ガッシャアアアン!!
けたたましい音と同時に、部屋の中に真っ二つになったドアと一緒になって大柄な男が突然飛び込んできた。
「誰だ!!・・・いや、こいつは見張りの・・・!?」
「何が起こった!?」
 中にいる数十人の、屈強な男たちが一斉に色めき立つ。
しかし、部屋の中に乱入してきた男はピクリとも動こうとはしなかった。
この男は自発的にこの部屋に飛び込んだのではなく、何者かに叩き込まれたようだった。
中にいた男たちの1人がその男を引き起こして様子を見て・・・そして血相を変えた。
「お、おい!何があった!?誰にやられたんだ!」
 しかし、その問いに男は答えることはなかった。
顔面がまるでバナナのように曲がり、眼球は両方とも半分以上飛び出しかけている。
驚きのあまりつい手を離すと、その男は力なく崩れ後頭部を床に強打した。既に絶命していたのだ。
「ひ、ひでえ・・・」
「一体何者だ・・・こんな殺し方する奴は!並の力じゃねえ・・・」
「くそっ、なめた真似しやがって!出てこい!!」
 1人1人凶悪な顔立ちをした大男たちが一斉に、なくなってしまったドアの向こうを睨みつける。

 と、入り口の向こうからコツコツという硬い靴らしき足音が聞こえてきた。
「あなたたちもあの組織のメンバーなんでしょ?少し、聞きたいことがあるの」
その足音とともに聞こえてきた声は、若い女のものだった。男たちの間に、ざわめきが広がる。
足音を響かせながら颯爽と室内に入ってきたその姿に、男たちは息を飲んだ。
「か、頭!あの女、まさか噂の・・・」
「何っ、あの女がここに現れたとでも言うのか!?ま、まさかそんなはずが・・・」
 そう言いながらも、頭と呼ばれた男はうろたえを隠しきれなかった。

 中国全土にその影響力を持つといわれるこの凶悪組織は最近、相次ぐ奇妙な事件に揺れていた。
各地の支部が突然何者かの襲撃を受け、その場にいた構成員が皆殺しにされるという事件が。
ある者は内臓破裂、またある者は身元もわからないほどに顔面が陥没し・・・
その襲撃を受けながら奇跡的に一命を取り留めた1人の構成員の証言によると
襲い掛かってきたその存在とは、チャイナドレスとも水着ともつかない衣装を身にまとった、
たった1人の女であるというのだ。
その女はこの世のものとは思えない圧倒的な力で、自分たちに何の抵抗も許さず
まるで狩りでもするかのように次々と無残な死をもたらしていったのだという。
そしてその女が自ら口にした、『胡蝶拳のミンミン』という名前・・・
それだけの情報をやっとの思いで話して、その男も息を引き取ってしまった。

 今目の前にいる若い女とその噂を照らし合わせながら、この支部No.1の男は背中に汗を浮かべた。
と同時に、そのあまりに無防備な肢体に股間を熱く刺激されていた。
鮮やかな純白の、チャイナドレスを過激にアレンジしたような扇情的な服装。
胸元が大きくカットされ、豊満なバストをさらに強調して男を誘い込んでいるかのような
ほとんどビキニ型の水着同然の、肩も腰も背中もおへそもあらわにしたきわどいコスチューム。
そして下半身は股下わずか数cmの、しかもサイドに深々とスリットの入った超ミニスカート。
男の劣情を刺激せずにいられない、スラリと長く伸びてそれでいてむっちりと太く肉付きのいい脚が
スリットを窮屈に押し広げミニの丈をさらに危ういものにしている。
そしてその美脚をさらに美しく演出する、ヒール高10cmはある光沢を放つブーツ。
それは拳法着というより、むしろどこかのキャンペーンガールに近いエロチックな衣装だった。

