プリズン筋肉 〜シーズン6

「Sコースのメニューも大分こなせる様になってきたな・・・
実はうちのジムにはXコースって言う裏メニューがあるんだ。
別料金だけど、プロのアスリートなんかも取り入れてるハードワークだ。
やってみないか?」
トレーナーの五十嵐さんの提案は、当時Sコースのメニューでは
物足りなさを感じていた私にとって、願ってもないものだった。
「はい!やらせてください!」
「君の成長には驚かされる」
白髪混じりの無精ヒゲをさすりながら五十嵐さんは答えた。
ベテラントレーナーの五十嵐さんは、今でこそ一線から身を引いたものの、
一時期はボディービルで渡米して活躍した実力者だった。
「本来なら、中学生の、それも女の子がやるようなメニューじゃないんだがね」
そう言いながら、五十嵐さんは鍵のかかった別室の扉を開けた。
屋上での一件以降、暴飲暴食が更に激化してしまった私は、
自主トレだけでは飽き足らず、隣町のジムに通い始めた。
日々の鍛錬により基礎体力の付いていた私は、メキメキ力をつけて
最近では大の男ですら息が上がってしまうメニューを軽々こなしていた。

「そんなに張り切ったらあっと言う間にボディービルダーみたくなっちゃうよ」
「いいんです。この胸、ちょっと大きすぎるし」
バタフライマシーンを操作しながら、私はMカップの超爆乳を強調した。
さすがの五十嵐さんも目のやり場に困っているご様子。
「私は・・・嫌いじゃないがね」
「私も、五十嵐さんみたいになれますか?」
私は館内に飾ってある20年以上も前の五十嵐さんの写真を指差した。
海外の名のある大会でタイトルを獲得したときのものだ。
「どうかな。でも、もしお望みなら我々も全力でサポートするよ」
五十嵐さんはそう言って微笑んだ。

中学卒業を目の前にして、私の体は再び変化の兆しを見せていた。

高校入学と同時に、私は全校の注目の的だった!
どこからか中学時代の噂が流れ出して、
執拗に迫ってくる先輩やら同級生やらを振り払う毎日だったんだけど、
ある日を境に、それはなくなったの。
それは、毎年恒例の校内腕相撲大会のこと。

新入生歓迎のお祭りみたいなものだったけど、
男女に分かれて各クラスの代表を決めてのトーナメントに参加
どのクラスも一丸となって応援する絵に描いたような学校行事。

女子の部の決勝は3年生同士の一騎撃ちになるはずでしたが、決勝まで勝ち進んだ私は、
校内の女子を仕切っている女子柔道部の主将、中野先輩と対戦することに。
私は巨漢の中野先輩に私はあっさり勝利すると、
会場である体育館内は男子生徒の大歓声と女子生徒の大ブーイングに包まれる。

空気を読んでわざと負ければよかったの?とも思ったが、それは中野先輩に対しても失礼だ。
「いやぁ、さすが守山さん。女子柔道部主将の3−A中野さんにもあっさり勝利!
その美貌でこの腕力!天は二物を与えてしまったようです!」
進行役の生徒が会場を煽る。会場は一気に熱気を帯びた。
「おっとここで、男子の部優勝はラグビー部主将の3−B島崎からの挑戦状だ!
・・・どうする?受けるかい?」
司会の生徒は毎年受けるのが伝統になってるんだ。と、私に耳打ちした。
どうも、これも恒例行事らしい。
差し詰め、男子が女子を打ち負かしてめでたしめでたしってところか。
「後で後悔しても知らないわよ?」

