少女肉体革命2話 ユリカとタケル


日曜日の早朝。高校1年生川上タケルは町で一番大きいスポーツセンターにあるトレーニングルームにいた。
時間があまりにも早いため、部屋には誰もいない。タケルはもくもくとウェイトトレーニングに励んでいた。
「ふぅ、、、、、、」ダンベルカールを終え、一息つく。上腕部に感じる適度な疲労感が心地よい。
汗を拭き、部屋の一面に設置された鏡に向かいタンクトップにホットパンツの格好をした自分の姿をじっと見つめた。
トレーニングを始めた1ヶ月前に比べて、心なしか逞しくなったように思える。
実際、最初はきつかったトレーニングメニューにもだいぶ慣れてきた。
鏡に向かってぐっと腕を曲げ、力瘤を作ってみる。
それは、以前より大きくなっているようにタケルには見えた。少しだけ笑みがこぼれる。
(そうだ。鍛えれば男のほうが強いに決まってる。あたりまえだ。)
タケルは一ヶ月前のあの忌まわしい出来事を思い出していた。幼なじみの早乙女ミカとの再会。そして、、、、、、、、。
タケルの顔が屈辱に歪む。今度は負けない。タケルはミカへのリベンジを心に誓っていた。
あの辱めを。自分より年下の、中学生の女の子に腕力で敗北したあの悔しさを。あの痛みを。
全て消してやる。あの敗北の次の日から、タケルはトレーニングを開始した。プロテインも毎日飲んでいる。
そのうち、筋力増強剤だって使ってもいい。まずは、腕力でミカに勝つ。
本来性格的に気弱なタケルであったが、打倒ミカの一念がタケルに気力と勇気を与えていた。
このままトレーニングを続ければ、必ず自分のほうが強くなる。いや、既にミカより強くなっているかも。
もう一度、鏡に向かい両手で力瘤を作った。(過去の汚名はこの腕で晴らしてやる。この鍛えた腕で。)
「、、、、、、、、、、、、」
「ん?」ふと、タケルは振り返った。誰もいないこのトレーニングルーム。だが、今、人の気配がしたような。
よく見ると、閉めたはずのドアがわずかに開いている。が、人の気配はない。
奇妙な違和感を感じながらも、タケルは次のメニューに取り掛かった。



タケルはバーベルベンチプレスを行っていた。ベンチに仰向けになり、バーベルを胸までゆっくり下ろし、そして挙げる。
だが、今日は調子に乗って今までより重めのウェイトにしたせいもあり、だんだんときつく感じ始めていた。
「ちょっと、、重いかな、、、」と、つい独り言のようにつぶやく。そのとき、部屋の向こう側からかすかな声が聞こえてきた。
「、、、、、、、、、、」何を言っているかまでは分からない。どうやら、二人の人間が話をしているようだ。
気にせず、ベンチプレスを続ける。だが、やはりウェイトが重すぎた。が、いまさらウェイトを軽くするのも癪に障る。
無理やりにも、タケルはやり続けた。そのうち、腕が少しだけ震え出す。やはり、少し重すぎたか。
「ねえ、手が震えちゃってるよ。」急に。唐突に。横から声をかけられた。それは、少女の声だった。
「え?」バーベルを胸の近くで保持したまま、首を横に少しだけ傾ける。
いつのまにか、ベンチに仰向けとなっている自分の頭のすぐ脇に二人の幼い少女が立っていた。
どう見ても小学生にしか見えない。二人とも同じ格好をしている。白いTシャツに、、、下は、、、水着?
紺色のスクール水着だ。水着の上からTシャツを着ているようだ。なんでこんな場所に、こんな格好の小学生の女の子がいるんだ?
とりあえず、バーベルを挙げ、ラックに戻した。
「ねえ、大丈夫?てつだおっか?」右の女の子が笑顔でタケルに話し掛ける。
セミロングヘアのかわいい子だ。頭に赤いヘアバンドを差している。元気な笑顔が印象的だが、
今、、、、、、何と言った?