「今うちの仲間を殺ったのは貴様か?女」
「だったらどうだというの?」
 手を腰に当てながら、さも当然であるかのように女は答えた。
その態度に、周りの男たちからは怒号が飛び交った。仲間を殺された憎しみか、それが女の手によるもの
だったことへの無念さか。
ざわつく男たちを制し、頭がさらに問う。
「では聞くが・・・貴様か?ミンミンという女は」
「あら、思ったより詳しいのね。・・・それなら話は早いわ。
早速話してもらいましょうか。あなたたちの親分さんの居所を、ね」
 頭のもとに、ミンミンと名乗る若い女はモデルのような悠然とした足取りで歩み寄る。
「このっ・・・何の用だ、貴様!!」
 頭とミンミンとの間に1人の若い大男が割って入り、素早く殴りかかった・・・が、
 ゴッッッ!!
 ベッシャアアアアアア!!
「別にあなたには用事はないの。黙っててくれる?」
「なっ、何っ・・・!?」
「い、今いったい何が起こったんだ!?」
 男が女に襲い掛かった瞬間白い稲妻のようなものが走ったのを、その場にいた男どもは確かに目にした。
そしてそれが何であるのか把握する前に、その男は目にも止まらぬ速さで顔面から壁に正面衝突していた。
白かった壁は瞬時にして花火のように広がった液体によって真っ赤に染められ、
男はその鮮血で真紅の筆跡を残すかのごとく顔面をズルズルと壁に擦り付けながらゆっくりと崩れ落ちた。
もはや微動だにしなかった。即死だ。

「おとなしく知っていること全てをさっさと話してくれれば、私もあまり手荒な真似はしないであげるのに。
レディに手をあげたあなたが悪いのよ」
 先ほどまで罵声を発し続けていた男たちの口からは、いまや違う種類のざわめきが漏れていた。
明らかに、驚愕と戦慄がこめられたものへと変わっていたのだ。
「お、女!貴様、いったい何のつもりでここへ足を踏み入れた?」
 うろたえの感情を必死に押し殺しながら頭がミンミンに問いかける。
「私の名前は知ってるくせに、それは知らないのね・・・まぁいいわ。
あなたたちの組織に、私はとっても大事な用があるの。それだけ。
・・・わかったら、手っ取り早く親玉の居場所を教えなさい。あなたたち雑魚にかまう時間はそんなにないの」
 この短時間に2人もの、しかも選りすぐりの猛者が集う組織の男を惨殺しておきながら
眉一つ動かさず平然と語るこのミンミンという女を前に、凶悪組織内でここら一帯を取り仕切る支部長とも言える
頭の男は背中をびっしょりと冷たい汗で覆わせていた。
今まで我が組織の、様々な街の支部がたった1人の女に襲撃され壊滅させられているという噂は本当だったのだ。
人間の能力を超えた戦闘能力で数十人もの屈強な男たちをものの数分で1人残らず破壊し尽くした、悪魔のような女。
その女が今、ついにこの支部にも襲来したのだ・・・頭は、怯えた。

「このアマ、ふざけやがって!!」
「そんな格好で、犯されに来やがったのか!!」
 頭に近づこうとするミンミンの前にまたも2人の男が立ちはだかって、そろって鉄パイプを一斉に振り下ろした。
「やめろ!!むやみに突っ込むんじゃ、ね・・・」
 頭が2人に対して最後まで言い終わる前に、

 ベキャアアッ!!

「ま、まただ!・・・やはりこの女、ただもんじゃねえ!なんて蹴りしてやがる・・・」
 頭は全身に鳥肌を立てて青ざめた。
2人の手下が鉄棒で殴りかかると同時に、また女の前で白い軌跡が鋭く走ったのが見えた。
そして次の瞬間には、片方の男が首を真横に90度以上傾けてなぎ倒され、
もう片方の男は瞬時にして根元から折れ曲がった自分の鉄パイプを頭蓋骨にめり込まされて倒れ伏した。
2人の大男をまとめて回し蹴り1発で瞬く間に絶命させてしまったミンミン。
しかし、それだけでは終わらなかった。

