「週刊TUESDAY」 200X年11月20日号より抜粋

「スポーツ界激震!?女傑新人スポーツキャスター襲来!!」

 スポーツ番組の華、美人スポーツキャスター。
彼女たちの姿はこれまで、戦う男たちの強さ、激しさを伝える中での一服の清涼剤的存在と位置づけられていた。
しかし、である。
そんな常識を打ち破るかのごとく、1人の新人キャスターがここに誕生した。

 今回の番組改編シーズンから夜の人気スポーツ番組『独走!スポーツ情報』のアシスタント&レポーターを
務めることになった田島範子。
ご存知元女子水泳銀メダリストで、競泳界のワンダーウーマンの異名を取ったあの田島範子だ。
水泳を引退したあと、彼女はその持ち前の明るいキャラクターを生かしてタレントに転向した。
芸能界デビュー早々、彼女はこの人気番組に大抜擢されたのである。

 ただ単に元スポーツ選手がレポーターを務める番組なら掃いて捨てるほどあるわけで話題にもなりにくいのだが、
範子はもはやそれらとはモノが違う。これだけ巷で話題が沸騰しているその理由は・・・
読者の皆さんもご存知の通り、その女子スポーツキャスターとしては規格外ともいえる大きさ!
オリンピック出場時に我々の前に見せた、あの巨大で強靭な肉体の威圧感はまだ記憶に新しいところだ。
公式プロフィールによると身長180cmとなっているものの、それは何らかの配慮による偽装であることは明らかだ。
出演する番組でほぼ全ての共演する男を軽く見下ろしてしまうあの長身が、180cmどまりのはずがない。
おそらく、数字の面であまり大きいイメージを持たれて男たちから妙な目で見られることを避けたのであろう。
いわゆる、逆サバというものではないかと思われる。
 先週の放送分で公称187cmの某プロ野球選手にインタビューをした際、その選手のかぶっていたヘルメットよりも
彼女の頭のほうがわずかに高い場所に位置していた映像は今や語り草にすらなっている。
その選手が少々サバを読んでいたと考えても、彼女のほうが少なくとも187cmはあることは間違いない。
もし某選手が正直な数字を公表していたのだとすれば、範子の身長は190cmオーバーということになるが・・・
一体何cm低くごまかしているのであろうか。こうして女に背の高さで気を遣われてしまうことが、
我々男にとってとてつもない劣等感であるというのに。
 某選手にはさぞ屈辱であったことだろう。日ごろから大型内野手、スケールの大きなプレイが魅力・・・と
扱われ続けていた自分が、目の前の女より明確に小さいことを全国ネットの番組で流されたのだから。
ましてや、その選手の所属するチームは彼が最も大柄な選手であったのだから・・・

 スポーツニュースでいつも隣り合うメインキャスターの植田敏郎アナはかなり小柄なこともあって、
2人で画面に映れば植田アナの頭は範子の脇の下にも届いていない。
いつも番組の冒頭で2人が会話をするとき、植田アナが彼女を高々と見上げて話す姿は滑稽かつ悲惨ですらある。
まるで子供と大人の差だ。植田アナのほうが20歳以上年上であるにもかかわらず。
首から下が滑らかなラインを描くほどになで肩でひ弱な植田アナと、その植田アナの頭の上で
ぼこりと盛り上がった広い肩とそこから伸びる丸太のように太い腕を誇示するかのようにシャツから覗かせる範子。
植田アナがスポーツニュースを読み上げる間、アップになった植田アナの顔の横には
力こぶで割れ目の入った範子の豪腕がカメラの片隅に映り、視聴者をますます威圧する・・・