「手伝う?」タケルは聞き返した。
「うん。なんだかつらそうだったから。それ。」と、タケルが手にしているバーベルを右の子が指差す。
「ねえ、この人が、この前言ってた、、、」ロングヘアを後ろ襟でゴムで束ねている、どこか大人しそうな左の子が右の子に何か尋ねている。
「しーーーーっ」人差し指を口にあてる右の少女。なんなんだ?いったい。とにかく、こんなことで時間をムダにしたくない。
「悪いけど、トレーニングの邪魔だから。」にべもなく、言い放つ。そして、少しだけ沈黙。が。その静寂はすぐに破れた。
「、、、、、、、ぷっ」右の子が手を口に押さえてる。笑いをこらえているように見える。
「、、、ト、、、トレーニング、、ですか、、、、」左の子も、ふるふると震えている。何だ?なんなんだ?
「、、、、、、あははははっは!!!」右の子が終に大声で笑い出した。
「ちょ、ちょっと、、、ユリカちゃん、、、、笑ったら、、、だめだって、、、、」左の子も満面の笑顔を浮かべている。
「おい、おまえら何なんだ。初対面の人間に向かって失礼だろ。」この小学生ども。タケルは憮然とした表情で二人を見つめた。
「だって、、、ねえ。」「うん。」二人が顔を見合わせる。そして。
「いいから。邪魔だよ。」そう言って、無表情でラックから再度バーベルを外し、再び胸までゆっくりと下ろす。
だが、次の一言でタケルの顔色が一変した。
「そんな軽そーなやつでトレーニングなんていっちゃって。準備体操の間違いじゃないの?」
くすくすと。右の子が口に手を当てて笑った。笑い飛ばした。
「か、、軽いだと?」タケルは怒りを顕にした。
「これが軽い?おまえらやった事もないのにいいかげんなこというなよ。」
「ええ、やってますよ。もちろん、これよりずっと重いウェイトで、あなたよりずっと多い回数を。」さらりと、左の子が言う。
「、、、出来るわけないだろ。おまえらみたいな子供に。」タケルの反応は至極当然だった。
「信じられない?じゃあ、ソレ貸してみて。ちょっとエリ、そこどいて。」
右の子がすっとベンチに近づき、タケルが保持していたバーベルを無造作に掴む。
「お、、おい、、あぶな、、、」タケルの言葉が止まる。
タケルの両手にかかっていた重圧が完全に消失したことに気づいたからだ。
「ねえ、手、離してもいいよ。」女の子が言う。次の瞬間、バーベルのシャフトはタケルの手から離れ、女の子の手の中にあった。
「うわ、かっるい。軽すぎ。」女の子は手にしたバーベルと軽々と持ち、腕だけで上下に動かし始めた。
信じられない事に、少女はタケルの目の前でダンベルカールを幾回もこなしていた。
「ユリカちゃん、ユリカちゃん。私にも貸して。」
「はい、エリ。」ユリカと呼ばれた右の元気な女の子が、
「あ、ほんとだ。軽いね。」エリと呼れた左の大人しそうな女の子に、買い物袋を渡すようにバーベルを文字通り手渡した。
「な、、、、、、、」タケルはショックを隠しきれない。そんなばかな。こんな子供に。
こんな小学生にしか見えない幼い少女達に。このウェイトが持てるはずがない。
しかも、まるでオモチャのように軽々と扱う事ができる訳、、、、
「あはははは。すごい顔してるよ。」ユリカが笑う。
「、、、、お、、お前ら、何だ?何なんだ?」錯乱気味なタケルが少女達に詰問する。
「何だ?って言われても〜 ね〜」ユリカがおどけたように首をかしげ、エリのほうを向く。
「わたしたちはここのプールに泳ぎにきたんです。」と、エリが説明する。
