無敵!レベル1勇者パーティ

【帰路へ】
「魅了の仙人」に会ったのでケルト達は目的の半分を達成した。
この大陸に来てからというもの、予想よりはるかにパーティの実力は上がっている。
だが、予想よりケルト自身の実力が上がっていない。
あとは「冥界の仙人」のみだ。今度こそ。そんな思いを胸に、ケルトは歩み続ける。
恐らくアンデッドの類を操れるのだろうが、このさいパワーアップの方法は一切問わない。
ソラの苦手なゾンビとか使えるようになったら、ソラに対して優位になれるかも知れない・・・
それどころか勝てちゃうかも知れない。妄想してるとワクワクが止まらなくなって来た。
冥界の仙人は最初に上陸した地点から近い。
反射の仙人がいた、今はドラゴンの攻撃により焼け焦げてしまった森を通過する。
「・・・。皆・・・死んでしまったネ・・・」悲しげにつぶやくレッカ。
フェアリーの集落の付近は何もなくなっていた。
そんな沈痛な面持ちでいたとき、突然現れるのは巨大な、そして大量の虫達。
「うは・・・メチャクチャいるぜ!」
ジャイアントスコーピオン、ジャイアントスパイダー、ジャイアントマンティス・・・
本能のモンスターは何も考えなくて困る。
体制を整える間もなく、いろんなところから一気に襲いかかってくる
「フェザーブレッド!」
「レッツサンダーブレス!」
ライラ、レッカが応戦。
「ひ・・・・イヤぁぁぁ!」ソラは・・・微妙だ。
と・・・そこへ巨大なクモから吐かれる白い糸の塊。
「う・・・うわあああ!」シルフィーが回避しきれずに白い糸に包まれる。
「シルフィー!」だが、他人の心配をしてる暇はない。レイピアで応戦するケルト。
「つ・・・!」
「大丈夫かケルト!」
「大丈夫・・・かすり傷だよ!ベルも気をつけて!」
ベルは大剣を振り回していた。当たらないものの牽制としては機能していた。
隙を見てバリアを張りたいのだが、乱戦になると相手ごとバリアの中に入れてしまう。
「くそ・・・キリがねぇな!」まともに動けているのはライラとレッカ。
ソラは腰が引けながら空振りパンチ。強烈な拳圧でクモを申し訳程度に倒す。
「オッケー!リバース完成ネ!」レッカが叫ぶと、次の瞬間に炎の嵐!
とんでもない広範囲に炎が舞う。ドラゴンの魔法力を取り込んだおかげでリバースダンスの範囲も一気に広がっていた。
虫は本能的に火を嫌う。これは効果がかなりあり、一気に虫達は散っていく・・・・

【勇者の最後?】
何とか勝利だ。数が多いとライラやレッカが頼りになる。
「バリアー!」
まずはバリアを張って場所を確保。これ以上の襲撃を防ぐ。
6人の居場所をしっかりと作って建て直しをはからなければならない。
まずはクモの糸に包まれたシルフィーをなんとかすることに注力する。
「はぁぁ・・・怖かったよう。」ソラは泣きそうになりながらヘナヘナと座り込む。
ジャイアントスパイダーの糸の張力はかなり強く、普通の人間ではとても引きちぎれない。
だが、このパーティには普通の人間の方が少ない。ソラがダメでも人材はいる。
「Oh・・・ベトベトしてシツコイね!」怪力雪女レッカが糸の張力に負けず、はがしていく。
かなりの時間を費やし、苦戦しつつもシルフィーを救出する。
「やれやれじゃ・・・・。!!・・・・ケルト!?」
見るとケルトが倒れている。シルフィーに気をとられ、全員がケルトの異変に気がつかなかったのだ。
「イカン!」ダッシュで近づく。
ケルトは息をしていなかった・・・。
心臓も止まっていた。
「死・・・死んでおる。」慌てて蘇生の魔法を詠唱するシルフィー。
だが・・・
「み・・・・見つからん・・・・。」それだけ言うと絶句する。
しばしの静寂が訪れる。ケルトはジャイアントスコーピオンの毒で死んでいた。
巨像さえあの世行きと言われる毒だ。かすり傷から毒が進入し、命の灯火を消していた。
「ちょ・・・冗談きついぜ・・・蘇生の仙人なんだろ!?さっさと生き返らせろよ!!」ライラが絶叫する。
「ケルトの魂が・・・消えた。」シルフィーの顔が蒼白になっていた。
5分。
5分という時間は魂が天国もしくは地獄へ到達するまでの時間。
それまでに魂を掴めれば反魂できる。
だが、それを過ぎてしまうとシルフィーをもってしても生き返らせることはできなかった。
ケルトの魂は・・・5分以上経ち、四散していた。

メンバーはケルトの遺体を囲む。
「・・・。」ソラはあれから一言も喋っていない。
ライラはずっと泣きじゃくっていた。
ケルトは冷たくなっている。
「・・・ケルト。俺と旅に出たとき言ったよな?
どんなことがあっても一緒に旅するって・・・・何で先にどっか行っちまうんだよ・・・。」
パーティ最古参のベルも力なくうなだれていた。