 この番組の製作者の某氏は我々取材陣に対し、苦笑しながらこう語った。
「範子を起用したことによって、独走スポーツ情報の方向性がすっかり狂っちゃいましたよ。
私は最後まで反対したんですがねえ。彼女を使うのを。
私たちの伝えたかったことというのは、限界を超えるべく苦しい戦いに挑み続ける
スポーツ選手たちの熱き思いと、彼らが生み出すパワーがいかに素晴らしいものか・・・だったんですよ。
それなのに範子みたいに選手よりでかくてムキムキの怪力女をレポーターに据えちゃったんですから。
取材を受ける側のアスリートのほうが明らかに見劣りしてちゃ絵にならないでしょ」
 そういって彼は数枚の紙を出してさらにひとつため息をついた。
「これは私の発案でアスリートたちの凄さを視聴者に伝えるべく始めるはずだった企画なんですが・・・
測定器のついたサンドバッグを各分野のトッププレイヤーに叩いてもらって、衝撃の値がどれだけ出るかを
ランク付けしていってスポーツ界ナンバー1のパワーの持ち主を決めようという、ね。
私たちは各地を回って測定しました。野球、サッカー、ボクシング、プロレス、相撲、ラグビー・・・」
 彼はその紙を我々に見せながら、
「まあ参考としましてね、最初に一般人代表として司会の2人にも試してもらったんですよ。
植田アナのほうは普通の人としてもかなり非力な方ですからトップアスリートとの比較にはうってつけの
低い数値が出たのでここまではよかったんですよ。ただね・・・問題はやはり範子のほうでした。
その数値を出してから私たちはこのサンドバッグを持って様々な選手にトライしてもらったわけですが・・・
誰一人として最初に範子のパンチが叩き出した記録、1,540kgにははるかに届かなかったんです。
キックボクサーのキック、相撲取りのぶちかましに野球選手のバットスイングさえも範子の腕力に負けたんです!
1人でもいいから誰か範子を上回って格好がつくようにしようと、私たちは必死に日本中を回りました。
・・・しかし、ダメでした。あらゆるジャンルの男子トッププレイヤーが彼女の腕1本に屈服したんです。
この企画は泣く泣くボツにしましたよ。女の司会者に力負けするスポーツ選手なんてあまりに惨めですからね」
 しかしそう嘆く某氏と対照的に、範子の就任以来この番組の視聴率は急角度の右肩上がりと聞くが・・・
「そう、そこなんですよ。私たちの目指す番組の姿勢とはもうかけ離れてしまったような現状ですが、
最近妙なファン層が目に付くようになりましてね。これを見てください」
 彼はあきれたような表情で我々に、番組宛に届いたメールをまとめた資料を差し出した。
『田島範子さんの大ファンです!毎晩彼女の筋肉が拝めるなんて最高!!』
『範子とガリガリチビの植田アナとのコンビが素晴らしい!頼れるお姉様みたいで素敵です』
『この間の小柄な陸上選手との映像がもう1回見たい!!範子さんは最強!!』
『競泳水着姿の範子ちゃんが男をなぎ倒すところが見たい』
『その力こぶにキスさせてください!!』
『範子様!!僕を犯して!!』
「もうこんなメールが、サーバーがパンクしかねないほど毎日大量に送られてくるんです。
わが番組も、なにやら変質的な層に目をつけられてしまったようなんです。
だから私は反対だったんですよ・・・」
 某氏はその後もしばらく頭を抱え続けていた。

 さて、そんな範子の驚愕の映像が実際に視聴者にさらされたのは、先日の格闘技ジムへの突撃取材の放送である。
範子が向かったのはバーリトゥードの世界に多数の選手を送り込んでいる、あの中田道場。
異種格闘技路線で一時代を築いた元プロレスラー、中田伸宏が主宰する総合格闘技団体だ。
そこで男たちの激しい練習ぶりを公開し、スポーツ選手の凄みを視聴者に届ける趣向だったはずなのだが・・・

 ジムを訪れた範子を迎え入れる練習生。もうこの時点で、番組制作者のもくろみは外れていた。
まだそこにいる男が練習生に過ぎずまだ出来上がった体ではないことを差し引いても、
日々トレーニングに打ち込んでいるはずの男が範子の前では爪楊枝のような体型にしか見えなかったのだから。
現役時代、競泳水着に包まれた鋼鉄のような筋肉でいつも我々視聴者を畏怖させていた範子。
引退後も変わらないその逞しい巨体は着ているTシャツをバチバチに張り詰めさせ、布地の上からでも
まるで裸のように筋肉の凹凸が確認できてしまう。
目の前の男と、どちらが取材を受ける格闘家なのかわかったものではない。