「うんうん。いつも、ここで汗流してから泳ぐんだ。準備体操にもなるしね。」そういって、ユリカが着ているTシャツを上に持ち上げ、タケルに水着を見せた。だが、その胸に書いてある文字は。その名前は。
"5年1組 早乙女ユリカ"
早乙女。ミカの苗字。どくん、と胸が鼓動する。早乙女ミカ。早乙女ユリカ。知っている。自分はこいつを知っている。
「で、お姉ちゃんから聞いてたとおりひ弱なんだね。タケル兄ちゃん。」くすくすと。口を押さえて笑う。
このクセをタケルは知っていた。そして、タケル兄ちゃんという呼び方も。
「、、、ユリカ、、、」そうだ。ミカの妹。あまり遊んだ記憶はないが、覚えている。
「やーっと思い出した?忘れてるなんてひどいよ。」ユリカが拗ねた顔でタケルを見つめる。
「やっぱり。この人が、その、えと。」エリが言いよどむ
「、、、、、あの、ユリカちゃんのお姉さんと腕相撲して両手使って負けたって、、、、」おずおずと、エリが言う。
「うん。お姉ちゃん、怪我させないように手加減するのすっごく気を使ったって。」ユリカが言う。
「でも、まあ、わかるよね。」にやりと。ユリカがタケルを見る。
「こんな重さで必死なんだもん。お姉ちゃんに勝てるはずないって。」余裕の笑みで。
「もちろん、私たちにもね。」ユリカはタケルを挑発した。まさに、姉ゆずりの行動だった。
「な!」カッとなり、タケルはベンチから起き上がった。立ち上がって初めてわかるが、少女二人は自分の肩ほどの背丈しかない。
手だって、腕だって、脚だって、もちろん体も。全てが子供のパーツ。
「おまえ、確か、、、ミカの2、3歳ぐらい下だから、、、まだ小学生だよな。」
「うん。小学5年生だよ。5年1組。」と、ユリカが胸を突き出し、スクール水着に張ってある名前と学年を見せびらかす。
「、、、、、」タケルがユリカを睨む。
「、、、、えへへ。私とも、勝負する?腕相撲でもする?」
「でも、小学生の女の子にまで腕力で負けたらもう立ち直れないよね。男として。」くすくすと、ユリカが笑う。
「こ、、、、、」タケルは言葉が出ない。そのとき、後ろでゴトゴトと金属音が響き、ミカが呼ぶ声が聞こえた。
「ユリカちゃん。用意できたよ。」
「ありがと。エリ。」ユリカが横を向く。タケルもエリの方向を見る。
そこには、床に巨大なダンベルが4つ、不ぞろいに無造作に置かれていた。
「じゃあ、タケル兄ちゃん。それ持って。」くす、とユリカが笑いかける。
「先に挙げ下げできなくなったほうが負けです。」エリが解説する。
「ほら、タケル兄ちゃん。はやく準備してよ。」
ユリカは何の苦労もなくダンベルをそれぞれの手で掴み挙げ、だらりと腕を下げてタケルを待っている。
タケルは勢いに押され、躊躇しながらも右手でダンベルを掴んだ。が。
「、、、、、、、、、ぐ、、」持ち上がらない。なんて重さだ。
渾身の力を込めるが、わずかに床から浮いただけでもう限界だった。
「、、、、、ねえ。タケル兄ちゃん。遊んでないではやくしてよ。こうしてるのもそこそこ疲れるんだけど。
か弱い女の子にとってはさ。」と、ダンベルを持っている両腕をブラブラと前後に動かす。あの巨重なダンベルを。
「う、、、、」タケルはなおもダンベルを持ち上げようとするが、タケルの腕力でこの重量を片手で挙げるのは到底無理だった。
「あの、お手伝いします。」エリがそっとタケルが掴んでいるダンベルに手を添える。