 シュパアアアアッ!
「あぎゃあああああああああああああ!!」
 ミンミンは男たちの目で追えないようなスピードでさらに1人の男の前まで間合いを詰めると、
間髪入れずに高く鋭く伸びた蹴りが男の顔面を深く切り裂いていた。
彼女のヒールが描いた弧に合わせて、男の血が鮮やかに舞った。
その蹴りはまるで刀のように鋭利で、男の顔は鼻も口も中央でパックリと切断されきれいに2つに分かれた。
血液がスプリンクラー状に散布され、想像を絶する激痛に泣き叫びながら地面を転げまわる男。
しかしミンミンはその動きすらも封じ込めてしまう。彼女白いブーツが、男を踏みつけて固定したのだ。
ブーツの高いヒールが、男の首筋を捕らえてピンで止めたかのように押さえつけてしまう。
「ふふっ。どう?そのアングルから見た私の脚は。きれいでしょ?」
 グギリッ、ブキゴキィィッッ!!
「ぐぎぇええ!!ぉ・・・」
 ミンミンのブーツの下で鈍く耳に残る音がしたかと思うと、男は一瞬だけ激しく痙攣したのち動かなくなった。
細く高いヒールが・・・男の喉仏と頚動脈を無慈悲に踏み躙り、完全に破壊してしまったのである!
まだ少女の面影さえ残る若い女は、男をこともなげに踏み殺してなお余裕の表情でつぶやいた。
「素直に言うことを聞いてくれれば、私もできるだけ穏便に済ませてあげようと思ってたんだけど・・・
私に余計な手間をかけさせてくれた罰よ。ここにいるみんな残らず、この場で死んでもらうわ」

 その言葉とともに口元をかすかに吊り上げて微笑んだミンミンを見て、その場にいた男全員の背筋が凍りついた。
「うわあああ!!逃げろ!」
「た、助けてくれえ!!」
 凶悪な闇組織の構成員たる威厳もどこへやら、数十人の男たちはうわずった悲鳴を上げて
我先にとこのアジトの出口めがけて殺到した。
しかしそのとき、走る男たちの群れを追い越すようにして1人の男が眼球と脳味噌を撒き散らすようにしながら空を飛び、
猛スピードで出口付近の天井に激突して床にベチャアッと落下した。床に真っ赤な飛沫が広がる。
次なる犠牲者が出たのだ。
男たちが恐る恐る振り返るとそこには誰もいない。
「どこを見ているの?こっちよ」
 声にしたがって再び前を向くと、早くもミンミンはこの部屋に1つしかない出口の前に立ちはだかっていた。
「あなたたちは、そうやって泣き叫びながら命乞いをしてる人たちを、一度でも助けてあげたことがあるの?」
 そのセリフとともに、ミンミンは先頭にいた5人の男の真ん中に風のようにすばやく入り込むと
「ヤッ!!」
 ズピュウゥッ!
 超ミニスカートを華麗になびかせて飛び回し蹴りを放った瞬間、
周囲の5人の男の頭が一斉にその胴体から分離され、コマのように回転しながら宙を舞った。
5体の屍はそろって噴水のごとく赤黒い大量の液体を噴出させ、全く同時に膝からゆっくりと折れて床に潰れた。
残りの男たちの口からは悲鳴さえ失われた。その場にへたり込んで黄色い水溜りを作っている男もいる。
「逃げられないのよ、どうせ・・・この私の美脚で終わりを迎えさせてもらえるんだから、光栄に思えば?」
 ミンミンは恐れおののく男たちを平然と一瞥しながら、部屋の照明に照らされて眩く輝くその美しく逞しい太腿を
しなやかな指でゆっくりと怪しくなぞると、また口元をニヤリと吊り上げた。

 ボッゴオオオオオ!!
「ぐぎゃああああああああああああああああああ!!」
 ズボオオォッッ!!
「がぐぅが・・・っご!!」
 ズバァ、ビチュウウゥッ!!
「ぴぎゃぁああおおおおおおおおおお!!」
 ブシュウウウゥゥ!!
「ぷぎぇえええ・・・ぁがあ!」
「お、お願い、ゆるし・・・ぶぇご!!」
 そこは、まさしく地獄絵図と呼ぶにふさわしい光景であった。
ミンミンがその拳法家としてあまりに相応でない刺激的なタイトミニから伸びる超美脚を豪快かつ優雅に乱舞させるたびに、
男たちは次々と人間としての原形を失って廃棄物へと変化させられていく。
時間にしておよそ1秒あたり1人の男が、ミンミンの純白のハイヒールブーツの前に
突き刺され、蹴り砕かれ、切り裂かれ、そして踏み躙られて処刑されていく・・・
「私のスカートの中が見えるとき、それは即ちあなたたちの最期の瞬間よ。
どうせなら冥土の土産にしっかりその目に焼き付けておいたらどう?」
 冗談交じりに言うミンミンの前で、なおもとどまるところを知らず男たちの惨殺体は幾重にも積み重ねられていく。
下顎を粉砕され、鼻の穴から脳味噌を噴き出し、頭部を胴体にめり込ませ、頭蓋骨の上半分を真横にスライスされ、
肋骨全てを内側に圧し折られ、後頭部を爆破され、首から上を完全に切り落とされた男たちの骸が。
決して広くはないこのアジトの室内は、逃げ惑う男どもの裏返った悲鳴と断末魔の絶叫、人間離れした打撃音と
骨が砕け肉片が飛び散る音、夥しい血が噴出する音と女の笑い声がこだまする悪魔の空間だった。

