■21世紀の男女関係(青春編)

第4話 思いがけない訪問者

 その日は放課後まで、剛のクラスの男子たちは真由美シンドロームにさいなまれることとなった。
体育が終わって教室に戻ってからも、女子たちが何かと真由美の席のまわりに集まって、
ワイワイと男子の噂ばなしをしているのが聞こえてくる。
「○○クンのあのヘッピリ腰のレシーブ見た? 笑っちゃうわよね。アハハ」
なんて声が何度もあがるのだ。
もっともこれまでは男子が勝つと、同じように女子のことを笑っていたのだから、いまさら言い訳は出来なかった。
しかし、当の真由美はいささか迷惑そうだった。
「もう、その話はいいかげんやめようよ。男子はきっと転校生の私に油断したのよ。
今度やったら負けるかもしれないし、そのとき、みんなが男子に同じようなことを言われたら嫌でしょ」。
そう言って、はしゃぐ女子をたしなめていた。昼休みに剛たち男子が廊下ですれちがったときも、
「さっきはごめんね」
と真由美の方から積極的に話しかけてくるなどして気を遣っていた。基本的には優しい子なんだな、と剛は感じた。
 とにかく真由美はたった一日で、男子からも女子からも一目置かれる存在となったのは間違いない。

 ところで剛が家に帰って夕食後、弟の武史と話してみると、この日、弟のクラスにも転校生がやってきたのだという。
4月に中学生になったばかりの武史はスポーツも勉強もよく出来て、中一の割りには落ち着いているが、
その武史が興奮して、その転校してきた女のコがどんなに可愛いかを延々と話している。
さすがに剛も興味を持って、その転校生の名前を聞き出そうと思った矢先のことだった。階下から母親が二人を呼ぶ声がした。
「剛、武史。美人のガールフレンドが御挨拶に見えたわよ」
「???」
 剛も武史も、こんな時間に家に遊びに来る彼女なんていない。わけがわからずお互いに顔を見合わせたが、とりあえず玄関口へ出た。
すると……
「こんばんは!」
「ああっ!」
 剛は絶句した。なんとそこには、松永真由美と、今朝も見かけた亜沙美の二人が立っていたのだから…。
なんと二人は姉妹だったのだ。二人は父親と一緒に3人で玄関に立っていた。
「お向かいに引っ越していらしたんですって。御挨拶に見えたのよ。まあ、上がっていってくださいな。お茶を入れますから」
と言って、母親は松永家の3人にスリッパを勧めた。
「ほら剛、武史。お前たちもボケっとしてないで、上がっていただいて!」
 母親に仕切られて照れている剛と武史を見て、真由美も亜沙美もクスクスとおかしそうに笑っている。
その二人に挟まれて、長身の娘たちよりも小柄な父親・真一がニコニコして言った。
「偶然にも真由美が剛くん、亜沙美が武史くんと二人とも同じクラスになったんだってね。
家もすぐ隣りだし、ウチは母親がいなくて行き届かないんで、ちょっと元気の良すぎる娘たちですけど、
これからいろいろ仲良くしてやってください」
「お父さん、元気の良すぎるは言い過ぎ!」と口をとがらす真由美。
 二人のお父さんは、娘よりもずっとソフトで女性的な感じがする。
「いやいやウチの子たちこそ、こんなにスラリとして美人のガールフレンドが出来て幸せ者ですわ。
お前たち、男の子なんだから、学校では真由美ちゃん、亜沙美ちゃんを優しく守ってあげなさいよ」


 つづく



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