まるで貴重品を扱うような丁寧さで。おどろくほど簡単に。ダンベルは持ち上がった。しかし。
「あの、手、離しますよ。」といって、エリが添えている手を離したとたん、ダンベルの全重量がタケルの右腕にのしかかる。
その凄まじい荷重にタケルの右手が耐えられるはずもない。
「くうううっ、、、、、」とっさに左手をあてがい、両手でダンベルを掴む。
なんとか落下を防いだが、両肩がちぎれそうなぐらい痛い。腕はダンベルに引っ張られ、腰が悲鳴をあげる。足が床にめり込むようだ。
「あ、すごいすごい。よく耐えられたね。タケル兄ちゃん。えっら〜い。」ユリカがタケルをからかう。
「まあ、いいやそっちはそれで。両手ってことで。ハンデだよ。そんじゃ始めるよ。エリ、数おねがい。」
「うん。それでは、いきます。い〜〜〜ち!」エリが号令をかける。
「はいはい、うんしょっと。」ユリカは床に伸ばした腕をゆっくりと曲げていき、胸までダンベルをカールした。
そのままの姿勢でタケルのほうを見る。
「ほら。タケル兄ちゃん。どうしたの?両手使ってるんでしょ?」笑顔で。タケルをはやしたてる。
「、、、、、、、、、っ」タケルは全身の力を振り絞り、ダンベルを持ち上げる。腕がミシミシと音をたてるようだ。骨が軋む。
「に〜〜〜〜」無慈悲にも、エリのカウントは続く。
「さ〜〜〜〜ん」
「よ〜〜〜〜ん」
「ご〜〜〜〜〜」軽々と。何の苦労もせずに、涼しい顔でユリカは腕のカールを続けた。顔はタケルの方を向きながら。
「、、、、、ぅぅぅっ」真っ赤に顔を紅潮させ、ぶるぶると腕を震わせ、何とか肘が90度の位置まで挙げる事が出来た。
「あともうちょっとです。がんばってくださいっ」エリが応援する。
が、そこが限界だった。タケルの手は腕がちぎれる前にダンベルを手放すことを選択した。
ドンッ!と大きな音がして、ダンベルが床に落ちる。疲労で、タケルはその場に座り込んだ。
「ハア、、、ハア、、、、ハア、、、、、」息が荒い。腕がビリビリする。肩が壊れそうだ。
そんなタケルを二人の少女が見下ろす。
「両手使っても0回だって。それ、本気なの?ちょっと弱すぎるんじゃないの?タケル兄ちゃん。」ユリカが。
「うーん、、、もうちょっと、腕力を鍛えたほうがいいと思いますよ。お体の調子が悪いんですか?」エリが。
「これじゃお姉ちゃんに負けるわけだよ。いくらなんでもひ弱すぎ〜」タケルに侮蔑の言葉を浴びせた。
タケルは呆然としていた。小学生の女の子に。自分より年下で背だって低い、こんな幼い少女達に。自分は負けたのだ。
腕力で圧倒的に。この1ヶ月のトレーニングは一体なんだったのだろう。信じられない。信じたくない。あまりの情けなさに言葉を失う。
「その腕の中身、全部脂肪なんじゃないの?筋肉全くないんじゃない?」くすくすとユリカが口を押さえて笑う。
「まず体がなってないよね。ぶよぶよだもん。」ぐい、とユリカがタケルの腹を手の平で押した。
「この体でユリカちゃんのお姉さんのパンチを受けたんですよね。よくご無事で、、、、」エリが言い放つ。
「いや、お姉ちゃん手加減してるって。本気だったら内臓グシャグシャになってるよ。おなかとせなかくっついちゃって。」と、ユリカ。
「ほら、あたしのカラダ。さわってみてよ。タケル兄ちゃん。」Tシャツをまくりあげ、ユリカが腹をタケルに突き出す。タケルは呆然としながらもユリカが着ているスクール水着の上から、そっと手を触れた。それは硬かった。ミカと同じだ。別に腹筋が割れているわけでもない。ふつうのカラダ。どこにでもいる、小学生の。ただ、硬かった。ひたすらに硬かった。