「・・・さて、残りはあなた1人になっちゃったわね。どう?お話してくれる気になった?」
 頭の男1人を除いて支部の構成員は全滅。文字通り血の海に沈められている。
静けさを取り戻した室内にミンミンのヒールの音がコツコツと響き渡り、男は奥歯をガチガチと震わせていた。
「か、かかか勘弁してくれ・・・」
「私の両親もそうやって必死に許しを請ったのに、あなたたち組織の人間はまるで聞く耳持たなかったわ」
「そ、そのことは謝る!俺がしたことじゃないが謝罪する!だ、だから、だから助け・・・」
「謝って済むことだと思ってるの?私はあなたたちの親玉にこの怒りをぶつけないことには収まらないの。
だからさっさと話しなさい。知ってること全てを・・・ね」
「そ、そんな!・・・組織の秘密を口外でもしたら俺はただでは・・・」
「あとでお偉いさんにお灸をすえられるのと、私に今すぐ殺されるの、どっちがいい?ん?」
「ひぃぃ!!お願いですから許してください!!ゆるして・・・」
 シュッ!
「ひっ、な、なんだ・・・?・・・ぐわぁぁ!」
 必死に顔の前で両手をかざしてじりじりと後ずさっていた男は、目の前で風が起こったように感じた。
次の瞬間、男の両手は自分の意思に反して真下に垂れ下がってしまった。・・・動かない!
「ふふっ、腕の腱を切ってあげたのよ。これでもう両手は使い物にならないわね」
「そんな・・・ぎゃああああ!!」
 自由がきかなくなりダランとぶら下がっているだけの両腕を目の当たりにして、
ついにあの惨劇が自分に降りかかってくることを悟った頭は、レイプ魔に襲われた少女のような叫びを上げて
ミンミンに背を向けて全速力で逃走を図った。
「無駄よ」
 シュパッ!
「う!ぅぎゃああああ!」
 ダンッッ!!
 ミンミンの脚がかまいたちとなって、今度は頭の太腿のあたりを襲った。
その直後、頭は脚の動きを完全に封じられてしまい、手で受身も取れないままうつ伏せに顔から倒れこんだ。
「脚も使えないようにしてあげましょうね。少しは素直になったかしら?芋虫さん」
手足の機能をもがれて、腰で這いずるしかできなくなった哀れな男の後頭部にミンミンのハイヒールブーツが君臨した。
「あなたはほんとに、私に無駄な手間をかけさせてくれるのね・・・そんなにジワジワ死にたいの?
この際だからお望みどおり、時間をかけてゆっくり処刑してあげてもいいわよ。どう?嬉しい?」
「ひぃぃ・・・いやだ、いやだあああああああ!!」
 ブーツの下敷きにされながら泣き崩れる男。大粒の涙が床のコンクリートにしみこんでいく。
「でも安心して。あなたには組織について知ってることを洗いざらい話してもらわなくちゃいけないから、
それまではお口だけはちゃんと動くようにしといてあげる。やさしいでしょ、私って」
「しゃ、しゃべる!すべて、全て話します!!だ、だから・・・お願いですからぁ・・・」
 この地域一帯を暴力で支配してきた闇組織の支部のボスは、まだ大人になりきれていないような若い乙女の足の下で
涙と鼻水でコンクリートの泥を吸着して顔面を雑巾のごとく真っ黒にしながら泣きじゃくり、ついには失禁した。
男の面子など跡形もなく崩れ去り、床に顔を擦り付けられお漏らししながら泣いて懇願する哀れな芋虫の姿だった。


おわり





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