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ランブルローズ vs グラップラー刃牙
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(第1試合) アイーシャ vs 愚地克己
(第2試合) スペンサー先生 vs 愚地独歩




プロローグ

東京ドームの地下6階に位置する地下格闘場。
徳川時代から続く戦いの聖地と言われるこの場所に32人の男たちが集まった。
最強の称号を求めてベルトを争う最大トーナメント。
弱冠17歳の若者、範馬刃牙もまた大会出場者の1人だった。

数多くの敗者が命を落とす壮絶な闘いが続いた1回戦16試合。
刃牙は身長240センチの大巨人リーガンを難なく倒して2回戦へと駒を進めていた。

そんな折、この地下格闘場が突如として騒然となる。
10人の麗しき乙女たちが、男たちの戦う神聖な格闘場へと乱入してきたのだ。

「こんな試合で最強を名乗るなんて許せないわ!!」

大会主催者に対して挑戦状を叩きつける彼女たちは、
究極のエンターテイメントプロレス『ランブルローズ』の選手たち。
トーナメント初戦で敗れた選手たちがボコボコにされ、彼女たちの足元に転がっている。

セクシーなコスチュームに身を包んだモデルも顔負けのスタイル。
選りすぐりのラウンドガールたちでも遠く及ばない美貌。

しかし決して侮ってはいけない。
彼女たちは見事なまでに洗練された肢体と磨き上げられた美技の数々で、
全世界に50億人のファンを抱える格闘プロフェッショナル集団なのだ。

「面白え…。気の強え女たちを喰っちまおうぜ!!」

彼女たちの挑発を受けてそう語ったのは範馬勇次郎。
「地上最強の生物」と呼ばれる刃牙の父である。
絶大な権力を握る彼の意向に従い、急遽2団体による対抗戦が開かれることとなった。

果たして戦いの行方はいかに・・・。



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(第1試合) アイーシャ vs 愚地克己
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「苦しむ暇もなく殺してあげよう…。」

自信たっぷりにそう話すのは神心会の最終兵器、愚地克己―――。
「近代空手を完成させた男」と呼ばれる最強の空手家が拳を固める。
186センチ116キロの屈強な身体がさらにひと回り大きくなった。

「マッ…マッハ突きだ!!!」

刃牙は思わず呟いてしまう。
それは愚地克己の究極奥義、マッハ突きの体勢だった。
全身27箇所の関節を同時に加速させることで完成する超速度の突き。
この最大の必殺技を、克己は惜しげもなく最初から披露するつもりなのだ。

「はぁーーーっ…」

気合を込めて力を練る克己。
そんな彼の眼前で棒立ちしていのは、ランブルローズチームの先鋒アイーシャ。
セクシーなダンスで観客を魅了する世界の歌姫が、
美しいブロンド髪を掻き揚げながら余裕の態度を見せている。
胸元に輝くネックレスが会場の照明を受けてキラキラと光り輝いた。

「ハアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

会場に響き渡る気合と同時に、究極奥義が繰り出される。
克己の拳は音速を超え、声よりも速くアイーシャに襲い掛かった。

しかし次の瞬間。
膝から先に崩れ落ちたのは、拳を放ったはずの克己だった。
アイーシャの放ったカウンターのハイキックは、的確に彼の顎を打ち抜いていた。

信じられない―――。

マッハ突きをも上回るハイキックなんて絶対に在り得ない。
地下格闘場戦士たちは全員が唖然としている。

「何がマッハ突きよ…。そんなのランブルローズじゃ全く通用しないわ♪」

アイーシャは軽く言い放った。
ランブルローズ戦士たちは失笑している。
克己のマッハ突きなど、彼女たちにとってはお遊び程度のスピードに過ぎなかった。

アイーシャの蹴りが止まらない。
白いローライズのパンツが次から次へと美しい弧を描く。
厚底サンダルが凶器となって克己の身体に襲い掛かってくる。
彼女はまるでダンスでも踊るかのように美しく、そしてリズミカルに舞い続けた。

『なんて蹴りだ・・・。こいつ、柔術ファイターじゃなかったのか・・・。』

天賦の才能を持つ愚地克己。
空手を極めたはずの彼にも、アイーシャの蹴り足は全く見えなかった。
柔術スタイルを得意とする彼女が、最強の空手家をキックだけで圧倒する。
ランブルローズ戦士の実力は、それほどまでに規格外だった。

「そろそろ終わりにしようかしら…。」

散々蹴られて力なく床に転がった克己。
そこにゆっくりと馬乗りになって彼女が襲い掛かる。
いよいよアイーシャが得意の柔術を披露する時がきた。

それは美しい映画を見るような時間。
観客全員が静寂をもって見つめる中、アイーシャは30秒足らずで料理を終えた。

「このくらいで勘弁してあげるわ♪」

技を解いて立ち上がるアイーシャ。
彼女の眼下で惨たらしく横たわる克己の肉体。
両腕両足はもちろん腰や首に至るあらゆる関節が、彼女の美技によって破壊されていた。
何の抵抗も出来ないままに意識を失ってしまった彼は、白目を剥いて涎を垂れ流している。