【沈黙の行進】
「・・・火葬しよう。こんな訳分かんないとこで、ケルトが虫に食われるなんて耐えられねぇ。」ベルが埋葬を提案する。
が・・・
「レッカ、氷漬けにして。」ライラが言う。声に抑揚はなかった。
レッカは黙ってライラの言うとおりにする。
ケルトの体が芯から凍っていく。
「ああ・・・ケルト。これでアタイとずっと一緒だよ。アタイ・・・ずっとココにいる。
一緒だから寂しくないだろ・・・フフフ・・・」
「ワタシも・・・ここにいる。」ソラが重い口を開く。
「おい・・・2人共・・・・」一歩も動く気配のない2人。食事すらとっていなかった。
結局、その日は虫との激戦が行われた場所を離れることなく夜を迎えてしまった。

翌日、ついにベルはレッカとシルフィーを連れ出す決意をする。
あきらかにソラとライラは後を追う気でいた。
それも義理立ての一つの形だが、ベルはこのパーティで旅を続けることがケルトへの手向けと考えた。
「ホントにココにいるんだな?」ベルが最後に聞く。
「一緒だよ・・・いつまでも・・・ははは・・・・」ライラは完全に壊れていた。
「・・・。」ソラは返事もない。
すると・・・2人の前に立ったのはレッカ。
パン!パン!
ソラとライラをレッカが引っ叩いていた。
「まだ・・・まだ終わってないネ!冥界の・・・冥界の仙人がいるネ!
シルフィーだけなら無理かも知れないけど!諦めたら終わりヨ!
しっかりするネ!泣くのは仙人に会ってからにするネ!!」
レッカが拳を握って叫ぶ。
「おお・・・そうじゃ。死人の魂を操るのが冥界の専門家。わらわと組めばいけるやも知れぬ。」シルフィーの目が生き返る。
「「・・・。」」レッカの熱血に動かされ、ソラとライラはノロノロと歩き始める。

【冥界の仙人】
冥界の仙人への道のりはすぐだった。
その後、またしてもジャイアントスパイダーの集団が現れる・・・が今度はソラが突っ込んで行った。
無表情のまま、拳を振るう。
「・・・・。」そこには虫への恐怖はない。極限の悲しみが恐怖を遥かに超越していた。
もっと自分がしっかりしていれば・・・。激しい自責の念にかられる。
もう遅いかも知れない。もう見てもらえないかも知れない。
でもワタシ成長したよ。
ケルトに今の姿を・・・見せたい。
あっという間に虫を壊滅させ、森を抜ける。
地図の×印を頼りに歩を進めると家が一軒建っていた。あれに違いない。

「ワシが冥界の仙人じゃ。」出てきたのは年老いた男。ようやく仙人らしい仙人に会えた気がする。
「さっそくじゃが・・・この男の魂を紡いで欲しいのじゃ。わらわは蘇生の仙人。魂さえあれば蘇生できる。」
「ホッホッホ・・・訪れてきていきなり願いを言うとは、近頃の若者は礼儀がなっとらんのう。」
「俺たちにできることなら何でもする!」ベルが必死に頭を下げる。
「何だか知らぬが、その男に余程の思い入れがあるとみえる。
魂を紡ぐにはその者と深いかかわりのある者たちの『思い』が必要じゃ。
じゃがのう・・・ワシにもそういったものがおる。その手伝いをしてもらえばやってやらんでもない。」
「どーすればイイネ!?」熱視線を送るレッカ。
「そう早まるでない。ワシには最愛の弟子がおってのう。その者を生き返らせたいのじゃ。
ここに蘇生の仙人が来るとはワシも運が良い。ただのう・・・ワシの弟子が死んだのは随分前でな。
それを生き返らせるには多少の犠牲が必要じゃ。強き者の力がの。それをくれればワシの弟子は生き返らせられる。
どうじゃ?能力を犠牲にできるものはおるかの?」
「ワタシの!」「アタイの!」一気に前に出てくるソラとライラ。
「わらわでも良いぞ。」「ミーの力を使うネ!」シルフィーとレッカも立候補する。
「俺の・・・」
「お前はカスじゃからよい。」ベルの立候補は無視される。
ずいっと出てくる女性陣。話によると能力が削られるとの事だったが、そんなことは気にしなかった。
「ワタシの力を取って!千でも万でも億でも!!」ソラが熱心に自薦する。
例え自分から億単位の力が失われても・・・それでも「誤差」だった。
「ホッホッホ・・・1000もあれば十分過ぎるほどじゃ。大きな力は不幸を呼ぶからの。
しかし・・・普通1000もの能力は10人以上の人間が集まらねばならんのだが・・・
これだけの力を持つものがおるとは・・・世界はまだまだ広いの。」
冥界の仙人もソラのパワーに呆れていた。

