」
一行は酒場にいる。
RPGの基本とも言える酒場。ケルトも憧れの一幕だった。
ずっと極貧だったため、賢明なる読者はお分かりだろうが一度も彼らは酒場に行っていない。
「お酒って初めてっ。」ソラもテンションが上がっている。
「わらわも酒場は初めてじゃ。」教会にずっといたシルフィーも同様である。
乾杯から数秒後。いきなりコテンと寝たのはソラ。
彼女の楽しいひとときは3分以内で終了する。
凄まじいパワーを持つ彼女だが、アンデッド苦手、魔法苦手、スピードの速い相手苦手・・・さらには酒が弱かったことが判明した。
超人で距離を置きたくなるような存在だが、そんな欠点が距離を縮める。
気持ち良さそうに寝るソラを見て、ケルトは愛おしさを感じる。
一方、シルフィーはいける口なのかあっという間にジョッキを開けていく。

「おい・・・あいつらだぜ、カマイタチを殺ったの。」
ガラの悪そうな男たちがケルトたちのテーブルを囲む。
「よー、お疲れさん。やったじゃねぇか。
・・・・それにしてもすげえメンバーだな。翼付の怪物にオーガー、それにチビ男とチビのねーちゃん。」
多少酒が入ってるとは言え、明らかに元々荒くれモノといった感じの連中だった。
「フン・・・無礼な口もたいがいにしておけ。」気位の高いシルフィーは早くも『チビのねーちゃん』呼ばわりでカチンと来ている。
「おっと悪い、気に障ったか。」ベルの視線に気づき、謝る。
テーブルの最奥の方からガンを飛ばしてチンピラを追っ払ったのだ。一般的には魔術師の役割ではないが・・・
「おい・・・おまえら、何ビビってんだ!?そいつレベル1だぞ。」
一瞬の静寂。その後、酒場は大爆笑。
「ヒーッヒヒヒ・・・レ・・・レベル1〜!」
「そのチビの優男もレベル1だってよ〜」
するとダン!とテーブルを叩き、シルフィーが立ち上がる。
「下衆共が・・・一回だけ淑女のゲームをしてやろう。誰か1人、腕相撲で勝負じゃ!わらわが勝ったら即刻ここから出て行け!」
またもや一瞬の静寂。その後、酒場は大爆笑。
「おいおい・・・勘弁してくれよ。そんな細腕で何ができるってんだ?相手になんねぇよ。」
見た目で言えば、確かに男の言うことは尤もである。この男は大柄で多少腹は出ているが、腕っ節が強そうだ。
「さっさと相手をせぬか!」
「そんなペッタンコの胸じゃ、ベッドの相手もお断りさ。おじさんねぇ・・・ロリコンじゃないのよ。」
ギャハハハと荒くれ男どもは爆笑する。
さっきまでの楽しい酒盛りは台無し。
「あーそうだ。カマイタチで随分儲けたそうじゃないか。今、全財産賭けろや。そしたら勝負してやるぜ。」
もはや後には引けない。可憐な少女は怒りに燃えていた。
「上等じゃ。死ぬほど後悔させてくれる。」
そんなやり取りをライラはニヤニヤ見ていた。
「シルフィーは若いねぇ、喋りは婆臭いけど。」
ライラはこれから起こるであろう大男の無様な姿を想像して、それを酒の肴にしていた。

【愛の形】
見た目は実に滑稽だった。180センチの巨漢と150センチのか弱い少女がテーブルを挟んで対峙している。
「良いか、ちゃーんと5000ゴールド払うんだぞ。」
「払ってやる。わらわが負けたらな!」
勝負開始。
シルフィーが一気に攻勢をかけ、テーブルに男の手の甲がつく寸前で止める。
「フン・・・口ほどにもないのう。さっきまでの威勢はどこへ行ったのじゃ?」侮蔑の言葉を投げかける。
「え・・・ぐ・・・・ぬ・・・・ディィヤアアアアア!!」
気合の声を上げるものの全く動かなかった。
シルフィーの力は現在200。マッチョマンと言われるベルが18。
ちなみに普通の人間の限界は20程度と言われ、オーガーで60といった所だ。
その「限界」は冒険者登録をしてレベルを貰い、レベルを上げることで多少の限界突破は可能である。
だが、200まで来ると到底人間の手に負える数値ではない。
「押し返せぬようじゃな?なんなら両手を使っても構わんがのう・・・ただ・・・親切心で言ってやると片手の方が良いぞ。」
「ち・・・・ちきしょ・・・・!!」
こ・・・こんなはずでは・・・。だがプライドにかけて両手は使いたくなかった。
「自分の愚かさを痛みで償え!」
ガン!バギ!
「ぐああああ!!」
男の手は使い物にならなくなっていた。手の甲が衝撃で壊れ、シルフィーの握力で全体的に潰れていた。
テーブルも真っ二つに割れている。
「ハッハッハ・・・治療費5000ゴールド払えばわらわが治してやらんでもないぞ。
わらわのアドバイス通り、片手で良かったじゃろ?両手を潰されるよりはな!」
勝ち誇るシルフィー。すると・・・・
「そこまでだな嬢ちゃん。ちょっとやりすぎた。」抜刀する荒くれ者達。
「悪いのはそっちじゃろう?ケルトとベルをバカにした報いじゃ。」抜刀にもビビらず、言い返すシルフィー。
ケルトは男達の殺気と迫力でちびってしまう。
「あん?レベル1の雑魚は雑魚だろ?生きる価値もねぇゴミよ。」
すると・・・次の瞬間、一瞬のうちに間合いに入ったライラがハイキックを繰り出し、男の首筋でピタッと止める。
「次言ったら首から上が無くなるよ。」ライラもいい加減この連中を追い出したくなったようだ。
さすがに元海賊。場慣れしているのか、ライラの目力からくる迫力はシルフィーのそれとは異質だった。
「いいか、この2人はなぁ・・・・雑魚よ。だが・・・雑魚呼ばわりしていいのはアタイだけだ。」
「ちっ・・・憶えてろ!」悪役の名台詞を吐きながら立ち去る荒くれ者たち。
非常に面白いことに、シルフィーもライラも「ケルトとベルがバカにされた事」で一番キレていた。
何気に皆の心をまとめるのにケルトは一役買っている。
「みんな飲みなおそうぜ。なぁケルト・・・あんたを苛めて良いのはアタイだけだよ。」巨乳にケルトの頭を挟みながら言う。
物怖じしない2人の女性に精神力の面でも完敗してしまったケルト。
力でも当たり前のように勝てなかったがそれに追い討ちをかけられる。とりあえず飲んで忘れよう。
「ムニャムニャ・・・もう飲めニャイ・・・・」ソラがこう呟いてダウンしている間、4人は夜明けまで飲み明かした。