「ほら、ここも硬いよ。」と、ユリカは握り締めた拳をぐりぐりとタケルの頬にこすりつける。
それはまるで鋼のグローブだった。これで顔面を強打されたら、、、、、。タケルはぞっとした。
「これでタケル兄ちゃんを思いっきり叩いたら、、、どうなると思う?」にやにやと。ユリカが笑う。
「ねえ、試してみようか?ねえってば。」ぐりぐりと。今度は両手で。拳でタケルの頬を挟み込んだ。
タケルはそこから逃れようとユリカの腕を掴むが、ビクともしない。
「ユリカちゃん、弱いものイジメはよくないよ〜」エリが笑う。
「あ、ごめんね。あんまりイジメたら泣いちゃうもんね。タケル兄ちゃん。よしよし。」
ユリカはそっと拳を解き、その場に座り込んでいるタケルの頭を優しくなでる。
それは、言葉にならないほどの屈辱だった。
「、、、、、くせに、、、、」タケルが何かをつぶやく。
「え?なんかいった?」ユリカが聞き返す。
「、、、、、、、」その質問に答えず、タケルは無言でゆっくりと立ち上がる。自分は彼女達より背は高い。
とにかく、少しでも自分が優位な立場にいたかった。この、わずか頭ひとつ分の背丈の差が、二人を少しだけ見下ろせる視点が。
タケルにほんの少しだけ勇気を与えた。だから、こんな言葉を口走ってしまった。
「、、、、おまえだって、、、泣き虫だったくせに。」タケルは、過去にすがった。
まだ、自分のほうがあたりまえに強かった時代に。ミカをプロレスごっこでイジメていた、あの過去の記憶に。
「おねしょしたとき、びーびー泣いてたくせに。ちょっと腕力が強いからって、、、」
と、そこまでいって。タケルはビクリとした。ユリカが。無言で自分を見つめている。
目は細く、無表情だ。ああ。タケルは後悔した。タケルは。口にしてはならないことを言ってしまったのだ。
よりにもよって。彼女の。恥ずかしい過去を。彼女の友達の前で。
「タケル兄ちゃん、、、、、」無表情で。すっと右手を伸ばしユリカはタケルの胸ぐらを掴む。そして、一気に自分の胸元へ力任せに引き寄せた。
「うわっ」タケルがその力に抗えるはずもない。
ユリカが胸元のタケルを見下ろし、タケルが首だけを上に向けユリカを見上げる。あっという間に二人の位置は逆転していた。
「、、、、ねえ、そんなに、、、、わたしを怒らせたいんだ。」にやりと。ユリカが笑う。
だが。その笑いは今までの嘲笑とはまるで別物だった。
「、、、、じゃ、、タケル兄ちゃんも、、、泣き虫さんにしてあげる。」
そういった瞬間、強烈なビンタがタケルの頬を抉る。バチィン!!と、強烈な音が部屋に響く。
衝撃でタケルは床に投げ出された。頬が焼けるように痛い。耳がじんじんする。
「そんじゃ、ほんのちょっとだけ本気になるかな。」ユリカが上に着ていたTシャツを脱ぎ捨て、着ているスクール水着の肩を整えた。
ユリカは倒れているタケルの胸ぐらを再度掴み、無理やり立たせる。
そして、今度は強烈なボディーブローを食らわせる。
「ぐはぁああ!!」胃が壊れそうだ。頭がどうかなりそうな痛みに意識が飛ぶ。
「いっとくけど、泣いて土下座するまで許さないからね。タケル兄ちゃん♪」天使のような微笑で。悪魔のような残酷さで。
ユリカは胸ぐらを片手で掴んだまま、タケルの腹にボディーブローを繰り返す。
「ううううう!!!」ドンッ!
「かはぁ!!!」ドンッ!
「げふぅ!!!」ドンッ!