 ジム内にあるトレーニング機器がそろった部屋に足を踏み入れた範子。
すぐそばにあった1本のバーベルに目をやったその直後、
「うわぁ、おっも〜い。男の人って、こんな重たいのでトレーニングしてるんですね。すっごーい」
取材陣、選手、関係者、全ての男の表情が凍り付いていた。
範子が手にしたものは、両腕で持ち上げるために作られたベンチプレス用のバーベルだった。
道場内でもヘビー級の、ごく限られた人間しか反復して上げられない大きなバーベルを・・・
範子は片手で、微笑みながら上下させていたのだ!
「よいしょ、よいしょっと・・・きゃ、あたしには片手じゃちょっときついかな・・・」
シャフトの長い、両端に大きな重りのついたバーベルを肘を曲げてぐいぐいと持ち上げるたびに
道場の男たちでは望むべくもない巨大な力こぶが上腕に浮かび上がり、Tシャツの袖がミシミシと食い込んでいく。
「やっぱり、格闘技とかする人ってすごいですよね。こんなの軽々上げちゃうんですから」
 うっすらと汗ばみながら、範子はその何kgあるのか素人にはわからないほどのバーベルを
まるで片手用の鉄アレイでも扱うかのように手首の力で左右にゆっくりとカールさせている。
開いた口がふさがらない中田道場の男たち。
中には、口の中で奥歯がガタガタと音を立てている選手もいる。
誰も範子に対して、そのバーベルは本来仰向けになって両腕で持ち上げるものなんだよとは注意できないようだ。
自分たちが汗だくになってようやく1回持ち上げられるバーベルを片手で何度も持ち上げ手首だけでひねる女。
早くも、番組として成立しなくなってしまったようだ。

「あっ、こっちの小さいほうのダンベルって・・・」
 範子はバーベルを元の位置に戻すと、まったく疲れた様子も見せずに2つのダンベルを手に取った。
ジム内はまた言葉を失う。小さいほうといってもかなりの大きさだった。鉛の部分には80と書かれている。
片手で持つ自体この道場で出来る男はごくごく限られた存在であるはずの、80kgのダンベル!
「き、君は・・・一体どういう練習をしていたんだ!?」
 ジム内でもっとも大きなダンベルを小さいほうと言って簡単に2つ手に取る範子に、
道場主である中田が思わず血相を変えて問いかけた。
質問する側とされる側が完全に逆転してしまっている、情けない光景だった。
「どんなって・・・水泳ですけど?」
「そんなことはわかってる!泳ぐほかにいろいろあるだろう!
ウェイトトレーニングとか!やってないってことはないはずだ、その体で!」
「あぁ、そういうことですかぁ。あたし、これぐらいのダンベルならいっつも使ってました。
これ持ってスクワットとか・・・さっきみたいなおっきなダンベルは見たことなかったですけど」
 道場はざわめきに包まれた。我々視聴者も驚愕した。
持つだけで困難なあの80kgのダンベルを使っていつもスクワットまでこなしていたというのだから。
中田はますます、さっきのバーベルは片手で扱うものではないと言い出すことは出来なくなったらしい。
「あとは・・・泳いだりとか」
「なに?泳ぐって・・・」
「このダンベルを両手で握ったまんま、泳ぐんです。
水で負荷がかかったりして、最初はぜんぜん泳げなかったんですけど、
がんばって1kmぐらいなら何とか泳げるようになりました。
このトレーニングって腕の力つけるのにピッタリですよね!皆さんならどれぐらいできますか?
格闘技やってる男の人だから、余裕で5kmぐらい泳げちゃったりするんですかぁ?」
 80kgのダンベルを両手に持ったまま、自分がいかに人間離れしたトレーニングを積んだ怪物女であることを
まったく意識しないまま無邪気に道場の男たちに質問する範子。
男たちの表情からは、皆一様に血の気が失せていた・・・

 この日の放送は、伝説となったといっても決して過言ではない。
このあとも、道場の男が3人がかりで襲いかかっても歯が立ちそうにないほどのハイパーボディを盛り上げて
男たちの度肝を抜き続けた範子。
握力計を破壊し、サンドバッグに大穴を開け、パンチングボールを吹き飛ばし・・・
中田道場はしばらく練習場として機能しないのではないかと心配してしまうほどの、
まるで範子という名の台風が襲来したかのような惨状をもたらしてしまったのだった。
ネットの世界では早くも範子最強説なる理論が飛び交い、
中田道場も多くの選手を派遣する総合格闘技大会『PROUD』に範子がもし参戦を果たしたとすれば
日本人男子選手のほぼ全員が彼女の超人的パワーの前になすすべなく秒殺されるという意見が
格闘技関連のサイトの掲示板に一斉に張り巡らされて問題となっているとも言われている。