【弾丸特攻ベル】
「は?今なんつった?」
「だから・・・レベル上げてやるっつってんの。武器からしてケルトは無理だけどさ、ベルはいけるって。」
ライラはベルと話していた。
ケルトが取ってきた仕事。それはゴブリン以来、ついにやってきたお手ごろ依頼。
「オーク退治」だ。
「きっとラストチャンスだって。アタイに任せな。」
こうして2人の予行練習が始まった。

北の外れ町。それは言い換えるとベルンダ王国とその他無法地帯との国境前線とも言えた。
とは言え特定の国家があるわけではないため、大規模な正規兵は駐屯していない。
だが、時としてモンスターが襲ってくることがあり、今回の依頼は襲ってくるオークの撃退である。
「じゃあ・・・今回の作戦。」ケルトが戦闘直前に確認する。
「ソラは待機。ゴブリンのときと同じく、危なくなったら僕を助ける。」実に情けない命令だ。
「うん。」スッと戦闘モードに入るソラ。この表情の変わり方がケルトには堪らない。
「そしてライラ・・・はベルと何かやるんだよね?」
「こっちはこっちで勝手にやるよ。ベルの命はアタイが保証してやる。」自信満々に胸を張る。いや巨乳を張る。
「あと・・・シルフィーは?」
「片っ端からブン殴ってくれるわ。ソラやライラは今までさんざん良い思いしてきたんじゃのう・・・。」
「でも・・・シルフィーはこれ以上レベル上がらないよ。」
「黙れケルト。わらわはこの力をふるいたいのじゃ。」もはや聖女の面影は完全にない。むしろ悪の魔王が吐きそうな台詞。
そしてすぐさま戦闘開始となった。
ケルトはレイピアを振るいながらオークとタイマンを張っている。
相変わらず攻撃はたまに当たるが大きなダメージを与えられない。
この弱い細身の剣をいい加減変えたいのだが貧弱なケルトにはこれ以上重いと扱いきれない。
タイマンの最中、たまにもう一匹が来て1対2の状況にもなるが、そうなるとソラがフォローに入り、無表情のままオークを引き裂く。
ブチブチとカニの手足をもぎとるかのごとく、オークの手足を引っこ抜いていた。
その後、両手両脚の無くなったオークを足で踏みつけてグチャグチャとひき肉にしている。
ケルトの体の全肉量よりも多いであろう大腿のそれぞれの筋肉がびくびくと震えていた。
ホントはもっと暴れて何匹も殺したいが、手持ち無沙汰という状況。
実に退屈そうだ。ごめん、ソラ。
隣では瞬殺劇であるが、とにかくケルトは目の前の敵と一生懸命戦う。長期戦に突入だ。
これだけソラに援護して貰ってるのだから、期待に応えなければならない。
シルフィーの方は武器も無く殴っていた。細腕の可憐な少女の一撃はとても弱そうだが、実質はオーガーの3倍以上の破壊力。
見た目に騙され油断しているオーク達は面白いように狩られていく。頭を殴られると頭蓋骨は割れ脳挫傷を起こし倒れる。
「行くよ!ライラ・ベル混成部隊、出る!」「おう!」
ライラとベルはタッグを組んでいた。空を飛べるライラはホバリングしながらベルを抱え、狙いを定める。
ブンっとベルの大柄な体を足で弾き飛ばし、ベルは大剣をまっすぐに伸ばす。
恐ろしい勢いでオークに突っ込んだベルはオークの体を大剣で切り裂く。ベルの勢いは止まらない。
か・・・壁にぶつかる!
だが、すんでのところでライラがキャッチ。
ベルを投げ、投げたライラが、先回りしてベルをキャッチするという無茶な作戦をやっている。
ベルを弓矢の矢のように扱いオークを倒していく。
そうこうしているうちにオークは全滅。ベルは7匹のオークを倒していた。残りの95%はシルフィーが倒している。
「レーベルアップおめでと〜♪
レーベルアップおめでと〜♪
レーベルアップデイアベールー♪
レーベルアップおめでと〜♪」
ベルを除く4人の大合唱!驚いたことにライラもシルフィーも歌っている。特にライラはセイレーンだけに美声だ。
ついに・・・魔術師ベルのレベルが上がった。
ちなみに、勇者ケルトは始めて1匹のオークを自力で倒していた。レベルアップは・・・しなかった。

魔術師ベル
性別:男性
レベル:1→2
力:18
素早さ:2
器用さ:4
耐久力:15
魔法力:22
知恵:7
特殊:食事召喚


 つづく





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