【勇者の旅は終わらない】
「では蘇生の仙人・・・・頼むぞ。」冥界の仙人が意識を集中させる。
ソラから光のようなものが取り出され、冥界の仙人へと取り込まれる。
「見えるか?・・・・あれじゃ。」
「うむ・・・あの魂じゃな?」目を瞑りながらシルフィーも意識を集中させる。
魂を掴めば、後は死んだ場所のところに持って行き、体を蘇生するだけだ。
ソラのパワーをふんだんに使い、冥界の仙人の弟子はベルンダ王国の北の町付近で生き返った。
「うーむ・・・目の前で再開できぬのが残念じゃが、我が弟子は生き返った。
礼を言うぞ蘇生の仙人。それとそこの大きいお嬢さんもな。」
「じゃ・・・じゃあ次はケルトの番だな!」ライラが目を輝かせながら言う。2日前とは別人のようだ。
「まずはそなたら5人。この男の事を強く念じるのじゃ。余程の思い入れがない限り、魂は元には戻らん。」
5人は冥界の仙人に対面し、目を瞑ってケルトの生前の姿を思い浮かべていた。
幼馴染、学校時代からもずっと苦楽を共にして歩み続けた友の姿を思い浮かべるベル。
記憶を無くし、どこに行って良いか分からなかった自分に手を差し伸べてくれた暖かい姿を思い浮かべるソラ。
ギルドに教会が討伐され、死に体になった自分を救い出した恩人の姿を思い浮かべるシルフィー。
最初は意識していなかったのに、いつの間にか引き寄せられていた愛しい人を思い浮かべるライラ。
雪山から自分の足で踏み出す一歩を与えてくれた先生を思い浮かべるレッカ。
5人の思いが冥界の仙人に流れ込み、彼の術を強力に後押ししていた。
「む・・・・。なかなかこういうものは成功しないものなんじゃが・・・・その男は幸せ者じゃな。」
冥界の仙人が念じるとケルトの魂が再生成されていく。その様がシルフィーにははっきりと分かった。
「あれじゃ!」ガシっと掴む。完璧な手ごたえ。
これまで何度もケルトを蘇生してきた経験から、間違いないことを確信する。
「ヒーリング!!」これまでで一番の、蘇生の仙人渾身のヒーリング。
「解凍!」
レッカも同時に凍らせたケルトを元に戻す・・・。
「う・・・・?」目を開けるケルト。
「「「「「ケルトーーーー!!!」」」」」急に名前を呼ばれる。
周りを見渡すと皆が泣いていた。
ケルトには何がなんだか分からなかった・・・・

戦士ソラ  性別:女性
レベル:203
力:145987453978457930(約14京、能力値が1000ダウン)
素早さ:86    器用さ:66
耐久力:58473734864303(約58兆)
魔法力:3     知恵:9
特殊:オイル風コーティング
   変化(人魚)
   反射のポーズ

【戦果】
「まぁ命は大事にするが良い。そう何度も都合よくバラバラになった魂は戻せぬ故にな。
それと・・・ワシももう歳じゃ。この姿、この場所ではもう会えぬかも知れぬぞ。
さぁ、立ち去れ。」
そう言われ、冥界の仙人と別れ、家を後にする。
冥界の仙人から得るものは何もなかった。
ネタ切れとなったため、仙人と別れた後は当てのない旅か、もしくはベルンダ王国へ帰る事になる。
新たなパワーアップはしていない。
「あーあ・・・冥界の仙人からは何も得られなかったね。」そう一言呟くケルト。
しかし・・・
「んなわけねぇだろ!」ライラが膝蹴りをケルトへ見舞う。
「てめぇふざけんじゃねぇ!命を得ただろうが!」ベルも絶叫。初めて親友ベルから膝蹴りをもらう。
「どんな力よりもハッピーだったネ!」
「ケルトが生き返るんならパワーなんていらないモン!」
「恩知らずな事を言うものではないぞ!」シルフィーからも叱られる。
一言で思わぬ総攻撃を受けてしまった。ポリポリと後ろ髪を掻くケルト。


ここで総括してみると、以下のようである。
・ソラ
 人魚への変身魔法習得。水中での呼吸と泳ぎが可能になった。
 反射のポーズを会得。ポーズ中は動けないものの苦手だった魔法の跳ね返しが可能に。
 また、本人曰く「グロテスクなものでも大丈夫」になったようだ。
・シルフィー
 とくに習得したものはなし。
 ただし薬剤の仙人から素早さが上がる薬と背が伸びる薬を調合してもらっている。
 ここ一番のレベルアップ直前で使う予定。
・ライラ
 人間への変身魔法習得。
 飛べなくなりフェザーブレッドが使えなくなるのでこれはむしろパワーダウン。
 鳥用の失敗薬を飲んだことで耐久力が飛躍的に上がった。
 また、昔は豪脚のみだったが、今は力が全般的に上がっている
・レッカ
 ゴールドドラゴンを倒し、大幅レベルアップした上、その能力を取り込んでいる。
 力、耐久力、魔法力の大幅向上と電撃系の魔法の習得。
・ケルトとベル
 特になし。


 つづく





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