「それではこれより、毎年恒例のグランドチャンピォン対決を行います!!」
会場が大いに盛り上がった。誰もが1年女子を3年男子が打ち負かす姿を想像していた。

「では、改めて登場していただきましょう!男子チャンピォン島崎健太!!」
さながら人気レスラーの登場だ。
高校生とは思えない太い二の腕を突き上げながらステージに現れる。
巨漢女子柔道部と手合わせすると思っていたラグビー部の主将は、
予想外のエキシビジョンマッチに興奮を隠しきれない様子だ。
超が付くほどグラマーな1年生の噂は校内に響き渡っていたのだ。
実際に3Lサイズの体育着をはち切れんばかりに押し上げている爆乳が、
目の前でフルフル震えている。
血気盛んな男子生徒はこの光景をしっかり目に焼き付けようと必死だった。
島崎も例外ではない。願ってもない対戦カードだったようだ。
「もし、俺が勝ったら、その胸を揉ませてくれ。」
「いいわ。」
とんでもない提案をあっさり飲む私。それだけで会場の熱気は最高潮に達した。
「その代わりと言っちゃあ難だけど、私が勝ったら全裸で校内を一周してくれるかしら?」
「いいとも」
彼は夢にも負けるとは思っていないらしい。

レディー ゴー!!

しかし、2人の右腕は動かない。
「あれ、島崎先輩?もう始まってますよね?」
「っ・・・」
島崎の表情が険しくなっていく。
「何だ。この程度か。つまんないの」
右腕に半分も力も込めていない私は、少しずつ右腕を倒していく。
「とか言う割には、押されてるじゃねぇか・・・」
「そうみたいね」
私は余裕の笑みを浮かべながら右腕を本来倒すべき方向とは逆方向に倒して、
手の甲が付く1センチ手前でピタリと止めた。
「さあ、どうしたの?あと少しで、このおっぱいが揉めるのよ?」
私は左手で胸を寄せあげると、体育着の上から深い谷間を強調した。
興奮した島崎の力がいっそう強くなったが、私にとっては大した問題ではなかった。
私はにっこり笑うと、劣勢の右腕を少しだけ押し戻す。
「確か、島崎先輩が負けたら全裸で校内一周だったわよね?」
状況を悟った島崎の表情が青ざめた。
「うふふ。今から10秒だけ両手を使わせてあげる。」
そうささやいた後、私はレフリーの松本先生の方を振り向いて言った。
「先生、島崎先輩が両手使いたいらしいから、特別ルールで10秒だけ使わせてあげて。
もちろん、私は構わないから」

完全に劣勢に立たされているはずの私の提案に会場内はどよめいた。
気がつくと島崎先輩は既に両手を使っていた。
顔を真っ赤にして、全体重を私の右腕に集中させている。
「そうね。そう来なくっちゃ」
私はいたずらっぽく笑うと、少しずつ先輩の両腕を押し返していく。右腕一本で。

「おい、見ろよあれ!」
最前列で観戦していた生徒から次々に感嘆の声が上がっている。
なんと私の右腕にはグレープフルーツ大の力瘤が盛り上がって、
3Lサイズの体育着の裾を押し上げていた。
「まじかよ・・・」
「信じられない・・・」
会場内が不穏な空気になる。松本先生も唖然としていた。
「さん、にぃ、いち、ぜろ♪」
カウントダウンをしながら、私は先輩の両手を右手だけでテーブルに押し付ける。
「島崎先輩、約束は守ってもらいますからね」
ゴリゴリッと先輩の両手をテーブルに押し付ける。
「た、頼むから許してくれ〜!!」
先輩は顔を真っ赤にして苦悶の表情を浮かべている。
「ならば、二度と私の胸を揉むなんてふざけた事は言わないことね。」
まさかの番狂わせは、1年生女子の文句なしの圧倒的勝利で幕を閉じた。


