美沙 第7話

「どうしたの、浮かない顔して…」
「う〜ん、何か最近祐志の気持ちが…」
「そうね。相手が自分を思う気持ちの量って、わかっちゃうのね。不便な性分…、」
とある夜の、由紀と美沙の会話である。
好きになってもらうことで能力がアップするのだから、祐志の愛情の量が力に影響して当然である。
美沙は未経験の感覚に、悩まされてるのであった。
「まぁ、人の心を縛るわけにはいかないから、信じて想い続けるしか無いよね」
由紀は優しく美沙に言った。
“わかってはいるんだけど…”
美沙もまだ中学生、周りより成長は早いものの、精神的にもう少し成長が必要である。美沙の悩みは深まっていくのであった。

同じ頃、祐志も自室の自分の机の前で、腕を組みながら思い悩んでいた。
目の前には、乱雑に解かれたプレゼント包装の箱が3つ散乱してる。
今日はバレンタインデー。1つは理沙ちゃんの義理チョコ、1つは当然美沙である。しかしもう1つ…、
“相川かぁ…、困ったなぁ…”
そう、今日、クラブが終わった帰り道で祐志を待ち伏せしていたようで、チョコを手渡され、何も言わずに去っていったのだ。
チョコに添えられた手紙には、可愛い字で映画への誘いが書いてあった。
その相川というのはクラスメイト。そこそこ可愛いが寡黙で目立たない。
見た目は美沙とは対照的で、背が低く細身の体つきである。
それほど親密に話した記憶は無いのだが、2学期に一度、席が隣通しになったことがあるので、まったく会話してないわけじゃない。
“うーん、困った”
当然、学校では内緒とはいえ、祐志には美沙と言う恋人がいる。
断る以外の選択肢は無いのだが、祐志も美沙以外の女性を知らないわけで、
違う女性と付き合ったらどうなるのかと言う好奇心が消えない。
何より美沙以外の女の子に、恋愛感情を持たれた事など初めての経験である。
食い散らかしたチョコの包みを見ながら、祐志の悩みも深まっていくのだった。

その週末、祐志は美沙の家に遊びに行った。今日は理沙ちゃんがお出迎えだった。最近急に背が伸び始めたようだ。
“そういえば美沙も4年の時、急に背が伸び始めたよな…”
なんて祐志は美沙の4年の頃を思い出すのだった。
「あり?姉ちゃんは?」
「部屋にいるよ。」
「なんだ、スーパーグレート祐志様の登場だと言うのに、出迎えは無しか…、」
「そのかわり、スーパープリティ理沙様がお出迎えよ。」
なるほど、確かに可愛い。芸能界にスカウトされる程かかどうかは置いといて、近所でもそこそこ美人姉妹で通ってるし、
その上理沙ちゃんは身長が伸びたのもあるが、最近大人びてきた気もしなくも無い。でも、祐志に向ける笑顔は昔と変わらない。
祐志は、美沙一家の優しさに改めて感謝するのだった。
祐志は部屋に上がると、美沙は笑顔で待っていた。普通に何気ない雑談をする。しかし…、
“ん?”
祐志の心の中で、何か違和感を感じる。何か美沙の笑顔が疲れてる感じがした。
その後は、やはり中2のヤリタイ盛り。場所を美沙の両親の寝室に移し、下半身の交流に移る。
いつもの様に、テクニックで圧倒される祐志。だが、今日は美沙に心なしか余裕が感じられないように見える。
何か、想いをぶつけるかのようだ。といっても、体力テクニックで勝る美沙に力いっぱいぶつけられては祐志も堪らない。
何度目かの絶頂の後祐志は、
「ちょ、マジでもう勘弁してください…」
涙交じりに許しを請い、そしてやっと開放された。

全てが終わった後、ベッドで動けなくなる祐志。美沙は横に寝そべって、心なしか暗い顔をしている。
やりすぎて恐縮しているのだろうか?祐志は思い切って聞いてみた。
「美沙、何かあったか?今日はいつもと違うような…?」
「うーん、何も無いよ。ごめんね。」
“何がごめんなんだろう?”
と思いながらも、祐志はそれ以上はあえて聞かなかった。
気にはなるが、何も無いと言ってる美沙に、これ以上聞いても仕方が無いと思った。
ちょっと大人のところを見せておこうとそれ以上は深く追求しなかった。
夕方になり、そろそろ帰宅の時間だ。美沙は玄関で見送ってくれたが、今日は心なしか小さく見える。
その日の夜、相川に電話した。次の日、学校で二人で会って、相川に正式に断りを入れた。
帰宅間際、ふと美沙の家のほうを見ると、美沙が窓から覗いてた。この寒さの中、窓全開でこっちを見ている。
昨日の事が気になったので、夕方の遅い時間であったが、美沙の家にお邪魔する。
そこには、普段と変わらない美沙の笑顔が有った。
“昨日は何だったんだろう?”
祐志も疑問には思ったものの、美沙も元に戻ったようなので、少し安心した。
普段の美沙に戻ったので、祐志も起こった事を話す。
「ウチのクラスの相川って知ってるか?」
「あんまり喋ったこと無いけど知ってるよ。ちょっと可愛い子よねぇ」美沙も一応は知ってるようだ。
「チョコ貰ったんよ。どうも俺に好意を抱いているみたい。」
「ふーん、モテモテじゃん、祐志良かったね。」美沙も余裕である。
「良くないよ。結構困ってるんだぞ」あえて過去形を使わない祐志。
「で、どうするの?可愛らしい子よねぇ…」
相変わらず余裕の美沙、祐志はちょっとカチンと来たので、意地悪を言ってみた。
「まぁ、ズン胴怪力デカ女の尻に敷かれる生活から、小さくて可愛い子と未来を築くのも良…」
言い終わらないうちに、ヘッドロックを決められる。
「誰がモデル並みのナイスバディですって?」
「ゲフゲフ、いや嘘です。マジ嘘です。ゴメ、ぐぎゃああぁぁぁぁ…」
美沙に力でこられると最初から諦めざるを得ない。祐志は必死で美沙に許しを請う。
「わかればよろしい」
美沙は放してくれた。
その後、しばらく他愛の無い話をした後、帰宅する。
変える間際、美沙は祐志に言った。
「祐志、本当にゴメンね。」
今度のゴメンの意味はわかった。きっと辛い選択をさせたことに対する素直な謝意だろう。
帰宅して、祐志は再び考える。
“まさか、昨日の美沙の態度って、相川の件も見透かされてたり…?”
と、疑問に思いながらも、それ以上考えるのをやめた。
元の関係に戻ったのだから、それ以上深く追求しても仕方が無いかと。それに…、
“ちょっとでもよその女に心が動くことを見透かされるようなら、案外辛いよな。”
と思うと、それ以上踏み込むのに躊躇したのである。祐志も案外臆病者である。
しかしその推察は、祐志は知る由も無いが、大正解なのであった。
付き合いが長くなると、超能力が無くても、案外相手の気持ちを掴める事も良くあるのである。

つづく





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