圧倒的な暴力が、そこでは行使されていた。しかも、気を失う事もままならない。
タケルの口からは液体がだらだらと漏れ出し、脚はびくびくと痙攣しだす。
だが、ユリカは攻撃を止めようとしない。
本気を出していないとはいえ、ユリカの凄まじい腕力で叩き込まれるそのパンチにタケルの腹筋が耐えられるはずもない。
一撃。また一撃。タケルの顔が苦痛で歪む。
「が、、は、、、も、、もう、、、やめ、、て、、」タケルが懇願する。が、ユリカは許さない。笑顔でそれに答えた。
「だから、泣いて土下座するまで許さないって、ばっ!」そう言って、ユリカはタケルのアゴにアッパーを叩き込む。
そのまま後ろにふっとぶが、そのぼろくずのようになった体をエリが支えた。
「ほら、がんばってください。小学生の女の子に殴られっぱなしじゃ、かっこわるいですよ。」
と、エリがユリカに向けてタケルの体をどんと押し出す。だが、既にタケルは自分の足で立っていられるほどの力も残ってはいない。
ふらふらと。ユリカの胸に寄りかかり、つかまる。脚が言う事を聞かない。全身が悲鳴をあげている。
そのままずるずると腕が下がり、なんとかユリカの腰に手をまわし必死に踏ん張った。
「あ〜タケル兄ちゃんやらし〜〜。」と、頭の上からユリカが非難する声が聞こえる。だが、そんなことどうでもいい。
「ねえ、横の鏡、見てみなよ。」と、ユリカが言う。そんな余裕はない。が。見えた。見えてしまった。
「ミジメだね。タケル兄ちゃん。」そこには、腕を組み余裕の笑みを浮かべている少女。まだ小学生の、あどけない少女。
そして、その少女の腰に必死にぶらさがっているのは。スクール水着を着た幼い少女に必死に寄りかかっているのは。
少女が嘲り笑うように見下ろしているのは。ガクガクと脚を震わせながら、倒れないように必死につかまっているのは。紛れもない自分だった。
その姿は、ユリカとタケルの力関係を完璧なまでに表現していた。
「タケル兄ちゃん、さっきこの鏡の前でなんかしてたでしょ。力こぶとか作ってたね。」
「ええ、私も見ました。たぶん、自分がすごく強くなったと勘違いなさってたと思うんですけど。」
「タケル兄ちゃんがどんなにたくさん鍛えても、お姉ちゃんやわたしに勝てるわけないって。」
「体の作りがまるで違うんだもん。タケル兄ちゃんなんていつでもひょいって片手でねじ伏せられるもの。簡単に。」
「まあ、ユリカちゃんに逆らうだけムダだと思います。かわいそうですが。私たちとはパワーの桁が違うんですから。根本的に。」
「タケル兄ちゃん、これでもかなり手加減してるんだから。簡単に壊しちゃったらつまんないもんね。」
タケルは。泣いた。じわりと。涙を浮かべた。
自分のミジメさに。自分の情けなさに。ここまで言われても、何も言い返せない。何も出来ない。
ただ、こうやって倒れないように必死にユリカの腰にぶら下がる事しか出来ない自分が。どうしょうもなく悲しかった。
「あはは〜。泣いた泣いた。泣き虫さん。じゃ、そろそろ土下座してもらうね。」
そういって、ユリカはタケルの頭を上から掴み、そのまま床に顔を叩きつけた。
「は、、、が、、、、」鼻がつぶれる。血が、ポタポタと床に垂れている。
「はい、ご、め、ん、な、さ、い」ユリカが呟きながら、連続で叩きつける。ガン!ガン!ガン!床が。赤く染まる。
「も、う、し、ま、せ、ん ゆ、る、し、て。」ガン!ガン!ガン!ガン!それは、凄惨な光景だった。そして。
じょろじょろ。
「わ!うわ!」
「きゃっ」
タケルの股の部分から湯気とともに液体がこぼれ出す。痛みと恐怖により、タケルは失禁していた。
「うっわ、、、、ばっちい〜、、、、」
「あらら、おもらししちゃいましたか。」
「む、、、、、、、。まあ、、なんかナットクいかないけど。なんとなく気が晴れたから、許してあげる。」と、ユリカがタケルに話しかける。
「よかったですね。」と、エリも続く。
「じゃあ、タケル兄ちゃん、またね。今度はお姉ちゃんと一緒に遊ぼうね。約束だよ。」と。別れの挨拶をし、二人の少女は出て行った。
後には、仰向けに倒れ、顔面を真っ赤に晴らし、鼻血と小便をだらだらと垂れ流す哀れな男が残されていた。



inserted by FC2 system