■21世紀の男女関係(青春編)

第6話 放課後のグラウンドで

 翌日の放課後、武史たちが陸上部のウォームアップをはじめていると、3年生の部長の山下光雄と顧問の杉山先生がやってきた。
その横に立っていたのは、同級生の松永亜沙美だった。
「今日から入部する1年生の松永亜沙美君だ。得意種目は中距離だそうだ。みんな仲良くな。
ことに男子は鼻のしたを伸ばさないように…」
杉山先生のベタな紹介にも、突っ込みが入らないほど、みんなスラリとした亜沙美のボーイッシュな可愛さに色めきたっていた。
亜沙美がペコリと一礼すると、男子はヒューヒューという声をあげた。
一方、それを見ていた女子は冷ややかだった。
「確かに可愛いわね」
「背も高いし、男子たちがチヤホヤしそうね」
「でも、うちの部のきついトレーニングに耐えられるかしら?」
そんなヒソヒソ話が女子からは聞こえていた。

 実は武史は先に、今日、亜沙美が入部してくることを知っていた。昼休みに亜沙美自身から聞いていたのだ。
「私、さっき陸上部の入部希望を出してきたの。クラスも部活も一緒になるけど、よろしくね」
武史はいまにも舞い上がりそうな気持ちだった。あの可愛い転校生と部活も同じになったのだ。
武史は勉強にはあまり自信がないが、陸上でなら亜沙美の前でいいところも見せられる。
家もすぐだし、一緒に帰る機会も増えて、デートできるかもしれない。
おそらく亜沙美に近づきたい男子はいっぱいいるだろうが、これで自分が一歩優位に立ったかもしれないと思った。
「ところで武史くん、陸上部の先輩たちってコワくない? コワかったら嫌だなあ。こっそり、いろいろと情報教えてね」
そういっていた亜沙美は本当に可愛いかった。武史にとって、部活はいままで以上に楽しい時間になるに違いない……
そんなことを考えて、ボーッとしていると、部長の山下が言った。
「おい、武史、アップが終わったら、ちょっと俺のところに来い」
武史は、「ひょっとして、1、2年生では中距離で一番の記録を持つおまえが面倒を見ろ、とか言われたりして…(笑)」
と有頂天になっていた。武史がアップを終えて部長のところに行くと…。
「武史、おまえは1年だけど、中距離では、3年の俺の次に速いし、うちの部の次のリーダーになる人材だと期待してるんだ。
で、さっそくなんだが、松永と組んでくれ」
 そういった部長のとなりには、亜沙美がニコニコ嬉しそうに立っている。武史は信じられなかった。
まさか、俺の思ったとおりになるなんて! ツイてるぞ。
「で、さっそくだが……まず二人でトライアルしてみてほしい」
「でも彼女の走りを見てからの方が、いろいろと指摘できると思います。」
「そう、彼女の走りを見たいんだが……、お前も一緒にだな……」
部長は奥歯にものの挟まったような言い方をした。
「でも、僕は見ていた方が…」
「いや、彼女と本気で走って欲しいんだ。実は、松永は神奈川の小学生大会の女子の記録保持者だ。
ベスト記録は……実はおまえを上回る。だから、まず記録の近いおまえと走るのが一番お互いにとって刺激になると思うんだ。
そう話したら、松永自身もぜひ、おまえと勝負したいと言ってきたんだ。
それに、1、2年のほかの部員じゃ、はっきり言って彼女の相手にはならないからな」
説明する部長の横で、亜沙美はじっと武史のことを見つめていた。
「おまえ、男なんだから、女子から挑まれた勝負を逃げるなよ」部長が念をおす。
そう言われては武史も逃げる気はない。
「わかりました。」
そう答えると、亜沙美が微笑んだ。


 つづく





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