石川涼美VS男子レスラー

「赤コーナー、石川涼美!」
 リングアナウンサーの選手紹介に歓声が沸く。
 紹介された女子プロレスラーは観客に手を振り歓声に応えた。
 ふくよかと言うにはほど遠いが若干、太めの体型。肌には張りがあり、
そのバストは巨乳の領域に達しておりリングコスチュームによって強調されている。
 また、顔付きはプロレスラーと言うよりは優しいお姉さんと言った風情で
リングに立つよりはグラビア・アイドルの方が相応しい様相をしていた。
 しかし、彼女はこのWARSのナンバー2でありトップレスラー、
サンダー龍子がもっとも信頼しているタッグ・パートナーであった。
 対角線上の青コーナーにはパワーファイターといった風情の筋骨隆々な男子レスラーが控えている。
 彼は以前、龍子と対戦し開幕早々、フィニッシュホールドである
プラズマサンダーボムの前に失神KOと言う醜態をさらしていた。
 男子レスラーはリベンジに燃え龍子との対戦を要求。
龍子はその要求を受け入れる条件として、自分の片腕とも言うべき涼美との対戦に勝ってみろと応える。
龍子への復讐に燃える彼はその要求を受け入れた。

 レフェリーによるボディ・チェックの後、試合開始のゴングが鳴らされた。
二人は暫く、睨み合いながらじりじりと間合いを計る。
 やがて、涼美の方から力比べを誘うかの様に両手が差し出された。
男がそれに応じ手四つとなり力比べが始まった。
 二人は互いの力を確認するように徐々に力を込めていく。
男は涼美の意外な力に感心していたが、それも長くは続かなかった。
渾身の力を込め涼美を抑え込もうとするが微動だにしない。
「お姉さんの力、意外と凄いでしょ〜?」
 おっとりとした口調で優しい笑みを浮かべたまま涼美が男に問いかけ、更に力を込める。
男はそれに応えず涼美の力に抗おうとしたが対抗しきれず、徐々に押され始めた。
 遂に男は涼美の力に屈し膝をつく。
「お姉さんは〜、WARSで龍子さんの次に力持ちなんですよ〜」
 なおも抵抗を続ける男に涼美は優しく諭すような口調でそう言う。
 しかし、男はその言葉を無視し、なおも抗い続けた。
「頑張りますね〜。お姉さん、あなたみたいな人、嫌いじゃないですよ〜。
それじゃ、試合を盛り上げましょうね〜」
 抗う男に対して涼美は微笑みを浮かべて宣言する。

 涼美は手四つを解くと跪いた男の胸を蹴り飛ばした。
男は派手に吹き飛びロープ際まで転がっていく。蹴られた胸と叩き付けられた背中の痛みに苦悶し、
のたうち回る男。
 涼美はそんな男を引きずり起こすとリング中央に引っ立てロープへと振った。
当然、男は涼美の力に抵抗も出来ずロープへと向かい走りだす。
 純粋な力では対抗できない。ロープに身体を預ける一瞬、そう悟った男はここから返し技で対抗しようと考えた。
しかし、涼美の力は男の予想を遥かに上回っており自分の走る速度が速すぎ、返し技のタイミングを逸する。
 そんな男を涼美は軽々と抱え上げてパワースラムを決めた。
男の走る勢いと涼美の力が合成され龍子のプラズマサンダーボム並の破壊力を生み出す。
 男は背中から叩き付けられ呼吸困難に陥った。以前の男であればそれだけで、失神したのは間違いない。
男は龍子へのリベンジのために更に身体を鍛え上げ
ていた為、パワースラムの衝撃を耐え抜いた。
 しかし、すぐに起き上がれるほどダメージが軽減された訳でもない。
「それじゃ〜、どんどん行きますよ〜」
 涼美は倒れた男を尻目に観客へアピールする。
そして、倒れたままの男へと向き直り男の喉元を掴み片手でつり上げた。
更に涼美はそのままリングを一周してから男をリングへと叩き付ける。
 喉輪落とし。それは涼美の得意技の一つであった。

 男は喉を締め付けられた息苦しさとリングに叩き付けられた衝撃に苦しみながら、
龍子へのリベンジを誓い身体を鍛え直した自分を呪っていた。
打たれ強くはなったものの、龍子はおろかその片腕と言われる涼美にすら力が及ばない。
 WARSのナンバー1、ナンバー2と呼ばれる龍子と涼美。男にとってそんな格付けは全く意味をなさなかった。
 どんなに高い塔も遠くから見れば高さは一目瞭然。だが、その塔を近くから見上げればその先端は全く見えない。
実際に龍子と涼美と闘った男はそんな高すぎる塔を見上げる心境に陥っていた。
 力比べ、パワースラム、喉輪落とし。
ただ、それだけで男は涼美の足許にも及ばないことを自覚させられている。
 しかし、喧嘩を売った手前逃げ出すわけにも行かない。かといって、このまま試合を続ければ醜態をさらし続ける。
 龍子へのリベンジを誓った自分への呪いが男の脳裏から消え、この試合をどう切り抜けるかと言う考えが浮上してくる。
だが、その考えは抜け場所のない袋小路だった。
 そんな、男を涼美は再び引き起こすとその胴へと腕を回すと両腕を絞り込み肋骨から背骨にかけて圧迫し始める。

「ぐぁぁぁっ!」
 パワーファイターの代名詞とも言えるベアハッグを涼美にかけられた男。
その圧倒的なパワーによる締め付けに苦痛の叫びを上げる。
 ギブアップの意志を示そうとしても、苦痛のあまり言葉を紡ぐことも出来ない。
その上、神経は痛みに支配され身体は自由に動かすこともままならない。
 締め付ける涼美の胸が男の身体と密着し淫らに歪む。だが、男は押しつけられた胸の感触を感じる余裕はない。
 しかし、男のいちもつは怒張し始めていた。それは涼美のベアハッグの前に命の危機を感じ、子孫を残そうとする本能によるものであった。
「お姉さんのベアハッグを抱擁と勘違いするなんて〜、余裕があるんですね〜
ちょっと、お仕置きが必要ですね〜」
 涼美は男の股間の変化に気付くとそう言いベアハッグを解いてから男を仰向けに肩に抱え上げ、顎と太腿を掴み背骨を責め始めた。
それはベアハッグと同様にパワーファイターの代名詞と言えるアルゼンチン・バックブリーカー。
 涼美は男を締め上げながら自分がパワーファイターであることをアピールするようにリングを闊歩する。
対する男はギブアップの意志を継げようとするが先のベアハッグと同じように自分の意志を伝える術を持たなかった。
 やがて、ゴングが打ち鳴らされ試合終了が告げられる。
男は涼美のアルゼンチン・バックブリーカーの前にギブアップの意思も伝えられず痛みのあまり意識を失っていた。


おわり





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