「カンカンカンカーーーン!!!」

少し遅れてゴングが鳴らされた。
そこにタイミング良く、軽快なロックミュージックが流れ始める。

少し照れた笑みを浮かべながら、アイーシャは見事なダンスと歌を披露した。
観客が眼にしたのは、いつもと全く変わりない美しいパフォーマンス。
試合が終わった直後だと言うのに、彼女は疲れの欠片すら見せなかった。

その足元では、彼女によって破壊された愚地克己が、医師団の必死の治療を受けていた。
アイーシャにとって、彼を葬ることなど歌う前の準備運動に過ぎないのだ。

「こっ…これがランブルローズ戦士の実力なのか…。」

一様に震え上がる地下格闘場の戦士たち。
地上最強の生物、範馬勇次郎の足元にも、異臭を放つ黄色い液溜たまりができていた。

(終)



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(第2試合) スペンサー先生 vs 愚地独歩
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「息子の仇はワシが取る…。」

闘技場に向かう1人の男、その名は愚地独歩―――。
「武神」と称される伝説の空手家にして、空手団体・神心会の総帥。
齢50を超えるベテランであるが、未だに勇次郎とも互角に戦える実力を保っている。
義理の息子が目の前で弄ばれる姿を見て、彼は即座に立ち上がった。

対するランブルローズ選手、2番手はミス・スペンサー先生。
ハイスクールで歴史を教える28歳の女教師。
学生時代には、男子を差し置いてレスリング部のキャプテンを努めていたという実力者。
フリルのついた白いブラウスにショッキングレッドのミニスカート。
黒くて長いストッキングに大きく開いた胸元が抜群のセクシーさを演出している。

戦いは静かに幕を開けた。
愚地独歩は、老人とは思えぬ素早い動きで次々と拳を繰り出す。
対するスペンサー先生は、その攻撃を軽やかに受け流す。
観客の眼には一進一退の攻防に映っていた。

しかし様子がおかしい。
独歩が拳を放った左手を押さえて蹲っている。
ポタポタと垂れ落ちる鮮血。
そう…、彼女は単に攻撃を受け流していたのではない。
攻撃を上回る瞬速の受けで、人間凶器と呼ばれる伝説の拳を破壊していたのだ。

「ヤワな身体ね・・・。さぁ掛かって来なさい。アナタに本物の空手を教えてあ・げ・る♪」

「空手道を愚弄するヤツは許さんぞ…。」

伝説の空手家を挑発するセクシーな女教師に対して、独歩は怒りに任せて襲い掛かった。
しかし彼の攻撃はカスりすらしない。逆に女教師のビンタで脳を激しく揺さぶられる始末。
試合はまさに教育の様相を呈してきた。

「ダメよ。そんなに振り回しても意味がないわ・・・。
 もっと柔らかくしなやかに。力を入れるのはインパクトの瞬間だけで構わないの。」

女教師はそう言うと、お手本の下段蹴りを披露した。
セクシーな黒いストッキングに包まれた美しい脚が、風を切って弧を描く。

「バシッ!!」

重い衝撃音が闘技場に鳴り響く。
独歩の右足が、膝の位置から折れ曲がってしまった。
空手で鍛えられた独歩の逞しい足を、女教師の蹴りはいとも簡単に打ち砕いた。
次元の違う破壊力に、地下格闘場戦士たちはただただ驚くばかり。
百戦錬磨の独歩もさすがに追い詰められた。

「強いのぅ、お嬢さん…。ワシはおぬしを殺してしまうかもしれん…。」

独歩は覚悟を決めた。
菩薩の手の形で拳を作って放たれる正拳突き。
その名も、菩薩の拳――――。

独歩は本当に彼女を殺してしまうつもりなのだ。
究極奥義と言われる真の正拳が、唸りを上げて襲い掛かる。
しかしそんな拳でさえ、ランブルローズ戦士には全く通用しなかった。
スペンサー先生は掌で軽く拳を受け止めると、そのまま後ろ手に捻りあげた。

「今の拳はなかなかよ・・・。やれば出来るじゃない!」

50年を超えて培った空手の奥義を出し切った独歩。
彼の眼からは一粒の涙が零れ落ちた。

「そろそろ終わりね・・・。ティーチャーロック!!」

スペンサー先生による授業はいよいよクライマックスを迎えた。
独歩の図太い体が、あれよあれよと言う間に折り畳まれていく。
抵抗しようにも、抵抗の仕方すら分からない。
神技のようなレスリングテクニックで、先生は彼の体をマットに押さえつけた。

手足が絡まってまったく動けない。
そんな彼の背中に、スペンサー先生は悠然と腰を下ろした。
伝説の空手家愚地独歩が、人間椅子に成り下がった瞬間だった。

そのまま腕を組んでセクシーに脚を組む。
さらにその美しい脚を組み替えて、観客にパンチラを拝ませる。
スペンサー先生は自分の強さと美しさをアピールできて上機嫌だ。

一方で独歩の身体は悲鳴を上げている。
一見ふざけた技に見えるが、これはスペンサー先生の必殺技。
独歩程度の格闘家では、到底脱出不可能な殺人技なのだ。

「そのまま反省してなさい…。」

セクシーな女教師の尻圧が強まっていく。
そんな屈辱の中、独歩は次第に意識を失っていった。

(終)





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