 だが、我々はある事実から目を背けてはならない。
これほどの肉体とパワーで我々男を震え上がらせる範子だが、オリンピックでは銀メダルに終わり
現役最後の大会では国内の予選で敗退したという事実を。
現役時代に範子の大きさがそれほどクローズアップされなかったのは、周りの女子選手たちも同等に大きく
単に範子が目立たなかっただけのことでしかないのである。
女子競泳界では国内外で、この範子と同様かそれを上回るパワーと運動能力を備えたアマゾネスが多数存在し、
そして近年さらに急増する傾向にあるのだから恐ろしい。
現在この原稿を執筆している時点でテレビのブラウン管に映っている範子の姿。
集まった数名の女子スポーツ選手にインタビューをしている映像だが・・・あの範子が周りに溶け込んでいる!
いつもは取材する対象のスポーツ選手を頭1つも2つも高い場所から見下ろしてマイクを向けるあの範子が!
画面に映っているのは、範子を含めて皆ほぼ同じ高さに頭が並んでいる4人の女だった。
どうやら、来月行われる世界水泳に日本代表として出場する女子選手3名へのインタビューらしい。
しかも恐るべきことに・・・うち2人に対してはあの範子がわずかに見上げながら話しているではないか!!
男子スポーツ選手でも滅多にお目にかかれないほどの筋肉がパンパンに盛り上がる肉体を超ハイレグの競泳水着からさらし、
ゴリゴリと音の聞こえそうなほどに割れ目のくっきりと刻まれた腹筋、背筋を水着越しに見せ付けながら
さわやかな笑顔でハキハキとインタビューに答える女子水泳日本代表・巨女アマゾネス軍団!
彼女たちの迫力に圧されながら、筆者はふと前述の番組関係者の元から手にした1枚のデータに目を通した。
サンドバッグでデータを測る企画の、各選手の記録一覧がこの紙には記載されている。
あの企画をボツにした後も、一応参考のため女子アスリートの記録も集計しておいたのだという。
載っているのは男女混合の、総合ランキング上位10名の名前と出した数値であるが・・・

1:梶原智子(水泳)   1,577kg
2:平川綾(水泳)     1,553kg
3:田島範子        1,540kg
4:山口佐知子(水泳) 1,500kg
5:安部依子(柔道)   1,489kg
6:高梨香苗(プロレス)1,446kg
7:相原恵(バレー)   1,388kg
8:大村加奈(バレー) 1,362kg
9:無双丸(大相撲)   1,310kg
10:深澤響子(女優)  1,309kg

 な、なんと・・・上位10名の中に男子選手は大相撲の横綱・無双丸が辛うじて9位にランクインしているにとどまり
国内スポーツ選手の中でパワーにおいてはほぼ女子に制圧されてしまっていたのだ!!
今回は全てのスポーツ選手が参加の対象になったわけではないことを差し引いても、
近年の女のパワーアップぶり、男の弱体化が明確な数字で明らかにされたのは紛れもない事実である。
数値を出すにはタイミングも重要で単に力ではないという言い訳は通用しない。
世界のランキングから年々水をあけられていく惨めな男子アスリートを尻目に、日本の女性アスリートは
常に上を向いて日々そのポテンシャルを上げていっていることがこのデータで明らかとなったのだ。
これは、放送を取りやめた局の気持ちもわかる。私が責任者でも、間違いなく躊躇う。
強さを失っていくと言われる現代の男の、最後の最後の砦である単純な力の強さにおいても
女にあっさり追い抜かれて何一つ誇れるものを失ってしまうのであるから。
中学、高校ではこうしている今でも様々なジャンルで女子スポーツ界の新星が生まれ、
男など軽く凌駕してしまうスーパーガールがすさまじい勢いで増殖しているといわれている。
・・・この放送をなかったことにした程度では、女の強大化は止められないようだ。

インタビューをする範子、そしてそれを受ける3人。この画面に映っている4人こそが、
先のランキングで上位を独占した競泳ハイパーウーマン4人衆である。
あの怪物・範子が3位どまりでしかない恐怖の超アマゾネス軍団!!
もしこの4人が自らの強さに覚醒し、男子格闘技の世界へと足を踏み入れることになったとしたら・・・
もしあのランキングで上位を占領した女たちや、さらに続々生まれているというアマゾネスの原石たちが
自らの世界だけに飽き足らず、更なる強さを求めて我々男の世界に目を向け始めたとしたら・・・
世界ランキングから日本人男子選手の名は瞬く間に消え去ってしまうかもしれない。
男の世界は女の手に奪い去られて放り出され、二度と取り戻すことはかなわないかもしれない。
来てほしくはないが近い将来、本当にやってくるかもしれない最悪の未来予想図に我々は焦燥、恐怖を覚えながら
ブラウン管に映る4人の、鋼のごとき肉体を見つめ続けていた・・・

 全国の女性アスリートの皆さん、お願いです!
これ以上、強くならないでください!!


おわり





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