そして、翌日・・・
「ではこれから、体力測定を行う。男女に分かれて順序良くやってくれ〜」

私は、出席番号が近い柳生さんとペアになった。お互いがお互いを測定していく。
「キミコちゃん、昨日は凄かったよね〜」
「うん、まあね」
「私もうゾクゾクしちゃった」
「えへへ」
照れ笑いしながらも、私は力瘤をつくって見せた。
腕だけがCGで合成したかのように非現実的に盛り上がる。
とても女の子の腕とは思えない。
「ねぇ、触っていい?」
「いいわよ」
私が力を込めると、さらにメリハリの付いた腕がもう一回り膨らむ。
「うわっ!すごっ!それに硬い」
「でしょ。早く行かないと遅れちゃうよ。行こ!」

まずは、定番の(?)握力から。
「うくっ!」
「18kg・・・って、ちゃんと力入れてるの?」
「うん。キミコちゃんと一緒にしないで」
「そういう言い方されると傷つくな〜」
「あ、ごめん・・・」
「気にしないで」
「じゃあ、次はキミコちゃんだね。はい」
私は少しずつ器械に力を込めていく40、50、60・・・あっという間に針が進んでいく
「すごーい!!ちょうど100kgだよ〜」
「違うよエリちゃん・・・」
「え?」
よく見ると、100キロを過ぎたあたりにストッパーが付いていて、
針がそれ以上進まないようになっていた。
「嘘!?それじゃあ、キミコちゃんの握力って100kg以上あるの?」
「しっ!あんまり大声出さないで。そうだなぁ、51とか適当な数字書いといて」
「え?嘘ついちゃだめだよ。先生に言わなきゃ!先生〜!!」

「お?どうした?」
待ってましたとばかりに松本先生が駆け寄ってくる。
「キミコちゃんの握力が測定不能です!」
小柄な体格に似合わずエリちゃんの声はよく通る。
体育館中のクラスメイトが私の方を向き直り、どやどや集まってくる。
「おまえ、ちゃんと針戻したのかよ?」と、男子が茶化す。
「戻しました!」
私は、測定器を受け取って針をしっかり戻すと、今度は反対側の手で握る。
「おぉぉ〜」
あっという間に進んでいく針に、一同がどよめく。

ギギッ・・・バキバキッ!

やがて私の握力に耐え切れず握力計がひしゃげてしまった。
「まあ、針を戻した所で測定不能だったみたいね」
一同言葉もないようだ。
「おい、ぼさっとしてないで早く全員測定にもどれ!それから守山!!」
「あ、はい・・・」
私はてっきり怒られると思った。
「ちょうど器械を新しくしようと思ってたんだ。他にも壊せるものがあったら
 そうしてくれ。校長先生にいい口実になるから。」

次は背筋力だ。
「やっぱり壊すのはダメだよ〜」
エリちゃんは半分泣きそうだ。
針は既にMAXの300kgを振り切っているが私は力を緩めない。

ミシミシッ・・・ガッシャーン!

金属がきしむ音がして、やがて間の鎖が千切れる。
まさかとは思ったが、本当に引き千切ってしまった。
隣りで測定していた男子達も目を丸くして驚いている。

「も、もういい。そのくらいにしてくれ・・・」
松本先生も、さすがに閉口してしまったようだ。


その日の放課後。再び私は隣町のジムに足を運んだ。
鍵の掛かった特別室で私は汗を流す。
そして、今日の出来事を五十嵐さんに話す。
「そりゃ、凄いな・・・」
「私のカラダ、どこまで強くなるのかしら?」
既に超重量級ボディービルダーのようになっている自分のカラダを鏡に映しながら
特注の100kgのダンベルを片手で上下させる。
ハンドボール大にまでパンプアップした上腕二等筋が逞しすぎる。
発達した大胸筋のせいで胸は少し小さくなったものの、
分厚い胸板の上に乗るIカップの迫力は、以前とは別の意味で凄まじい。
バックリと6つに割れている腹筋も、それぞれが盛り上がり、
圧倒的な質量の大腿筋がはち切れんばかりに膨らんで存在感を示す。

このままの肉体を、永久に残したくもあったが、
私には、更なる高みを目指したい欲求もあった。
私は後者を選ぶことにした。


つづく





inserted by FC2 system